いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】汚れた英雄

2011-10-24 | 邦画 や~わ行
【「汚れた英雄」角川春樹 1982】を観ました

おはなし
へい、SUGOは燃えてるぜ。空前のデッドヒートにSUGOは揺れてるぜ。

いろんな意味で「天才」な角川春樹の初監督作品です。さすが天才だけあって、凡人には、よくワカンナイ部分もありますが、それもまた良しということでひとつ。


最初にテロップが出ます。

マシーンを愛し
ロードレースを愛し
サーキットに散った戦士たちよ
いま
鎮魂の譜を捧げます

さすが天才、角川春樹。開始1秒でネタばらしをするとは、スゴすぎ。

さて、暗い中、座っている男のシルエットが映し出されました。ジーッ。革ツナギのジッパーを首まで上げ、そして「パチッ」。首元のスナップを止めた男はゆっくりと立ち上がり、通路を歩いていきます。目の前の明かりに向って、一歩一歩。そして、ドアを開けると、そこは光と喧騒に満ちたSUGOサーキット。フオン、フオン。オートバイのレーシング(空ぶかし)が響き、メカニックたちがバイクの最終調整に余念がありません。男はゼッケン62のTZ500に向います。そう、男はレーサーの北野晶夫(草刈正雄)といい、これからTZ500を走らすレーシングライダーなのです。ヘルメットをかぶり、グローブをつけ、おっと、そこに音楽が流れてきましたよ。異常にノリのいいオープニング。聞いてるだけでワクワクしてくる「Riding high」(ローズマリー・バトラー)です。ちなみにYouTubeで「Riding high」って検索すると出てきますから、知らない人はぜひ一聴を。

ま、それはともあれ、押しがけでエンジンを始動し、コースに飛び出していくマシンたち。SUGOサーキットを一周してスタートラインにキレイに勢揃いです。おおっと、テディ片岡(伊武雅刀)のノリのいい場内実況が聞こえてきましたよ。

「ナウ、エブリバデー。ジス、イズ、ザ、メインレース。国際A級500cc決勝。全日本選手権ロードレースも迎えて今日で第8戦。2年間のブランクを乗り越えて不死鳥のように蘇った北野晶夫。プライベートエントリーにもかかわらずメーカーチームと互角に戦って、総合ポイント96点は堂々のポイントリーダー。その北野に3ポイントの差を追って、一昨年、昨年と2年連続チャンピオン、ヤマハの大木圭史が第2位……」。エ、エブリバデーって。なんか伊武雅刀の強烈なカタカナイングリッシュに腰が抜けそうな思いですが、ヤマハのファクトリーライダー大木圭史を演じるのが勝野洋ってのも、かなりのインパクトです。なんていうか、勝野洋とか永島敏行みたいなスポーツ刈り系はバイクに乗らんだろみたいな。

それはさておき、レースはスタートしました。ゼッケン62の北野。ゼッケン1の大木。そしてゼッケン20。お金持ちのボンボン、ジュニアこと鹿島(貞永敏)のバイクがレースをリードしていきます。もちろん、このレースシーンは、ヤマハの「ホンモノ」ライダーたちが吹き替えで走らせているので、非常に見応えがあります。もう、このままずっと観ていたいくらい。しかし、そこにテディ片岡こと伊武雅刀の場内実況が入ってきました。

「おっと速報だ。イエーイ。さっきの26週目で北野がついにコースレコード、最高ラップを叩きだした」

しかし、それは大木の策略だったのです。油断させといてドカン。北野がベストラップを刻んだのもつかの間。ワークスマシンのパワーを生かして大木が牙をむきました。「おっと大木が抜いた」「1位大木。2位北野。3位鹿島。まさにグレートレースだぜ。HAHAHA」。イエーイとかHAHAHAとかまったく。

そんなこんなで、ともあれレースは大木の勝ちに終わり、総合ポイントは北野と大木が同ポイント。決着は2週間後、またSUGOで行われるレースで決まるそうですよ。それにしても、スタンドで見ているガングロ女(朝加真由美)が横にいる執事(草薙幸二郎)に何やら耳打ちしているカットが、思わせぶりすぎて泣けてきます。

