八ヶ岳の設計事務所 アトリエリーフの『たてものブログ』

八ヶ岳での家づくりや暮らしの話題を中心に、あれこれ綴っています。

キツツキの穴

2018-04-06 | 住まい

以前、リフォームを手掛けた原村E邸の施主さんから、キツツキが軒天に開けた穴の補修についてのご相談がありました。

この「キツツキの穴」ですが、実はこの地域ではさほど珍しくありません。木に穴を開ける習性なので、板張りの部分が狙われるのかと思えば必ずしもそうではなく、住人が一定期間不在となる別荘の、穴の開け易い箇所が狙われる傾向にあるようです。 通常は、とりあえず穴の周辺を軒天と同材のもので塞ぐことが多いのですが、再度狙われることもあるので、それで大丈夫とはなかなか言いきれません。

(↓)写真の丸いものは屋根通気のための換気口で、左の換気口の上に穴が開いています。

他の部分も見てまわると、換気口が外れかかっているのや補修跡が目につきます。

(↓)これは、補修しても同じ箇所に穴を開けられた御宅の対策として、板の替わりに合板を張った事例です。比較的施工が簡単で、費用もリーズナブル。 板張りと全く同じではないですが、木目があるので同色に塗れば結構馴染んで見えます。

合板は薄い板を接着剤で張り重ねているので穴を開け難いのか、接着剤を嫌うのか・・・ この御宅の場合は3年以上経った今でも大丈夫です。

今回はかなり高い位置の補修なので簡易のものではない通常の足場が必要なことや、他の換気口や軒天もかなり傷んできていることなど考慮して、今後穴を開けられる心配のないよう、軒天を全面改修することとなりました。

材料はいろいろと検討した結果、屋根と同じ素材のスパンドレルを張ることにしました。この “スパンドレル” というのは、金属の板を短い幅(今回は105mm幅)で折り曲げ加工したもので、天井板のように必要な長さに切って嵌め込みながら張り進めていきます。軽量で施工性が良く、大判の金属板に見られるようなたわみや歪みも無く、固定のビスも露出しません。割れたり欠けたりもしないので、これなら多少突かれても平気です。そもそも、鳥が留まるのは困難(表面が平滑なので)でしょうが・・・。

(↓)仕上りはこんな感じ。

(↑)設計上の工夫として、換気口を全て無くし、軒天と壁との境に「換気スリット(空気が通るための隙間)」を設けました。これにより、随分すっきりとした印象になったと思います。

これでキツツキも諦めてくれることでしょう(笑)。

余談ですが、以前施工のお手伝いをした木製のデッキも、程よく色が褪せて建物や庭とうまく馴染んで来ました。デッキの材料は、アイアンウッドとも呼ばれる非常に堅い “ウリン材” で、無塗装品です。

こういった自然素材ならではの経年変化は味わいがあり、やはり良いものですね。

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マンションコンペ

2017-10-27 | 住まい

前回に続いてコンペの話です。 家具コンペに応募した後、もうひとつコンペに挑戦しました。(先に結果を言うと、こちらも選外でした。 う~む、残念。)

「三井住空間デザインコンペ」 というもので、実際に建築される首都圏マンションの一室のプランをコンペで募集し、最優秀案は実際に建築・販売されます。 今年の対象は横浜・北仲地区のタワーマンションで、テーマは 「ワーク ライフ インテグレーション」「生きながら働き、働きながら生きる場所」 です。要綱では、新しい働き方と家族像の例として三つのケースが挙げられており、想定したのは、『創造性を高めるために住まいで働く』 というもの(家族構成は、IT企業と広告代理店に勤める30代の夫婦と5歳の子供)です。

在宅勤務や外部サービス(ベビーシッターや家事代行など)を取り入れて仕事と子育てを両立させつつ、仕事の創造性を高められるような住まいが求められており、仕事のオン/オフの切り替えやプライバシーやセキュリティなどに配慮する必要もあります。

こういった与条件を考慮し、当方が考えた応募案は以下のものです。

 

プランの概要と設計趣旨は以下の通り。

クリエイティブな仕事をこなす多忙な夫婦にとって、この住戸に必要なのは単なる仕事場ではなく、できるだけ家族の時間を共有することができ、リラックスした環境でふと、職場やひとりでは思いつかないようなアイデアや着眼点が生まれる・・・ そんな空間ではないかと考えました。

