弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

執行妨害!?

2006年07月14日 | 経験談・感じたこと
先日、とある売掛金回収のため、動産執行を申し立て差押えまで行い、いよいよ競売へという所までたどり着いたと思ったら、執行官より電話があり、「第三者異議の申立と共に執行停止の申立が認められたようですので執行中止します」と言われてしまいました。

よくよく事情を聞いてみると、相手方である会社の財産であると執行官が判断し差し押さえた財産について、執行前に、会社(=債務者)がその会社の社長・重役に当該財産を売却しているとのこと。
従って、債務者(=相手方の会社)の所有物ではなく、第三者(=相手方の社長・重役個人)の所有物であるとして、異議が出されたとのことでした。

上記事情を聞いた瞬間、私が債権者側の代理人弁護士であるためかも知れませんが、「どう考えても、会社と社長・役員が偽装工作して、財産隠しを行っただけじゃん!!」としか思えませんでしたが、まぁ、法律的に第三者異議の申立を行われた以上、受けて立たざるを得ません。
それにしても、売買契約書なんていくらでも相手方が仮装できる状況下に置いて、どうやってこっちは訴訟戦略を立てていったもんか…とちょっと悩みます(仮装売買の立証となると、ちょっと手間がかかりそうです…)。

ちなみに、相手方が行ったもう一つの執行停止の申立ですが、この申し立てが認められるためには、裁判所に担保金というのを納める必要があります。
そうであれば、その担保金を債務弁済に充てればいいのに…と思うのは私だけでしょうか?

単なる債権回収であっても、泥沼化すれば、大きな手間・時間がかかってしまうようです。

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実現するの!?-法相が刑罰として社会奉仕などを検討しているようです

2006年07月12日 | その他
報道によると、法相が、新しい刑罰制度のあり方として、懲役・禁固等の身柄を拘束するだけの刑罰ではなく、ゴミ拾いや草刈りなどの社会奉仕を命じる「代替刑」制度の是非を検討する旨提案しているようです。

社会復帰の方法として、単に身柄拘束しているだけではなく、例えば仮釈放等を通じてできる限り「外の空気」を吸わせるということが行われています。
上記法相の提案は、現在行われている社会復帰プログラムとしてさらに一歩進んだ制度といえますが、最近では、殺人をしても10年も経てば仮釈放で刑務所から出てくることができるのは不合理である等、刑罰の厳罰化を求める声も強くなってきていますので、果たして、この様な制度を受け入れるだけの国民的コンセンサスが得られるかは流動的ではないかと思います。

ちなみに、覚せい剤等の薬物事犯の刑事弁護事件を担当する際、被告人の情状として、ダルク等の民間更生施設への通院して、薬物からの脱却を図る決意を裁判官に示すということも行います。
が、実際には、通っていない人が多いのではないかと思います。
薬物犯罪の場合も代替刑制度を利用できないか検討が始まるようですが、依存症から脱却できるような代替刑制度を担保するシステムを作らないと、結局は、刑務所へ逆戻り…ということになりかねません。

今後の議論の推移を見守りたいと思います。


関連するニュースへのリンク
http://www.asahi.com/national/update/0711/TKY200607110441.html

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遅刻学生から罰金100円を徴収!

2006年07月11日 | 経験談・感じたこと
報道によると、琉球大学の教授が講義を行うに際し、遅刻学生から100円を徴収し、支払わない場合は欠席扱いにするという方針を取っているとのことで、大学側と問題になっているようです。

まぁ、教授側からすると、遅刻を減らすための苦肉の策といった所ではないかと思われますが、罰金制度まで採用してやらなければならないのか!?と考えると、賛否両論があるかと思います。


ところで、町中の駐車場でよく「無断駐車を発見した場合、罰金3万円を申し受けます」なんて記載がしてありますが、法律上は、記載通りの罰金を支払わなくてもよいとされています。
理屈だけで考えれば、無断駐車した人が悪いとは言え、無断駐車をした人は罰金を支払う約束までしたとは言えないので、法的拘束力がないという訳です。
なお、無断駐車を行ったこと自体は不法行為ですので、罰金ではなく、損害賠償請求(駐車代金相当額)は行うことはできます。

以上の通り、今回の授業出席に関する罰金制度は、法的に見れば、何ら拘束力は無く、学生側は罰金を支払う必要性は無いと考えられます。
しかし、出席か否かは、単位取得に必須と思われる出席日数に影響を与えることから、事実上、学生に対する拘束力は強いものと言わざるを得ないと思います。

