世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

平成24年度(2012年度)愛知県公立高校入試Bグループ問題と解答

2012-03-18 00:17:33 | 物理学・数学

問題は去年より少し簡単になったと思います。基本、標準問題を迅速確実に解けるようにしましょう。

上位・中堅校の推定合格ラインの一部を示します。データ元は野田塾[1]。

平成24年度(2012年3月実施試験)の推定合格ライン
(数値は内申, 学力試験の順、満点は内申45, 学力試験 100)

尾張1A
旭丘 42, 92 昭和 35, 80 名東 36, 80 熱田 30, 63 一宮南 31, 72  江南 36, 75 津島 33,75

尾張1B
名古屋西 31,69 天白 33,77 菊里 41,86 一宮西 39,83 小牧南 30, 64 半田 39,82

尾張2A
明和 42,90 松蔭 33,70 名古屋南 34,75 向陽 41,89 春日井 36,78 高蔵寺 32,73
一宮 42,90  新川 30,64 東海南 32,70

尾張2B
瑞陵 39,83 千種 39,84 桜台 38,82 旭野 35,78 横須賀 35,76 西春 36,79 五条 36,74 一宮興道 33,74

三河1AB
岡崎 42,89 豊橋東 38,83 豊田北 34,82 刈谷北 35,75 豊田西 38,85

三河2AB
岡崎西 32,73 刈谷 42,89 安城 32,69 豊丘 34,74 国府 36,80 岡崎北 37,74 安城東 34,68
西尾 37,73 知立東 35,72 時習館 40,84

よく愛知県の高校受験生らしい人たちが自分の内申と試験の点数を書いて合格見込みを尋ねるのですが、いつもなぜ私に聞くのかよくわかりません。受験生や中1,2年なら模試や塾などで合格ラインに関する情報は入手できるでしょうし、その方が正確なのになぜ私のところで合格見込みを聞くのでしょうか。そういう読者の要望にあわせて毎年野田塾のデータは確保していますが、なぜ愛知県だけこれほど合格ラインに関する読者の書き込みが多いのかよくわかりません。今年に関しては上位校の合格ラインは例年より3点くらい上がっています。中堅校も上がっているところが多い印象ですが、変っていないところもそこそこあったような印象です。特に豊田北高校は昨年内申33,今年34であまり変っていませんが、試験の点数は昨年71なのに今年は82点と11点も上がっています。こんなに上昇することがあるのでしょうか。通常はまずないことで野田塾のミスではないかと疑っています。

皆さん、合格できるとよいですね。

参考
[1] 平成23年度(2011年3月実施)愛知県公立高校入試推定合格ラインは野田塾のHPより  2012.3.17
[2] 愛知県公立高校A,Bグループ入試の問題と解答 佐鳴予備校  2012.3


京都府立医科大学らの論文改ざんなどの疑惑について

2012-03-17 21:39:05 | 社会

15日、京都府立医科大学男性教授が関わった複数の論文について米国心臓協会(AHA)が不正疑惑の懸念を公表し、大学に調査を求めていることがわかった[1]。AHAが発行した5つの論文にデータの使い回し等の改ざんの疑いがあったという[1]。大学は調査委員会を設置し調査している[1]。

『この教授は朝日新聞の取材に「図を使い回したり、誤って上下を逆にしたりしたことはあったが、認識不足や単純なミスだ。意図的な改ざんではない。調査には協力している」[1]』と朝日新聞に記載されているが、端的にいって嘘だろう。この問題に関しては去年あたりからネットで関心を集め、同じ画像を回転させる等して別な結果のように見せかける様々な偽装工作をして論文を発表したことが報告され、疑惑を見た人はおそらくどの人も改ざん等の不正があったと認識している。

これは当たり前だ。[2]のp10、20番目の資料に書かれているとおり捏造、改ざんはやろうとしなければまず起きない。実験していないことやきちんと調べていないことをやったことにして論文に記載したり、恣意的にデータを取捨選択、加工することは意図的にやらなければできないことである。めったに起きないことがいくつも重なったのだから改ざんだと考える人は多い。それだけでなく、データ掲載の態様から考えて普通の思考力がある人なら誰でも不正があったと見抜くだろう。

データをいくつも使い回しただけでなく、回転させたり、ひっくり返したり、伸縮させたりなど、本来そんなことをする必要がないのに恣意的にデータに変更を加えて何回も載せていたら誰でも「同じデータとばれないように偽装して発表した」と見抜く。これは簡単な判断だし、そう考えない方がおかしい。見抜けないのは、愚かだといってもよい。

こういうことはめったに起きないことが偶然何度も重なるのは不自然だというある意味確率的な不合理さだけでなく、客観的な態様から常識的に判断して明らかに被疑者の捏造や偽装の意思が推知でき、意図的な不正と判断するのが至極当然であることが本質的なことだと思う。例えばある人が一生懸命野球の練習をしている様を見れば誰でも「彼は野球が上手になりたい思っている」と判断する。それと同じことである。

不正の例でいえば、例えば先生が小学生に「自分の住んでいる都市の人口を公的な資料などをもとに調べて提出しなさい」という夏休みの宿題を出したとしよう。夏休みが終わってある小学生は宿題を提出し、先生がチェックしたところでたらめなことばかり記載されていた。小学生が参考にしたという公的資料(例えば国勢調査の資料など)を見ても、宿題に書かれている人口は全く書かれていなかった。

人口の記載など文献を見て書き写すだけだから、まず写し間違うことはない。きちんと文献を調べれば簡単に正しいことを書けるのになぜでたらめばかりが記載されているのか?