玄関を入ってすぐの場所には、「ワーキング ダイニング」 というオープンな空間を設けました。キッチンと大きなテーブルがあり、仕事・食事・団らん・接客といった多様な使い方に柔軟に対応できるので、ここで家族と多くの時間を過ごせます。

これに対し南側には 「ライブラリー」 という部屋があり、読書・テレビ・音楽鑑賞・ゲームなど、何かに集中するのに適しています。引き戸を開ければワーキング ダイニングと一体的な空間となり、自然光と風を北側に導く役割も果たします。

また、この住戸に廊下は無く、ライブラリー・子供室・主寝室・水まわりは個室化しているので、外部サービスの利用時や来客時といった状況に応じて、最適なエリアを使い分けられます。

 

(↓)上記の 「ワーキングダイニング」 のイメージは、こんな感じ。 下の写真の奥に見える部屋が 「ライブラリー」 です。

(↓)バルコニー側から 「ライブラリー」 を見たところ。

1次審査通過案のいくつかに共通しているのは、住戸内を回遊できる動線が設けられている点。そして、寝室はベッドスペースと最小限の収納程度とし、屋外に面する窓(=直接の通風や採光)も必要無しと割り切って、かなりオープンな扱いにしている点ですが、これらについては当方も検討はしたものの、最終的には採用しませんでした。

それは、寝室は単なる 「睡眠をとる場所」 ではなく、自然の光や風を感じながらゆったりと静かな時間を過ごせる 「書斎のような独立性と居心地の良さのある個室」 であるべきだと考えたからですが、都市型の新たなライフスタルと、家族で共有する時間を重視する提案としては、新鮮味や説得力が足りなかったなぁ・・・と反省。 そして、プレゼンテーションの腕前もまだまだです。

設計コンペは、施主さんと直接対話しながらプランを練り上げていく通常の設計とは勝手が違い、なかなか難しい面もありますが、自由な発想や新しい提案を求められるのは、刺激的で挑戦しがいがあります。 結構苦労もしましたが、これもまた良い勉強になりました(笑)。 

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北欧からの客人

2017-06-19 | 住まい

これは私がフィンランドに行ったときに撮ったオーロラの写真(↓)・・・ というのは冗談です。(笑)

実は先日、フィンランドから“仕事関係”の来客があり、これはその時のお土産に頂いたもの。 こう書くと、山梨の田舎の設計事務所に、何故わざわざ北欧から?・・・と思うことでしょう。 私もびっくりしています。

きっかけは、ある日突然送られて来た一通のメール。 フィンランドのHirsiset(ヒルシセット)というログハウスの会社からで、内容を要約すると、アトリエリーフのホームページに載っている 『スマートログ』 に興味があり、今後ログハウスの計画がある場合には見積りをさせてほしい、というものでした。

この 『スマートログ』 というのは、事務所設立当初に考えたオリジナルのログハウスで、一般的なログのイメージ(いわゆる山小屋風)に捉われない、シンプルでオープンなデザインの4つのタイプがあります。 このスマートログそのものは未だに実現していませんが、これを見て、「こんな感じのデザインで・・・」 と、“木造在来工法”の家を依頼された施主さんが何人かおられます。

驚きなのは、メールの日本語の文面が、並みの日本人よりも丁寧で上手だということ。 スマートログは、ホームページ中のあまり目立たないページで紹介されていたのに、よく見つけたなぁ~ということ。 そして、この Hirsiset はアトリエリーフの事務所兼自宅のログハウスのメーカー(でも、これは後に分かったことで、全くの偶然!)だということです。

〔↑ 上の写真は「スマートログ・タイプA」、下は「タイプD」 〕

そして今回は、取引き先への挨拶回りのために来日されたという訳です。 当日は、社長さんとメールをくれた輸出マネージャー(中国の方でした)のお二人で来られ、「こんなログハウスは初めてです・・・」と、我が家を興味津々で見学されました。 完璧な通訳のおかげでいろいろと会話も弾み、楽しい時間を過ごすことができました。