ちなみに、この徴収した罰金はどの様に処理されているのでしょうか?
立件なんてあり得ないと思いますが、場合によっては強要罪の問題が出てくるかも知れません(報道を見る限りでは、構成要件該当性が不明ですが…)。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060710-00000173-kyodo-soci

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【役立つサイト】日本公証人連合会が新会社法対応の定款例を公開してます

2006年07月10日 | 法律情報
今年の5月1日に施行された新会社法ですが、新会社法のメリットを享受するためには、予め定款で定めて置かなければならない事項があります。

しかし、定款で定める必要性は理解できても、では、具体的に定款にどの様に記載すればよいのか?という疑問点は残りますし、また問い合わせが多いのも実情です。

そこで、ある程度自分で調べるための有用なサイトとして、日本公証人連合会が定款例集や会社法の概要を説明したサイトを公開していますので、参考にするのはいかがでしょうか。

定款を認証するのは公証人である以上、その母体である日本公証人連合会が公開しているとなると、かなり有用性は高いと思われます。
もちろん、定款例は、一般的に多そうな事例のみを挙げているだけですので、個別的な点は専門家に問い合わせした方が無難だと思われますが、一から定款作成を依頼するよりは、個別的な点だけの作成を依頼した方が、安上がりになるかも知れませんね。


日本公証人連合会へのリンク
http://www.koshonin.gr.jp/index2.html

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親子関係をめぐる法律問題-最高裁はどう裁くのか?

2006年07月08日 | 法律情報
親子関係をめぐる裁判で、2つ報道されています。

1つは、いわゆる「藁の上からの養子」と呼ばれるものについての最高裁判所の判断です。

ニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060707-00000044-mai-soci

この「藁の上からの養子」という言葉は一般的に聞き慣れない言葉かも知れませんが、要は、自分の子ではない人物を自分の子供として戸籍届けを行い、戸籍上は、親子関係が成立している状態をいいます。
当然の事ながら、純客観的には親子関係がありません。
従って、戸籍上の関係は虚偽であり、後で否定されることになるが、その点は子供は文句を言えないとするのがこれまでの考え方でした。
しかし、今回、最高裁は、50年以上も事実上親子として生活してきた実態を考慮する限り、後から親族等が親子関係を否定する主張を行うことは「権利の濫用に該当する場合がある」と判断しました。

親子関係不存在の裁判が提起されるのは、ほぼ相続問題に端を発していると行っていいと思います。
そして、他の親族が自分の利益のためだけに(相続分を多く取る)、事実上の親子関係を否定するのはフェアーじゃない、とする考えが根底にあると思われます。
このため、上記のような最高裁の判断が出たのではないかと思われます。

まぁ、実質論を重視する限り、最高裁の判断も理解できるのですが、真実ではない親子関係を戸籍として残しておくというのは、戸籍制度の崩壊を招くのではないか?と少々不安に思います。



次に、父親の死後、凍結していた精子を利用して受胎させ、子供を産んだ母親が、父親との親子関係を求めて認知請求の裁判を提起していたところ、最高裁判所が初めて判断を行う見込みが出てきた旨報道されています。

報道による経過を伺う限り、認知請求を認めた高裁判決に対して、最高裁が弁論を開いたようですので、高裁判決が破棄される可能性が極めて高いように思います。

医学の発展により、親の死後でも受胎させ、子供を産むことができるようですが、当然に親子関係を認めてよいか否かは、少々疑問があります。
極論すれば、例えば芸能人等の精子を冷凍保存し、死後、その精子を利用して、全く知らない女性が妊娠し子供を産んだという場合に、当然に親子関係が認められるとするのは不自然なことは明らかだと思います。
本件は、上記のような極端論ではないようですが、何でもかんでも例外を認めてよいかはもう少し議論が必要ではないでしょうか。

ニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060707-00000133-mai-soci

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悪質リフォーム業者の「トークマニュアル」の一部が公表されています。

2006年07月07日 | その他
最近では、目立った報道がなされていませんが、悪質リフォーム業者のトーク集が公表されています。
ちなみに、今回公開されているトーク集は、某会社でマニュアルとして新人教育に利用されていたものだそうです。

そういえば、「無料で屋根を点検しますよ」といかにも良心的に言って、屋根に登ろうとする業者がいました。
無料だから…と言うことで、ついつい了解してしまいそうになるのですが、私が偶然見かけた業者は、わざと瓦をずらしていた!!(←嫌な物を見てしまった…)
その後、うちに訪問してきたので、「瓦をずらしてるんじゃないの?」と言ってやったことがあります。

悲しいことですが、良心的に装うほど奴ほど疑った方がよい、という世の中になってきていますね。。。



関連するニュースへのリンク
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060706k0000m040019000c.html

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司法改革は人間味ある法律家を輩出するため?