文献に根拠のないでたらめな記載を見れば常識ある者は誰でも「小学生は文献をきちんと調べずにでたらめにデータを記載した」と見抜くであろう。無論、文献をきちんと調べずにデータを記載するのは意図的である。至極当然の判断である。見抜けない方が愚かといえる。おそらく小学生は夏休み遊びまくっていて宿題をやる時間がなくなったとか、宿題をやるのがめんどくさくて嫌だったなど何らかの理由で文献をきちんと調べずに適当なデータを作成し提出したのだろう。調べていないことを記載したのだから捏造である。繰り返しになるが、こんな態様を見たら誰でも常識的に小学生は意図的にデータを捏造して提出したと見抜く。

京都府立医大の教授がやった改ざんも基本的にはこれと同じである。実際は実験などは行われていないし、データを回転させるなど使い回しがばれないような偽装工作を繰り返して発表している様を見たら、同じデータとばれないように偽装して発表したと判断するのが至極当然である。

思えば上で紹介した小学生の例と似た事例は実際によく小学校などで起こっているだろうし、この教授の論文は上で紹介したようなでたらめな小学生の宿題と本質的に同じことをやっているように思う。小学生なら先生に怒られるとか点数がゼロになる、宿題をやり直しさせられる程度で済むが、プロの研究者が論文でこんなことをやったらクビになる。捏造、改ざんだし学術に対する信頼を致命的に傷つける行為なのだから当然だろう。

小学生の場合は楽をしたい等の理由、研究者の場合は業績の量産、向上などが動機であろうが、学問教育の世界では理由は様々だがどの年齢になっても悪い事をする人は同じようなことをやるということだろうか。

本件については米国心臓協会が告発しているので学会レベルでは不正を認定しているということだろう。京都府立医科大学側がどう判断するのかわからないが、彼らがよほど愚かか保身などに傾かない限り不正が認定されるだろう。被疑者の教授は「認識不足や単純なミスだ。意図的な改ざんではない」と言っているが、よほどのバカか不正な目的のある者以外騙されないだろう。被疑者の場合保身のために必ず過失という趣旨の弁明をするが、全く信用できないのはいうまでもない。

1月に公表された獨協医大の研究不正でも二重投稿を指摘された論文の著者が「論文だと思わず、研究会の抄録だと思って投稿した。だから重複していても構わないと誤解していた」と弁明し、驚いたことに大学側はそれで過失と処理したことがあった。客観的にはジャーナルに投稿しているのに、研究会の抄録だと誤解していることはまずないが、アクセプトの通知や著作権譲渡が行われているのに研究会の抄録だと思っていたという極めて不自然な、端的にいって苦しい嘘の弁明を信じて過失で処理する獨協医大のような大学もあるので、正直京都府立医科大がきちんと判断するのか心配なところはある。

被疑者の弁明をそのまま信じて裁定したら不当な結果になることがほとんどであろうが、獨協医大やいくつかの学会は創作的な嘘の弁明ですら受け入れて処理する。研究機関が愚かというよりおそらく内心は不正だと思っているが、名誉を下げたくないとか研究費を返還したくない等の不当な理由でわざと過失で処理しているにすぎない。

特に学会などは不正を認定せず、訂正や撤回だけで済ますことがほとんどだと思うが、米国心臓協会のように不正の告発や注意喚起の公表を行う学会もあるので、いくつかの学会はきちんと対応するのだと少し見直した。そういう研究機関や学会が増えてほしいと思う。

京都府立医大も不正の握りつぶしや科研費の不返還を決定した獨協医大のように不正な行為で世間から「モラルがない腐った大学。自浄能力がない。」と笑いものにならないためにも、当たり前の自浄作用を発揮してほしい。

しかし、悲しいことに本当に腐った学会や大学、研究所は少なくないのが現実だ。

参考
[1]asahi.com 2012.3.15
[2]”良い論文を書くために” 筑波大学の説明会資料 2011.4.11


山崎隆之の現状について

2012-03-14 00:17:23 | 囲碁・将棋

山崎隆之は関西のイケメン棋士、西の王子と呼んでいた人もいるように一部ではイケメンと思われているらしい。昨年度のNHK将棋講座の前期講師役を務め、聞き手の鈴木真里とともにルックスで売る将棋放送を狙った意図がおそらくあったのであろう。たぶん・・・。

そんな山崎も31歳、年齢的には中堅だ。かつては期待の新人といわれ、西の山崎、東の渡辺と思われていた時期もあった。しかし、今や渡辺に大差をつけられ、完全にライバルという感じではなくなった。A級昇級でも後輩の橋本に追い抜かされ、豊島や佐藤(天)といった期待の若手棋士の台頭によって注目度が下がり、タイトル獲得も一度もないため、かつての稀勢の里のように厳しくいえば忘れられかけている。

山崎といえば、ネタの提供でもある程度貢献しており、第64期名人戦第1局のテレビ解説で聞き手の矢内とともに登場し、放送中に「次の手がはずれていたら矢内さんを諦めます」と発言して注目を集めた。このシーンの動画は今はもうないが山崎の矢内に対する告白としてYoutubeにアップされ確か500万回以上は再生されたと思う。将棋の普及に貢献したと一部で囁かれた。無論、この発言は冗談で二人は何でもなく、二人とも独身である。6年たった今でもネタにされることがあるくらい、この発言は一部の将棋ファンの格好の餌食になり、おそらく山崎、矢内とも散々ネタにされただろう。自己責任の山崎はともかく、矢内の方はそれなりに迷惑したに違いない。

山崎はかなりの毒舌司会で過激なセリフを放送中でも述べることがある。上の発言も彼なりのギャグのつもりだったのだろうが、将棋ファンにはネタを提供したものの彼としては失敗したと思っているだろう。そういえば上の「矢内さんを諦めます」発言と同じ放送中にズボンのベルトを緩めているところが生放送中に映ってしまい、司会や矢内に笑われてしまったことがある。失敗は誰にでもあるものの、彼の天然さを表す出来事といえよう。

以上のように山崎はユニークなタイプであり、男性棋士の中では人気が高い方であろう。しかし、厳しくいえば現在はかつての期待ほど実績がなく忘れられかけているところがあるので、このあたりでタイトル獲得など立派な成績を出せるようにがんばってほしい。タイトル戦では2009年に第57期王座戦に登場して以来一度も登場していないし、それが唯一の登場である。しかも羽生相手にストレート負けした。

