らんすぴらしよぉん(l'inspiration) 

田窪与思子のインスピレーション
(L'inspiration de Yoshiko Takubo)

迷い道

2014-08-29 | ポエム

郊外の道を歩いていた。

 

突然、一度行ってみたかった、

 

コメダ珈琲店に行ってみることにした。

 

しばらくして、道に迷っていることに気づいた。

 

落ち葉を掃いている婦人に、駅への道を尋ねた。

 

と、傍にいた、小学校低学年の男の子が、きっぱりとした声で言った。

 

尾根沿いに歩いて、しばらくすると階段があります。それを降りると、スーパーの第三駐車場の傍に出ます。

 

思わず、すごーい、と感嘆の声を上げた。

 

婦人は、うちの子じゃないのよね、と笑った。

 

礼を言って、再び歩き始めた。

 

小さい時から、道に迷ってばかりいる。

 

あの子は、道に迷うことはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 

 


おじいさんのおしっこ

2014-08-27 | ポエム

雨が降りそうだった。

 

辺りには、湿った空気が漂っていた。

 

満員電車に乗った。

 

登戸に着いた時、

 

電車は、しばらくの間、停まった。

 

プラットフォームに、

 

おしゃれで、インテリ風のおじいさんがいた。

 

白いシャツに、ベージュのジャケットとズボン。

 

おじいさんは、下を向いて、学術書を読んでいた。

 

けれど、ズボンには、おしっこの跡。

 

かなり濡れていた。

 

おじいさんは、満員電車には、乗らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より。

 

 

 

 

 


秋が、こんにちは。

2014-08-26 | ポエム

窓を開けると、秋が、挨拶をしていた。

 

こんにちは。夏さん、そろそろいいですか?

 

夏は、返答した。

 

いえ、いえ、もう少し。

 

昼間は、蝉が鳴き、

 

夜になると、秋の虫が合唱を始める。

 

かき氷の旗は淋しげで、

 

スーパーには梨が並ぶ。

 

夏と秋のせめぎ合い。

 

季節は巡り、

 

生まれる子がいて、逝く人がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より。

 

 

 

 

 


少女時代

2014-08-25 | ポエム

あゝ、少女時代。

 

ムスメ時代には、思い出したくなかった。

 

が、今は、慈しむ。

 

今が変われば、過去も変わる。

 

今を生きれば、過去もイキル。

 

おばあさんになったら、毎日、少女時代。

 

ずっと、お雛様を飾って、

 

毎日、甘酒を飲もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より、

 

 

 


あぶり出し

2014-08-22 | ポエム

小学生のころ、あぶり出しをした。

 

ミカンの汁を筆に染み込ませ、紙に絵を描き、

 

乾かして、火にあてた。

 

と、乾いて見えなくなっていた絵が、あぶり出された。

 

今、世界中で、あぶり出しが起きている。

 

光は、すべてをあぶり出す。

 

良いことも、悪いことも、あぶり出す。

 

さあ、さあ、さあ、さあ、さーあ!

 

夜明け前の闇は、暗い。

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 


葛根湯

2014-08-21 | ポエム

葛根湯を飲んだ。

 

袋に、食前または食間に服用、とあった。

 

数年前まで、食間とは食事の最中、と思い込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 


男の子の憂鬱

2014-08-20 | ポエム

千代田線の駅で、多摩急行に乗った。

 

小さな男の子が、困った顔をしてうろうろしていた。

 

黒の立派な学生服に、帽子。

 

金色の校章が刻印された、ぴかぴかの黒いランドセル。

 

黒い革靴を履いて、黒のオーバーコートまで着ていた。

 

今年入学した、小学一年生なのだろう。

 

男の子は、

 

わたしの隣に座って、深いため息をつき、憂鬱な顔をした。

 

携帯電話が鳴った。

 

男の子は、

 

ポシェットから、ブルーの、おもちゃのような、

 

子供用携帯電話を取り出した。

 

もしもし・・・・・・あのね、電車が遅れたの・・・・・・。

 

だから、電車が遅れたの・・・・・・。

 

話し終わった男の子は、

 

襟についているプラスチックのカラーを緩め、

 

帽子を脱いで、汗を拭いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 


犬の名

2014-08-18 | ポエム

家路を急いでいた。

 

背後で、声が聞こえた。

 

ヨシコ!

 

若い男の声だった。

 

ヨシコ!

 

思わず、返事をしそうになった。

 

振り向くと、

 

若者が、

 

違う道へ行こうとする、子犬のリードを引っ張っていた。

 

ヨシコ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 

 


パンダダンプ

2014-08-17 | ポエム

パンダの顔が向かって来た。

 

パンダ。パンダ。パンダ。

 

ダンプのフロントガラス前には、

 

形状が自由になる、

 

パンダのぬいぐるみが、ぎっしり並んでいた。

 

大きいのもあれば、小さいのもあった。

 

運転席の前にも、助手席の前にも、ぎっしり。

 

パンダ、パンダ、パンダの、パンダダンプ。

 

あゝ、パンダダンプで、東名高速を走りたい!

