らんすぴらしよぉん(l'inspiration) 

田窪与思子のインスピレーション
(L'inspiration de Yoshiko Takubo)

捨てられた本

2011-02-28 | 本・文学
駅への道を急いでいると、たくさんの本が捨てられていた。

ほとんどが、児童書。

きれいな挿絵の、岩波書店の、「星の王子さま」もあった。

近くにある図書館の、交換本コーナーに置いておけば、喜んで持っていく子がいるのに・・・

同じ本を、まだ大切に持っている。

昭和37年発行の、第一刷。

あちこちに、子供の「わたし」が付けたドットがある。

「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」

「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のために、時間をむだにしたからだよ」

電子出版が普及しているが、美しい装丁の、丁寧に作られた紙の本はまだまだ捨てがたい。

写経

2011-02-20 | スケッチ
硯に墨汁を入れ、テーブルに下敷きを敷いた。

半紙を置き、文鎮で押さえた。

般若心経を、大きな筆で、六文字ずつ書いた。

ゆっくり、書いた。

色即是空・・・空即是色・・・不生不滅・・・無眼界・・・

毎日、少しずつ書いた。

終えるのに、三日かかった。

ぎゃていぎゃていはらぎゃてい・・・はらそうぎゃてい・・・


2011-02-14 | ポエム

愛を、思い出す。

ほんとうの愛を。

消費される愛ではなく、永遠の愛。

執着でも束縛でもない、永遠の愛。

神さまと愛は、同義語。

神さま愛を信頼すると、心は穏やか。

何があっても、大丈夫。

魂よ、愛の記憶を思い出せ。

根源の記憶を。

ハッピー・ヴァレンタイン!!!


日曜日の朝

2011-02-13 | 外国語・外国
もう仕事を辞めて何年にもなるというのに、日曜日になると、朝寝をする。

そして、ゆっくり朝食を取る。

今朝は、蜂蜜を塗った玄米パンと、皮付きの、EM農法で育ったリンゴを食べた。

熱い紅茶には、生姜の汁をたらし、豆乳を入れた。

ああ、極楽、極楽、と平和な日曜日の朝に感謝した。

空は青く晴れ渡り、遠くから日曜礼拝を知らせる教会の鐘の音が聞こえてきた。


パリやブリュッセルに住んでいた時も、教会の鐘の音が聞こえてくると、ああ、今日は日曜日か、と思った。

当時は、日曜日になると、デパートも小さな店もみんな閉まり、町は閑散としていた。

開いていたのは、新聞などを売っている文房具店か、パン屋さんか、アラブ系の食料品店ぐらい。

ブリュッセルで働き始めた最初の日曜日。オフィスで隣の席だったイザベルが、南駅の近くに立っていた植木市に連れて行ってくれた。

植木や花だけでなく、ミントや香辛料も売っていたので、大勢のアラブ系住人が来ていて、驚いた。ここは、どこ?

雰囲気も、オフィスの近くのしゃれたサブロン広場とは全く違っていた。

物価が安くても、この辺りは一人で来ない方が良い、と教わった。

彼女は、北駅に近いモロッコ人街にアラビア風のランプを買いに行って、バッグを盗まれた。

パリやブルッセルでは、大勢のアラブ系移民が暮らす。

が、アラブ系住人とひとくくりにはできない。出身国によって主義主張が違うし、貧富の差もある。

高級住宅街で贅沢な暮らしをしている人もいれば、差別と貧困に喘いでいる移民もいる。

最近、エジプトのムバラク大統領が辞任に追い込まれた。

アメリカは、表面的には、エジプトの民主化を歓迎しているが、イスラエルはどうなってしまうのだろう。

選挙が行われ、アラブ全体をイスラム主義の政治体制で統合しようとする、ムスラム同胞団が権力を掌握すると、影響は、サウジアラビア、ヨルダン、イエメン、クエートにも広がっていくだろう。

