らんすぴらしよぉん(l'inspiration) 

田窪与思子のインスピレーション
(L'inspiration de Yoshiko Takubo)

「野いちご」by イングマール・ベルイマン

2013-08-15 | アート・映画・演劇

猛暑の中、背筋をぴんと伸ばし、赤いハイヒールを履いたお兄さんが歩いていたりするラブホテル街にある、「ユーロスペース」という映画館に向かった。

 

1958年にベルリン国際映画祭、金熊賞を受賞した、イングマール・ベルイマン監督(1918-2007)の「野いちご」が見たかったのだ。

 

久しぶりに映画を見た。

 

そして、久しぶりに感動した。

 

時折、書いておきたくなるような名台詞があったが、映画館を出ると、忘れてしまった。

 

テーマは、「家族」、「老い」、そして「死」。

 

医学の研究に一生を捧げ、輝かしい業績をあげた老教授が、名誉学位を授与されることになった。

 

授与式の前夜、教授は、「死」の街に迷い込んだ、不吉な夢を見た。

 

それが理由ではないが、朝、教授は、家政婦たちとの飛行機での旅をキャンセルし、車でストックホルムから授与式のあるルンドまで向かうことにした。

 

息子、エヴァルドは、空港で待っているはずだった。

 

教授の家に滞在していた、息子の嫁のマリアンヌは、教授の車に同乗することにした。

 

途中、教授は、幼少時代を過ごした家に立ち寄った。

 

マリアンヌが湖に水浴びに行っている間、教授は、かつての生活や、自分の弟と結婚したフィアンセを想った。

 

家族のパーティーや野いちごを摘むフィアンセと弟など、幻想的なシーンが現れた。

 

教授は、若い女性の声で我に返った。

 

マリアンヌが戻ってくると、車は、旅をする若い女性と二人のボーイフレンドも乗せて出発した。

 

車は、夫婦喧嘩でハンドルを切り損ねた、夫婦の車にぶつかりそうになった。

 

横転した彼らの車は故障し、夫婦も、教授の車に乗ることになった。

 

夫婦は、車中でも激しい喧嘩を続け、マリアンヌは、彼らを車から降ろした。

 

途中、教授は、かつて開業していたことのある町のガソリンスタンドで給油した。

 

ガソリンスタンドの人は、教授の熱烈なフアンで、お金を受け取らなかった。

 

家庭では孤独であった教授も、その仕事ぶりは尊敬されていた。

 

若者たちとの楽しい食事・・・医師志願の若者と牧師志願の若者の神を巡る議論・・・教授の96歳になる老母の家で、夫の家族の孤独の連鎖に凍りつくマリアンヌ・・・

 

短い旅には、様々なエピソードと回想シーンが散りばめられていた。

 

教授を尊敬し始めた若者たちは、授与式のお祝いの為に花を摘んだ。

 

その間、マリアンヌは、教授に、夫とのことを打ち明けた。

 

愛のない夫婦の元で育ち、家庭に絶望した教授の息子は、マリアンヌの妊娠を受け入れることができず、彼女に、子供か自分か、の選択を迫っていた。

 

教授の妻も、孤独で、不貞を働き、教授はそれを目撃した。

 

回想と夢と「失われた時」を乗せた車は、無事、授与式の行われる町に着いた。

 

家政婦と息子は、すでに到着していた。

 

立派な行進と授与式。

 

全て、滞りなく終わった。

 

半日の旅は、教授の心を変えた。

 

彼は、家政婦に謝った。息子とも話をした。

 

息子もまた、妻とやり直すことにした。

 

眠りにつこうとする教授は、歌声を聞いた。

 

3人の若者は、教授に歌をプレゼントし、旅立った。

 

教授は、前夜と違って、子供の頃の不思議な夢を見ながら、幸せな眠りについた。

 

「野いちご」は、登場人物がみな成長するという、素敵な「ロードムービー」だった。

 

結局、55年前も、今も、「わたし」が変われば、世界は変わる・・・