いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】巨人 大隈重信

2008-12-29 | 邦画 か行
【「巨人 大隈重信」三隅研次 1963】を観ました



おはなし
出世の階段を駆け上がった大隈重信は、政変にもめげず、早稲田大学を作ったりして頑張ります(って、ひどい要約)。

大隈重信の生誕125年を記念して作られた映画だそうです。ちなみに、去年(2007)は早稲田大学の創立125周年。なんで、125という中途半端な数にこだわるかというと、大隈重信の持論で、人間は摂生をすれば125歳まで生きられると言ったからだそうです。

ゴーン、ゴーン。知恩院の鐘の音が聞こえます。時は「明治元年」。場所は「京都」。英国公使パークスの行列に勤皇派の志士が切り込んできました。護衛の者たち、特に薩摩藩士の中井弘(根上淳)の力闘奮戦によって、どうにかパークス一行は無事で済んだものの、それで話が終わるわけもありません。

困ったことに、長崎ではキリシタン4千名が捕まるという事件まで起きちゃいました。もう、英国を始めとする諸外国列強は猛抗議の嵐です。太政官のみなさんは、とりあえず真っ青。ど、どーしよう。明治天皇が「誰かこの難局にあたり、各国公使と折衝して時局を収拾する者はないのか」と言っても、みんなはシーンです。……。……。と、そこに伊藤博文(内藤武敏)が立ち上がりました。「畏れながら申し上げます。徴士参与大隈重信なる者、外国事務局判事としてただ今、在勤まかりあります。かの者ならばあるいはこの難局を収拾しうるかと存じます」。井上馨(藤巻潤)も言い出しました。「大隈ならば西欧の文明にもあかるく、異人との折衝にも長けたる者。この際、彼以外の適任者は見当たりません」。要は自分じゃムリムリ、ってことでしょうか。

どどーん。談判の席に座っている大隈重信(宇津井健)。パークスや通訳のアーネスト・サトウ(岡田真澄)といった海千山千の相手に、まったく怯んでいません。

こんな身分が低いやつ相手にできねえよ、と言われれば、「公使閣下、閣下が女王陛下の御名により英国政府を代表すると言わるるならば、不肖大隈もわが天皇陛下の御名により日本政府を代表して、本日の談判に臨んだんである。しかるに、我輩と語るを欲せずと言わるるならば、とりもなおさず閣下は、自らこのたびの抗議を撤回したものと看做さなければならぬが、さよう心得てよろしいか」と切り返します。

キリスト教の信仰を認めろと言われれば、「万国公法においては、他国の内政に干渉してはならぬことになっておる。信仰の問題は内政に属することで外国の干渉を受くべき謂れはないのである」と言い返します。

こんな素晴らしいキリスト教を受け入れないなんてバカぴょーんと罵られれば、十字軍や30年戦争など、キリスト教がきっかけで起こった戦争を列挙してケムにまいたあと、「わが国にはわが国の法律がある」と、一歩も引かないのでした。

チーン。はい時間切れです。みんなお腹がペコペコになったので、談判はなんとなくウヤムヤのうちに終わることに。大隈重信の勝利です。

これを契機に出世の階段をグイグイ登った大隈重信は、奥さん・綾子(坪内ミキ子)も迎え、築地にどーんと屋敷を構えるほどに偉くなったのです。とはいえ、ここは築地梁山泊と言われたほどに、来客の多い家。若手の伊藤博文や井上馨、その他、有為の青年たちが家のあちこちでゴロゴロしているようなスゴイところなのでした。

と、ここで中井弘の奥さんを井上馨が貰っちゃうとか、大隈を暗殺にきた浪人(石黒達也)と大隈が仲良しになっちゃう、さらには、どーせ幕臣上がりだと出世できないから政府の仕事したくないっす、と駄々をこねる渋沢栄一(本郷功次郎)を大隈が説得するなどのエピソードが描かれて、「あの人」が登場です。

福沢諭吉(船越英二)が大隈の屋敷にやってきました。どうやら、大隈と福沢、さらに小野梓など東大卒の有能な青年たちは、国会開設の意見書を作っているようです。もちろん、その背後には盟友ともいうべき伊藤博文や井上馨などが協力していることは言うまでもありません。しかし、そこに黒田清隆(小池朝雄)の開拓使官有物払下げ事件(汚職みたいなもんですね)が起きたのです。
チャーンスとばかりに政府批判の姿勢を強める大隈・福沢一派。しかし、それが藩閥政府の否定にまでつながっては、長州出身の伊藤・井上たちにとって、とうてい容認できるものではありません。ということで、コッソリ大隈排除にむけて動き出すことに。しーっ、おおくまくんにはひみつだよ。

明治天皇の東北巡幸のお供を仰せつかった大隈重信。しかし、その旅先にお友達の福沢諭吉から手紙が届きました。なんと、伊藤・井上が裏切ったと知らせてきたのです。とりあえず、「福沢さん、ありがとう。なあに心配はいりません」とお空を見上げつつ呟く大隈。ぼくは、ぜったいに負けないぞ。

はい、負けました。家に帰ると伊藤博文と西郷従道が、お前はクビと言いにきたのです。ガーン。「しかし、辞表は明日参内して陛下に拝謁してから出す」と、明治天皇との拝謁に一縷の望みをつなぐ大隈。しかし、皇居には入れず、頼みの有栖川宮熾仁親王の家でも門前払いをくらう始末です。もっとも、大隈の動きはまったくのムダではありませんでした。大隈自身はクビになったものの、政府は官有物の払い下げを中止し、10年後に国会を開設することを約束したのですから。
ちなみに、これを「明治14年の政変」と言います。受験生の人は覚えておいてくださいね。

大隈重信は下野しました。まあ、下野っていうとカッコいいけど、要はプーになったワケですね。しかし大隈はメゲません。よし、それなら次の手を打とう。まずは10年後の国会開設に向けて政党を作るんだ。ぽんっ。はい、立憲改進党ができましたよ。あとは学校作るぞ、福沢さんみたいにカッコいい学校作るんだ。ぽんっ。はい、東京専門学校ができました。策謀が三度の飯よりすきな山県有朋(高松英郎)が、ヒト、モノ、カネを絶って邪魔をしようとしますが、家財を売ってでもやり遂げるんであるんである。ちなみに「あるんである」は大隈の口癖です。

山県有朋は、東京専門学校に密偵(スパイ)まで送り込んできました。しかし、学生たちの手で突き出されたスパイを寛大に許す大隈。「我輩の学校に来た以上、我校の学生である」。なんか、スパイと学生たちはウルウル感動していますよ。その横では、学苑の母とも言われることになる小野梓(神山繁)が、ゲホゲホとイヤな咳をしつつ「学校は私の命です」とか言っています。大丈夫でしょうか。まあ、大丈夫じゃないんですけど。

さて、大隈を裏切った井上馨は、不平等条約改正のため、鹿鳴館を作って踊ったりしていたわけですが、とうとう外務大臣の職をぽーんと投げ出しちゃいました。そこで、黒田清隆は仇敵の大隈のところにやってきて、頭を下げます。「早速じゃが、大隈さん。おいは兵隊じゃけん短兵急に言いもうす。おいの内閣に外務大臣として入閣してくだっせ」。国家のためならばと、外務大臣を引き受ける大隈。

しかし、どうにか条約改正の目処がたつと、またも山県有朋に邪魔されたうえ、さらに玄洋社という国粋主義団体のメンバーから爆弾を投げつけられ、大隈は片足を吹き飛ばされてしまうのでした。もっとも、大隈は「いやあ、そのおかげで足のほうに回っとった血が頭のほうに回ってきて、これからはかえって、頭が良くなるだろう」と、ポジティブ・シンキングですけどね。

【受験生のみなさま】映画では、黒田内閣に招かれて大隈が外務大臣になったことになっていますが、大隈が井上の後を襲って外務大臣になったのは「第1次伊藤内閣」ですから、念のため。ガンバレ受験生。

さて、1889年の爆発事件から10数年経った1902年。東京専門学校は創立20周年を迎えました。ついでに学校の名前を早稲田大学に変えることにして、今しも賑々しく式典が行われようとしています。登壇した主賓は伊藤博文。ホントだったらマブダチの福沢諭吉先生に来ていただきたいところですが、惜しくも前年にお亡くなりになってしまったので、まあ、この際、伊藤博文でも呼んどくかってトコでしょうか。「大隈くん、おめでとう」と言いつつ、サクッと、この十年の出来事をかたる伊藤博文。「政治的業績にのみ限るならば、不肖伊藤としても、決して大隈くんに劣るとは思いません。ただし我輩がどうしても大隈くんに及ばぬことがあります。それは大隈くんが、この早稲田大学を作り、育てられたことであります」。うぉーっ、万雷の拍手が巻き起こりました。エッヘンな表情の大隈重信。味方から敵に、そしてまた味方に。さまざまな紆余曲折を経てきた二人の政治家は、今、ここで手を取り合うのでした。

大隈が歌い始めます。「みーやーこのせいほーくー」。一同は唱和します。
♪都の西北 早稲田の森に 聳ゆる甍は われらが母校♪

今(と言っても45年前)の早稲田大学が映し出されます。キャンパスを行きかう学生。留学生。そして、大隈の銅像は今もなお、学生たちを見守っているのです。


やっぱり、「巨人 大隈重信」を演ずるのは、スーパージャイアンツな宇津井健しか考えられませんね。というのは冗談で、大隈重信の宇津井健、夫人の坪内ミキ子は、やっぱり早稲田出身だから選ばれたんじゃないかと思います。

この映画、とにかく演説シーンが多いです。もう、ひたすら演説、演説、また演説。ですから、伊藤博文役の内藤武敏はもちろん、大隈役の宇津井健なんかは、台詞を覚えるだけでタイヘンだったろうなあ、と思いました。そのうえ、エライヒトの演説って、退屈ですからね。観ているほうも疲れちゃいます。ここらへんをどうにかできると、もっと面白い映画になったと思うんですが。

ちなみに、最後のシーンで、みんなが早稲田大学校歌を熱唱しますが、実は校歌が制定されたのは、この式典から5年後の話。なので、ちょっとウソが入っていますね。もっとも、早稲田の卒業生は、ことあるごとに校歌を歌わないと気がすまないので、許せるウソということでひとつ。ぼくも気づくと、映画と一緒に歌っていました。







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【映画】山口組三代目

2008-12-26 | 邦画 や~わ行
【「山口組三代目」山下耕作 1973】を観ました



おはなし
田岡一雄(高倉健)は、持ち前の任侠精神から仲間をかばって仕事を馘になり、途方に暮れていたところ……。

山口組三代目、田岡一雄の自伝を映画化したものです。それも田岡組長が、山口組のトップとしてバリバリ活躍中の段階での映画化ですから、なんていうか東映ってスゴイ。

波止場で田岡一雄(高倉健)が喧嘩をしています。多勢に無勢、棒で襲い掛かるヤクザたちに、下駄で立ち向かう健さん。強い、強すぎます。
「これは、暗黒街を席捲し、全国に四百二十四団体。推定構成員十一万人を擁し、日本ヤクザ史上、最強最大の組織をつくりあげ、任侠道を邁進する男 ? 山口組三代目田岡一雄の野望と血の生々しい自伝である」というナレーションが。なんていうかスゴイな。