A級昇級でも橋本に抜かされ、タイトル獲得でも広瀬に抜かれ、実績では渡辺に大差をつけられ、後輩に抜かれまくっているようではそのうち本当に忘れられてしまう。白鵬の連勝をストップし、大関になった稀勢の里のように停滞している勢いを払拭するような大きな実績がそろそろほしい。


加藤一二三九段と接する将棋関係者について

2012-03-13 00:35:00 | 囲碁・将棋

私が最も尊敬する将棋棋士は加藤一二三九段である。完全なゴーイングマイウェー型だが、超スピード昇級で、名人獲得など素晴らしい実績を残した。そんな生き様がすごいと思う。では人付き合いはどうかというと・・・、将棋ファンなら誰しも想像がつくであろう。おそらくこの人と付き合っていくのはかなり大変だ。数々の加藤一二三伝説からもわかるように奇行があり、端的にいって周りに気を配るタイプではない。人気漫画月下の棋士の紹介では「よい意味で一匹狼」と書かれているが、河口氏はあえて悪くかかなかっただけのことで、連盟でも加藤一二三を嫌う人は多いであろう。

近年は野良ネコのトラブルで近隣の住民から損害賠償を求めて訴えられ敗訴。近隣の住民のインタビューでは「本件は裁判になるほどかなり異常な事態。」と言わしめた。周囲の人間関係がうまくいっていないのは将棋界でも相隣関係でも同じようだ。ここまで書くと読者の中には加藤一二三をテレビに出して大丈夫かと心配する人もいるだろう。棋士のテレビ出演というと対局以外では解説が主な仕事だと思うが、確かに加藤一二三の解説はものすごく2005年3月の第63期A級順位戦最終局のテレビ解説で先崎学とともに出演し、ペアー解説にも関わらず完全に相手のペースを無視してしゃべりまくっていた。見ていても加藤と一緒に将棋の解説をやるのは大変そうだ。

そのせいか第65期名人戦第2局の将棋会館での大盤解説は加藤が一人で担当した。通常は女流棋士が聞き手役を務めペアーで解説を行うが、異例の単独解説だった。これを見てファンの一部は「加藤一二三は女流棋士に嫌われているのか?」と思った人もいたらしい。確かに彼の性格を考えれば当たらずとも遠からずというところだろうし、正直彼を苦手としない人はあまりいないだろう。この対局の解説で加藤が単独だったのは、上でも述べたとおりあまりに相手と呼吸を合わせない様に聞き手役を務める女流棋士がついていけないという事情があったに違いない。昔はこれほどではなかったと思うが高齢になってその様が強くなったように思う。

私が加藤一二三九段がすごいと思うところはこれほど人間関係で損を被りながらも、ゴーイングマイウェーを貫き立派な実績を作ったことだと思う。名人を含めタイトル獲得8期、一般棋戦優勝23回、A級36期、通算1300勝達成、最年少棋士、デビューから連続昇級で最年少A級八段、最年少名人挑戦、一分将棋の神様と言われるほどの直観力のすごさ。神武以来の天才といわれるだけのことはある。

ただ、これほどの棋士でありながらタイトル獲得は8期、名人も1期しかとっていない。すでに中学生で棋士となった谷川、羽生、渡辺にタイトル獲得数で負けている。渡辺は将来タイトルを20期以上は獲得するであろうから、残念ながら実績面では他の天才棋士たちに及ばない。月下の棋士に載っている加藤の紹介を見ると、「今までで最大の天才は誰かという投票をしたら加藤一二三は5位以内に入るだろう。それほどの天才棋士でありながら、名人を勤めたのは1期だけで、歴代の名人の中では強い方ではなく、ある場面では弱いという印象さえある」と書かれているように、なぜこれほどの天才棋士なのに実績がたったこれだけしかないのか。河口氏の同文章によれば「よい意味で一匹狼。加藤一二三が研究会に参加するとか棋士が通常強くなるためにとる方法を用いていたら、どうなっていたか想像もつかないが、今の加藤さんのすばらしさはなかったであろう。」とある。

つまり、加藤の場合昔から完全なゴーイングマイウェーで、一言でいうと協調性が全くなかったのだろう。もし彼が他の棋士が通常するような方法で努力をしていたらもっと強く実績を残していたかもしれない。ただ、そのやり方は彼の性格を考えると逆に実力を伸ばせなかったと私は思う。加藤は完全なゴーイングマイウェー型で、人と協調する方法では性格上うまくいかず、実力が伸びなかったと思う。その意味で加藤が研究会に参加する等通常の方法をとらずに独自路線を貫いたことは正解だったと思う。しかし、もし加藤が他人と協調できるタイプの人間だったら、おそらくもっと実力は伸びていただろうし、実績ももっと高かっただろう。その意味ではこれほどの天才があまりにもったいない感じがする。

加藤一二三は生涯現役で実力で順位戦から陥落するまで引退することはないと思うが、これからも自分の将棋を極めてほしい。


不自然な将棋対局について

2012-03-12 00:19:00 | 囲碁・将棋

今までの将棋の対局でなぜ勝ったのか不思議な対局はいくつかある。その一つが第64期A級順位戦最終局久保利明-藤井猛戦だ。この時は例年通り「将棋界で一番長い日」の放送があり、私も生放送を見ていた。棋譜は次のとおり。