はい。レースが終わり、つかの間の休息。北野こと草刈正雄がプールサイドで、渋く水面を見つめていると、執事っぽい草薙幸二郎がやってきました。「わたくし、ミキモトグループのミキモトに仕えている亀谷と申します。実は会長のご息女、菜穂子さまがぜひ北野様とお食事したいと申しておりますが、明日のご都合はいかがでしょうか」。

ここで、意味なくテニスをしているガングロな菜穂子さまこと朝加真由美のショットを入れつつも、肝心要のお食事シーンをブッ飛ばすのが、さすが角川監督。エピソードのつながりなんて無視無視。よし、次いくぞ。

ということで、次の画面は新東京国際空港(今は成田国際空港)のエントランスに。ブロロー。草刈正雄の運転するBMWアルピナがやってきましたよ。それを見て、全身白黒の縦じま、フードまで縦じまな女(木の実ナナ)が叫びました。「アキオ」。そう、この着ぐるみというか、全身白黒マトリューシカみたいなカッコをした女は、高名なファッションデザイナーかつ草刈正雄の彼女の斎藤京子だったのです。トホホ。

さすがに車内ではフードを取った木の実ナナは、ハンドルを握る草刈正雄に声をかけます。「UPIの記者から聞いたわ。残念ね。最終戦はかならず見に行くわ」。木の実ナナのムンムン色気が漂いはじめました。「でも何だか疲れたわ」チラッ。木の実ナナが草刈正雄を熱く見つめてますよ。「そばにいて」。木の実ナナのムンムン色気でBMWは桃色マックス。

ということで、オシャレなホテルに投宿したふたり。月明かりの青白い光の中で抱き合っています。とはいえ、ロングショットで見えるのは草刈正雄の尻。木の実ナナのオッパイも見えるような気もしますが、米粒だよ。あくまで「よく」見えるのは草刈正雄の尻。

木の実ナナが寝ているうちに、とっとと部屋を出た草刈正雄はBMWで高速をブッ飛ばします。ブロロー。そして、いきなりイメージショットが挿入。暗い海に人間がポッカリ浮いています。実のところ、あとで、このショットの意味は明かされるものの、あまりにも唐突だ。そして画面はまたも唐突に草刈正雄の尻に。いえ、草刈正雄が室内プールにうつ伏せでポッカリ浮かんでいるんですけどね。とにかく角川監督は尻が好きだ。

クルンと回転してジャバジャバと平泳ぎをした草刈正雄は、室内プールから出ます。もちろんカメラは、プールから上がる草刈正雄の尻を執拗に撮影するのは言うまでもありません。プールから出た草刈正雄が黒いバスローブを着て、黒いタオルを頭からかぶると、そこに「Riding high」のカッチョいいメロディが流れ始めましたよ。プールに隣接するオシャレな部屋を歩き回りつつ、グラスに氷を入れ、ペリエを流し込み、ライムをググっとしぼる草刈正雄。あ、このシーンは「オシャレな生活」という記号みたいなもんですから。そして、草刈正雄はシャワーを浴びるのです。もちろん、カメラが背後から延々と尻を写し続けるのは当然すぎるくらい当然です。じゃじゃー。ついでに、どこのクリーニング屋だと思うくらいの、大量のスーツが回転式ハンガーに掛けられた衣裳部屋で、手際よくタキシードを選び出し、着用に及ぶ草刈正雄。とりあえず裸じゃなくなって良かったね。

はい、どどーんとゴージャスなパーティが開かれています。「レディースアンドジェントルメン」とカメオ出演らしい夏八木勲が声を張り上げましたよ。「今夜のプリンセスを紹介します。ミス、クリスティーン・アダムス」。はい、ゴージャスな金髪のお姉さん、クリスティーン・アダムス(レベッカ・ホールデン)がニッコリと微笑みます。「わが社のパーティにようこそ」。

そんな様子を見ていたタキシード姿の草刈正雄に木の実ナナは言います。「あの若さで10億ドルの遺産を独り占め。世界中に10万人の従業員のいるコングロマリットのオーナー、彼女こそ宇宙人だわ」。はい、説明くさいセリフありがとうございました。しかし草刈正雄はすでにレベッカさんのことを知っていたみたいですよ。「3年前、世界選手権のレセプションで会った」という草刈正雄に、木の実ナナは「そういうわけ」とムキーな感じです。さっそく「またお会いできましたね」とか言いつつレベッカさんに接近する草刈正雄。「二人きりで会いたい」「ムリだわ」。おやフラれたみたいですね。