さて、父を早くに亡くし、6歳にして母親まで亡くしてしまった田岡少年。親戚中は田岡少年を押し付けあっています。そこにおじさんの一人、河内和四郎(田中春男)が「なんじゃい、ぎょうさん親類や兄弟がおってからに、ガキひとり面倒みるもんがおらんのか」と怒鳴りだしました。それならオレがと、田岡少年を連れて帰る田中春男。しかし、基本的に酔っ払ったイキオイだったので、奥さんに怒られシオシオです。

16歳になった田岡青年(高倉健)は旋盤工の職についていました。しかし、お腹が痛くなった仲間の仕事を代わりに引き受けていたところ、嫌味な監督に怒られてしまったのです。どうも、任侠精神にかける監督です。どりゃー。棒で監督をどつき倒す健さん。「お前は馘だーっ」。

家に帰った健さんですが、継母が健さんの悪口を言っているのが聞こえてきましたよ。健さんの脳裏に、つらかった記憶がよみがえります。メシもろくに食べさせてもらえなかった少年時代。新聞配達で懸命に稼いだ金もすべて取られ、学校に持っていかなければならない金だって、もらえませんでした。そのまま、健さんはきびすを返します。もう、この家には戻るもんか。

繁華街をブラブラしている健さんに、小学校時代の同級生が声をかけてきました。実は、この同級生は山口組二代目の弟さんだったのです。彼の紹介で、山口組のやっているごんぞう(石炭荷役作業者)部屋に入れることになった健さん。小頭のトヨさん(田中邦衛)は、どんぶりメシを腹いっぱい食わしてくれて、健さんは感動のあまり涙します。「わい、よそのヒトに、こんなに親切にしてもろうたこと無いよってに」。

田中邦衛は親切なので、健さんに女遊びも教えてくれました。「男が一人前になる。めでたい門出や。よし、一生懸命にやろう」と独白しちゃったりする健さん。さすが、不器用で真面目な男ですね。ということで、「一人前」になって、「ええもんやなあ」とウキウキ気分で繁華街を歩く健さん。ばしゃっ。おっと、道行く人にドロをかけちゃいました。健さんはスイマセンと謝りますが、その入道みたいにデカイ男は、なんやかやと健さんを許してくれそうにありません。その上、柔道の有段者らしく、健さんを何回も、何回も投げ飛ばすのです。どりゃー。健さん怒りの目潰し炸裂。目をつぶされた男は、ひぇーっと逃げたうえに、巡査なんかのところに駆け込んだのです。

この一件のあと、ごんぞう部屋では、健さんはいっぱしの顔になりました。熊というあだ名ももらい、目潰しの練習に余念がありません。そんな時、健さんの運命を変える、ある事件が起きたのです。それは中央卸売市場建設をめぐる山口組と敵対組織の抗争でした。ケンカがあると聞いて、田中邦衛と喧嘩場に出かける健さん。もっとも、そのときは予想された襲撃もなく、山口組の不戦勝だったのですが、ここで健さんは男を見つけたのです。それは、山口組二代目の山口登(丹波哲郎)でした。まあ、丹波哲郎なので、当たり前ですが、その堂々とした風貌、所作のいちいちが健さんには、カッコよく見えます。俺も若い衆になりたい。健さんは決心するのです。

田中邦衛によると、若い衆になるには「男をあげる」のが必要なそうです。とりあえず、山口組が面倒をみている湊座で、舞台にあがって大暴れをする健さん。どりゃどりゃー。あ、やってきました山口組のみなさんが、怖い顔で。と、ここで普通なら健さんはボコボコにされるところですが、健さんの顔を覚えていた丹波哲郎は、健さんを許してくれたのです。その上、自分の娘婿の古川松太郎(水島道太郎)に預け、行儀見習いという形で、組に入れてくれたのです。雲の上の丹波哲郎に、名前を覚えてもらっていたうえに、組に入れてもらえて有頂天な健さん。よーし、行儀見習いを頑張るぞー。雑巾がけ、まき割り、骨身を惜しまずよく働く健さん。そりゃ、そうです。辛い少年時代に比べれば、こんな三下修行なんて、屁でもありません。途中、伝説の侠客・会津小鉄の若いもん頭だった、いろは幸太郎の息子さんである「いろはのボンボン」(嵐寛寿郎)にも、才能を認められたりして、健さんは順風満帆な感じです。

2年間の修行を終え、アパートに住むことを許された健さん。しかし修行は終わりじゃありません。やっぱり、男気あふれる博打を打たないとね。とりゃー。はい、負けてスッテンテンです。しかし、賭場でひとりの男と出会いました。それは関精義(山本麟一)というナイスガイ。さらに、大長三兄弟の末っ子、八郎(菅原文太)などとも出会い、健さんの周りには、友と呼べる存在がだんだん増えてきましたよ。とはいえ、駆け出しなみなさんの共通点は「金がない」こと。

♪ぜにのないやつぁ、俺んとこへこい。俺もないけど心配すんな♪
健さんはじめ、仲間はみんな金欠状態。もっとも、あったらあったで博打に使ってしまうのでしょうから、オールウェイズ貧乏です。もちろん、服だって質に入れてしまっている始末です。と、菅原文太が「服」を着てやってきました。よっしゃ、と服を借りて出かける健さん。どこかで金を調達してくるよ。

組の事務所に行くと、幹部のみなさんが渋い顔です。山口組が支援しているお相撲さんの玉錦関が、仲間の宝川(関山耕司)に侮辱されたというのです。そのうえ、「山口。ふん、ヤクザがなんぼのもんじゃい」と言ったとか言わないとか。これはチャンス。「喧嘩でっか、兄貴。あの、こんなときに何でっけど、あとで金貸してくんなはれ」と健さんは、兄貴たちについていくことにしたのです。とりあえず、問答無用でドリャーと関山耕司の指を日本刀で切り落とす健さん。これには、兄貴たちもビックリです。

めでたく金も借りられ、山本麟一や菅原文太とご飯を腹いっぱい食べた健さん。その流れで、みんな仲良く、喫茶バーに遠征です。おっと、そこに美人がいましたよ。看板娘のフミ子(松尾嘉代)です。なんか、ウヤムヤのうちに仲良くなる二人。「熊、われフミちゃんに惚れたら承知せぇへんど」と菅原文太が怒っていますが、なあに友情と恋愛はベツなのです。

海員争議が起こりました。不在の丹波哲郎の変わりに、西田の兄貴(待田京介)と田尻の兄貴は仲裁に入ることに。しかし、話がこじれて田尻の兄貴は重症、そして西田の兄貴は殺されてしまったのです。怒りに燃える健さんと山本麟一。どりゃりゃー。組合に殴りこんで、委員長を切り倒す健さんです。はい、そのまま健さんは懲役1年を喰らってしまうのでした。もっとも、これで男をあげた健さんは、出所後、じかに丹波哲郎の若い衆にしてもらうことになりました。言ってみれば、子会社の平社員から、親会社の主任クラスに出世したようなものでしょうか。

めでたく松尾嘉代とも所帯を持ち(もっとも2階に山麟さんはじめ仲間がゴロゴロしてますが)、誰もが手を出さなかった広沢虎造の興行も成功させた健さんは、組の中でも若手の出世頭に。しかし、好事魔多しと言います。ある日、健さんが丹波哲郎の肩をもんでいると、「お前のはクソ力だけやないか。このダボ」と丹波哲郎が怒り出しました。「いや、ダボて。そやから最初から言うてまんがな。下手やて」と口答えする健さん。「そんなに怒りはるんやったら、ちょっとタコつきますけど、本職呼びなはったらいかがですか」「タコもイカもあるかい。このおんどれーっ」。うわっ、丹波哲郎がブルンブルン日本刀を振り回して激怒しています。「誰も止めんな」と怒鳴っている丹波哲郎。えーと、「誰も止めんな」。ハッ、これは。「ヘイッ」と丹波哲郎を止める子分のみなさん。もう、止めて欲しいなら、素直に言えばいいのに。健さんは、一目散にぴゅーっと逃亡です。

逃げも逃げたり、神戸から東京まで逃げてきた健さん。お相撲さんの玉錦関のところに居候です。しかし、思い出すのは親分の顔。ああ、ドツカレてもいいから、オヤブンに会いたい。と、そんな時、山口組がボクシングの興行を打とうとしたものの、東京のヤクザに妨害されて国技館が借りられないという事件発生。ちゃーんす。早速、敵のオヤブン(内田朝雄)のところに乗り込む健さん。敵のオヤブンは、健さんの迫力に打たれたのでしょうか。「分かった。あんた本当に死ぬ気だな。私は打たれたよ」と、「気持ちよく」国技館を貸してくれることになったのです。お相撲さんのとりなしもあって、健さんは無事、山口組に戻ることができました。良かったね。

さて、菅原文太は大長三兄弟の末っ子ですが、ひとつ上の兄貴、政吉(遠藤辰雄)というのが、酒を飲んで暴れるので、山口組でももてあまし気味。とうとう、丹波哲郎の逆鱗に触れ、破門されることになっちゃいました。しかし、この兄貴を「おかあさん」とまで慕っている菅原文太は納得できません。オヤブンに直訴するっ。これを聞いた健さんも、「八っちゃん、わいも一緒に行くわ。八ちゃんの兄貴っちゅうことは、わいにも兄貴分や」と、一緒に行くことに。二人並んで、指をつめようとするのを見て、さすがの丹波哲郎もビックリです。分かった、分かった、今度だけだよ。

しかし、せっかく許されたのに、遠藤辰雄は速攻で、揉め事リターンズ。もう許さんと激怒しまくる丹波哲郎に、健さんは自分が責任をとって来ますと、出動です。説教して、組長にワビを入れさせようとする健さん。しかし、遠藤辰雄はあろうことか、隠し持っていたドスで健さんを刺そうとしたのです。これには健さんも怒り爆発。とりあえず、火鉢で頭をぶっ叩いておいたのです。

大丈夫か兄貴、と駆けつけてくる菅原文太。ううっ、イキナリやられた。仇をとってくれー。よっしゃ、行ってくる。シュタタタ。乗り込んできた菅原文太に、健さんが対峙します。「八ちゃん、斬って、気が済むんやったら、わいを斬れ」と素手で身をさらす健さん。しかし、あろうことか菅原文太は、「おのれをイワして、オヤブンもいてもうたるんや」と言い出したのです。なにっ、俺はともかくオヤブンをやらせるワケにはいかん。仲間から長ドスを受け取る健さん。ジリッ、ジリッ。二人は睨み合います。長い睨み合いです。まだ、睨み合ってます。ジリッ。ジリッ。まだまだ睨み合います。ピクッ。菅原文太が動いた瞬間、健さんのドスを宙を一閃しました。うぎゃー。倒れたのは菅原文太の方でした。

ここは裁判所。判事が重々しく声をあげます。「それでは今から被告人田岡に対する判決を申し渡す。主文。被告人を懲役八年に処する」。丹波哲郎や松尾嘉代、山麟さんが見守るなか、健さんは言うのです。「そんな、軽いのんでええのんでっか」。健さんの脳裏には、菅原文太の最後が浮かぶのでした。


えーと、日本には色々なタブーがあります。まあウカツに書くとコワイので、ここでは書きませんが、あんなことや、あんな人や。ねっ。もちろん、日本最強の武闘派集団の山口組も、その例外ではありません。そんな山口組の三代目組長の自伝を映画化してしまう東映っていうのは、なるほど普通の会社じゃありませんね。確かに、田岡組長を美化しすぎているとか、批判精神がないとか、問題点は山積です。しかし、田岡組長がスッゲエ人物であるのはある意味事実ですし、そんなスッゲエ人物なら映画化しちゃえという、東映の活動屋魂っていうのは、評価してもいいような気がします。

