時々通る都心地下街の地上へ出る階段ですが
昇降している人を見たことない。なんだかいつも気になっています。
特に郷土愛があるわけではありませんが、読んでみました。
尾張徳川家に仕える百石取り家臣、朝日文左衛門の日記です。
実在するもので28年間毎日書き続けたお侍さんの日記帳です。
時代背景は、赤字財政の幕府建てなおしに努力した8代将軍吉宗公、
尾張藩主宗春はそれに刃向った。因縁の二人です。
この本の著者天野氏は愛知県人、当然ながら背景は尾張の国、
今の名古屋、私もよく知る地名や名古屋弁も出てきます。
日記魔のお侍さんを描くにふさわしいユーモラスな感じの文体で
平和な江戸時代らしい雰囲気もよく出ています。
文中の会話部分は殆ど名古屋弁、低い身分とは言え、
武士がこんな名古屋弁を使っていたとは思えないのですが?
同僚の平左衛門との会話、
「なにとろくせゃあことこいとるんだて。ええきゃあ亀之助、ツレとして
はっきしゆっといたるでよう、茄子なんかなぶっておちょけとったらかん。
まー二度と言えーせんもんで、よう聞いときゃあ」
訳 「なにを馬鹿げたことを言っているのだい。よいか亀之助、
友人としてはっきり言っておいてあげるので、茄子などいじって
ふざけていてはいけない。もう二度と言わないから
よく聞いておきたまえ」
たかが日常の会話、武士の矜持などとは大袈裟ですが
私の中の武士は凛として「武士は食わねど・・・」のイメージを
持っているものですから、少々気に入りません。
日記はご丁寧にも表本と裏本があり、表本は日常の出来事など
裏本は自分の思いの吐露や、上役や将軍様の悪口、批判など
表へは出せない内容のようです。
私は知りませんでしたが、『鸚鵡籠中記』は知る人ぞ知る
貴重な物のようです。
写本を「徳川林政史研究所」が所蔵しています。