--

日時 2006.3.3
棋戦:順位戦
戦型:相振飛車
先手:藤井猛
後手:久保利明

▲6六歩 △3四歩 ▲7六歩 △3二飛 ▲7七角 △3五歩
▲7八銀 △6二玉 ▲6七銀 △4二銀 ▲8八飛 △7二玉
▲8六歩 △5四歩 ▲8五歩 △5三銀 ▲3八銀 △8二玉
▲5八金左 △9二香 ▲4八玉 △9一玉 ▲2六歩 △8二銀
▲2七銀 △7二金 ▲3八金 △6四歩 ▲3九玉 △5二金
▲8四歩 △同 歩 ▲同 飛 △6三金左 ▲8八飛 △8三歩
▲1六歩 △1四歩 ▲2八玉 △5五歩 ▲9六歩 △5四銀
▲9五歩 △4四歩 ▲7五歩 △4五歩 ▲7六銀 △2四歩
▲4八金左 △4四角 ▲9七桂 △2二飛 ▲8五桂 △3三桂
▲3九玉 △2一飛 ▲8九飛 △2二飛 ▲9八香 △1二香
▲8七飛 △2一飛 ▲8八飛 △2二飛 ▲8九飛 △2一飛
▲9四歩 △同 歩 ▲9三歩 △同 桂 ▲9四香 △8五桂
▲9二香成 △同 玉 ▲8五銀 △8一玉 ▲9五桂 △9三桂
▲8六香 △8五桂 ▲同 香 △9四銀 ▲8三桂成 △同銀引
▲同香成 △同 銀 ▲9五桂 △8四香 ▲8五歩 △同 香
▲8六歩 △9四銀 ▲8五歩 △8二歩 ▲8四歩 △8五香
▲8七香 △同香成 ▲同 飛 △7一玉 ▲8五香 △8一香
▲8三銀 △同 歩 ▲同歩成 △7六銀 ▲7二と △同 玉
▲8三香成 △同 香 ▲同桂成 △同 銀 ▲9七飛 △9一香

まで114手で後手の勝ち

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正直なところ専門的なことは全くわからないが、放送当時解説だった渡辺明によると終盤まで藤井が優勢で勝つと予測されていたが、最終盤でなぜか藤井が突然の変調。渡辺の解説では「この対局は先手がどれほどおかしいことをやったかというと・・・(具体的説明の後に)・・・絶対先手(藤井)に誤算がありましたよ。」と指し手のかなりの不自然さを指摘していた。結果後手久保の勝利。久保はこの対局に負けていたら降級していた。端的にいって、一部で八百長を疑われた対局の一つである。

無論、八百長とされていない。将棋の場合棋譜が残るので不自然な指し手は永久に記録される。A級順位戦などを見ると、どの棋士も必死で対局しているのがわかるから八百長など起きないと思う。勿論、今後もないとよいと思う。


最年少九段誕生などの将棋連盟の運営について

2012-03-10 13:16:53 | 囲碁・将棋

将棋の最年少九段は渡辺明である。21歳7か月での達成。この記録は立派なものだ。しかし、この記録には将棋連盟等の作為がある。渡辺明の昇段履歴をみると、

2004年10月1日 六段(竜王挑戦)
2005年10月1日 七段(竜王獲得)
2005年11月17日 八段(竜王1期、昇段制度改正による
2005年11月30日 九段(竜王2期)

わずか約60日間に三段も昇段していることがわかる。重要なのは昇段制度改正という点だ。まるで最年少九段が誕生するよう図られたかのように昇段制度が改正され、そのおかげで最年少九段が誕生した。こういう態様を見れば誰でも将棋連盟又は竜王戦スポンサーの読売新聞が最年少九段を誕生させて話題を集め、宣伝や商売を有利にしたいという思惑のために最年少九段が誕生するようにわざと昇段制度を改正したと考える。むしろ、そう考えない方がおかしいだろう。最年少九段誕生は明らかに興行上の理由による作為で、相撲でいえば一度も優勝したことのない双羽黒が興行上の理由で横綱に昇進したのと似たようなものである。(もっとも渡辺の場合は不公平感はあるものの双羽黒と違って九段に昇段するだけの実質を備えた立派な記録であることに違いない。)

最年少九段が誕生して宣伝や商売が有利になり利益が出るのは将棋連盟なのでおそらく制度改正当時会長だった米長邦雄らの策略に違いない。最近も里見香奈の奨励会初段、コンピューターとプロ棋士との対局などを大々的に宣伝し、何とか金儲けをしようと一生懸命な連盟の姿が見て取れる。裏を返せばそれだけ連盟の経営は苦しいということだ。例えば本来ならコンピューターとの対局など負けることで権威に傷がつくリスクがあるので連盟にとってはやりたくないはずだ。それなのに引き受けたのは連盟の経営が苦しいからに他ならない。

連盟の経済事情は羽生や谷川といった天才棋士の出現に大きく影響される。それくらい注目を集めないとやっていけない商売なのである。残念ながら将棋は興行としてはマイナーで、現役世代の一部の人には関心はあっても、多くは引退後の老年者が主な将棋人口に過ぎず、金儲けには適さない商売かもしれない。

確かにそういう興行として不利な商売では背に腹はかえられない部分があるのは仕方ないだろう。しかし、現状の運営方針で本当に連盟はうまくいくのだろうか。例えば最年少九段誕生にしろ、批判的な目で見ている人たちは少なからずいる。確かに改正前の昇段制度は1年に一度しか昇段できない規定で、前からそういう制約を撤廃した方がいいと提案する声はあっただろう。しかし、竜王戦に限って、しかも最年少九段を誕生させる意図が見え見えの形で昇段制度を改正するやり方には違和感を覚える人たちも少なくなかった。これまでも谷川、羽生、屋敷など九段昇段の資格を持ちながらも昇段規定の制約のために九段昇段資格取得後しばらく経ってから昇段した棋士がいた。特に谷川の九段昇段資格取得年齢は21歳2ヶ月であり、渡辺よりも若年で、1年で一つしか昇段できない規定のままなら最年少記録の更新はなかった。明らかに不公平といえよう。

なぜ昇段規定が竜王戦に限ってのみ、しかも特定の棋士だけを優遇するように改正されるのか。そういうあからさまな差別が決して周りによい印象を与えないのは当然である。他にも

・これまで禁止されていた女流棋士と奨励会との兼業禁止を里見の奨励会入会にともなって解禁
・里見を奨励会初段で大々的に宣伝、報奨金100万円贈呈
・清水市代、米長自身、船江恒平らをコンピューターと対局
・女流棋士にメイド喫茶をやらせ、ブロマイド販売、アイドルやタレント化

