らんすぴらしよぉん(l'inspiration) 

田窪与思子のインスピレーション
(L'inspiration de Yoshiko Takubo)

「東京物語」 by小津安二郎

2013-08-24 | アート・映画・演劇

所用で、神保町に出掛けた。

 

歩いていると、激安の、新品DVDが並ぶラックに遭遇した。

 

うれしくなって、小津安二郎の、「晩春」、「麦秋」、「お茶漬けの味」、「東京物語」を手に持って、店内に入った。

 

そして、絶句。

 

店内には、ポルノ雑誌やDVDしか並んでいなかった。

 

幸い、レジカウンターは、入り口近くにあった。

 

場違いなおばさんの登場に、レジの人もあせったのか、急いで、DVDを袋に入れてくれた。

 

こういう時に限って、誰かに見られるかもぉ、と思いながら、そそくさと店を出た。

 

 

 

という訳で、久しぶりに、「東京物語」を見た。

 

周吉と妻、とみは、尾道で、次女、京子と暮していた。

 

終戦から、7、8年経ったある夏、夫婦は、医院を営む長男、幸一と、美容院を経営する、長女、志げを尋ねて、東京に旅をした。

 

途中、大阪の駅で、国鉄で働く、三男、敬三に会った。

 

幸一も志げも多忙で、二人はあまりかまってもらえなかった。

 

同じ様に多忙でも、戦死した次男の妻、紀子は、二人を、東京見物に連れて行ったり、共同住宅の一室でしかない自宅に招いたり、とみにお小遣いをあげたりして、二人を温かく迎えた。

 

二人の熱海旅行、周吉とかつての友人たちとの再会など、さまざまなエピソードと共に、物語は進行していった。

 

帰郷の途中で、とみは体調を崩し、三男の家に泊まった。

 

尾道に帰って何日か後、とみは、あっけなくこの世を去った。

 

葬式でも、家族の関係があぶり出された。

 

結局、最後まで尾道に居たのは、未亡人の紀子。

 

60年前に撮影された映画なのに、家族の絆、夫婦の関係、親と成人した子供達との関係、未亡人の不安、老いと死、人間のやさしさとエゴ、反戦・・・など今日的主題が、控えめではあるが随所に散りばめられていて、改めて、監督の力量に感心した。

 

それにしても、役者さん達の素晴らしいこと・・・笠智衆、東山千栄子、原節子、山村聰、杉村春子、三宅邦子、香川京子、東野栄治郎、中村伸郎、大阪志郎、十朱久雄、長岡照子・・・誰もが役になりきっていた。

 

「東京物語」は、BBC「21世紀に残したい映画100本」に選出され、ニューヨーク近代美術館にもおさめられている。

 

原発事故、TPP、政権の右翼化・・・今、ニッポンは、戦後最大の危機に直面しているような気がする。

 

小津安二郎が生きていたら、どんな映画を創っただろうか・・・