仕方ないのでパーティ後に、木の実ナナと高級そうな飲み屋に行く草刈正雄。どれくらい高級そうかというと、世良譲が普通にピアノでBGMを弾いているくらいです。と、二人のテーブルに「お邪魔していいですか」とレースで3位だったホテル王の息子なジュニアが彼女連れでやってきましたよ。「北野さん、聞いていただけますか。あなたと初めて会ったのは4年前の世界選手権でした。2輪であなたほど速く走るライダーを見たことがありませんでした。それからずっと意識してきました。2輪の世界に入ったのもあなたという目標があったからです。北野さん、今度の最終戦かならず勝ちますよ」。いきなりの勝利宣言に木の実ナナが言い返します。「んふっ。アキオは今度のレースに全てを懸けてるわ。それでも自信がある?」。「ええ。北野さんに勝ったら、もうこの世界には興味がありません」。草刈正雄は渋くキメます。「ステキだね、ジュニア。いいかい。今の君は運がいいだけだ。怖さを知らない。一度か二度、地獄を見なきゃ」。

ということで、家に帰った草刈正雄は、プールサイドにおかれた、壊れたマシーンを触りながら回想モードに突入。それは世界選手権。コーナリング中にコテっと倒れた草刈正雄のマシーンは、ドッカーンと大炎上。草刈正雄はそのまま病院に担ぎ込まれ……。はい、現在に戻ると、草刈正雄が腕の傷が見えるように、すっごい不自然なポーズで座り込んでいます。ああ、この傷なんですね。

チャンチャチャチャ、チャンチャチャチャ。またも「Riding high」のシビレるオープニングが流れ始め、車道のど真ん中をジョギングしてくる草刈正雄が映し出されます。そしてバタフライマシンをガシガシ動かす草刈正雄。腕立て伏せをする草刈正。腹筋をする草刈。クロールで泳ぐ草。バーベルを持ち上げる"く"。最後はロッキーそっくりな感じで公園をダッシュだ。だあー。

はい、何事もなかったかのように、現代美術館を見物しているレベッカさん。等身大のオブジェがアチコチにおいてあります。と、どう考えても草刈正雄くさいオブジェがあるじゃありませんか。「フフフ。大理石に彫りたいわ。でもモデルに負けてしまいそう」とレベッカがオベッカを言うと、ムクリと動いたオブジェこと草刈正雄もニヤリと笑って言います。「僕がルノワールならすぐキミに脱いでもらうな」。トホホ、何言ってんだ。さらに草刈正雄はコッ恥ずかしいセリフを。「僕は泥棒だ。キミのハートを盗みにきた」。

ブロロー。BMWの助手席に乗っているレベッカさん。なんていい人だ。あんなコッ恥ずかしい台詞でも、デートの誘いに乗ってくれるなんて。そのまま海にやってきた二人は砂浜を歩きます。強引にチューをしようとする草刈正雄にレベッカさんは言います。「甘く見ないで欲しいわ。もうコリゴリ、プレイボーイには」。憤然として言い返す草刈正雄。「僕は違う」「それじゃ何なの?ジゴロ?」「あいあむあれーさー」。ああ、バカだ。バカがここにいる。ともあれ、強引にチューを続けようとした草刈正雄は、レベッカさんにピストルで脅かされてスゴスゴと退散です。

こじゃれたカントリー風の建物や納屋が立ち並ぶ一角。そこが草刈正雄のマシーン整備基地。というか、メカニックの雨宮(林ゆたか)や緒方(奥田瑛二)、奥さん(浅野温子)、こどもが住んでいるおうちです。と、そこに草刈正雄のBMWがやってきましたよ。さすがにレースも近いし少しはマジメにやんないとね。もっとも草刈正雄がムンムンしている間にも奥田瑛二はマジメに整備していたらしく「シリンダを後ろ向きにするのはうまくいったみたいだ」とか言ってますが。えーと、それはTZ500を後方排気に改造したってこと?なんかスゴいな。