などをやっている。こうした差別、コンピューター対局などの商業的な運営によって短期的には宣伝がうまくいき連盟は経済的に潤うかもしれない。しかし、長期的に見たらどうか。連盟の上のような差別的な運営は決してよい印象にうつるものではない。差別に悪い印象を持つものは連盟から離れていくだろう。コンピューターとの対局も今はまだトップ棋士の実力の方が上だからいいかもしれない。しかし、近い将来確実にコンピューターが人間の実力を上回る時がくるだろう。将棋連盟は実力が随一であるという権威を売り物にし、質の高い棋譜を世に提供して商売しているところだ。それがコンピューターの方がよい将棋を指すとなれば連盟の権威は失墜し、商売も不利になるだろう。その危機が訪れた時になって続けてきたコンピューターとの対局を突然拒否したら、世間にはどううつるだろうか。

「今までコンピューター対局を続けてきたのに、負けそうになると逃げるのか?結局金のために都合がいいときだけコンピューター対局をやってただけか。」

そう思う人が出るに違いない。だから、一度コンピューター対局を始めたら途中で止められない。いつかトップ棋士の実力がコンピューターに敗北し、将棋連盟の権威が失墜する時がやってくる。その時に困るのは将棋連盟だ。そもそも金のために将棋棋士の権威を売り物にしてコンピューターとの対局を続けることに反対している人もいるだろう。

将棋連盟は金のためならなんでもする。

そう思われつつある。確かに今の連盟は経済的に苦しい。しかし、そのために姑息な手段を用いていると一時的には苦しみから逃れられても長期的には失敗する。目先のことだけにとらわれた姑息な手段を用いるのではなく、先を見据えた運営が必要だろう。

この調子で相撲界のように八百長が起きなければいいと思う。


なぜ来期の将棋NHK杯戦の司会は鈴木環那と予想されるか?

2012-03-08 00:55:59 | 囲碁・将棋

来月から来期のNHK杯戦がスタートする。NHK杯戦の司会はいつも3年ごとに替わるので、来月から新しい司会と交代する。もうすでに囲碁、将棋とも決まっていて収録もやっていると思うが、いったい誰が新しい司会なのか将棋や囲碁ファンでも関心が高い人がいるだろう。端的にいって、近年のNHK杯戦は囲碁も将棋も美人女流棋士を起用しているので、来期もたぶん美人とファンの間で思われている人が登場するのだろう[1]。司会は今や番組の華や顔というところがあり、美人を見るためだけにNHK杯戦にチャンネルをまわす人は結構いると推測できる。NHKのニュース7で「7時28分の恋人」とよばれる美人の気象予報士(現在は寺川奈津美)を見るためにチャンネルをまわす人が多いのと似たようなことである。

過去にも同じ記事を書いたが、2012年度からの新しい司会は鈴木環那と予想している人が多いだろう[3]。理由は一言でいえばルックスがいいと一部の将棋ファンに思われているから。2009年にスカパーの囲碁番組で"ナオとカンナの教えて♪13路"という番組が放送されたことがあるが、鈴木はその番組で万波奈穂と共に出演していた[4][5]。番組紹介では万波、鈴木をそれぞれ囲碁界、将棋界のアイドルと紹介し、同じスカパーの番組で放送された将棋まるごとトークでも将棋界のアイドルと紹介された[5]。本当にアイドルなのかわからないし、私はかなり違和感があるものの確かに一部の将棋ファンには人気が高いようだ。"ナオとカンナの教えて♪13路"という番組は放送当時にも紹介したが、万波と鈴木が先生、生徒のコスプレで登場し、歌と踊りでオープニング、決めポーズと確かにアイドルの真似事のようなことをやっていることだけは確かだ[4][5]。その他、2010年10月から放送された「カンナのすぐ指せる将棋入門」に鈴木真里とともに出演した[2]。要するに美人女流棋士を見たい将棋ファン向けの番組として放送されたもので、こうしたニーズを見てもルックスを売る商売が多いようだ。

このように鈴木環那は誰が見ても将棋よりルックスで商売している。そういう方面で彼女がいかに努力しているかは、過去の彼女の姿と現在を比較するとよくわかるだろう[6][7][8][9][10]。16歳頃の鈴木環那は太っていて英語でいえば"ugly"、日本語で露骨にいってしまえば"醜い"という言葉がふさわしい。このままなら今の人気は絶対なかったであろう。その後彼女はルックスを磨き、アイドルの真似事をし、それらを売り物にして成り上がった。そういう方面でいかに努力しているか少しはわかるだろう。

では本業の方はといえば、大したことない。女流棋士としての成績は2012年3月5日現在で通算成績は74勝70敗、勝率0.5139、棋戦の優勝はなく、女流名人戦も一番下の予選からのスタートである。端的にいって鈴木環那は女流棋士の中でも弱い。2008年に実施された第30期女流王将戦の挑戦者決定戦で矢内に敗れた後に、囲碁・将棋ジャーナルに出演し、矢内のビデオ映像が出たときに矢内が笑いをこらえながら「(鈴木さんは)まだ若くチャンスがいくらでもあるので、また次を頑張ってください」と述べたシーンが流されると、鈴木は「あの笑顔が憎たらしいですねー」「初めてここまで‘人を倒したい’と思いました」と発言したが、それならルックス磨きや客寄せパンダばっかりやってないで将棋の実力を磨いたらどうなんだ、そんなことばかりやってるから弱いままなんだ、お前の活動は将棋の実力を磨く態度じゃないだろ、やる気がないのにそんなこといってるんじゃないと言いたい将棋ファンはいるだろう[11]。「そんなにルックスの売り込みやアイドル活動をやりたいなら女流棋士を辞めてAKB48へ行け!」と私の知人がいっていたが、確かに彼女の活動の実態は女流棋士というよりアイドルかもしれない