もっとも、実話を元にしているので、物語的なカタルシスは少なめ。普通だと、理不尽な敵に、健さんが耐えて、とことんまで耐えて、そして爆発になるワケですが、そうじゃありませんからね。まさか、実話にない強力な敵を勝手に出しちゃう訳にもいかないですし、ここらへんが実話を元にしたお話の難しいところです。

ちなみに、今回はかなりおよび腰です。やっぱり、題材が題材だけにビビってます、自分。







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【映画】人間魚雷回天

2008-12-24 | 邦画 な行
【「人間魚雷回天」松林宗恵 1955】を観ました



おはなし
大津島の海軍基地では、特攻兵器「回天」の搭乗員たちが、出撃前のひと時を思いおもいに過ごし……。

以前、日活の「人間魚雷出撃す」(1956)を紹介したことがありますが、こちらは、その前年に新東宝で撮られた作品です。さすがに、自身が海軍予備学生として戦争に行った松林宗恵監督なので、そのリアリティは充分。戦争映画の傑作と言っても過言ではないと思います。

「縹渺幾千里。時に波静かにして、時に波高く、太平洋は常に世界歴史の舞台である。戦いの終幕から既に十年。歴史の行方に新たな胎動孕まんとする時、珊瑚礁の深海に、今なお眠る人間魚雷の勇姿は、何事かへの痛憤慟哭を秘めて、永遠の沈黙を続けている。しかし、彼らの苦悩はいつの日にか、誰かによって語られなければならない」

そんな難しいナレーションとともに、海底に鎮没した回天が映し出されます。錆びて朽ちかけている回天の特眼鏡(潜望鏡部分)に、なにか文字が刻まれていますよ。「十九年十二月十二日 一五三〇 我未ダ生存セリ」と書いてあるようです。

「昭和十九年 菊薫る秋」、ここは嵐部隊大津島基地隊です。グラウンドでは、黒板を前に関屋中尉(沼田曜一)が、特攻兵器「回天」の説明中。「搭乗員は回天戦用意の発令と共に、交通筒を通って艦内より乗艇。内部と外部からハッチをネジで締める。それでもって、この世とお別れだ。いいか、泣いても笑ってもそれっきりだ。いいか」。思わず沈黙してしまう搭乗員たち。そう、彼らは少し前まで大学生だった予備学生あがりの士官、そして予科練あがりの少年の顔色を残す下士官たちだったのです。沈黙してしまうのも当たり前ですね。もっとも、説明している関屋中尉も予備学生あがりなので、なんだか痛ましい感じです。

さて、少尉の階級を得ている予備学生あがりの士官は、現在7名。もとは、15人いたそうですが、次々と出撃して、この人数です。代表的な人物の名前を挙げると、朝倉少尉(岡田英次)、玉井少尉(木村功)、岡田少尉、川村少尉(高原駿雄)といった面々です。しかし、訓練中に岡田少尉が航法を誤って、島に激突して殉職してしまいました。岡田少尉の遺影を前にみんなはシンミリです。

「だから早く速力計くらい付けろってんだ」と文句を言う玉井少尉。「乗ってるもんが、自分の速力分からへんなんて」と川村少尉もボヤいています。と、玉井少尉が言ってはならないことを言い出しました。「イヤだ。俺はこんな兵器に乗るのはイヤだ」。みんなはシーンとします。「おい、みんな。イヤなのは俺ひとりなのか」、ますますシーンとする室内。玉井少尉は必死に、「ここへ15人が初めて着任した夜を覚えてるだろ。俺たちは、どうせ助からないんだ。だから、せめて俺たちだけは本当の事を言い合おうって約束したじゃないか」と言い募りますが、みんなは同調しようとはしないのでした。いえ、したくてもできないと言ったほうが正確かもしれません。死を前提に、正直に言い合おうと誓った仲間だからこそ、すでに散っていった仲間を裏切るようなことはできないのでしょう。

「おい、みんな岡田の母校の歌を歌おう」と言い出す朝倉少尉。「白雲なーびくー~おーおーめいじー」。みんなが歌っているのを、横の小部屋で聞いているのは、従兵の大野上水(殿山泰司)と、田辺一水(加藤嘉)。大野上水は言います。「明治の学生さんたちが、俺の店に寿司を食いに来てよ、よくコイツを歌ったっけ」。勇壮な曲のはずなのに、聴いていても寂しくなってきます。

と、そこに陣之内大尉がやってきて、怒り出しました。「俺たち兵学校出の士官たちと違って、学生あがりの貴様たちは、短期教育ではあるが決して間に合わせでないと、いつも言っているはずだ。それが貴様たちの、今の娑婆っけは何だ」。ドスっ、バコっ。みんな殴られてしまいました。

一回は出撃して、遺影も飾られていた村瀬少尉(宇津井健)がひょっこり帰ってきました。目を伏せ、「貴様たちだけは信じてくれ。攻撃発進直前に艇が故障したんだ。ホントだ。ホントに故障したんだ」と訴える村瀬少尉。2回出撃して、2回とも帰ってきた村瀬少尉に、みんなは唖然としています。しかし、それは否定的な沈黙ではありません。むしろ、玉井少尉が「貴様みたいなことってあるんだなあ」と見せた、希望の灯が点ったようなうれしげな表情がみんなの気持ちなのです。

訓練中に、朝倉少尉の回天が沈みました。不調な回天をだましだまし、どうにか浮かび上がることに成功した朝倉少尉は、磯に回天を乗り上げて、思いっきり新鮮な空気を吸います。近くから子供たちの歌う「夕焼け小焼け」が聞こえてきました。と、追躡艇の震洋で玉井少尉と村瀬少尉が救助にやってきました。思わず、「おい、生きてるってことは、文句なしに素晴らしいぞ」と語りかける朝倉少尉。しかし、玉井少尉と村瀬少尉は目を伏せて、「おい、朝倉。出撃だぞ」と言うのです。朝倉少尉は「えっ」と絶句するしかありません。

関屋中尉は、司令に呼ばれています。「どうだ、この際、現役志願をせんか」と、永久服役の現役将校を勧められているのです。どうせ死ぬなら、現役将校で戦死した方がなにかと都合が良かろうという、それは司令の親切心であったのかもしれませ。しかし関屋中尉は「はっ、別に」とそっぽを向くのでした。たとえ死ぬとしても、いや死ぬからこそ、自分は学生あがりの士官でいたい。そういう気持ちだってあります。

特攻隊員たちには、明日の朝までの入湯上陸を許可されました。主計長(丹波哲郎)に連れられて、妓楼に繰り出す隊員たち。しかし、九死に一生を得た朝倉少尉は、俺は上陸しないと言い出すのです。それを聞いて、玉井少尉も上陸しないと言い出しました。多分、死の前日くらいはドンチャン騒ぎではなく、友とゆっくり語り合いたかったのでしょうか。「朝倉、今夜どうするんだ」と聞いてみる玉井少尉。「うん、眠れそうにもないから本でも読むか」。それを聞いて、「よせ、そんなこと」と怒鳴る玉井少尉。なんかアテが外れた気分です。結局、「朝倉、やっぱり俺、上陸するよ」と仲間の後を追うのです。

川村少尉も居残り組です。もっとも、彼の場合、超然としているというか、自分が乗る回天に数珠をかけたりしています。整備兵(西村晃)に「川村少尉はお坊さんだそうですね」と聞かれて、「ああ、龍谷大学の出身や。しかし、これ一発で敵さん、何千人も殺すんやさかい、どう考えても地獄行きやな」と高笑いをする川村少尉。仏の教えと、今の自分の境遇。考えても仕方の無いこととはいえ、皮肉なものです。

居残りの朝倉少尉は、従兵たちが、甲板下士官たちに修正(と言う名の制裁)を受けているのを見かけました。「そんなことで、特攻隊に申し訳が立つと思うか」と、従兵たちを殴っている甲板下士官たち。思わず「待てっ」と朝倉少尉は怒鳴ります。「私は10年海軍で飯を食っております」と、たかが学生あがりの癖に、こっちはベテランだという態度を見せる甲板下士官たち。しかし朝倉少尉は「人間を人間として扱わないこと。それがもし帝国海軍の伝統ならタイヘンな誤りだと、学生あがりの予備士官が言い残して出撃していったこと、時々は思い出してくれ」と言うのです。

控え室に戻り、「従兵。俺のベッドにある本を持ってきてくれ」と命令する朝倉少尉。しかし従兵の一人、田辺一水は朝倉少尉の本を手にとって不思議そうな顔をしていますよ。「どうした」「はい、出撃の日まで、よくこういう本をお読みになれると思いまして」。これには朝倉少尉の方がビックリです。なにしろ、その本はドイツ語で書かれたカントの哲学書だったからです。「貴様はドイツ語が読めるのか」と聞いた朝倉少尉に、田辺一水は召集されるまで私立大学で教授をしていたことを打ちあけるのでした。思わず丁寧な口調になって、「あなたはどこの大学でした」と聞いてみる朝倉少尉。「はい、帝大であります」「じゃ先輩だ。さっ、どうぞ座ってくださいよ」。いきなり、打ち解ける朝倉少尉です。もう一人の従兵、大野上水が召集前の腕を生かして作ってくれた寿司をつまみながら、先輩と談笑する朝倉少尉。出撃前の一夜の過ごし方としては、少し寂しい気もしますが、これはこれでいいのでしょう。

一方、仲間を追って妓楼にあがった玉井少尉ですが、どうも宴会の雰囲気に乗れません。早稲田出身の村瀬少尉が、求められるままに、色紙に「紺碧の空、紺碧の海」と早稲田の応援歌をもじった辞世を書いたりしているのも気に入らないようす。さらに主計長のあてがってくれた娼妓にも「バカ、お前には女としての誇りはないのか。俺は女というものは、もっと美しいものだと思っている」と、怒鳴りつけて泣かしたりして、まあ典型的なイヤな奴になっています。と、そこに恋人の早智子(津島恵子)がやってきました。どこで、どうして玉井少尉の出撃を知ったのか、なりふり構わず玉井少尉を探し出したのです。しかし、ここは妓楼。男と女が一晩だけの契りを結ぶ場所です。「こんなところで、あなたに会うなんて、あんまりミジメだ。ぼくたちはミジメすぎる」と嘆く玉井少尉に、「玉井さん、私だって。あなたの恋人じゃなくたっていいのよ。私だって」と身を投げ出す早智子。「違うんだ。早智子さん、あなたはそんな人じゃない」「いいえ、それで出撃前、あなたのお心が、いくらかでも安まるんだったら、あたし、どんなことだって……」。

夜の海岸。二人の靴が月明かりに照らされています。「早智子さん、許してください」という玉井少尉に、早智子はただ抱きついて、「いいえ」と泣くことしかできません。「まもなく、僕の肉体も魂も跡形なく消え去ってしまうんだ。なんだか不思議な気がするよ。でもやっぱり本当なんだ」。「そうだわ、砂の上なら私にもできそう。見てらっしゃい」と早智子が踊りだしました。月明かりに、早智子のシルエットが浮かびます。ゆっくり、ゆっくり踊る早智子。影がゆっくり、ゆっくり動きます。