ま、それはともあれ、奥田瑛二はマジメにやってますが、もう一人のチャンバー担当メカニックな林ゆたかは、頭の中が桃色状態で、仕事が手につかない状態。「今度は本当なんだ」と草刈正雄に言い訳をしています。「ブルース好きだろ、オレ。本物、歌うんだ、そいつ。えへっ」。いや、えへっじゃないから。そもそも君の趣味なんて知らんよ。今出てきたばかりのキャラの癖に。しかし、こと色事となると草刈正雄としては責める資格がコレっぽちもないので、お財布をまるごと渡して、「行ってきな」と言うのです。ありがとう、ドロドロー。ああメカニックはアメ車に乗って出かけちゃいました。

その後、奥田瑛二は元レーサーだったとか。事故で怪我をして足が不自由だとか。浅野温子は、その事故の時18歳で、事故の1時間後にこどもを産んだとか、かなりどうでもいい知識が手に入ったりします。さらに草刈正雄が勝野洋とグラビア撮影に臨むとか、もっとどうでもいい場面を経て、焦点はレベッカさんに。

はあ。味気ないひとりの食事に、思わずため息をついちゃうレベッカさん。と執事が来て言います。「お嬢様。北野さまからお花が届きましたが」。「運ばせて」とレベッカさんが答えると、執事は指をパッチン。はい、使用人さんたちが花を持ってきます。これでもか、これでもか。やり過ぎと思うくらいにお花で満ち溢れるお部屋。レベッカさんは、思わず「ファーンタスティック」。観てるこっちは、恥ずかしい。

パアアーン。2ストエンジンの咆哮。ゼッケン62、草刈正雄のマシンがテスト走行中です。ききーっ。ピットに戻ってきた草刈正雄は言います。「セッティングがバラバラだ」「全部ダメだ」。まあメカニックの一人が使い物にならないんじゃ当たり前ですよね。レースまであと一週間、間に合うんでしょうか。草刈正雄も厳しい顔です。と、スタンドでレベッカさんが見ているのに気づきましたよ。「じゃ、お疲れ」。イソイソと帰り支度をはじめちゃう草刈正雄。えーと、プロ意識とかはどこに。

一方、スタンドで見ていたレベッカさんは、スローモーションで走りながらつぶやきます。「アキオ、マシーンとセックスしているのね」。なんていうか、バカップルだ、この人たち。

画面が変わると暖炉の前に座っている草刈正雄とレベッカさん。草刈正雄は上半身裸で、レベッカさんは草刈正雄のワイシャツだけを羽織っている状態。えーと、おそらくレベッカさんは日本の、それもワケワカンナイ映画で脱ぐ気はもちろんラブシーンなんか撮られる気はなかったんでしょう。なんとなく、ポワワーンな感じで、画面はウヤムヤに。

はい、一戦終えた(と思ってほしい)翌朝。草刈正雄が外を見ていると、ベッドのレベッカさんが目覚めました。「アキオ」「ん?」「夢を見たわ「オーイヤー」「あなたと私が抱き合ってたの。でも最後に」「俺が死ぬんだろ」「アキオ。アイラブユー」。ずずーん。また、謎の暗い海のイメージショット。

草刈正雄の努力は報われたようです。数日後、執事に「パットン。この小切手を届けて」と命令するレベッカさん。それもなんと10万ドルです。レベッカさんは寂しそうにつぶやきます。「アキオ、ドコにいるの」。

はい草刈正雄は謎の真っ赤な部屋でタバコをくゆらせています。横の赤いソファーには真っ裸で横たわるミキモトのお嬢様こと朝加真由美。そして、映ったらマズイ股間を何で隠しているかというと、赤ワインの満たされたワイングラスですよ、奥さん。なんていうか、これってゴージャス?さて、草刈正雄がスタスタと部屋から出ていくと、あらら、ここは豪華ヨットだったようですよ。執事の草薙幸二郎が横シマシャツにジャケット、マドロス帽子というスタイルで、すっかり船長さん気分みたいです。なぜ執事なのに、こんなカッコ。ミキモトの旦那さまに見つかったらドヤされますよ。

草刈正雄が遊んでいる間にも奥田瑛二は仕事をしていたようです。パアアーーン。テスト走行からピットに戻ってきた草刈正雄に奥田瑛二は聞きます。「どう?」「まあな」。浅野温子が横から言います。「どうにかグランプリに間に合いそうね」「いや、まだ問題は残ってる。雨宮は?」。

