世界変動展望

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紀要と捕食出版

2019-10-25 00:00:19 | 社会

江頭進 小樽商科大学経済学科教授は「大学の紀要は多くの場合、審査がないか、あっても内部投稿者には非常に基準が甘いということがほとんどである」と公表[1]。実質査読がないのは捕食出版も同じだ。しかし、紀要を捕食出版と非難している人はほとんどいない。みかけの業績稼ぎと非難する研究者はいる[2]。同じ紀要で出版した論文でも研究者によって査読付きに分類する人もいれば査読なしに分類することもあるので、紀要での発表は形式的な業績なのかもしれない。紀要で論文を発表するのは主に文系で、理系は学会などが発行する査読付き学術誌で主に発表する。

捕食出版は近年のオープンアクセスジャーナルの台頭で、悪徳な出版をやる事から世界的に問題視され、日本では毎日新聞の報道などで各研究機関が注意を呼び掛けている。捕食出版はでたらめな論文でも平気で載せている。実質査読がないから、そういう出版が出るのだが、実質査読がないなら紀要も同じ事があるのだろうか。確かサイエンスはでたらめな論文を作ってオープンアクセスジャーナルに投稿して掲載された論文が多く、オープンアクセスジャーナルはでたらめな査読が多いという調査結果を公表した事がある。では紀要で同じ事をやったらどうなるのだろう?

紀要が実質査読なしの出版なら捕食出版との違いは高額な費用をとるかどうかという点だ。一部の学術誌が出した大量訂正なども実質的な審査なしで捏造隠蔽や撤回回避のための非常に悪質なもので、中には高額な費用をとったものもあるので、そういうのは捕食出版と比して何も違わない。

必ず改善が必要だ。

参考
[1]"査読付き雑誌の問題点"、江頭進氏のサイト 2019年10月23日閲覧
[2]"経済学の紀要や和文誌は評価されないのか?" 世界変動展望 2016年3月3日