「あと3時間しかないんだ」と言う玉井少尉に、「あたしのと合わせて6時間よ」と答える早智子。「そうか、6時間もあるか。ねっ、目をつぶってごらん」「つぶったわ」。二人はぴったりと額を合わせます。「いいかい、僕の言うとおり想像するんだよ」「ええ」「そうだな、ここは江ノ島の海岸にしようか」。二人は手をつないで、人気のない夜の砂浜を歩きます。「もちろん、真夏の太陽がギラギラ輝いているんだよ。夜の砂浜を歩いていた二人の足元が明るくなり、画面は、夏の日差しが輝く砂浜に変わりました。軍服とモンペだった二人は、今はおしゃれな姿に変わっています。暑い日差しの中、一面に広がるビーチパラソル。しかし、不思議なことに人っ子ひとり見えません。「おかしいわ」「だって、これは絶対に実現することのない空想なんだよ」「そうね、絶対実現することのない」。

「そうだな、僕たちは結婚して十日くらいってことにしようか」。玉井青年は美しい早智子を抱き上げて、江ノ島の砂浜を歩きます。愛し合う若い夫婦の二人には、言葉は必要ではありません。画面が暗くなっていきます。そう、そこは夜の砂浜。玉井少尉に抱きかかえられている早智子は、声もなく泣いています。「僕たちは何という時代に生まれたんだろう。ああ夜が明ける」。

隊舎で語り合う朝倉少尉と従兵の田辺一水。横では、枕元に「死なない絶対の方法は、生まれないことだ」と書いた紙を貼り付けた川村少尉が、大イビキをかいて寝ています。「私には、あの落ち着きが。恐ろしいほどの落ち着きがどうしても分かりません」という田辺に、朝倉少尉は答えます。「エライ奴もいるもんですねえ。ああ、いつものように夜が明けていく」。

偉い人の空虚な訓示も終わり、関屋中尉、朝倉少尉、玉井少尉、そして3度目の村瀬少尉が、伊36潜に乗り込んで、最初に出撃することになりました。回天には楠木正成にちなむ菊水の紋が描かれ、「非理法権天」の幟が潜水艦に翻っています。艦上に整列した特攻隊員の4人を代表して、関屋中尉が見送りの人たちに、大声を張り上げます。「慶應義塾大学経済学部出身、海軍中尉関屋武雄ほか3名。回天特別攻撃隊菊水隊として、出発しまーす」。これには、娑婆っけが多いと、関屋中尉を殴り飛ばした
陣之内大尉も「天晴れな娑婆っけだぞぉー」と笑い返すのでした。

伊36潜は静々と出港していきます。それが沖合い彼方に遠ざかるのを見ている早智子。まるで、見えない引力に引かれるように、一歩、一歩と海に入っていきます。腰、肩、そして頭。早智子はやがて、海に消えていきます。

伊36潜は、南洋にある、ビスマルク諸島のアドミラルティ泊地を目指して一路進撃を続けます。そこにいる米軍の艦艇を一隻でも二隻でも沈めるために。無電が入り、別の潜水艦で出撃した陣之内大尉たちは、回天に乗り込むこともかなわず潜水艦ごと撃沈されたようです。「あの人だけは何としても、空母か戦艦に突撃させてやりたかったよ」と残念がるみんなですが、人のことを嘆いている場合じゃなくなってきました。伊36潜は敵輸送船を魚雷で撃沈したものの、護衛駆逐艦に追い回され、今にも爆雷でやられそうです。思わず潜艦長(伊沢一郎)に、「艦長、私をやらせてください」と頼む関屋中尉。しかし、潜艦長は回天を駆逐艦ごときに使えないと、ダメ出しをするのです。とはいえ、爆雷攻撃は続きます。回天を載せているために深度をとれない伊36潜は、このままでは海底の藻屑になるしかありません。「関屋中尉、一号艇回天戦用意。搭乗員乗艇っ」と命令を出す潜艦長。

ハチマキをしめて回天に乗り込んだ関屋中尉。ハッチをしめて、連絡用の受話器をとります。「発進用意」「発進用意よし」「用意。発進」。ザザッ。潜水艦と回天をつないでいた電話線が切れるノイズがして、今や、関屋中尉は完全に一人になりました。息を潜めて結果を待つ潜艦長たち。ズズーン。どうやら、関屋中尉の回天は駆逐艦を葬ったようです。「潜航やめ。浮き上がれ。メインタンクブロー」。

厳しい警戒網を潜り抜け、どうにか伊36潜はアドミラルティ迫地を目前とする海域に達しました。しかし、そこに司令部からの帰投命令が入ったのです。いよいよだ、と緊張の極致にあった朝倉少尉たちは、突然の展開にグッタリ。「村瀬、貴様はこんな気持ちを二度までも耐えてきたのか」と朝倉少尉が焦燥した表情で言えば、玉井少尉は早智子の写真を見たりしています。もちろん、玉井少尉は、早智子が入水したことを知る由もありません。

ともあれ、今回の出撃では回天戦はない。命が少しだけ延びたと気が抜けている3人。そこに、大量のスクリュー音が聞こえてきました。どうやら米艦隊が迫地を出撃したようです。警戒厳重な泊地ではなく、外海に出てくる最中であれば、まさに回天戦にはうってつけです。「昭和十九年十二月十二日。伊号三十六潜水艦、会敵の機会に接し、艦長は今はあえて諸君に行けと命ずる」「はいっ」「回天戦用意っ」。

準備を整え、回天に乗り込む朝倉少尉、玉井少尉、そして村瀬少尉。「計器整合」「敵速18ノット」「よーい、発進」。ザザッ。人間界と自分をわずかにつなぎとめていた、電話線が切れるノイズと共に、3隻の回天は発進します。

しかし朝倉少尉の回天は、いきなりに悲運に。爆雷攻撃でどこかがゆるんだのか、海水がザザ漏れで、回天は海底に着底しました。一方、玉井少尉の回天は空母に、そして村瀬少尉の回天は見事戦艦に突入。敵は轟沈です。

「これより帰途につく」と伊36潜は、危険な海を再び日本目指して航海していきます、海底に突き刺さった朝倉少尉の回天を残して。水位を増す回天の中で腕組みをしていた朝倉少尉は、短刀を出し、特眼鏡に、なにやら刻みはじめました。「十九年十二月十二日 一五三〇 我未ダ生存セリ」。


なんというか、迫力に満ちた映画です。それは反戦や鎮魂という意味においてもそうですし、一本の戦争映画としてみても、すごい迫力です。もちろん、単純な特撮のデキうんぬんではなく、本物の臨場感が凄いのです。なにしろ、まだ戦後わずか10年の時期に作られたものですから、戦争の記憶が遠くなかった時期です。当然、いい加減なものは作れません。

それに、松林監督自身が、予備学生あがりとして海軍にいたことも大きいでしょう。劇中の川村少尉がそうであったように監督は龍谷大学に通っていたので、仏門と戦争というテーマに悩んだ可能性もあります。さらに玉井少尉役の木村功も海軍に。川村少尉役の高原駿雄も学徒出陣。言ってみれば、実際に戦争に行き、劇中の青年たちの悩みを、自分のこととして経験した人たちが作った、「ホンモノ」の映画なのです。

潜水艦の中のシーンも凄いです。もちろん、自分も含めほとんどの人は、帝国海軍の潜水艦内部で、どんなやり取りが行なわれていたかを知る由もありませんが、独特の声調で交わされる命令と復唱は、いかにもホンモノのように見えますし、伊沢一郎の潜艦長も、とてもハマっていました。

もちろん、木村功と津島恵子が(想像の)江ノ島を歩くシーンなど、叙情的な部分も一級のデキです。美しく、そしてとてつもなく悲しい、名シーンでした。もう、この映画については、どこにも文句のつけようがありません。名作です。







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【映画】漂流教室

2008-12-22 | 邦画 は行
【「漂流教室」大林宣彦 1987】を観ました



おはなし
ある日、学校が未来にタイムスリップしたので、さあタイヘン。

少年サンデーに連載された楳図かずおのマンガが原作です。もっとも、連載当時、あまりに怖くて、ぼくは最初の10数話くらいで挫折しちゃいましたけど。それにしても、なんていうか、大林監督はスゴイ監督です。良くも悪くも、自分を持っています。いやホント、嫌になっちゃうくらい。よくぞ、ここまで原作を改変しました。やったあ、これなら、全然怖くないね。

「その朝のことを、僕は一生忘れないでしょう。なぜなら、その朝、ちょっとばかりいい子でなかったばっかりに、僕はそれから先、ずっと後悔することになるのです」というナレーションとともに、シャワーを浴びている高松翔(林泰文)の姿が映し出されます。なんか草競馬(英語歌詞)を歌いつつ、狂ったようにハイテンションなのが気になりますが。シャワーを終えた翔は、そのまま朝ごはんの支度をするお母さん(三田佳子)に背後から接近。「アイラブユー」と言いつつ、乳を揉んだり、首筋を舐めるという荒業に突入。うーん、三田佳子相手にこの所業。いくら子供とは言え、ちょっと恐れ多いのでは。

ともあれ、異常に影の薄いお父さん(小林稔侍)をそっちのけで、喧嘩を始める翔とお母さん。バシッ。「なんだよ、クソばばあ」。ドタドタ。

ビーチクルーザーをかっ飛ばしつつ、翔は学校に。ちなみに、翔はお父さんの仕事の都合で、ロサンジェルスから帰ってきた帰国子女なので、通う学校も、とうぜん神戸インターナショナルスクールだったりします。もちろん、学校での会話は英語で、字幕付きの親切さ。

はい、学校に着くと、そこはオシャレな世界です。キザな生徒のマークが、好きな子のあゆみ(浅野愛子)にひざまずいて靴紐を結んであげていたり、ハンサムなダガート先生(トロイ・ドナヒュー)がBMWのバイクの後ろに、学校一の人気者、みどり先生(南果歩)を乗っけてきたり、ついでに気持ち悪いパン屋さん(尾美としのり)が、みどり先生は美しいと、ブツブツつぶやいていたりするのです。まあ、最後はオシャレでも何でもありませんが。

さて、みどり先生が東京のカレと電話をしています。「あたし、きっとアナタのいい奥さんになります」。と、それを立ち聞きしていた生徒が、ワァオ大ニュース、大ニュースと(もちろん英語で)、クラスのみんなにご注進。クラスのみんなは喜びのあまり、ミュージカルを始めちゃうのです。ハァ? えーと、外人は喜ぶと「必ず」ミュージカルを始めるものなんでしょう、大林監督の脳内では。しかし、そこに異変が。窓の外がピカピカ光り、女生徒の一人がぴゅーっと窓の外に飛んでいったりと、なんだかタイヘンなことに。ずごごご。大地震が発生。きゃーっ。ぎゃーっ。えーと、画面が真っ暗で何がなにやらサッパリですが、ともあれパニックです。

地震も収まり、電話をかけに、みどり先生を先頭に、ゾロゾロと職員室に向かうみんな。おや、ミネヴァ先生がいますよ。ミネヴァ先生、ミネヴァ先生。「イエース」と振り向くミネヴァ先生ですが、顎がパコっとはずれ、口から砂をだだーっと吐き出しつつ、絶命です。おお、そういえば、公開当時、このシーンがCMに使われていたような。懐かしい。ま、それはソレとして、受話器をとっても、電話は不通。「世界の終わりだ!学校なんてクソクラエ!」と一部の先生が、学校から飛び出して行ってしまうなど、なんだか波乱含みの展開になってきました。