はい、その雨宮こと林ゆたかは横浜のオシャレなバーにいました。迎えにいった草刈正雄と、赤レンガ倉庫の前で語り合っちゃいます。「オンナがさ。ブルース歌ってるオンナがゴメンって言うんだよ。男がいるんだって。笑っちゃったよ。ぶん殴る前に笑っちゃったよ」。ゆたか、それオンナとちゃう。ただの片思いや。ともあれ、ゆたかはダメっぽいので、草刈正雄は乗ってきたオフロードバイク(DT200)の鍵を無言で渡します。受け取ったゆたかは言います。「俺、アキオといたかったよ。完璧なレースをするためのパーツでいたかった。アキオが一番大事な時に何もしてやれなくて、今度の最終戦がんばってくれよな」。パララン。パララン。名残惜しそうに草刈正雄の周りをクルクル回ったゆたかは、そのまま去っていくのでした。パララーン。

はい、レースウィークに突入しました。SUGOサーキットには、各チームが勢揃いです。決勝前日も遅くまで作業をしている奥田瑛二。いっぽう、奥さんの浅野温子は草刈正雄の部屋にとつげーき。「少し…いていいかな」。そう、明日のレースが終わると奥田一家と草刈正雄の契約はおしまいなのです。「この2年間、楽しかったわ。アキオと一緒にいたかった」。いかにもオチる気満々な浅野温子に草刈正雄は自分語りを始めましたよ。「ガキの頃、親父とお袋が死んでオジのうちで育てられた。下町の修理工場だ」。で、家の手伝いをしなくてはならなかったので、海で泳げなかったとグチる草刈正雄。せいぜい海に行けるとしたら、仕事がヒマな雨の日だけ。「来る年も来る年も誰もいない海で泳いだ」と渋くキメる草刈正雄。なるほど、時々意味ありげに挿入されるショットはそういう意味だったんですね。まあ、だからどうした感がつよく漂いますけど。あ、これで、このシーンは終わるので、さすがの草刈正雄も浅野温子には手をださなかったようです。と言うか、そうであって欲しい。

プープカプー。鼓笛隊が練り歩き、ポリスの恰好をしたハーレー親父たちがパレードをしています。華やかな雰囲気のなか、いよいよこれから決勝戦です。プップー。クラクションを鳴らしながら木の実ナナがポルシェでやってきました。赤ワインで股間を隠す女こと朝加真由美も運転手つきのベンツで到着。そして「ばばばばば」、おお、レベッカさんもヘリコプターから降り立ちましたよ。

レース前のコンセントレーション儀式を終え、グリッドについた草刈正雄。ハアハア。ヘルメット越しに聞こえる荒い息遣い。ドクドク。高鳴る鼓動。木の実ナナ。赤ワインで股間を隠す女。レベッカさん。みんなが見守る中、スタートシグナルが赤から緑へ。一斉にマシーンを押して走り出すレーサーたち。5歩、6歩。エンジンが始動したバイクは白煙を巻き上げてコースを駆け抜けていきます。ゼッケン1の勝野洋。ゼッケン20のジュニア。ゼッケン62のマシンはまだエンジンに火が入りません。「アキオーっ」。こどもが絶叫すると、ようやくゼッケン62は白煙を巻き上げてスタートしました。だいぶ遅れてしまいました。追いつけるのか。

はい、ここからのレースシーンは文句なく素晴らしい。草刈正雄というか、スタントの平忠彦が長身を折り曲げるようにマシンと一体になって走るさまは、問答無用のカッコよさです。

草刈正雄が猛然と追い上げ、レースはゼッケン20のジュニア、ゼッケン1の勝野洋、そしてゼッケン62の三つ巴の戦いになりました。息詰まる戦い。と、その時、ゼッケン62がヘアピンで転倒。

テディ片岡こと伊武雅刀が叫びます。「エブリバデー、リッスン。アンアクシデント。悲しいアクシデントが起こったぜ。北野晶夫、ヘアピンで転倒」。思わず十字をきるレベッカさん。コースマーシャルが草刈正雄のマシンに駆け寄っていきます。と、草刈正雄はガバっと起き上がり、マシンにまたがりました。よいしょよいしょ。長い脚で強引にマシンを前に進めると、ボボッ、ボボッ、パララーン。エンジン始動。そのままレースに復帰です。「ヘイ、リッスン。フェニックスが飛んだ。北野晶夫がサーキットに戻ってきたぜ。あと36週。ゴー」。どうでもいいけど、カタカナ英語でリッスンはやめてけれ。