2006年07月06日 | 経験談・感じたこと
司法改革に携わった堀田力氏のインタビューがWebサイト上で公開されていたので、読んでみました。
リンク先 http://job.yomiuri.co.jp/interview/jo_in_06070301.cfm

その中に、次のような文章がありました。
『法律家が足りないため、一般の市民、庶民が法律の保護を受けられない。司法試験の合格者数が絞られているからで、合格平均年齢が高くなり、受かるまでにお金がかかるため、取り戻そうと金もうけに走る傾向がある。合格者数を増やすとともに、人の心が分かる法律家を多く輩出したかった。』

法律家が足りないこと、要は弁護士が足りないと言うことは、世間で言われていますので、まぁ、納得です。
ただ、現行司法試験について、合格するまでにお金がかかる→合格してから支出分を取り戻すために金儲けに走る…という図式は、ちょっとどうかなぁという気がします(もちろん、堀田氏はこれだけが司法改革の理由だとは言ってはいないと思いますが)。

弁護士だけに関してですが、建前論からすれば、しょせん、民間事業者に過ぎませんので、生活するべく「お金儲け」をすることは極めて当然のことであり、その点を批判するのは筋違いのような気がします(もちろん、度が過ぎる金儲けは問題ですが)。
また、人の心が分かるか否かは、司法試験制度自体の問題ではなく、個々人の意識の問題であって、合格者を増やせば、割合的に人の心が分かる法律家が増えるというのは、ちょっと短絡的なような気がします。
さらに、司法改革の目玉である法科大学院制度の開設によって、かえってお金がある人しか司法試験を受ける機会が与えられない、あるいは司法試験に合格しても、修習生時代は生活保障が無く、貸付制度を実施するなんて言われていますので、かえって借金を抱え込む人が増えるのではないか何て思います。

もちろん、私のような現役弁護士は、上記のような指摘を真摯に受け止め、今後の弁護士活動に反映させていかなければならないとは思いますが、ちょっと空虚なものに感じてしまったのは私だけでしょうか!?


果たして、司法改革は吉と出るのでしょうか。
結果は、あと数年したら自ずと出てくると思います。

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「誰でもできる著作権契約マニュアル」を文化庁が公表しています

2006年07月04日 | 法律情報
文化庁が「誰でもできる著作権契約マニュアル」なる物を公表しています。

「誰でも…」なんて書くと、「不当広告だ!」なんて言う人がいるかも知れませんが、まぁ、無料で公開している資料なので、その辺は大目にということで。。。

ところで、最近、絵画の盗作騒動などで、著作権に関する意識が高まってきているようです。
特に、インターネット上でホームページやブログを行っている一般の方は、知らず知らずに著作権侵害を行っている可能性が極めて高い状況になっています。
知らない間に著作権侵害を行い、後日クレームを受けないためにも、このマニュアルの最初の「第1章 総論」だけでも読む価値はあるように思います。

なお、「法の不知は許さず」という法格言があります。
つまり、法律違反であることを知らなかったと弁明したところで、通用しないと言う諺なのですが、著作権侵害については、まさしくこの法格言が当てはまる分野です(著作権法違反の場合、民事上の損害賠償の対象になると共に、刑事罰もあります)。


文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」へのリンク
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/keiyaku_manual.html

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被疑者の取調べ-可視化の方法について検察庁が実施概要を公表

2006年07月03日 | その他
検察庁が、裁判員制度対策として公表した「取調べの可視化」方策ですが、その実施概要が公表されているようです。

報道によると、
・2台のビデオカメラを使う
・1つは容疑者を、もう1つは取調室内の様子を映す
・映像・音声は後から編集できないように、一度だけ書き込み可能な媒体に保存する
そうです。


まぁ、取調べの可視化は世界的な傾向のようですので、行うこと自体は問題ないでしょう。
が、映像を出すか否かは検察官の裁量に委ねられており、しかも裁判員制度の対象となる事件に限定するようですので、密室の取調べであるとの批判を免れるほどのものではないでしょうね。

ただ、せっかく検察庁が運用を開始すると(一応)自主的に言い出したのですから、どのように運用されていくかきちっと監視して、よりよい方向に向けて改善されていくことを願うばかりです。
なお、警察についても、取調べの可視化がいつ始まるのか期待したいですね(今のところ、警察側は一切応じないとしていますので…)。


関連するニュースへのリンク
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060703AT1G3002T02072006.html

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