静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

マタイ受難曲をリヒターの来日ライヴ(1969年)で聴きました

2017年04月02日 11時19分36秒 | J.S.バッハ
 カール・リヒターがアルヒーフ(DG)に残したCD26枚分のカンタータを教会歴の順番に1曲ずつ聴いていて、今11枚目に差し掛かったところです。
 ここでカンタータ連続聴きをいったん休止して、長らく棚で眠っていたマタイの来日ライヴを聴いてみました。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
バッハ/マタイ受難曲

ウルズラ・ブッケル(ソプラノ)
マルガ・ヘフゲン(アルト)
エルンスト・ヘフリガー(テノール:エヴァンゲリスト、アリア)
キート・エンゲン(バス:イエス)
ペーター・ファン・デア・ビルト(バス)

ミュンヘン・バッハ管弦楽団、合唱団

指揮:カール・リヒター


録音:1969年4月29日、5月5日 東京文化会館大ホール(ライヴ)

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


 リヒターの「マタイ」は4種あります。あまりに有名な1958年盤は、レコード、CDと買い直し、何度も聴いていますし、映像版(71年制作)も、むかしVHDで入手し、その後DVDに買い替えて手元にあります。1979年盤はまだ聴いていません。
 この来日ライヴは数年前に入手して「ちゃんと聴こう」と思いつつ、その機会は先延ばしになっていたもの。
 私がマタイ受難曲を全曲通して聴く機会って、そんなに多くないのでやむを得ないとも言えます。
 クレンペラー盤を聴いて以来でした。

 聴いて、当たり前と言えばそうなんですが、やはりマタイ受難曲の偉大さを痛いほど実感しました。
 生々しい人間ドラマと一体になって全く弛緩することなく続く音楽に、今回も、ほとんど「打ちのめされた」という感じです。

 曲自体がすばらしいので、たいていの演奏で聴いても惹きつけられるのですが、リヒターのアプローチは、その劇性とコントラストの激しさで極を行くかと思います。
 とにかく創り出される音楽の振幅が大きくて厳しい。
 冒頭から瞬時にただ事ではない雰囲気に満たされ、ヘフリガーの第一声を聴いて早くも涙腺が緩みかける。
 69年の東京で、こんな演奏会が、こんな音楽が鳴り響いていたんだ、などと勝手に感無量。

 ソリスト、オブリガート奏者の一部は、58年盤に比べるとほんの少し聴き劣りしますがライヴの熱気がそれを補って余りある。
 58年録音と違って、リヒターはチェンバロを弾きながら指揮をしているようです。
 そのチェンバロは多分に即興的でかなりの効果をあげていました。
 合唱のフェルマータに重ねて激しくアルペッジョをかき鳴らし、次曲にかぶるほどの前のめりもあれば凍りつくような間もある。
 エンゲンのイエスも生々しい表情であり、弟子を叱責する場面などはまるでオペラのようでした。
 そしてイエスの言葉に重なる弦の、なんと濃厚で動的な表情であることか。
 オルガンや合唱の強烈なアタックは単なる音響的な効果以上にダイレクトにこっちの心に突き刺さる。
 イエスが兵士たちに嘲笑され唾を吐きかけられ叩かれたあとのコラールの煮えたぎるような迫力はどうだろう。
 イエスが息を引き取ったあとのコラール、例の「まことに、この人は神の子だった」の合唱などなど・・・全ての局面がこれでもかというくらいの劇性を伴って描かれていきました。
 第42曲(旧番号51番)には、イエスを裏切り、そして後悔し自死を選んだユダへの寄り添いとイエスを陥れた者たちへの怒りが表現されており、ここは私としてはかなりのツボですが、ヴァイオリン・ソロはちょっと弱かったかな。その前の有名なアルトのアリアとは別の奏者だったようです。

 マタイを始めから終わりまで聴くことは、場面場面で出合う人物や群衆を通して自分の中の葛藤や弱さ、決めつけなどを見せつけられ(突きつけられ)ることです。
 リヒターのマタイは、この曲のそういう面を強く押し出したものでした。
 そう度々は聴けません。
 もちろん、「打ちのめされる」だけではなく慰めもあります。弔いの曲でありながら明るい光が射すような第67曲(旧77曲)は、どこかフォーレのレクイエムに似た優しさを感じさせます。
 そのあとの終曲は、淡々と進む映画のエンドロールのようでありました。
 ここで聴き手は、間もなく閉じようとしている3時間のドラマを反芻したり自分を顧みたりこれからのことを考えたりします。
 マタイの終曲はそんな曲だとリヒターは言っているように感じました。

 この演奏のレコードが初めて発売された時のチラシが家にありました。「CDの発売は約1年後を予定しております。」と小さく書いてありますね。



 さて、また今日からカンタータ聴きを進めていきたいと思います。
 一週間で1枚のペースですから、夏ごろには終わるかな???







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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (一リヒターファン)
2018-04-17 02:45:14
失礼します。 一つ質問があります。
このマタイ受難曲の日本公演盤ですが、最後に拍手が入っているでしょうか。
一リヒターファンさま (親父りゅう)
2018-04-17 06:46:28
今、入院中で手元に音源がありませんので、帰宅、または退院後にお知らせいたします。
申し訳ありません。

同じく来日公演のロ短調ミサでは、拍手は入っておりませんでした。
Unknown (一リヒターファン)
2018-04-17 10:38:18
お返事、ありがとうございます。 ご入院中、申し訳ありません。

当方入手のロ短調ミサ曲には短いながらも拍手が入っています。ちょっと不思議ですね。
マタイ受難曲では拍手は聴かれませんでした。ただ、これを入手したのはオークションで、非売品の見本盤となっていて、レーベルは白い紙に印刷されたものでした。

気長にお待ちしますので、ご無理などされないよう、お大事に。
Unknown (親父りゅう)
2018-04-17 17:02:46
私のロ短調は、単品ではなく、このセットでしたので、拍手の有無など編集が違うのかも知れませんね。
病室に持ち込んでいるパソコンに取り込んでいたので確かめられました。

https://blog.goo.ne.jp/lbrito/e/8de3252f41953b035a9b03c63b9e39a2

Unknown (一リヒターファン)
2018-04-17 19:54:42
そのCDセットは持っていませんで、内容までは知りませんでした。ありがとうございます。

ところでご存知かも知れませんが、フリッツ・ウンダーリッヒ 「Passion - J.S.Bach, Handel, Beethoven」(PH17015)という12枚セットのCDが本日発売されました。リヒター+ミュンヘンバッハのマタイとヨハネ、エーゲルのヨハネ、ベームのマタイが入っているそうです。役柄は違いますが、ウンダーリッヒがテノールを担当するというものです。お知らせまで。

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