猛然と追い上げていく草刈正雄。そしてとうとう先頭の2台が見えるところに。「へい、SUGOは燃えてるぜ。空前のデッドヒートにSUGOは揺れてるぜ。ラスト1周。エブリバデー燃え尽きろ。ラスト1周。ゴーゴー」。

この展開に経験の浅いジュニアは焦ったようです。コーナーで痛恨の転倒。そのうえ、いきなりマシンが大爆発というおまけつき。え、なんで最終ラップで、ガソリン満載なのかって。いや、そんなこと気にしちゃいけません。イキオイがあればいいんです。イキオイが。そしてもちろんイキオイがあるのは草刈正雄。コーナーの切りかえしでとうとうゼッケン1の前に出ました。ジリジリと差をつけ、そして最後の直線。馬力で勝るゼッケン1のワークスマシンは、あらためてゼッケン62に迫っていきます。いけるのか。いけるのか。ゴーール。鼻の差でゴールラインを先に通過したのはゼッケン62、草刈正雄のマシンだったのです。

レベッカさんがうれし泣きをしている中、ウイニングランを終えた草刈正雄のマシンに観客が殺到します。うおおお。いや、すごい人数なんですけど。エキストラ何人いるんだ、これは。と、そんな中、ひっそりと救急車に運ばれていくジュニア。いつの間に抜け出したのか草刈正雄は言います。「地獄を見たかい。また戻ってこいよ」。

全ては終わりました。今は観客も去り、静かなSUGOサーキット。トランスポーターのトラック、ゼッケン62のマシン。そしてBMWがサーキットの上に並んでいます。「じゃあ行くよ」と言う奥田瑛二に、草刈正雄は万感の思いを込めて答えます。「2年間、ありがとう」。ブロロー。BMWに乗って去っていく奥田瑛二一家。って、ええっ?BMWあげちゃったの。っていうか、草刈正雄はトラックで帰るのか?と思いきや、そのままゼッケン62のレースマシンに乗って去っていく草刈正雄。たぶん、サーキットから外に出た瞬間、お巡りさんに捕まると思います。

テロップが出ます。
世界選手権ロードレース-500ccクラス- 北野晶夫
第1戦フランスGP リタイア
第2戦オーストリア リタイア
第3戦イギリスGP 15位
第4戦スペイン 6位
第5戦イタリア 2位
第6戦オランダTT 1位
第7戦ベルギーGP
7月2日午後3時11分 スパ・フランコルシャンサーキットにて北野晶夫死亡


大藪春彦の作品である以上、「絶対に」原作の半分は北野晶夫のおちんちんがらみだと思いますが、角川監督は、そこらへんうまくボカして、気持ちのいいレース映画を作ってくれました。繰り返しになりますが、レースシーンは最高にカッコイイです。オンボードカメラの迫力ある映像はシビれます。

もっとも、それ以外の部分に、「多少の」疑問が残るのも事実。
例えば草刈正雄が木の実ナナと一晩を過ごした翌朝のシーン。草刈正雄が窓の外を見ていると、そこに映るのが町なみと高速道路。すると「向こうから」BMWがやってくるのが映り、今度はBMWを運転している草刈正雄のカットに映ります。これはヨクナイ。この場合、BMWの後ろ姿を映し「向こうへと」去っていくようにすると、窓のカットから車中のカットまで視線の動きが一定になり、安定したシーンになると思います。

これ以外にも、おそらくはイメージ重視、カッコよさ重視で、カットを無造作につなげているシーンが散見されて、さすがデビュー作だし、技術的に荒いなあと思ったりする部分も多いです。もっとも、そういう角川監督を僕は嫌いじゃありません。照れずに、キッチリとカッコつけたシーンを撮るのも才能ですからね。観ている方が恥ずかしくなって、悶絶するのも、また良しです。

しかし、ひと言だけ。

どんだけ草刈正雄の尻が好きなんですか。

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