らんすぴらしよぉん(l'inspiration) 

田窪与思子のインスピレーション
(L'inspiration de Yoshiko Takubo)

「クロワッサンで朝食を」

2013-08-17 | アート・映画・演劇

ジャンヌ・モローが主演の、「クロワッサンで朝食を」という映画を観た。

 

原題は、「パリのエストニア人」。

 

エストニア出身のラーダ監督が、母親の実話を映画にしたものだ。

 

 

エストニアで母を看取ったばかりのアンヌは、孤独だった。

 

そんなアンヌに、パリでの仕事の話が来た。

 

夫とは12年前に離婚し、子供達も独立しているアンヌは、思い切って、若い頃に憧れたパリに旅立った。

 

仕事は、エストニア出身の裕福な老女、フリーダの世話。

 

年の離れたご主人はかなり前に他界していた。

 

ジャンヌ・モローが演じるフリーダは、孤独で、気難しく、我がまま。

 

 

しょっぱなから、家政婦など頼んだ覚えはない、という態度。 

 

アンヌの雇い主は、フリーダのかつての愛人でカフェを持たせてもらった、ステファン。

 

フリーダーは、まともなクロワッサンも買えないアンヌを邪険に扱ったり無理難題を言ったりした。

 

エストニアの言葉も料理も受け付けない。

 

それでも、朝食においしいクロワッサンが出るころから態度が軟化し、アンヌと一緒にステファンのカフェに出掛けた。

 

が、ステファンがアンヌに感謝した時の表情を見たり、アンヌがかつての知り合いだったエストニア人を招いたりすると、再び、フリーダはアンヌに心を閉ざした。

 

堪忍袋の緒が切れたアンヌは、フリーダの元を去り、国に帰る決心をした。

 

荷物を持って、ステファンのカフェに出掛けたアンヌ。

 

が、カフェを後にしたアンヌの表情は違っていた。(エストニアのライネ・マギという女優も名優だ。)

 

カフェの2階で、二人はお互いの愛に気付いたのだろう。

 

アンヌは、地下鉄構内などで夜を過ごし、朝、ステファンのカフェに行った。

 

ステファンはいなかった。

 

ステファンは、フリーダに寄り添っていた。

 

愛を受け取った者は、他者にやさしくなれる。

 

店員から電話をもらったステファンはカフェに戻ったが、アンヌはいなかった。

 

が、彼が、フリーダのアパルトマンに行くと、ドアの前にアンヌがいた。

 

ステファンが鍵を開けると、フリーダが出てきて、アンヌに、ここはあなたの家よ、と言った。

 

孤独な者たちの、疑似家族の愛が始まろうとする予感で映画は終わった。

 

 

実話なら、「その後」を知りたい、と思った。

 

アンヌとステファンは結婚し、フリーダは遺産をアンヌに残したのだろうか・・・

 

当時のエストニアは、まだEUに加盟していなかったから、アンヌは労働許可書のない不法滞在者だったのだろうか・・・だから、映画でも、ステファンは、アンヌに現金の入った封筒を渡したのだろうか・・・

 

なぜ、フランスが誇る大女優ジャンヌ・モローがフランスではほとんど無名の映画監督の作品に、エストニアの女優と出演したのだろうか・・・間に大物プロデューサーの存在があったのだろうか・・・

 

いずれにせよ、85歳の大女優ジャンヌ・モローは、自然体で、孤独な老女を演じきっていた。

 

ちなみに、彼女のシャネルの衣装はすべて自前なのだそうだ。

 

映画は、心温まる佳作だった。