92歳・老大娘の日記

晩年を生きる

『鸚鵡籠中記』

2019-01-17 20:54:44 | 読書

時々通る都心地下街の地上へ出る階段ですが

昇降している人を見たことない。なんだかいつも気になっています。

特に郷土愛があるわけではありませんが、読んでみました。

尾張徳川家に仕える百石取り家臣、朝日文左衛門の日記です。

実在するもので28年間毎日書き続けたお侍さんの日記帳です。

     

時代背景は、赤字財政の幕府建てなおしに努力した8代将軍吉宗公、

尾張藩主宗春はそれに刃向った。因縁の二人です。

この本の著者天野氏は愛知県人、当然ながら背景は尾張の国、

今の名古屋、私もよく知る地名や名古屋弁も出てきます。

日記魔のお侍さんを描くにふさわしいユーモラスな感じの文体で

平和な江戸時代らしい雰囲気もよく出ています。

文中の会話部分は殆ど名古屋弁、低い身分とは言え、

武士がこんな名古屋弁を使っていたとは思えないのですが?

同僚の平左衛門との会話、

 「なにとろくせゃあことこいとるんだて。ええきゃあ亀之助、ツレとして

 はっきしゆっといたるでよう、茄子なんかなぶっておちょけとったらかん。

 まー二度と言えーせんもんで、よう聞いときゃあ」

訳 「なにを馬鹿げたことを言っているのだい。よいか亀之助、

  友人としてはっきり言っておいてあげるので、茄子などいじって

  ふざけていてはいけない。もう二度と言わないから

  よく聞いておきたまえ」

たかが日常の会話、武士の矜持などとは大袈裟ですが

私の中の武士は凛として「武士は食わねど・・・」のイメージを

持っているものですから、少々気に入りません。

日記はご丁寧にも表本と裏本があり、表本は日常の出来事など

裏本は自分の思いの吐露や、上役や将軍様の悪口、批判など

表へは出せない内容のようです。

私は知りませんでしたが、『鸚鵡籠中記』は知る人ぞ知る

貴重な物のようです。

写本を「徳川林政史研究所」が所蔵しています。