最近、バーンスタインの交響曲第1番を続けて聴いています。
バーンスタイン/交響曲第1番「エレミア」
管弦楽:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
アルト:クリスタ・ルードヴィヒ
指揮:レナード・バーンスタイン
録音:1977年、ベルリンにて
DVD
(前略)彼の心の中にあったのは、あるひとつの普遍的なメッセージを表現することであった。
弱冠24歳の時、つまりまだ戦争中に書かれた《エレミア》は、残虐な時代を生きる人間の運命への哀歌である。
とはいえこれは、神に対する苦悩の表現でもある。
バーンスタインが忠誠を誓った善良で正当な神が、なぜ人間をこんなにもつらい状況に置き、このような破滅的な状況に人間を追い込むのだろう?
交響曲のテーマは、バビロン人によるエルサレムの破壊である。
バーンスタインはこのテーマを通して、自身の深い悲しみを表現している。
三つの楽章〈予言〉〈冒涜〉〈ラメント〉(エレミアの哀歌)は、古いヘブライの歌からとられた三音の下降モチーフによって、関連づけられている。
しかも、作曲者の伝統への抵抗が、最後の楽章に初めて見られる。(後略)
・・・・以上、「レナード・バーンスタイン 情熱の指揮者」(エヴリン・レニック著/伊藤制子・柿市如訳 ヤマハ 2002年刊行)より引用。
昨日はジェームズ・ジャッドの指揮(ナクソス盤)で聴きました。
よかったと思いますが、やはりレニー自身の指揮と比べると、ちょっと大人し目と言うか「節度ある」「客観的」な指揮だっと思います。
迫力も、私には物足りませんでした。
今日は1977年の映像で鑑賞しました。
ベルリンでのライヴ。
もうこの頃には、ドイツでイスラエル・フィルが演奏云々なんて特別視することでもなかったでしょうが、カラヤン・サーカスとも言われたフィルハーモニー・ホールに陣取ったイスラエル・フィルを画面に見て、かつて、1960年ベルリン危機の只中でドイツを訪れたバーンスタインが、ドイツの若者に向かってユダヤ式の祝福を述べた映像を思い起こしました。
70年代中ごろは、なんとなく元気がなかった印象もあるバーンスタインですが、ここでは「同志」イスラエル・フィルとの自作指揮ということもあってか、無駄な動き無く、しかし自信溢れる指揮ぶりでした。ルードヴィヒのソロも素晴らしい。
この年、たしか「ケルンテンの夏」音楽祭でもバーンスタインの作品が特集され、後日FMでも放送されました。
私は、そのほとんどを録りましたが、交響曲1番、2番といくつかの小品を収めたカセットは、友人に貸したっきりで戻ってません。3番「カディッシュ」のみ手元にあります。
曲は、上記のような内容から当然、重く暗い色調で塗り込められています。
ただ、演奏時間は短く、意外と聴き易い曲であります。
また、「冒涜」と題された第2楽章は、その名の通り「争い」「破滅」「破壊」「怒り」を感じさせる曲調ですが、どこか快感を呼び起こすエンタな面もあります。
終楽章は「エレミアの哀歌」がヘブライ語で歌われますが、バーンスタイン作品の半ば常套で、最後は「救い」「立ち上がり」を思わせる控えめな肯定感があります。
この曲を彼は正規に3度録音していますし、たしかウィーン・フィルとのライヴもありました。
それらも聴き返してみたいと思っています。