夢の続きの中で

真・恋姫†無双のSSを書いていきたいと思います~

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第1章 ~乙女たちの真情(1)~

2009-01-13 04:48:31 | 魏END 長編SS


魏呉蜀の三国同盟が成立して、大陸に平和が訪れてから早くも一年が経過していた。



各国の君主の善政によって民の生活は守られ、

渇望していた平和をようやく享受できた人民には、笑顔が絶えなかった。



戦争が無くなり、街道が整備され、賊徒の横行も抑えられたことで、

都市間の商人の移動も盛んになり、街の活況は盛んになる一方だった。





ただ一つ、



どこか寂しさが漂う許昌の城内を除いては…












「ふぅ」



決済が必要な書類に目を通し、文官たちに指示を下しその日の業務を終えた華琳は、風に当たりに城壁に来ていた。



「今日は満月…か。 久しぶりに月を楽しもうかと思ったけど、もうそんなに経っていたのね」



誇り高き王としてではなく、一人の少女として出てきたのは少しの自嘲の言葉。



あの別れの時から、彼女は、王としてそれまで以上の仕事を為す毎日であった。



一刀と約束した、素晴らしい国を作るために…


一刀が帰ってきた時に、誇らしげに笑顔で迎えられるように……



周囲がどれほど諫めても、「大丈夫よ」と彼女は返す。


どこか寂しさを感じさせる笑顔で。






彼女が、王ではなく一人の少女として過ごせる僅かな時間。


いつもは心の奥にしまいこんでいる、切なさと寂しさが心を占める刻。




そこで、思い出すのは、



どこまでも優しくて、初めて彼女を一人の少女として見てくれた少年の笑顔。



一緒にいると、心が安らぐ少年の温もり。




一刀が暮らしていた部屋は、調度品はそのままにして定期的に掃除をさせている。

部屋の主がいつ帰ってきてもいいようにだ。





華琳は、銀月を見上げながら、彼女は天にいるであろう少年に言葉をかける。



「一刀…… あなたは今なにをしているのかしら? 私のことを見守ってくれている? それとも、女の人を追いかけているのかしら」



「でも、あなたは… どこにいても、この私のものなんだからね」




ふふっと笑いながら、彼女は一刀との思い出に浸ろうと目を閉ざす。



明日になれば、また山のような仕事に取り掛からなければならない。



だから、もう少しだけ、心の中の少年の面影との会話を楽しみたかった。















「うぅ… 華琳様……」


「気持ちは分かるが、こればかりは我らにはどうしようもしない。 姉者、堪えてくれ」


「わかっている! わかっているんだ! だが、あいつが… あいつがいれば……!!」


姉の春蘭の行動を諫めながら、秋蘭は大きな溜息をつく。



  (一刀… お前はどうして消えてしまったんだ……)



少年が姿を消した直後に比べればマシになったとは言え、


その喪失感は、今なお魏の女性陣の心を苛んでいる。


それは、華琳に絶対の忠誠を誓う二人とて例外ではない。



 (お前がいるべき処は、華琳様の側だろう…!)



別れの挨拶もなく消えてしまった少年に、秋蘭は恨み事を吐く。



 (お前がいなくなったせいで、華琳様も姉者も皆も悲しんでいる)



しかし、必中の弓の腕を支える彼女の神眼にも、深い哀しみが横たわっていた。



生涯で初めて恋を覚えた少年。


自分の家族以外の男性で、自らの真名を呼ぶことを初めて許した少年。


そして男性の中では、閨を伴にした最初で最後になるであろう少年。



少年への怒りと、やるせなさと、自身の寂しさを込めて、再び歯を噛みしめる。



  (馬鹿者め……)














「今日も華琳様は、一段と無理をなされていたわね」


魏の筆頭軍師である桂花は、独り言を漏らす。


原因は分かっている。 


あの全身精液万年発情男のせいだ。


「全く! 華琳様のお心を煩わせるなんて!! 万死に値するわ!!!」


主の口から一刀が消えてしまったことを聞いた時も、

彼女だけは悲しさを表に現わさなかった。



だけど、歓喜で胸がうち震えるはずなのに…


汚らわしい男性で、目障りだったはずなのに……


いつも「死ねばいいのに」と思っていたはずなのに………



彼女の心を占めていたのは、喪失感だった。



もう二度と少年に会えなくなるという現実が、彼女の心にぽっかりと穴をあけていた。



「居ても居なくても迷惑をかけるんだから…!」






「はぁ」


最愛の主のことが気がかりで、作業がさっきから全く進んでいない同僚に、同じく軍師である稟は溜息をつく。


彼女自身、たった一人が欠けることで、ここまで城内に影響が広がるとは考えていなかった。


一刀が消えてしまうことなど、想定さえしていなかったのだ。



  (一刀殿… あなたは、どうして…)



彼女とて、一刀の優しさには心惹かれる部分があった。


妄想ですぐに鼻血を出してしまうような女なら、普通の男はまず引いてしまうだろう。


だが、一刀は違った。



そんな自分でもいいと言ってくれた。


『可愛い』と囁いてくれた。



  (ふっ、流石は魏の種馬ということですか)



自分の心の片隅で笑顔を浮かべる少年に苦笑しながら、


稟は目の前の書類との格闘に取り掛かる。


敬愛する主である華琳を支えるために、一刀の信頼に応えるために。


それが自分の責務だと信じて。




しばらく書類仕事を続けていると、隣で作業していた風が立ち上がった。


「風。まだ仕事は片付いていませんよ」


「稟ちゃん。今日はお月さまが満月で綺麗だから、眺めるのですよ」


「はぁ、全く…」


風が浮かべる笑顔に、凛は溜息を再びつく。


風の様子も変わった。


軍儀の間にも昼寝をするし、

何を考えているかいまいち掴めないのも変わらないが、


一瞬、どこか遠くを懐かしんでいる表情を浮かべるときがある。


まるで、いなくなってしまった誰かに想いを馳せているかのように…




「稟ちゃん」


「何ですか」


書類から目を離さないまま、稟は風に答えを返す。


「あの時も、こんな満月でしたねー」


「えぇ、そうね」


稟が目を向けると、窓からは、確かに銀月がその姿を輝かせていた。


主が目元を赤くさせながら、彼女たちに一刀が消えたことを告げた夜も、
満月だった。


「綺麗ですねー」


「えぇ」


風の言わんとしていることが、稟には何となく分かった。

そして、風の心境も…


だから彼女はそれ以上言葉を発さない。そして、それは風も同じ。


風は窓際に寄りかかりながら、ぽつりと言葉をもらした。


「………お兄さん」


風の囁きは月の光に吸いこまれ、


そして、


闇の中に消えていった。
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1 コメント

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はじめましてー (魔龍 銀)
2009-01-13 22:17:06
外史とは、正史における人々の想念によって形作られる――――つまり、SS一つ一つが一つの外史だ言うこと。

始めまして、魔龍 銀というものです。

魏エンドーアフター楽しみにしています。

魏の少女達の心に空いた穴、塞がるといいですね……

ではでは、続きを楽しみにしていますw

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