Train of thought

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生かさず殺さず

2006-03-20 01:53:15 | 社会・経済

生かさず、殺さず。

徳川幕府の対農民政策。

これと同じ次元が、わが国の福祉政策。

介護保険しかり、障害者『自立』支援法しかり。

表向きは、民間活力導入だの、受益者負担の原則だの、何だか耳当たりの良さそうなことをいう。しかし、福祉とは元を辿れば「社会事業」であり、民間で行ってきたことに行政が後ろ盾を与えてきたのがこれまでの経過。それは、『社会事業』が『社会福祉』になってきた積み重ねであった。

今、行政(厚生労働省)は、その本来の「仕事」を放棄し続けている。民間「活力」の導入とはすなわち公的責任の放棄であり、受益者負担の原則とはすなわち国民の経済格差の拡大強化である。予算が大きくなりすぎたので、金のかからない制度をつくる、という名目で福祉を後退させる政策を進めている。介護保険にしたって、障害者『自立』支援法にしたって、制度の施行1ヶ月前になっても、運用のための「数字」が出てこない。付け焼刃、その場しのぎの対応の連続。こんなことばかりだから、支援費制度はたった1年で崩壊したのだ。

近い将来、支援費制度を介護保険制度に組み込んで運用させようという前提で、様々な制度がいじられている。その介護保険制度だって、介護予防だなんだで訳のわからないことになってきている。私自身、4月からは介護支援専門員として仕事をすることになるのだが、一体何がどうなるのか、さっぱり見当がつかない。真っ暗闇の中で、手探りで仕事に取り掛かることになる。

こんな有様で、こんな貧困な発想で、課題が山積している世の中に手を打っていけるというのだろうか。合計特殊出生率の低下は、現代社会が「子どもを育てるには難しすぎる」ことを数字で語っている。エンジェル・プランはあっけなく挫折した。付け焼刃では情勢に太刀打ちできないのだ。治安を回復し、生活できるだけの収入を確保し、保育や教育の環境を整えてはじめて出生率の回復がある。

生かさず・殺さずの政策をとっていた江戸時代後期、人口は伸びが止まり、平均寿命が延び、高齢化社会になっていた。この時代から学ぶべきことも少なくないだろうと思う。改めて、「生かして殺さない」思想と政策を求めて。