そうだ、こんな時は何かたべて落ち着こう。よし、それがいい。ゾロゾロ。おやっ、みどり先生のクラス以外の生徒たちやら、スプーンおばさんみたいな校長先生。それに近所のガキ、失礼、近所の幼児、勇ちゃんもやってきました。よかった、人数が増えて心強いですね。どうも、頼りにならなそうな人たちばかりですけど。

その頃、学校の敷地がゴッソリと消え去った現場では、科学者(高橋悦史)がインタビューを受けている真っ最中。ええ、これはタイムスリップに間違いないのですー。それを横で聞いているのは、お父さんとお母さん。お父さんの小林稔侍が棒読みで、お母さんの三田佳子を慰めると、いきな三田佳子は絶叫しはじめました。「みんなあたしのせいなのよ。あ・た・し・のせいなのよーーーーっ」。えーと「Wの悲劇」かと思った。

気を取り直して漂流教室の方では、幼児の勇ちゃんのもとに、ヘンな化け物が現われました。えーと、可愛いカマキリ? その頭部にイキナリ足が生えているモノを想像してください。色合いといい質感といい、そう外れていないと思います。ま、それはともあれ、勇ちゃんがカマキリくんと遊んでいるのを目撃したみどり先生と翔、そしてあゆみですが、あゆみはただ一言。「何かしら、今のは」。えーと、それでスルーですか。

さて、突然学校が砂の海にポツンと飛ばされ、外部との連絡も取れないという状況に、みんなはキレ気味。しかし、それを上回る大事件が起きたのです。それはパン屋さんの暴走。カフェテリアであゆみとみどり先生を人質に取って、食い物は俺のだぁ、と暴れ始めました。とりゃー。色男のマークが飛び込み、ささっとあゆみを抱きしめます。おっと、翔はフライパンでパン屋さんの頭を殴り飛ばしました。華麗なる連携プレイです。しかし、パン屋さん強し。うがあ。きゅー。あっ、マークが失神しました。翔もグイグイ首を絞められています。「母さん。お母さーん」。ハッ。いきなり目覚めたお母さんはバットを持って現場にダッシュ。エイッ。現場の穴にバットを投げ込みます。シュッ。おお、時間を越えて、翔の手にはバットが。どりゃー。バコン。はい、パン屋さんはやっつけられました。「母さんが助けてくれた」とつぶやく翔。もちろん、三田佳子なお母さんも、両手を広げつつ「生きてるのぉ。あの子ーっ」と絶叫しています。

こんなことがあって、リーダーが必要だなと実感した生徒のみなさん。よしマークがリーダーだぁ、と盛り上がりますが、マークは失神したのが恥ずかしかったんでしょう。無言で外に出て行っちゃいました。えーと、それじゃあ翔がリーダーだ。イェーイ。ムダに盛り上がる生徒のみなさん。さすが外人。えっ、マークですは。一人で外に出て、サッカーボールを寂しく蹴ってますよ。シオシオ。

と、夜になって巨大ゴキブリなバケモノ襲来。キャーッ。ウワーッ。また真っ暗な画面で、どこが西やら東やらな感じですが、ともあれタイヘンです。そんな騒ぎをヨソに音楽室に行って、ピアノを引き始めるみどり先生。先生、そんなことやってる場合じゃ。と、思ったら巨大ゴキブリたちは、潮が引くように去っていったのです。えーと結果オーライ。

この事件をキッカケに、翔に熱視線を注ぐあゆみ。いやいや、これじゃいけないわとでも思ったんでしょうか。砂漠でたそがれてるマークのところに行って、キスのおねだりです。しかし、チューしてくれないマーク。やっぱり失神がよっぽど悔しかったんでしょう。その夜、あゆみはシャワールームで、配給の水を使ってパンツを洗っています。と、そこにやってきた翔。「見てたの。誰にも言わないで」とあゆみは指きりを強制。翔もマンザラじゃなさそうです。「でも女の子はみんなそうよ。体中砂だらけで」と恥ずかしそうなあゆみに、イキナリ翔はハジケました。草競馬(しつこいようですが英語歌詞)を歌いつつ、砂をバサバサ浴び始めたのです。そのスキにあゆみは、イソイソとパンツを穿くのでした。

さて、幼児の勇ちゃんが、カマキリくんと遊んでいるのを、デブの生徒が発見。ワァオ。食っちまおうぜ。みんなもそうだ、そうだと言い始めましたよ。しかし、命は大事だ、と翔は反対です。と、たそがれマークがここぞとばかりに反撃開始です。「翔は第一リーダーとしてうかつだ。ロビン先生たちが逃げたのを知ってるか?」。あんまり関係ないというか、むしろ食い扶持が減ってラッキーだと思うんですが、生徒のみなさんは付和雷同して「リーダーはマークだぁ」と叫び始めましたよ。マークは得意げ。腕組みして、見たこと無いような「上から目線」でエッヘンです。よし、決闘だ。いきなり戦い始める翔とマーク。体の大きなマークが優勢ですが、翔には大和魂があるのです(多分)。蹴られても殴られても立ち上がった翔の迫力に、マークはビビリ入っちゃいました。バコッ、ボコッ。ひー。「アイアムザリーダー」と雄たけびを上げる翔。はいはい。スキにして。生徒のみなさんは、喜びのミュージカルを始めるのです。どうも、外人は興奮するとミュージカルをするようにできているみたいですね。

この後、まったく脈絡もなく女生徒のシャワーシーンが挿入されたり、マイティーチャーことダガート先生が、みどり先生への想いを秘めつつ、「子供たちよ、過去でも未来でもない。現在こそ君らのものだ」とか言いつつ、砂漠の彼方に旅立って行っちゃたりと、ワケ分かんないエピソードがテンコモリです。そして……

はるか彼方に竜巻が見えます。リーダーに返り咲いた翔は、竜巻探検を決意。マーク、君は女の子たちを守るんだ。ニカーっ。うれしそうなマークを置いて、男の子5人で出発です。レッツゴー。しかし、竜巻の近くはタイヘンなことに。スゴイ特撮(もちろんヘボイという意味で)で、ぐるんぐるん飛ばされちゃう翔たち。おお、元の世界が見える。あれは、あれは。あれー。

「僕たちが信じられない体験をしている頃、スクールでもタイヘンなことがおきていました」。そう、ゴキブリの襲撃です。もう阿鼻叫喚な感じ。ヂャーン。みどり先生は、激しいタッチでピアノを弾き始めますが、その時にはすでに、廊下に死体がゴロゴロなのでした。

翔の探検隊が学校に帰ってくると、笑えるほど砂で真っ白な顔になったあゆみやら、ヘロヘロなマークが待ち構えていました。なんと、今朝出かけたばかりなのに、あゆみたちは一月も待ったというのです。まさにタイムスリップマジック。そして、ゴキブリに襲われて、みんなは殆ど壊滅しちゃったそうです。「僕はみどり先生のピアノで救われたんだ」と疲れきったマーク。「それでみどり先生は」と翔が聞くと、あゆみは答えます。「私たちのためにピアノを引き続けたわ。そのうち、いつかピアノは聞こえなくなったの」。えーと、放っておいたんですか。ひどいな。

ポロロン。おや、ピアノの音が聞こえます。なあんだ、みどり先生は生きているんだ。喜び勇んで音楽室に向かうみなさん。うわっ、ゴキブリが。ゴキブリがピアノを弾いているっ。はい、ピアノを弾いたゴキブリはそのまま、どっかに行ってしまいました。ばいばーい。

「僕たちはみどり先生の敵討ちをすることにしました」と翔のナレーション。避雷針を矢にして、巨大クロスボウの完成です。あとは、ゴキブリをおびき寄せるのみ。言いだしっぺの翔は、自分が囮になると言いますが、そこにマークが割り込みます。「Today is my big game」、へいカモーン。ワラワラ。囮のマークに襲い掛かるゴキブリたち。よし、今だ。バシュッ。ウガッ。逃げるのに失敗したマークを突き抜け、飛んでいく避雷針の矢。ばす、ばす。ばす。およそ10匹以上のゴキブリ軍団は、みんなまとめて串刺しです。ほとんど、波動砲なみのイキオイ。あゆみのチューを妄想しつつ、ガクッと戦士するマーク。君の犠牲は忘れないよー。

「僕はリーダーなんかになれる男じゃなかった」とヘコむ翔。しかし、砂まみれでバケモノ顔のあゆみはチャッカリ「私にはあなたの力が必要よ」と慰めてくれるのです。思わず、「きれいだよ、あゆみ。君の涙は、どんな水よりもきれいだよ」とつぶやく翔。ポタッ。翔のロケット(三田佳子の写真入り)に涙が一滴。ピッカー。おおお、ロケットが光りだしましたよ。ぎょえー。空に巨大な三田佳子の顔が。ズゴゴゴゴ。地鳴りとともに、竜巻が出現しましたよ。

あの竜巻に入れば、元の世界に帰れるかも。早速、デブが走りこみます。……。無反応。科学者タイプのメガネが、重すぎるんだと言います。あの竜巻は、最初の竜巻より小さい。だから、もっと軽いモノじゃないと。……。そうだ、勇ちゃんだ。キコキコ。勇ちゃんが三輪車をこぎながら登場。「勇ちゃん、ママのところに帰るか」「うんっ」。翔に渡された三田佳子写真入りロケットを握り締め、勇ちゃんはキコキコと竜巻の中に入っていくのです。ぷしゅー。勇ちゃんはどこかに飛んでいきました。

おやっ、勇ちゃんが可愛がっていたカマキリ頭部くんが、ブクブク泡を出しましたよ。ムクッ。ムクムクッ。グワーッ。うわあ、カマキリ頭部くんはゴキブリくんに大変身。どうみても、10秒くらいの間に、50倍くらい巨大化してるし。ビビるみんなですが、ニューゴキブリくんは、翔とあゆみの肩をポンポン叩いたりしたあと、どこかにスタスタと去っていったのです。それを見て、「いつか、彼らと共存できるかもしれない」とつぶやくメガネくん。えー、そうかなあ。だって、ゴキブリだよ。それもデッカイ。

もう何度来たか分からないけど、また現場に立っているお母さん。「せめて、あの子が立派な大人になった姿を、私、見たかった」と泣き濡れています。ぱっ。画面が切り替わると、笑えるレベルを軽々超えた「巨大な」虹の下に雄々しく立っている少年少女たち。なんかローマ風の白いトーガを着込んじゃっていますよ。「これからもツライことはいっぱいあるさ。でも、みんなで一緒にできるだけ笑おうよ」と言う翔。横に立っているあゆみも言います。「翔。あなたの子供を産むわ。できるだけ早く」。……。……。お父さんは許しません。まだ未成年なのに。

「ぼくらは、この地球を再び美しい、宇宙に誇れるステキな地球にしてみせます。いつまでも見守っていてくださいね、お母さん」。カメラはグングンと高度を増していきます。砂に覆われた神戸。緑のない日本。世界はほとんどが荒廃しているようです。しかし、一部には川が、そう、命の源である水圏が残っているようです。


まず主演の林泰文。大林監督の「野ゆき山ゆき海べゆき」や「青春デンデケデケデケ」で、とてもイイ味を出していましたが、基本的にポワーンとした雰囲気。なんだか、この映画にはぜんぜん合ってないんですけど。なんか緊張感が抜けて癒されちゃう顔立ちだし。

