「わたしの美しい庭」凪良ゆう ネタバレ感想

随分前にリクエストしていた本が忘れた頃届きました。
ゲイの人、血縁ってわけじゃない人が子供と一緒に数人暮らすお話って、映像とか小説でも既に幾つか見ていたので、正直な処、既視感あるし、どうかなあ・・・と思ったのですが、どっこい！開始早々すぐ引き込まれて最後まで一気読み。
なんだろうなあ～凪良ゆうさんって、文章も上手だし登場人物に感情移入させる力が強いんだと思う。

本作は縁切寺と言われているスペースが屋上にあるマンションで住む人達の繋がりがある面々のお話。桃子は高校の頃に漫画みたいな恋愛をしていたのが突然終わってしまい、その後ずっとそれが忘れられずにいて、周りがお見合いをすすめたり圧をかけて来る。医療事務関係の仕事をしているが、桃子の職場（大きい病院）の雰囲気が嫌な感じ。中間管理職的な立場で下からも上からも・・・、これは辛い。
でも、途中で転職して小さな心療内科では、負担が前の処より軽減されたみたいで良かった。そこで知り合った元彼の弟基君。

久しぶりに再会してみたら、うつ病で通院していたのね。基の焦る気持ち、彼のご両親や、彼女（浮気しちゃってたけど、彼女も辛かっただろうな・・と思う）、それぞれの心理状況等が丁寧で良く理解できました・・。

ストーリー展開というよりも、はっとするセリフがあちこちに散りばめられているのが、この本の良い処だなあと思いました。

特に印象に残った処は、高校生だった路有がゲイだってことが友人に知られちょっと距離が出来ていた処に、その友人らが謝り「ごめんな」と謝罪する場面で、統理が彼らにズバッと言い放つ言葉たちには感動しちゃったなあ。高校生でこんな事を言えるなんて凄い！

小学生の百音は統理の元奥さんが離婚して再婚相手との間にできた子供、彼らは事故で亡くなり、統理が引き取って育てているのだけれど、相手は子供であっても、ちゃんと一人の人間として会話をして扱ってくれる統理は素敵な人。
でも、きっちりし過ぎている彼と一緒にいると、くつろげないと奥さんが去って行ったのも解らないでもない。

百音は学校で実の両親が亡くなっていて、複雑な家庭環境にいることを、可哀想な子と勝手に思われているのが不快。決して彼女は不幸ではないし、毎日楽しく暮らしているのに。
友人たちと会話していると、彼らが遠慮してパパママなどの話題をしてしまったことを「ごめんね」と謝られるのも、なんだかなあーと感じている。(友人達も悪気は全くないだろうし、、難しいねえーー）

★以下ネタバレ★
「世間体」って面倒だし嫌ですよね。ここに反応した読者は凄く多いと思うわ！
桃子は遂に母に「好きな人がいる　高校生の時の彼だ　忘れられないの」と告げる。たった一度の恋が永遠になっても良いじゃないかって、その通りよ！　もう放っておいてあげて！　
路有の元彼はしょうもないですね・・・。でも数年ぶりに送ってきたハガキで遠路はるばる会いに行って話した事でサッパリ気持ちを整理出来て、新しい彼と一歩踏み出せるようになって良かった。どうぞ、みんな幸せになって欲しいなーと願うばかりです。

わたしの美しい庭　 2019/12/4　凪良ゆう

凪良ゆうさんの本は、「滅びの前のシャングリラ」「流浪の月」を読んで、本作で3作目です。
「流浪の月」も良かったけれど、本作がより一層良かった気がします。４つ★半以上