あ、そうそう。コーヒーを飲んだ社長さんからは、「日本で飲んだ中で一番美味しい!」 と褒めて頂き、コーヒーを淹れた家内はご機嫌です(笑)。

なお折角なので、ホームページの 『スマートログ』 の紹介内容に少し手を加え、トップページの「設計事例」や「家のたね」と並べて掲載しましたので、興味のある方はぜひご覧下さい。

冒頭のオーロラのポストカード以外にも、お土産をたくさん頂きました。(↑)

この何とも不思議な出会いが何かに繋がるといいなぁ~。

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出る幕無し

2017-05-12 | 住まい

時々ですが、「住宅を建てたい」とお客さんが相談に来られたものの、お断りするケースがあります。折角、数ある設計事務所や工務店の中からアトリエリーフを選んで来て頂いたのに、お役に立てないのはとても残念です。

でもこれは、忙しくて手が回らないからではなく、ほとんどは、“設計者の出る幕無し” だからなのです。

この春の話で言えば、あるケースは、お客さんがご自身で描いた平面図と立面図をもとに、「この内容で建てて欲しい」というもの。 またあるケースは、ワンルーム+ロフトの「小屋的な最小限住宅を建てたい」、ただし、ご予算は非常に厳しく、設計・監理料さえも足かせになりそうな状況、というものでした。

設計においては、施主さんのご要望、敷地の要件や特性、構造面や機能面、デザインやご予算とのバランスなどを考慮しながら、施主さんと 「こんな空間や暮らし方がいいね!」 と共感できる具体像を “一緒に練り上げていくプロセス” が最も大切で、それを図面化したり実際のモノを選んでいくのは、それに付随する二次的な作業なのです。(これは私の考えであり、二次的な作業を重視する人もいるかもしれませんが。)

上記のケースでは、このプロセスはほとんど必要とされていない・・・ つまり私にとっては、“設計者の出る幕無し” なのです。

あ、そういえば別のケースでは、お話を伺って、「では、家づくりを始めましょうか・・・」 という段階になってから、「実は・・・親戚に、建築業の人がいて、その人に頼まざるを得なくなって・・・」と、キャンセルされたこともありますね。 そんな“しがらみ”は先に片づけてから来て! って話なのですが(笑)。

でも、もちろんこんな話ばかりではなく、価値観を共有できる施主さんがいらっしゃることも知っています。 これまでの実例が何よりの証拠ですから。

 

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住まいのチカラ

2016-12-24 | 住まい

先月竣工した大泉K邸の施主さんから食事のお誘いがあり、家内と出掛けました。

美味しい食事を頂いた後、K邸にお邪魔し、約1ヶ月住んでみての感想を伺ったところ、

「面積を聞くと狭い印象だが、実際は全くそんなことはなく、のびのびと暮らせている」

「窓の配置がよく考えられていて、プライバシーを保ちながら、室内のあちこちで景色が楽しめる」

「室内はとても暖かく、12月なのに薪ストーブはまだ薪を数本燃やしただけ」

「2階のフリースペースの居心地が良く、頻繁に活用している」   といった喜ばしいものでした。

窓枠やレンガ壁の上などあちこちに並んだ小物が、いいアクセントになっています。

実は、施主の奥さんは工事期間中あまり体調が良くなくて、設計の細かな打合せや現場の確認などは、ご主人が奮闘されていました。 話によれば、仮住まいは結露がひどく、湿度も非常に高くて難儀しているとのこと・・・体調悪化は、住環境の影響もかなりあるのでは?と感じていました。 なので今回引っ越されて、奥さんの具合がどの程度改善されるのか気掛かりでした。

実際に数時間お会いした印象では随分表情が明るくなり、住み心地について話す様子も楽しげで、新しい住環境が良い影響を与えていることを実感しました。 これは嬉しい結果であり設計冥利に尽きますが、逆に、住まいにはそれだけの “影響力” があるということで、責任の重さを感じます。

ところで御宅を拝見した際に、納戸の棚にずらりと並んだご主人のコレクションを発見! 骨董市などで集めた品々だそうですが、私が思わず 「骨董屋さんでも始められそうですね」 と言うと、「それができる資格は持っているんですよ」 と、さらりとお答えになったご主人・・・ 恐れ入りました。

 

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