あと、笑えるのが特撮。たぶん、お金をそれなりにかけているんだろうけど、それが結果に結びついていないのが泣けてきます。大林監督のメジャーデビュー作「HOUSE」とほとんど同じですから。
それにしても、ヤルなあ大林監督。もう、こうなったら、どこにでも漂流しちゃってください。

この原稿を書いたあとに、あらためて楳図先生の「漂流教室」を買って、通読してみました。お、面白い。小学生の時は、ただただ怖いだけだったけど、むちゃくちゃ傑作じゃないですか。小学館から完全版が、全3巻で出ているので、興味の有る方はぜひ。一冊1800円と高いけど、それだけの価値はあります。


(いえす、ぼす)

(か、母さん。デカイよ)

(だから、まだ早いって)

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【映画】やくざの歌

2008-12-17 | 邦画 や~わ行
【「やくざの歌」若林幹 1963】を観ました



おはなし
やくざの俊次(千葉真一)は女子大生の紀子が好きになって……。

1時間ちょっとのSP(シスターピクチャ)ですが、当時の人気者・本間千代子や、これが映画デビューの北島三郎、ついでに村田英雄まで出演していて、ちょっと豪華な幕の内弁当みたいな映画でした。まあ、味というか内容はベツとして。

「この先、どっちも、どっちも」「勝負っ」。マージャン屋の2階で賭場が開かれています。中盆をしているのは、新田俊次(千葉真一)。若いですが、これでも一応、早瀬組の準幹部くらいです。

村田英雄の歌をバックにしたタイトルロールが終わると、町にサングラスをかけた一人の男(曽根晴美)がやってきました。「早瀬組の事務所はここか」と、車修理中の千葉ちゃんを蹴るサングラス男。怒りを抑えつつ「あんた、誰だい」と千葉ちゃんが聞くと、サングラス男は「神戸の双葉真や」と名乗るのです。誰だよ、双葉真って。はい、早瀬組の組長(佐々木孝丸)がもみ手をせんばかりに「なんだぁ。坊ちゃんですか」とヘイコラしています。どうやら、神戸の巨大組織・双葉組の組長の息子が問題を起こして、東京の早瀬組でしばらくお預かりすることになったみたいですね。もちろん、千葉ちゃんが曽根晴美とガンを飛ばしあっているのは言うまでもありません。

さて、シマを巡回していた千葉ちゃんは、工事現場の入り口に落ちている女物の靴に気がつきました。靴を持って現場に入ってみると、物陰に女の子がひとり隠れていましたよ。ピーンとくる千葉ちゃん。「履きなよ。いくら取られたんだい」「3千円入ってたんです」「相手はどんな奴だい。チンピラだろ」。紀子という女の子(本間千代子)のために、一肌脱ぐことにした千葉ちゃん。早速、本間千代子を連れてボーリング場に行き、チンピラ(小林稔侍)たちから金を取り返してあげるのでした。「じゃ、あばよ」。

夜の盛り場で、北見三郎(北島三郎)がギターを抱えて流しをしています。そこに「サブちゃん、繁盛してるか」と、白スーツをばっちりキメた千葉ちゃん登場。二人は連れ立って、バーあさぎりに行き、千葉ちゃんが酔客を脅しつけている横で、サブちゃんは「なみだ船」を熱唱しています。唐突ですけど、ほら、歌謡映画だから。

さて、アパートに帰るサブちゃん。しかし、部屋に灯りがついていますよ。誰だろう。おや、妹の本間千代子が来ていました。どうやら、強欲なおばさんから逃げて、お兄さんの部屋に転がり込んできたようです。「あたし、大学止めて働きます。お願いだから、ここにいさせて」。

またバーのあさぎり。曽根晴美が占い師にイチャモンをつけています。そこに「あんた、許してやってくれませんか」と割って入るサブちゃん。えーと、やくざにそんなことを言うとどうなるか。はい、こうなります。「よう、揉んだれや」「へい」、バコッ。ボガッ。ドスッ。サブちゃんの落としたペンダントを拾って、曽根晴美はニヤリと笑っていますよ。そこに、「サブちゃーん」と千葉ちゃんが飛び込んできました。「あんまり子供じみたノサバリ方はやめな」「この野郎、ふざけやがって」。バシュっ。曽根晴美のナイフで、千葉ちゃんは手を斬られちゃいましたよ。危うし、千葉ちゃん。とりゃっ。突然、出てきた男が曽根晴美のナイフを叩き落としました。なんだ、てめえ。うわっ、男の顔が怖い。あまりの怖さにビビって逃げ出す曽根晴美。それも、そのはず。男は伝説のやくざ(村田英雄)だったのです。ありがとう、村田英雄。

怪我をしたサブちゃんをアパートまで送った千葉ちゃん。しかし、そこで本間千代子と再会して、ちょっと胸キュンです。もちろん、本間千代子も、かなり胸キュンな雰囲気。しかし、そんな二人にサブちゃんは複雑な表情です。

本間千代子が喫茶店でアルバイトをしていることを知った千葉ちゃんは、さっそく組長から貰ったお金を握り締めて突撃。飯でも付き合わないか、とデートのお誘いです。もちろん、返事はOK。しかし、せっかくやってきた高級なレストランで、またも曽根晴美に会ってムカムカです。「何かと言うと人にカラミやがって。どっか、他行こうや」と本間千代子を連れて、夜の繁華街に出て行くのでした。そんな二人を、たまたま見つけたのはサブちゃん。ついでにギター片手に「ギター仁義」をフルコーラス熱唱するのは言うまでもありません。

金はあるんだ、と息巻く千葉ちゃんをなだめて、夜の公園でブランコに乗る本間千代子。無駄遣いをしちゃダメ。というより、人からお金を脅し取ったりしたらダメよ。ほら、お金なんかなくたって、楽しいじゃない。しかし、千葉ちゃんにとって、どうも、こういうデートは苦手のようです。「俺がどう生きようと、誰にも文句は言わせねえよ。あんたにもな」とスネまくり「あばよっと」と走っていってしまうのでした。

アパートに帰った本間千代子を、怖い顔で待っていたサブちゃん。「紀子。お前、俊次の兄貴が好きなのか。さっき、盛り場を一緒に歩いていたようだが。兄貴はやくざなんだからな」と怒り出しましたよ。本間千代子は「俊次さんとは、もう会いません」、さっきお別れしたんです、と寂しそうに答えるのでした。

ぶろろー。車で本間千代子の女子大に乗りつけた千葉ちゃん。さすが、脳天気です。お別れしたなんて、これっぽっちも思っていなかったみたいですね。「こないだはゴメンよ。あんな口をきいて」とシャイな笑顔を見せる千葉ちゃんに、本間千代子が勝てるわけもありません。二人は車に乗って、海までぶろろー。

波打ち際を笑いながら走る本間千代子。それを目を細めつつ見ていた千葉ちゃんは言います。「俺、こないだ公園であんたに色々言われて考えたんだ。だけど俺な、やっぱり今の生活しかできねえんだ」。しかし、本間千代子は、「俊次さん、お願い。今の道から足を洗ってください。あなたの力をもっと正しいことに向けてください。あなたはそれができる人です。私信じてます」と澄んだ目で言うのでした。うがっ、まぶしすぎる。「信じてる。この俺をか」と、またまた波と戯れる本間千代子をセツナク見つめる千葉ちゃん。「幸せにな」、ズダダ。車に乗り込み、本間千代子の靴やらカバンやらを投げ捨てた千葉ちゃんは、車を走らせます。もちろんBGMは演歌(byサブちゃん)なのは、シツコイですが言うまでもありません。

「ただいま」。アパートに帰ってきた本間千代子を怖い顔で睨んでいるサブちゃん。「紀子っ。お前、俊次の兄貴と車でどこに行ってた」。馬鹿っ、ばしっ。本間千代子は叩かれてヨロヨロ倒れていますよ。「紀子。これからは絶対、あいつと付き合っちゃいかんぞ」「俊次さんが、好きなんですーーーーっ」。シクシク泣き続ける本間千代子です。

サブちゃんは千葉ちゃんのところに勢い込んで出かけます。「兄貴。あんた、妹をなぶりものにしてるだけじゃないのかい」と、あんた呼ばわりで、まくし立てるサブちゃん。「うるせー。お前の妹になんか手をつけるもんかい。あんなイイ娘はな、俺と釣り合いが取れねえぐらいは、俺がいちばん分かってらい」と、千葉ちゃんは心の中で泣くのです。はい、千葉ちゃんは、その約束を実行するために、伝説のやくざな村田英雄のところに出かけました。この村田英雄は伝説の彫り師でもあるのです。「お願いだ。男としてどうしても踏ん切りをつけたいことがある」と刺青を頼む千葉ちゃん。しかし、村田英雄は生ける伝説なので、「おめえは、自分さえその気になりゃあ、何事もやりのけ男だ」と、どうしても刺青を彫ってくれないのでした。

突然ですが、曽根晴美が行きがかりで人を刺し殺しました。しかし、あわててナイフやらサブちゃんから奪ったネックレスを落としていったので、このままだと警察に捕まってしまいそうです。どーしよう。ということで、早瀬組の組長に泣きつくことに。うーむ。困ったことをしてくれましたねえ、坊ちゃん。そうだ、サブちゃんのせいにしちゃえ。そうだ、それがいい。早速、サブちゃんが事務所に呼び出されます。おい、お前が殺したんだろ。ネックレスが落ちてたっていうぞ。ほら、自首しないと妹がタイヘンなことになっちゃうよ。いくらサブちゃんでも、妹をネタに脅されては抵抗できません。分かった身代わりに自首をしようじゃないか。「その代わり、ひとつ条件がある」「俊次の兄貴を、この組から解放してやってくれ」。

そんなこととは露知らず、ヤケ酒をあおっている千葉ちゃん。そこに占い師がサブちゃんからの手紙を持ってきました。「兄貴。紀子は兄貴を愛している。紀子の為に足を洗ってくれ。頼む。三郎」。すれをグワッとした目つきで読む千葉ちゃん。BGMはもちろん、伝説の男、村田英雄です。

事務所で立ち聞きをして、全てを知った千葉ちゃんは、曽根晴美のマンションに潜入。ガサゴソ。ガサゴソ。あった。血の着いたナイフとシャツが引き出しに突っ込んでありました。よっしゃ、これでサブちゃんを。しかし、振り向いた千葉ちゃんが見つけたのは、逆光に照らされた曽根晴美(ピストル付き)だったのです。しまったぁーー。しかし、そこは千葉ちゃん。隙をみて、とりゃあ。曽根晴美が千葉ちゃんに勝てるわけもありません。

曽根晴美を警察に突き出したあと、リンボーダンスを見物している組長のところに出かける千葉ちゃん。「社長。長い間、お世話になりました」、ほら一応仁義は切っておかないとね。もちろん組長が、はいご苦労様でした、とか言うわけもなく、顔をつぶした千葉ちゃんは、そのまま拉致監禁です。