パキスタンやアフガニスタン、そして、マレーシアやインドネシアにも影響が及ぶかもしれない。

中国や旧ソビエト連邦だった国々にも大勢のイスラム教徒がいる。

大国が自分たちの価値観を押し付けるのではなく、多極化を容認し、みんなが、仲よく共栄共存できればいいと願う、日曜日の朝。





ただ、見守る。

2011-02-08 | スケッチ
園児たちが、川沿いの左右の道と二つの橋を、トラックに見立てて走っていた。

ぐるぐる。ぐるぐる。

薄着で、にこにこしながら、走っていた。

所々に先生たちが立って、声援を送っていた。

がんばれ。がんばれ。

子供たちは、ただ、見守るのが良い。

広い牧場で放し飼いにする感じ。

ルールを決めて、ただ、見守る。

温かく、見守る。

子供たちは、支配や執着や無視には反抗する。

だから、大切な事だけ教えて、ただ、見守る。

みんなで、見守る。

子供たちは、みんな、ニッポンの宝。




言葉を食べる。

2011-02-06 | ポエム
三次元の現象界では、「始めに言葉ありき」。

言葉。言葉。言葉。

ロゴス。ロゴス。ロゴス。

書くことは、エクリチュールは、冒険。

けれど、いつも、イマージュが先行する。

イマージュ。イマージュ。イマージュ。

イマージュを、翻訳する。

そうだ。言葉を食べてみよう。

食卓に、「広辞苑」と「常用字解」を並べる。

側には、カップ オブ ティ。

ページを繰って、むしゃむしゃ。

むしゃむしゃ。むしゃむしゃ。むしゃむしゃ。

すぐに消化不良。

イマージュを、テレパシーで送る。そんな世界に住みたいよ。


春を感じ取る。

2011-02-05 | スケッチ
川沿いの道を歩いた。

日差しは、春。

太陽光が眩しくて、目を閉じた。

目の前が真っ赤に染まり、様々な音が聞こえてきた。

川のせせらぎ。小鳥の囀り。カラスの鳴き声。工事現場の音。自動車の音。バイクの音。自転車の音。ハイヒールの音。人の話し声。

自然の音は、人工音と混じりあって、町の音となる。

突然、羽をばたばたさせる音が聞こえた。

目を開けると、何が気に入らないのか、小鴨が水面で羽をばたばたさせていた。

少し先の中洲では、黒い川鵜が、偉そうな顔をして、羽を広げていた。

羽を広げたまま、顔を左右に動かしていた。

まるで、春を感じ取るように。

動物たちは、いつも「今」。

ユダヤ人のおじいさん

2011-02-04 | 時事

1980年代に7年間勤めた職場には、大勢の外国人が出入りしていた。

あるクリスマスの日。フランスから来ていた、おじいさんジャーナリストに、メリー・クリスマスと言った。

おじいさんは、にこにこ微笑んでいたが、側にいたアメリカ人の女性カメラマンが、囁いた。彼はユダヤ人よ。

ああ、そうだった、彼はキリスト教徒ではなかった、と夏になると見える、腕の刻印を思い出した。

おじいさんは、第二次世界大戦中、ナチスが造った、ユダヤ人強制収用所に収容されていた。

腕には、刺青のような数字の刻印が残っていた。

収容所での阿鼻叫喚の地獄のことは一切語らずに、いつもにこにこしていた。

ただ、パスポートなどの身分証明書のコピーを取るときは、なくさないように、と異常に神経質になっていた。

日本女性と結婚し、もうヨーロッパに戻る気はない、と言っていた。


今、中東の情勢が大きく変わろうとしている。

チュニジアに端を発した革命が、親米的なエジプトに伝播した。

革命が他のアラブ諸国にも広がったら、ユダヤ人国家、イスラエルはどうなってしまうのだろう。

孤立して、戦争を始めなければいいけれど・・・

約束の土地などに執着せずに、いっそ、集団で、アメリカなどの広い国に移住してしまえばいいのに、と宗教・政治オンチのおばさんは思ってしまう。

アメリカは、表向きはアラブ諸国の民主化を歓迎しても、選挙で、エジプトが、ムスラム同胞団のようなイスラム勢力に乗っ取られるのは嫌だろう。

アラブ諸国が、NATO加盟国であるトルコのような国ではなく、イランのようになることも警戒するだろう。