現に鈴木に対する上のような批判は実際にあって、普及活動ばかりで将棋の実力向上はさっぱりの彼女の様子に厳しい視線を向けている人はそこそこいる。別に悪いことではないし将棋界には普及の面である程度貢献していると思うが、そんなにルックスを売ることやちやほやされる地位を得たいならアイドルにでもなった方が適切で女流棋士になるのは間違いだと思う。

何で彼女は女流棋士をやってるのだろうか。

参考
[1]あくまで将棋や囲碁ファンが美人だと思っている人が登場するという意味。美人だと思っていない人もたくさんいる[2]。
[2]世界変動展望 著者:"鈴木真里" 世界変動展望 2009.9.27
[3]世界変動展望 著者:"2012年度からのNHK杯戦司会は鈴木環那か?" 世界変動展望 2011.10.20
[4]世界変動展望 著者:"「ナオとカンナのおしえて♪13路(サーティーン)」 と新しい普及活動" 世界変動展望 2009.5.20
[5]日本棋院による「ナオとカンナのおしえて♪13路(サーティーン)」の紹介
[6]世界変動展望 著者:"鈴木環那-昔と今の外見の印象が違う棋士" 世界変動展望 2009.5.7
[7]2003年頃(16歳頃)の鈴木環那
[8]2005年頃(17歳~18歳頃)の鈴木環那
[9]2009年1月頃(21歳)、囲碁棋士・万波奈穂との共演写真と動画
[10]2010年11月19日(23歳)の鈴木環那
[11]Wikipedia:"鈴木環那-人物" 2012.3.6


里見香奈の初段昇段報奨金100万円には一般からの大きな批判があったのか?

2012-03-07 22:20:10 | 囲碁・将棋

1月7日に里見香奈が女性で初めて現行規定で初段に昇段し大きく報じられた。将棋連盟のHPでは里見に対して報奨金100万円が贈られると公開され、私だけでなく少なくない人たちが女性だから100万円も出すのはおかしいと思っただろう[1][2]。私の記憶では当初連盟のページでは単に「報奨金100万円が贈られる」とだけ書かれていたので、てっきり将棋連盟が100万円出すのかと思っていたが、最近同じページを見たら、"「(株)囲碁将棋チャンネル」より報奨金(100万円)が贈呈されます。"という文章が追加されていた[3]。

スポンサーが100万円出す情報が追加されたわけだが、なぜこんな追加が行われたのだろうか。一つの推測としては当初は単に100万円報奨金として出すとだけ記載していたために将棋連盟が男女差別を行っていると多くの批判が連盟に寄せられたため、「連盟は男女差別はしていません。スポンサーが勝手に100万円出すといってるだけです。」と弁明するために、この文章を追加したのではないだろうか。

これは一つの推測に過ぎず、スポンサーが100万円出すという記載もスポンサーの方が「当初の記載ではまるて連盟が報奨金を出したように誤解される。あくまでウチが報奨金を出したんだ。きちんと宣伝せいや!!」ということで追加されたのかもしれない。

いずれにせよ宣伝目的があったことは間違いあるまい。今振り返っても男性は何ももらえないのに女性だからといって初段に昇段しただけで100万円ももらえるのは厚遇だ。

参考
[1]世界変動展望 著者:"里見香奈、奨励会初段に!" 世界変動展望 2012.1.8
[2]世界変動展望 著者:"里見香奈への報奨金100万円は宣伝利用に対する対価か?" 世界変動展望 2008.1.18
[3]将棋連盟のアナウンス


平成23年度和算に挑戦の感想

2012-03-06 00:36:07 | 物理学・数学

平成23年度和算に挑戦が終了した。今年は初級問題の答えが高齢になり、問題の絵とギャップがあるため混乱した人がいたようだ。それは私も解いたときギャップを感じたが、問題の絵は答えと関係がある必然性はないので、特に問題ないと思うものの小学生あたりが解くことを考えると何か関係性があると思う人がそこそこいるのも不思議はないだろう。

また、江戸時代の問題にも関わらず長男が96歳で、江戸時代でこんなに高齢なのかと驚いた人もいたらしい。だから答えが間違っていると思った人もいたかもしれない。もともと数学の問題は必ずしも現実を反映しているわけではなく、常識や現実と関係している必要はないので、答えが数学的に正しければ何も問題ないはずだが、小学生くらいが解くことを考えると現実や常識とギャップがあることに違和感を覚えるのだろう。

しかし、少し厳しいことをいうとこんなことで混乱し、自信をもって正解を出せないようではいささか問題である。先にも述べたように、数学の問題では答えと挿絵、常識に必ずしも関連性がないことは当たり前のことで、それらにギャップがあったからといって混乱するようでは科学的能力が乏しいと思う。現実と空想の区別がつけられないといってもいい。「数学の問題なんて所詮空想で作られたもの。現実や常識とギャップがあっても数学的に正しければそれが正解」となぜ判断できないのだろうか?小学生くらいなら無理ないかもしれないが、きちんと正しい判断ができなければまずいだろう。

中級、上級に関しては例年と同じ感じで、中級はすんなり解け、中、高校生もたくさん正解しているが、上級になると学生の正解者はがっくと減って一般が多くなる。意見にもあったが、上級と中級はレベルの差が大きく、上級になると中級よりかなり難しくなって計算がかなりめんどくさい問題が出される。だから一般の人しか解かないのだろう。上級問題も毎年解いているが解法を見つけるのは難しくなく、計算が複雑でめんどくさいのが嫌なところである。平成22年度上級の4次方程式の手計算解法などはかなり難しく、難易度が高い。解法を見つければ計算が難しくなくすんなり解けるという問題は平成21年度上級くらいだ。ああいう問題はあまり出題しなさそうだ。ああいう問題だとそこそこ面白いのだが。

