廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ミッシング・リンクを埋めるアルバム

2019年04月13日 | Jazz LP (United Artists)

Bob Brookmeyer & Bill Evans / The Ivory Hunters  ( 米 United Artists UAL-3044 )


ボブ・ブルックマイヤーがピアノを弾いているのが珍しいけれど、特に違和感はない。 作曲や編曲ができる人だから、当然ピアノをやっていたんだろう
というのは容易に想像がつく。 ピアノは競争率が高い世界だから、プロとして喰っていくには別の道を行かなければということでバルブ・トロンボーン
なんてニッチな楽器を選んだのかもしれない。 そのおかげか、早くから名前が売れて活躍できたんだからよかったと思う。

ただ、やっぱりビル・エヴァンスと並んで弾くと、その力量の落差はあまりに大きい。 これは1959年3月の録音で、エヴァンスは "Digs" と "Portrait" の
間にあたる時期ということで、ちょうどエヴァンスのピアノスタイルは完成しようとしていた。 エヴァンスのアルバムだけを聴いていると、"Digs" と
"Portrait" の作品としての格の違いには唐突感があるけれど、そのミッシング・リンクを埋めるのがちょうどこのアルバムになるのかもしれない。

エヴァンスはもうどこから聴いても我々にはなじみ深いエヴァンスのピアノを弾いていて、コードにおける独特のハーモニー感覚もレガートなフレーズも
タメの効いたタイム感も、ピーク期に向かって駆け上がろうとしているのが手に取るようにわかる。 

ブルックマイヤーはかなりエヴァンスの弾き方に影響されていて、一聴するとどちらが弾いているのかわからないかもしれない。 でも、フレーズの処理が
至る所でやはり平凡で、簡単にネタばれする。 ただ、雰囲気はよく似ているから連弾していても全然うるさくなく、とても聴き易い仕上がりになっている
のは結果的に良かったのではないかと思う。 これで変な自己主張をしていたらバランスが崩れて聴けたもんじゃないと思うけど、その辺りの匙加減は
さすがに良くわかっていたようだ。

ピアノの感性の新しさが際立つ様子と比べて、コニー・ケイとパーシー・ヒースの上質だが保守的な演奏はやはり徐々に方向感のズレが感じられるように
なってきている。 エヴァンスが新しいパートナーたちを探したのは当然の成り行きだったのがよくわかる。 それでも、このアルバムはエヴァンスの
ことをよく知っている人が聴けば、そこかしこに深い趣きを聴き取ることができるだろう。 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アーゴの確かな目線、スペシ... | トップ | 2019年4月13日 Record Store ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Jazz LP (United Artists)」カテゴリの最新記事