 

パンダダンプ、プンダダンパ、ダン、ダン、ダンプで、ヒューッツ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 


夏の夕暮れ

2014-08-13 | ポエム

暑い一日が終わろうとしていた。

 

桜並木に吹く風が、

 

遠慮がちに、秋を運んでいた。

 

蝉の声を浴びながら、

 

うす桃色のワンピースを着た少女が、

 

空を見上げて、佇んでいた。

 

冬の夕暮はクレッシェンドだが、

 

夏の夕暮れはデクレッシェンド。

 

冬の夕暮は、

 

春が来て、夏が来ることを知らせる。

 

夏の夕暮れは、

 

秋が来て、やがて冬になることを思い出させる。

 

けれど、秋が来て、冬が来ても、

 

その後には、春が来る。

 

季節も、人生も、思い出が渦巻く、ロンド。

 

わたしは、踊りながら、あちらに帰りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より。


詩集、「スケッチ」

2014-08-12 | アート・映画・演劇

手作りの詩集、「スケッチ」を作り、「THE LIBRARY 2014」 本の展覧会、に出展させて頂きました!

 

会場は、神宮前の画廊「TOKI Art Space」で、プロ&アマ合わせて160人の方々の作品が展示され、

 

16日までの会期中、毎日のようにイベントが開かれました。

 

私は、詩人たち(吉田文憲さん、岸田将幸さん、菊井崇史さん)の川の詩をめぐる対談と 舞踏家(橘由良子さん、山田有浩さん)のパフォーマンスに行きました。

 

詩人三人で出展した「川詩」という詩集と川をめぐる詩についての、対談は奥が深く、大変おもしろかったです。

 

帰宅して、ヘッセの「シッダールタ」に出てくる川のシーンを読み返しました。

 

三人とも、真摯な態度で、小さな声で語りかけるように話されたのが、印象的でした。

 

宮沢賢治の研究家でもある、吉田さんの、詩は隕石だ、という言葉が印象に残りました。

 

 

 

若い舞踏家たちのパフォーマンスも素晴らしかったです。

 

1時間に及ぶパフォーマンスの前半では、男が、水の入ったコップの上に置いたガラス版の上で身体を揺らし、ガラスのキーキーという音が聞こえ、緊張を強いられるものでした。

 

しかも、最後は激しい音と共に、コップが割れ、水が飛び散りました。

 

その後、白い生成りのドレスにサーモンピンクのショールを被り、赤いバラを持った女が、折鶴を散らしながら静かに登場しました。

 

大地を浄化するようなイマージュ。

 

空気が変わりました。

 

哀しみと苦悩の権化となった女に同化し、感情移入をしてしまいました。

 

前半の男はイスラエルを象徴し、後半の女はガザの人々を象徴しているのかしら、と思いました。

 

が、苦痛で泣いていた女は、徐々に徐々に癒されていきます。

 

そして、最後は、「花が咲く」が流れ、女は穏やかな表情になります。

 

あゝ、そういうことだったのね。

 

変わってゆく感情がこちらにも伝わり、感動しました。

 

あゝ カタルシス!

 

拍手の後、テンションが上がっていたので、大声で、若いっていいわ、などと独りごちると、

 

近くにいた方に、あゝ、せっかく感動していたのに、なんというキタナイ言葉、言葉を発する時は選んでくださいよ、と言われ、オバサンは深く反省しました・・・・・・。

 

芸術の根底には沈黙が必要なのに、わたし、どうしましょう・・・・・・。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


女の首

2014-08-11 | ポエム

地下鉄に乗った。

 

目の前に、長い髪の女性が座っていた。

 

赤い縞模様のハンチング帽を深めに被り、

 

下を向いて文庫本を本でいた。

 

真っ赤なブラウスに、黒のスパッツ。

 

まあ素敵、と見とれた。

 

が、彼女が顔をあげた時、首が見えた。

 

首には、たくさんの深い皺。

 

女の首は、正直だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 


宅配便

2014-08-10 | ポエム

東京では、

 

宅配便のお兄さんは、走っている。

 

制服を着て、一生懸命、走っている。

 

急がない物を運ぶ時も、走っている。

 

暑い日も、寒い日も、走っている。

 

「雨ニモマケズ、風ニモマケズ・・・・・・」。

 

ラン。ラン。ラン。

 

わたし達は、急ぎすぎる。

 

昔の、鉄道チッキが懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 

 

 

 

 


2014-08-08 | ポエム

箒を、

 

棕櫚の、皮の繊維を束ねた箒を、

 

手作りの、工芸品のような箒を、買った。

 

Made in Japan!

 

軽くて、きれいに掃ける。

 

電気は、不要。

 

エゴが、エコ! と得意がった。

 

またがれば、空も飛べそうな立派な、箒。

 

そんな箒を、買った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より

 

 

 

 

 

 


ガチョウと老女

2014-08-07 | 動植物

アヒルかもしれない。

 

合鴨かもしれない。

 

けれど、わたしは、それを、ガチョウと命名した。

 

ある日の午後、

 

仙川沿いの道で、

 

蝶ネクタイをしたガチョウが、老女の後を歩いていた。

 

ぺったん。ぺったん。ぺったん。

 

リードはない。

 

ガチョウは、偉そうだった。

 

まるで、老女のガードマン。

 

何か月か経った、夕暮れ時、

 

小さなカフェテラスに、ガチョウがいた。

 

うろうろ。うろうろ。うろうろ。

 

老女は、一人で食事をしていた。

 

やはり、ガチョウは、ガードマン。

 

そして、寒い冬の夜、

 

商店街で、ガチョウを見た。

 

ガチョウは、赤と黒の蝶ネクタイをして、

 

老女の後を歩いていた。

 

ぺったん。ぺったん。ぺったん。

 

老女は、友達と歩きながら、笑っていた。

 

ガチョウも、友達に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩集、<スケッチ>より