世界変動展望

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京都府立医大はデータ流用事件の共犯者を全員見つけたのか?東大分生研事件はいつ調査結果を公表するのか?

2013-04-26 00:01:15 | 社会

京都府立医大M元教授らのデータ流用事件の共犯者は?

今月の中旬にようやく京都府立医大M元教授らのデータ流用事件の調査結果が公表され14論文で改ざんが認定された。調査報告書は報道陣に公表されたようだが、未だにネット等で一般向けに公表されておらず、詳しいことは不明[1]。一番気になっているのはM以外に改ざん等の不正を行ったのが誰で、その共犯者達もきちんと処罰されるのかということだ。

[1]のMの言い分だと改ざん等を実行していないし、指示もしていないという。不正は正式に認定されたのだから嘘の可能性が高いと思うものの、犯人がMだけとは信じ難い[2]。なぜなら、不正論文数は14編で、このページによるとMを含めて筆頭著者は10名以上、その他の共著者もたくさんいる。さすがにM以外に誰も改ざんを実行していなかったとか、不正を知らなかったという言い分けは信じられない。

通常論文のデータや文章は誰が作成したのかわかるから調査すれば改ざんデータの作成者が誰か特定できるはずだし、その者も責任をとらせなければならない。改ざんデータだと知っていて放置していた者も同様である。それができなければ学術の公正さを害し、今後の不正防止のためにもならないから甚だ不適切だ。

考えたくはないが、Mをトカゲの尻尾切りにして他が逃げ延びるようでは絶対いけない。独協医大のH元教授の同様のデータ流用事件ではまさにそれを実行した。筆頭著者はH以外に6名もいて「H元教授の指導を仰ぐ立場にあったので、論文について口を挟めるような状況ではなかった。」とし不正を認定しなかった。他の共著者も「17 名の共著者は、論文の基本的な内容については服部研究者に任せていたので、特段、改ざん等に該当するという認識もなかった。本件のケースは、いずれも真正 な結果に類似する見栄えの良いデータを代用又は流用したものであることから、論文の結果から特に疑念を抱くことはなかった。」とし不正を認めなかった。

(詳しくは"研究不正調査制度の問題点について"(2013.3)を読んでいただきたい。)

京都府立医大は必ず改ざんデータの作成者を特定し公表し、その者の責任を追及しなければならない。改ざんデータだと知っていて放置していた者も同様である。「調査したが、各著者が口をつぐんでいたので特定できなかった。改ざんを知っていたかどうかも不明。」などというような言い訳は絶対に許されない。仮にそのような形で逃げ得を許すようなならば、別途逃げ得を許さないような制度が必要だろう。いいか悪いかは別として、例えば共著者すべてに論文等のチェック義務を課し、不正が発覚した場合は全員の連帯責任とする制度などが考えられる。

学術界の公正さ、今後の不正防止のためにもMをトカゲの尻尾切りにして他が逃げ延びるような対処だけは絶対に避けなければならない。

東大分生研事件の調査結果公表の遅さについて

東大分子細胞生物学研究所のK元教授らのデータ流用事件は調査開始(2012年1月)から1年以上経過し、日本分子生物学会が中間報告でもいいので迅速に調査結果を開示するように要求してから5ヶ月以上経つが、いまだに調査結果は公表されない。これはいくら何でも遅すぎではないか?F医師の世界記録捏造は2012年3月10日に調査特別委員会を設置して同年6月28日に調査結果が公表されたのだから調査期間は約3ヶ月半。

研究機関の規定なら通常本調査の期間は3~6ヶ月と定められているから、遅すぎるといえる。上で言及した京都府立医大の改ざん事件も2011年12月に調査開始で今月結果が公表されたのだから調査に約1年4ヶ月もかかったことになる。各研究機関は慎重にやるのも結構だが、もっと迅速に調査してほしい。

この事件も責任者のK元東大教授以外に群馬大、筑波大などに共犯者がいると疑われていて、きちんと調査や処罰が行われるのか注目している。以前の記事で筑波大の研究者の論文に訂正が出たことを紹介したが、調査が行われているのか不明。

もうそろそろきちんと明らかにしてほしい。そういえば大分大学医学部前学長らの不正疑惑も調査委員会設置決定からもうすぐ1年だから調査結果が出ていなければならない時期だ。

迅速な調査結果の公表を望む。

参考
[1]Yomiuri Online 記事の写し 2013.4.12

[2]Mの改ざんをしていないという弁明は報道だけを見て以前の供述と比べると矛盾している。この事件は昨年3月に米国心臓協会(AHA)から告発された旨の報道があったときMは『朝日新聞の取材に「図を使い回したり、誤って上下を逆にしたりしたことはあったが、認識不足や単純なミスだ。意図的な改ざんではない。調査には協力している」』(asahi.com 2012.3.15)と答えており、Mは少なくとも疑惑論文の一部についてデータの使いまわしや上下反転を行ったと判断できる。

にも関わらずMは調査結果公開後に「画像などを捏造(ねつぞう)、改ざんなどした事実は絶対にない」(日経新聞、2013.4.12、オリジナルは共同通信)と答えており、矛盾している。(あくまで報道だけを見た場合の判断で、調査すれば違った結論になるのかもしれない。)

調査ではM「が直接捏造に関わったり、指示したりしたのかという点は確認できなかった[1]」としているようだが、上の供述矛盾や論文14編で不正が認定されたことを考えるとMが関与していないという話は信じられない。

調査ではなぜかM「が直接捏造に関わったり、指示したりしたのかという点は確認できなかった[1]」らしいが、私はMが保身のために嘘をついている可能性がかなり高いと思う。京都府立医大だけでなく他の研究機関もそうだが、論文のデータや文章を誰が作ったのかということは著者たちは通常知っているのだから、こういう本質的なことを曖昧にせず、実行者を特定し不正を認定し、責任追及をしなければならない。

Mが否定しても状況証拠は十分あるのだから、Mが不正に直接関与していたときちんと認定しなければならない。それをしなかった京都府立医大の調査はその点で不十分だったと評価する。