宗教上の対立だけではなく、石油などの利権がからんでくるから話は複雑だ。

宗教の根源は同じ、と信じるおばさんには、ユダヤ教徒とキリスト教徒とイスラム教徒の対立は、同じ根っこから出た兄弟が喧嘩しているようにしか見えない。

ロシアも中国もインドも大勢のイスラム教徒を抱える。

大国から自立するのはいいことだと思うけれど(ニッポンはアメリカから自立できない!)、混乱は避けられない。

地球上から、宗教や民族の対立がなくなり、貧富の格差がなくなることを切に願う。

多極化の、平和。

平和。平和。平和。

あちこちで火山が噴火し、自然災害も増加の一途をたどっている。食糧危機の兆しも見える。争っている場合ではない。

違いを乗り越えて、共栄共存。

平和。平和。平和。


あのユダヤ人のおじいさん。今頃は、ほんとうの故郷で、にこにこしているだろう。




gozo Cine

2011-02-01 | アート・映画・演劇

恵比寿のamuで開催されたイベント、詩人、吉増剛造のImage & Voice『どこにもない場所の方へ I 秋川の河原の箕(ムイ)』に出掛けた。



『キムシジョン』と、その日の夕刻近くに完成したばかりの映像、『秋川の石の蔭から』が上映され、間に、詩人による、テキストの朗読があった。


詩人は、白い壁の会場の片隅に座って、待機していた。



何日かかけてテキストを完成させ、その日も早朝より映像の撮影をしていた詩人は、憔悴し、意識が朦朧としているように見えた。



マイクを手にした詩人は、最初は、うつむき加減で、呟くように、観客の魂に語りかけるように言葉を発していたが、映像が映し出されると、徐々に、生気を、精気を、正気を、取り戻し、自らの作品と一体化していった。


映像から聞こえる詩人と声と、会場で説明をする詩人の声が重なり、声の、魂の、コラージュが始まった。



なんと贅沢な一期一会。



ブルーの画面。青。韓国の色。デジタル時計の青い、数字。


キムシジョンの「愛しのクレメンタイン」。



OHPの映像と重なる、風景。



揺れる映像。揺れる光。



風を運んでくる、朔太郎の利根川。



草・・・ひばりの巣・・・新潟・・・かたかた・・・風化した石・・・洗濯バサミ・・・



プレスリーの、ラブミーテンダー。



まるで、インスピレーションを与えてくれた全ての存在に感謝するかのように発せられる、声。『ありがとうございました。ありがとうございました。』



室内が明るくなると、観客は、原稿用紙に特殊な紙を(神を)貼り付け、様々な色のインクで描かれたテキストを拡大コピーしたものを受け取った。



28/50。400字詰め原稿用紙20枚に匹敵するテキストの左下には、鉛筆で限定番号が印されていた。テキストは、詩人からの、素敵な贈物。



今宵のテキストは、フレームに入れよう。そう思った。



『言葉の格子織り』であるテキストには、詩人のイマージュが、色が、声が、風が、浮遊する。


新聞や雑誌では書くことが禁じられている言葉もあった。詩人の戦い・・・


テキストは、詩人の声で、魂で、静かに読まれた。



再び暗くなると、スクリーンには、その日出来たばかりの映像が映し出された。



映像の中の映像。



映像のコラージュ。イマージュのコラージュ。記憶のコラージュ。



心中天網島の映像が、岩下志麻の小春が、その日の朝の、今、「おはよう日本」の映像と重なり、武満徹の音楽が流れる。


トルコの笛。



秋川の河原。廃墟と化した、建物。幼女連続殺人事件。


蓋をしても、蓋の隅から漏れる闇。



川に置かれた、りんご。



赤いりんご。縄文のりんご。



風の音が、聞こえる。



箕・・・



車が、走る。


詩人も、走る。時空を、越えて。



DNAの記憶、魂の記憶、土地の記憶・・・



ほんとうの詩人は、永遠の「今」を生きる。








*注 Cineの e には、アクソンがあります。