あと、毎年思っていることであるがこのブログは挑戦者にかなり読まれており、どうも解答を求めている様子がよく見れるので、締め切り日前でも希望者には完全解答を公開してもいいかと思っている。読者のニーズに応えたいというのもあるし、ヒントだけほしい人には完全解答を別ページに公開することでヒントだけを閲覧できるようにもできるし、ニーズに合わせた情報提供ができるだろう。解答集を見ると、問題の原文などを見ながら解答した人がいて、それでも正解になっているので、出題側としては他の文献の答えを参考にして解答しても別にかまわないとしているのではないかとも思えるからだ。

私としては他人の答えを写して答案を出しても意味はないとは思うものの、現実には答えを写してでも答案を出したい人がいるようなので、その人にとってそれが意味があるなら私としては別にかまわないと思っている。上でもいったように出題側が既存の解答を参考にして解答した答案さえ正解にしているところを見ると、他人の答えを写して提出されてもかまわないと思っているのだろうし、締切日前の完全解答公開も別にいいかと思うようになった。現在まだ検討中だが、来年度以降の和算に挑戦は締切日前に完全解答を公開するかもしれない。

今年度の和算に挑戦も終わった。来年度はもっと楽しい問題を期待している。


研究機関の研究費不正使用調査や改善策はもっと徹底的にやるべき!

2012-03-04 00:02:59 | 社会

『多数の大学教授らが本来なら返還すべき公的研究費を取引を装って業者に預ける不正経理(預け金)をしていたとされる疑惑で、文部科学省は2日、東大や大阪 大など40の大学や研究機関で計約7900万円の不正経理があったと発表した。不正経理の大半は研究費の捻出が目的とみられるが、一部で私的流用があり、 公表済みの大阪大の180万円以外に上智大の約480万円が判明した。調査中の機関もあり、総額はさらに膨らむ見通し。

 文科省は平成19年、大学側が納品の検査機関を設けるなど不正を防止するためのガイドラインを作成、20年度から運用されていたが、20年度以降も大阪大の約520万円など14機関で計約600万円の不正経理が行われていた。19年以前は、34機関で計7300万円の不正経理があった。

 調査は東工大で研究費の不正が相次いで発覚したことを受け、昨年8月以降、文科省が国の科学研究費補助金(科研費)など公的研究費を受け取った約1200機関を対象に実施した。[1]』

東工大の次期学長の研究費不正使用が報じられて全国的に研究費不正使用の調査が行われた。その結果34機関、合計7900万円の不正経理が発覚した。正直に言って意外と少ない印象を受けた。なぜなら全国的に調査が行われ、日々不正使用の報道がよくあったので全国的にかなり不正は蔓延していた印象があり、もっと額は大きいと思っていた。研究費不正使用事件で有名なのは早稲田大学元教授の松本和子の例(2006年発覚)だが、彼女の場合は1億8569万円も不正使用していた。それを考えると全国で約7300万円ならずいぶん安いと思う。松本和子が非常に大規模な不正をしたということかもしれないが、なんだが不正を隠蔽して過少な額を報告しているだけという気がする。

他の不正使用の例は大阪大学医学系研究科元教授、森本兼曩が約4200万円を不正使用した例(2011年)や、同大微生物研究所特任教授らが約1100万円を不正にプールした事件(2011年)もあった[2][3]。こういう例を見ても、不正使用の実態は全研究機関で合計7900万円という甘いものではなく、もっと酷いのではないかと思う。研究機関は保身のためにきちんとした調査をやっていないのではないか。

最近は東大元助教のアニリール・セルカンや獨協医大のように不正に使った公的研究費を返還しないという極めて無責任な研究者や研究機関の存在が発覚しているが、国民の血税を不正なことに使って平然としている研究者や研究機関には厳しく罰を与えて、研究費をわたさない取り組みが必要だと思う[4][5]。

参考
[1]産経新聞 web 2012.3.2
[2]産経新聞 web 2011.10.18
[3]産経新聞 web 2011.11.22
[4]東京大学:アニリール・セルカン元東京大学大学院工学系研究科助教に係る研究費の不適切な使用に関する調査結果の報告について 2012.2.29

アニリール氏が不正に使った研究費は東大が代わりに返還するという。
[5]世界変動展望 著者:"獨協医大は不正研究に使った科研費を返還すべきである!" 世界変動展望 2012.1.28


業績リストの虚偽記載について

2012-03-02 20:31:51 | 社会

研究者が人事などで評価を受けるときに、自分が出版した論文を業績リストに記載して提出する。中には過大に良く評価されるため業績リストに架空の論文を記載する等の虚偽記載が行われることがある。

近年起きた業績虚偽記載事件で一番大規模なものは東大元助教のアニリール・セルカンの事件だろう。アニリール氏は業績リストに大量に架空の論文や他人の論文を自己の名義に書き換えて記載した。それだけでなく職歴や受賞歴を偽り、博士論文でも盗用を行い、東大から懲戒解雇相当の処分を受けた。アニリール氏の指導教官で上司でもある松村秀一教授があまりに杜撰な審査や監督を行った責任を問われて、最近停職1ヶ月の処分となった[1]。

アニリール氏の事件ほど極端な例は極めて珍しいが、実際に生じる事件は架空の論文1~3件分を業績リストに記載するといった程度のものだ[2][3][4]。この程度なら被疑者は「うっかり書き間違った。」「不注意による記載ミス」と弁明する可能性がかなり高いと思う。無論保身のためで、嘘でもそう弁明するのは想像に難くないだろう。故意か過失かは内心の問題だから決定的証拠がないため調査裁定側は被疑者が過失を主張している場合は「弁明が真実そうかどうか」を客観的な証拠なくあやふやに判断するか、大事にしないためにわざと過失と判断することがしばしばある。無論、あやふやな判断の適正さは乏しいし、わざと過失と判断するのは間違っている。