バーナーで背中をじゅうじゅう焼かれたりしている千葉ちゃん。曽根晴美のパパも神戸からやってきて、息子を逮捕させた千葉ちゃんに怒りの銃口を向けます。と、千葉ちゃんは「やられてたまるかい」と大ジャンプ。うりゃあ。千葉ちゃんは拾ったピストルで応戦。なんかイキナリ銃撃戦に。カチッ、カチッ。げげっ、弾丸切れだ。しかし、そこに釈放されたサブちゃんが突入です。兄貴、ほらピストルだ。ありがとよ。バーン、バーン。ピーポーピーポー。おお、警察もやってきてくれました。続々と悪いみなさんは捕まっていますよ。「サブちゃん、ありがとよ」「兄貴、俺たちこそ、あんたのお陰で救われたんだ」。本間千代子もやってきました。「俊次さんっ」「やるぜ、紀ちゃん。俺もこれから」。ニカッと笑う千葉ちゃんの笑顔がステキです。あれ。あれれ。なんか参考人ということで、警察官に引っ張られパトカーに押し込まれる千葉ちゃんとサブちゃん。ピーポーピーポー。走り去っていくパトカーを本間千代子が追いかけていきます。


なんていうか、ドラマがないですよね。もっと、タメが欲しいというか、男汁あふれる展開にならないもんかなあと。まあ、サブちゃんの歌と、村田英雄のデカイ顔があれば、それでOKということなのかもしれませんが、それにしてもアバウトすぎる。これが山下耕作監督あたりだったら、むせ返るような「男のドラマ」を作ってくれたんでしょうけどね。

まあ千葉ちゃんに関しては、まだまだペーペーの頃ですし、後に見せる野獣っぷりまでは期待しませんけど、もう少しハジけて欲しかったと思いました。ちょっとオトナシ過ぎです。「美は乱調にあり」と言ったのは瀬戸内寂聴さんですが、千葉ちゃんが乱れっぱなしになるのは、もう少し先のオハナシのようです。







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【映画】君は海を見たか

2008-12-15 | 邦画 か行
【「君は海を見たか」井上芳夫 1971】を観ました



おはなし
仕事にかまけて家族を省みなかった増子一郎は、息子の正一が不治の病にかかったことから……。

倉本聰の脚本で前年にテレビドラマ化されたものを、大映で出演者を変えて映画化したものです。そのため、テレビドラマの名残なのか、尻切れトンボなエピソードがあったりして、いまいち分かりにくい部分がありました。もっとも、倉本節は健在。倉本脚本のファンには楽しめるんじゃないでしょうか。ぼくですか、ぼくはそうでもありません。

「これ、何の絵」「うみ」「増子くん」「はい」「どうして、これが海の絵なの」。そんな会話をしている先生(中山仁)と、小学生の増子正一(山本善郎)くん。先生は、正一くんが「暗い」海底の絵を描いたことが気になっているようです。まあ、普通に考えれば、それが「個性」だろと思わないでもありませんが、まあいいや。

「増子くん、クラスのみんなはね、海の絵って言ったら、みんな海岸の絵を描いたよ。もっと明るい、海岸の絵を」
「僕のパパは海底でお仕事をしているので」
「僕の見たときは暗かったので」
「ずっと真っ暗で怖かったので」

なんか、いかにも倉本脚本な雰囲気が漂ってきました。

さて、正一くんのお父さん、増子一郎(天知茂)は大和重工の技術者。奥さんを数年前に亡くしたので、正一くんの面倒は、同居している実の妹の弓子(寺田路恵)に見てもらっています。もっとも、お見合いで再婚が決まっていて、結婚を機に、新居を建築中なんですけどね。目下の、一郎の仕事は高知の海中展望塔と建設。仕事が忙しいというか、むしろ完全にワーカホリックの一郎は、夜も昼もなく、日曜日もつぶして、頭の中は仕事のばかりです。

そんなお父さんに、正一くんがキレました。新しい家の子供部屋は、自分が設計してもいいとお父さんから言われたのに、お父さんは生返事ばかりで、正一くんの描いたせっけいずも見てくれないのです。まあまあ、お父さんも忙しいんだから、となだめるおばさんの弓子。しかし、正一くんは反論します。

「僕はただ、新しく建つ、僕の部屋は自分で設計していいと言われたので」
「設計図を描いたら、いつでも見てやると言われたので」
「だから描いたので」
「一生懸命に描いたので」
「そしたらパパ。見る見ると言って、いつまでも見てくれないので」
「それとこれとは話が違うので」

なんで、「のでので」言うのが好きなんでしょうか。

さて、日曜日をつぶして、高知の現場にやってきていた一郎のところに、弓子から電話が入りました。「正一くんのことなんだけど、明日学校休んでいいかって。ううん、少し熱があるみたいなの」。学校を休むなら病院に行かせろと言って、電話を切る一郎。さて、どうなるんでしょう。

近所の病院では、お医者さんが難しい顔をして、「一度、大学病院かどこか大きなところで精密検査をなさった方がいいですね」と言い出します。ビックリした弓子は、正一くんを東亜大学の付属病院に連れて行きました。検査のあと、「正一くんのことですが、入院なすった方がいいと思います」と言い出す木口博士(内藤武敏)。どうも、正一くんの腎臓に、なにか異常があるようです。とにかくお父さんをすぐ呼んでください、という木口博士ですが、弓子が連絡を取っても、一郎はなんやかやと理由をつけて高知から帰ってこないのです。

ようやく病院にやってきた一郎に、木口博士は宣告します。「早速ですが、簡単に病状を説明します。正一くんの病名はウィルムス腫瘍と呼ばれるものだと思います。腎臓にできた腫瘍です」。このウィルムス腫瘍というのは、自覚症状の出にくい病気だそうで、発見されたときには、すでに手遅れになっていることが多いそうです。そして危険へのサインは、咳やタンが止まらなくなること。もしくは血尿が出ること。、もそういった症状が出たら、「3ヶ月持てばいいと思います」と木口博士は言うのでした。

ガーンとショックを受けた一郎は妹の弓子にあたります。「どうして、もっと早く気づかなかったんだ」。しかし弓子から「正一、兄さんには2ヶ月前に言ったそうよ。お腹にヘンなグリグリができたって。兄さんはその時、仕事の本を読んでいて、返事も何もしなかったそうだわ」と言い返され、固まってしまうのでした。

正一くんの左腎臓摘出手術が行われます。イライラとタバコを吸いながら待つ一郎と弓子。良かった、とりあえず手術自体は無事に成功したようです。そのまま、正一くんの枕元についている一郎。しかし、夜中に目覚めた正一くんは、「おばさんは」「弓子おばさんにいて欲しい」と言い出すのです。「じゃあ、今おばさんに電話してきてやるよ」と言いつつ、トボトボと病院の階段を降りる一郎。思わず、廊下でタバコを吸っちゃいます。

検査の結果、肺の影が大きくなっているようです。恐れていた肺への転移があったようです。「これからは、むしろご家族との相談になります」と言う木口博士。あと3ヶ月の間、家で家族とノビノビと暮らしたほうがいいんじゃないか。正一くんの喜ぶことをしてあげてください。そう言われても、一郎は何をしていいのか、分かりません。なにしろ、今まで、仕事仕事でろくに正一くんの面倒を見ていないし、そもそも正一くんに何をしてあげたらいいのかさえ、分からないのです。

ということで、一郎は小学校の先生のところに相談に行きました。「先生、私は恥ずかしながら、これまであいつに何もしてやっていません。ろくにユックリ話をしたこともありません。ですから、その3ヶ月に何をしてやったらいいのか、何をすれば子供が喜ぶのか……」。ともあれ、家を建てるのを延期するので300万円が浮く。これを正一くんのために使いたいと言う一郎。しかし、先生は、正一くんが描いた海の絵の話をして、「ぼくは驚いて正一くんに尋ねました。君は本当に海を見たことがあるのか」と答えるのです。

なんだか、問題の解決方法が見つかったような、見つからないような。うーむ、と考え込む一郎。とりあえず、できることからと言うことで、タバコを吸いつつ退職願を書くのです。そして、その日以来、一緒に釣りをしに行ったり、一生懸命に正一くんとの隙間を埋める作業に没頭するのでした。

そんなある日、建築会社から自宅の建築延期の書類が届きました。これどういうこと、と一郎に詰問する弓子。一郎はタバコを吸いつつ、「事態がどう変わるか分からないのに」と答えます。カチーン。「どういう意味。3ヶ月先に正一がいないなら、子供部屋は最初から作らないっていう意味。正一の部屋はいらないっていうこと」と金切り声をあげる弓子。これには一郎もキレます。「そんなこと、誰が、いつ言った。俺はただ先のこと、想像しただけだ。ウチが建った日に、子供部屋があって、もしそこに正一がいないとしたら。正一がいないのに子ども部屋があったら、どんな気持ちかと思ってみただけだ。その部屋を見るたびに俺はいったい……」。

切羽詰った一郎は、弓子の知り合いの新聞記者に名医を紹介してもらうことにしました。ふむふむ、ウィルムス腫瘍の権威は、一人は東京の大学病院に、もう一人は大阪の病院にいるそうですよ。まずは、東京の大学病院に行ってみましょう。

しかし、尋ねた先の大学教授(中村伸郎)は、すでに正一くんが東亜大学で手術を受けたと聞くと、露骨にイヤな顔。一郎がトコトン食い下がっても、治療をしてくれるとは言ってくれなかったのです。それならと、今度は大阪の病院に向かう一郎。しかし、着いてみると、目当ての先生は一昨日亡くなったと言うじゃありませんか。ヨロヨロになる一郎です。

こうなったらと、電車の窓から見た「私は指圧でガンを治した」といういかにもインチキくさい療法を試そうとする一郎。弓子は「正気なの、兄さん」と一郎を止めようとしますが、一郎は「やらないで分かるか」「うるさいっ」と怒鳴り返すのです。テーブルから落ちて砕け散る金魚鉢。ガチャーン。二人は、そんな様子をドアからそっと正一くんが覗いているのに気づきもしません。

取り乱している一郎は、今度は主治医の木口博士のもとに。
あと5日で手術から3ヶ月。もしかして、正一の病気は治ったんじゃないでしょうかと、聞きに行ったのです。しかし、「助かる望みを考えてはいけませんか」と聞く一郎に、木口博士は「お考えにならない方がいいと思います」と冷静な答え。時間の前後はあるとしても、やがて肺に転移したら、苦しむようになる。そうなったら、麻薬で苦痛を抑える治療をするしか、手はないというのです。「先生、そういう患者を生かしておくことが、本当の意味でのヒューマニズムでしょうか」と一郎は抗議します。えーと、この台詞はないような気がします。僕にも子供がいますけど、同じような状況で「本当の意味でのヒューマニズム」がどうしたなんて発想はでないんじゃないかなあ。インチキ療法に引っかかることはあるかもしれませんが。

朝、団地の窓から、近所の小学生たちが元気に通学していく姿をタバコをくゆらせつつ見ている一郎。しかし、弓子が「正一が布団から出ないの」と言うのを聞いて、ビックリ仰天。どうした、大丈夫か。「パパ。僕まだ病気治ってないんでしょ」「ど、どうして」「ウィルムス腫瘍って、どんな病気」。ひたすらトボケまくる一郎。しかし正一くんも、パパが優しいのはオカシイ、それにパパは仕事に行ってない、などスルドく突っ込んできます。むむむ。「正一、じゃ何か。お前はパパが優しくすることを、いつもそんな風に考えていたのか。お前はパパが、弓子おばさんが、嘘をついていると思ってたのか。いつもそんな目でパたちを見てたのか。正一、パパ悲しいよ。パパはそんな目でお前から……」。「パパごめんなさーい」うわーん。えーと、論破してどうするんだと思いつつ、一郎は提案します。「正一、パパと海に行こう。パパの仕事場の高知の海に……」。