では、過失で本来と全然違う論文タイトルや存在しない論文タイトルを記載してしまうことがどれほどの確率で起きるのか?本来と全然違うタイトルを記載することも存在しないタイトルを記載することでは同じだから、架空の論文名を記載することと同様に扱うこととする。慧眼な読者ならわかるだろうが、調査しなくてもそんなことは極めて稀にしか起きないことは想像がつくだろう。業績リストに論文を記載するときは、実物の記載か実物の記載を転記したものを書き写すから似たようなタイトルに間違うことはわずかに起こっても、全然違うタイトルに写し間違えることはめったにない。まして、過失による記載ミスがたまたま都合よく記載者の業績を水増しする結果になることはもっと起こらないだろう。

実際に調査してみると次の通り。

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方法
無作為にネット上の業績リストを選び論文のタイトルが正しく記載されているかネットで調べる。ジャーナルのホームページ上の論文リストやネット上に公開されている原文、公的図書館に記録されている文献と照合することでタイトルの正しさを検証する。

結果を(1)完全に正しいもの(2)わずかに違うが大部分が正しいもの(3)正しい記載といえないもの(全然違うと評価されても仕方ないもの)の3つに分類する。(2)わずかに違うが大部分が正しいものとは具体的には本来の論文には"a","the"が名詞の前についているが業績リスト上にはこれが欠落しているもの、単語一つを似た意味の言葉に書き間違っているものなど。

結果

全調査論文数  122件

(1)正しく論文のタイトルを書いているもの 111件 (割合 91.0%)
(2)わずかに違うが大部分が正しいもの 10件 (割合 8.2%)
(3)正しい記載といえないもの(全然違うと評価されても仕方ないもの) 1件 (割合 0.82%)

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結果は予想に反して(3)が1件あったことに驚いた。調べても1件もないと思っていた。それでも全体のうち0.82%だから非常に少ないといえる。似たようなタイトルに間違う割合(2)は8.2%で、調査前の予想とだいたい同じような結果になったので、これくらいならあり得るのは納得のいくところだ。そして、予想通り大部分は論文のタイトルを正しく記載していた。ちなみに(3)で論文のタイトルが違うとわかったのは、業績リストとジャーナルHP上の論文リストの記載が合致しなかったため。著者名も第二著者が異なり、出版年も違っていた。

ただし、業績リスト上で筆頭著者が論文へのリンクを張っており、論文の存在は確認できた(無論、論文のタイトルは業績リスト上の記載と異なっていた。)ジャーナルのページにもタイトル名が違うもののきちんと載っていたので論文が存在することは間違いない。そのため業績水増しなど不正な目的はなく、単に記載ミスしたと考えられる。それでも全体の0.82%だから、これはかなり稀なミスといえる。

総合すると、業績リストへの論文の記載は似たようなものに書き間違うことは少しあるものの、存在しないタイトルや本来と全然違うタイトルに書き間違う確率は1%未満でかなり低いといえる。実際に読者も同じような調査をやってみればこの調査の正当性が実感できるだろう。この調査結果を考えると、過失で全然違うタイトルに書き間違うことですら0.82%しか起きないのだから、過失が偶然結果的に業績水増しなどになってしまったという都合のいい事が起きる可能性は極めて低いといえる。

要するに、全然違うタイトルを業績リストに記載して、それが業績水増しになっている場合は、たとえ1件でも「不注意による記載ミスだった」と主張するのは、確率的にかなり苦しい言い分けといえる。なぜなら、「確率的に0.82%よりずっと低いことが偶然起きた」と考えるのは健全な社会常識に照らして不合理であり、「偶然でない。つまり、業績水増しを隠すために意図的に虚偽記載した」と考える方がよほど合理的だからである。統計的には99%以上故意なのである。

現に業績リストに虚偽記載した事件で架空の論文を記載した事件は自分の知る限り故意が認定されているものしかない。過失が認定されるのは論文タイトルの書き間違いではなく、例えば掲載予定でない論文を掲載予定と注記して記載してしまいチェックミスで訂正し忘れたケースがほとんどである。業績リストに一度に大量に論文を記載することがあるのでいくつかチェックミスでそのようなことが起きることが稀にある。このケースでも厳正に記載すべきなのに注意を怠った責任は免れず、過失といえど処分されるのが通常。例えば、東京海洋大学准教授は印刷中でない書籍を印刷中と記載したり、投稿中でない論文を投稿中と過失で業績リストに記載して停職2ヶ月となった[5]。

もし、研究機関の調査裁定者が同様の問題に出くわしたら上のことを考えてみるとよい。被疑者は過失と弁明するだろう。しかし、架空の論文を記載したり水増しを隠すために全然違うタイトルに書き変えることが過失で起きることは非常に稀なことであって、被疑者の弁明は嘘である可能性が極めて高い。それを内心の問題だから決定的な証拠はないとして、嘘の弁明を信じて過失で済ますのが健全な社会常識に照らして合理的なことと言えるだろうか。

端的にいってそれはミスジャッジであって、「何を根拠に被疑者の過失を認定したのか。不当な裁定である。」と非難されても仕方ない。そもそも嘘をついている可能性が十分考えられるのに、被疑者の弁明を客観的根拠なく信用して過失で済ますことが間違いであって、常識的に考えれば過失で全然違うタイトルを記載し、偶然業績水増しを隠す結果になるのが非常に稀で、このようなことが起きるのは不自然だと普通はわかるはずである。このようなことがわからず、ミスジャッジをするのは著しく思考力に欠けるか、被疑者を庇うとか大事になるリスクを回避するために最初から不当な目的で判断しているかのどちらかであろう。

そういう調査裁定をやる機関はどうしよもなく悪いとしか言い様がない。

参考
[1]東京大学:"懲戒処分の公表について" 2012.2.29
[2]例えば高知大学助教授業績詐称事件(2006年)など。高知大学理学研究科の助教授が助教授昇進審査の際の個人調書に架空の論文を記載し、助手へ降格処分。調書に記載した論文18本のうち2本は架空で、実際に書いた論文は16本だった[3][4]。
[3]高知大学助教授虚偽報告  全国国公私立大学の事件情報 2006.1.25
[4]毎日新聞 2005年12月23日 3時00分
[5]東京海洋大学の懲戒処分公表 2011.4.5