高知に着くと、一郎は現場作業員の人たちから、主任さん主任さんと大歓迎。もちろん、息子の正一くんも「よく来たぞ、ぼっちゃん」と歓待されて、エッヘンな気分です。すごいぞ、パパって偉かったんだ。

夜、近所の旅館に泊まった二人。一郎は潮騒の音を聞きながらタバコをふかしています。と、正一が「パパ、ここの海スゴイね。透き通ってたね」「僕が死んだら、ねえ、ああいうとこに行くのかな」と言い出しました。固まる一郎。しかし、気を取り直して言います。「正一。お前はまだ若い。これからなんだ。お前はもっと、将来のこと考えろ」。「パパは考えてる。僕の将来」と目を輝かせる正一。「当たり前だ」とイキオイで答える一郎。えーと。「まず来年の春。お前は中学に入る」。えーと、考えろ、考えろ。「中学に入ったら運動部に入る」「サッカー部だぁっ」。おい、サッカーが好きだなんて聞いてないぞ、とあわてる一郎ですが、「よし、じゃあお前はサッカー部に入る」と続けます。おや、実況が聞こえてきました。未来の全日本の試合。アナウンサーの声が響きます。「真ん中には増子が待っています。シュートーッ」。想像して、一郎は寂しくなってしまいました。

「それから、お前は高校に入る。高校に入っても、サッカーをやり続ける。勉強なんてできなくてもいい。お前は大きくなり、背もパパくらい高くなる。それからお前は大学を受ける。勉強なんかする必要はない。名門校なんか関係ない。浪人することもぜんぜんない。お前はその時のデキに応じた、最低の大学に入ってくれればいい」

画面は船の上に切り替わります。息を呑む正一くんの前で、颯爽とスキューバをつけて海に潜っていく一郎。心配そうだった正一くんの顔が、やがてお父さんへの尊敬の念にあふれてきます。

「大学に入って、のびのびやる。そしてお前はやがて二十歳になる。二十歳になったら、お前はパパとバーに行く。バーで俺たちは一緒に酒を飲む。パパとお前は二人だけで話す。お前はその時、恋をしている。お前ははにかみながら、その少女のことをオズオズとパパに切り出してくる。その娘はキレイだとお前は言う。気立てのいい娘だと、お前は言う。会って欲しいとお前は言う。そのときパパは。そのときパパは……」

海の中で、誰にも気づかれないように一郎は泣くのでした。

現場の人たちが開いてくれた心づくしの宴会に出ている一郎と正一くん。と、そこに弓子から電話が入りました。弓子の言うには、看護婦さんから正一の病気は治ってきているんじゃないかと言われたそうです。うんうん。それで。希望の灯が点ったような気分になる一郎。おや、トイレに行った正一くんが「パパっ、パパっ、ちょっと来て」と呼んでいますよ。「ああ今行くよ」と答えつつ、弓子の言葉を一言も聞き漏らすまいとする一郎。

「パパ、見てよ。ぼくのオシッコ、すごくキレイなんだ。真っ赤なんだよ」

驚愕に一郎の表情が固まり、画面が真っ赤になっていきます。

正一くんの葬式も終え、婚約者とも別れ、さらに弓子は大学の寮に入り、一郎は一人きりの団地に戻ってきました。ポストには小学校の先生から封書が届いています。正一くんの思い出について触れた手紙には、さらにこう書いてありました。「ここに一枚の絵を同封いたします。正一くんが高知から、私に手紙と一緒に送ってくれたものです」。絵を見る一郎。その絵には、かつて描いた真っ暗な海ではなく、燦々と降り注ぐ陽光に照らされた、真っ青な海の光景が描かれていたのでした。「高知の海は真っ青で、お日さまがギラギラと輝いています」という正一くんの声が聞こえます。砂浜を走る正一くんの姿を思い浮かべて、一郎は少しだけ泣くのでした。


難病の子の父親が天知茂という段階で、すごい映画だなあと思ったのですが、天知茂の演技自体はとても良かったと思います。持ち前のクールな顔が、悲しみにゆがむところなどは、とても見ごたえがありました。あと、天知茂が息子の将来を語るシーン。あそこも、見ていてグッときます。

しかし、テレビドラマを映画に仕立て直したせいか、ヘンに冗長な部分と、駆け足の部分が混在していたりするのが難点でしょうか。あとは、いかにも倉本脚本な、「~ので」を繰り返す部分、それにヘンなところで理屈っぽい部分が、僕はマイナスだと思いました。もちろん、倉本聰の大ファンなら気にならないでしょうが。

あと、全編を通して、めったやたらに天池茂がタバコ(ハイライト)を吸いまくるのは、「時代だなあ」と思う部分。観ていると、こっちもタバコを吸いたくなって困りました。







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【映画】きけ、わだつみの声

2008-12-12 | 邦画 か行
【「きけ、わだつみの声」出目昌伸 1995】を観ました



おはなし
明治大学ラグビー部の鶴谷勇介は、国立競技場で試合中、いきなり過去にタイムスリップ。昭和18年10月21日のそこでは……。

いろいろ言いたいことはあるのですが、まず一言。なんでそうなるの。


お客さんの入っていない国立競技場で、明治大学と帝京大学がラグビーの試合をしています。と、フィールドを走っていた鶴谷勇介(緒形直人)に、「回せ、回せ」という声が聞こえてきました。声のした方を見ると、ギョッ、モノクロな選手が走っているじゃありませんか。さらに、もう一人。そしてまた、もう一人。「誰だお前たち」と尋ねる緒形直人に、「俺も明治大学のラグビー部だ」「俺は早稲田だ」「東京大学だ」と、口々に答えるモノクロな三人。「50年前、俺たちはこの競技場にいたんだよ」。

ハッ。気づくと緒形直人は降りしきる雨の中、行進をしている学生の中に紛れ込んでいました。そう、時は昭和18年10月21日。場所は国立競技場の前身、明治神宮外苑競技場。出陣学徒壮行会の場に緒形直人はいたのです。周りを見れば、明治の勝村寛(織田裕二)、早稲田の芥川雄三(仲村トオル)、それに東大の相原守(風間トオル)といった面々も行進をしています。思わず、織田裕二に「これは何だ」と聞いてみる緒形直人。「戦争に行くんだ」「何の戦争だ」。織田裕二はヤレヤレといった風に「はぁ。アメリカや中国と戦ってるんだろ」と答えます。なんだか、トンデモないところに、緒形直人はタイムスリップしてしまったようですね。

まあ、それはともあれ、各人は入営のため、各地に帰郷していきました。急きょ迎えた新妻に、指一本ふれず出征していく織田裕二。結核の恋人を想いつつ、母(佐藤友美)と妹(石橋けい)に送られ故郷を旅立つ仲村トオル。実力者の父(佐藤慶)に反発して、幹部候補生の試験を受けることを拒否する風間トオル。しかし緒形直人だけは、「お父さん、ぼくは軍隊なんかには行かない」と赤紙(充員召集令状)をクシャクシャにしてしまうのです。

織田裕二「少尉」と、風間トオル「一等兵」はフィリピンに向かう輸送船の中にいます。しかし、フィリピン近海はすでにアメリカ軍の勢力範囲。乗っていた輸送船はあえなくボカチンを喰らい、みんなは海に投げ出されてしまうのでした。
命からがら、砂浜に上陸した織田裕二や風間トオルたち。しかし、陸地に着いたからといって安心はできません。ほら、米軍機が機銃掃射をかけてきましたよ。ウグッ。足を撃たれる風間トオル。しかし、織田裕二は得意の俊足を生かして、猛ダッシュ。ズダダダ。迫る12.7ミリ機銃弾をかわし切って「トラーイ」とくぼ地に飛び込むのです。多分、織田裕二は時速200キロくらいで走れるんでしょう。

そのまま、生き残った僅かな部下と野戦病院に行く織田裕二。風間トオルは、すっかり看護婦の津坂映子(鶴田真由)と仲良しになったようですが、小隊長の織田裕二としては所属部隊が壊滅し、何をしたらいいのか、途方に暮れてしまいます。

さて、海軍に入った仲村トオルに目を向けましょう。同じ政治経済学部のお友達と一緒にパイロットになったものの、どこかの神社の鎮守の森で、いきなり司令(奥田瑛二)から、「本日、特別攻撃隊に志願する者を募る」と言われてガーンです。俺たちが救わなきゃいけない祖国ってナンだろう。母や妹、そして、この美しい山河を守るためならともかく、国ってナンナンダ。とても悩んでいます。それにしても、なんで森で、そんな話が出るのか不思議です。もし笠原和夫の脚本ならば、ああ、そういう事実があったんだなと納得するんですが、脚本は「あの」早坂暁ですからね。なんか洋画「パールハーバー」で、幔幕を張り巡らし戦国時代の軍議さながらに会議をやっていたシーンを思い出しちゃいました。

一方、徴兵拒否をした緒形直人はどうでしょう。家に憲兵(石橋蓮司)がやってきて、「日本中がお国のために戦っているのに、この家は徴兵忌避者を出した。非国民の家だ」とちゃぶ台を蹴り飛ばしています。さすがに、これでは家に隠れていても見つかりそうです。ということで、逃亡を決意。小船に乗って、艪をこぎつつ「国の、国の外に出てやるーっ」と叫んでいますが、ここは瀬戸内海。ここから、小船に乗って外国に行くのはタイヘンそうですね。そのため、とりあえず、瀬戸内海に無数に存在する無人島のひとつに上陸した緒形直人は、そのまま野生の生活に突入です。しかし、そこにも石橋蓮司たちが捜索にやってきました。山狩りというか島狩りをされて、やむなく泳いで逃げ出す緒形直人ですが、明日はどっちだ。

野戦病院に、近藤中尉(遠藤憲一)率いる一団がやってきました。本来は、一部隊とか一隊とか言えばいいんでしょうが、ほとんど山賊みたいな感じなので一団にしておきます。そんな、危なそうな彼らですが、途方に暮れていた織田裕二からすれば、まさに天使。「指揮下に入らせてくださいっ」「よーし、食糧を出させろ」。えっ、それは。「上官に反抗する気か」、バコーン。なんかトンデモないのがやってきちゃいました。と、そこにババババとバイクのエンジン音が。すわ敵襲と思ったら、やってきたのは赤いバンダナ(というか帯?)も勇ましい大野木上等兵(的場浩司)でした。あーあ、またトンデモないのが。「貴様、一人で脱走したんだな」とキレ気味の遠藤憲一に、「冗談じゃねえよ。一人連れてますよ」と、サイドカーのカバーをめくる的場浩司。なんと、そこからは慰安婦のクニ子(水木薫)まで出てきちゃったじゃありませんか。もう、どんどんトンデモない方向に話は進んでいきます。

野戦病院を拠点に、遠藤憲一はやりたい放題。近くの村に出かけて、無抵抗のフィリピン人の方たちを虐殺したり、さらには娘さんを犯したりと悪逆非道の限りを尽くしています。しかし、織田裕二は「勝村少尉。貴様にも後で、おすそ分けしてやる。これも大陸からの伝統だ」とうそぶく遠藤憲一に抵抗できないのです。なにしろ上官を殺せば死刑ですから。

しかし、アメリカ軍はとうとう野戦病院に迫ってきました。よし「転進」だと遠藤憲一。「中尉どの、傷病兵を残していくのですか」と織田裕二は抗議しますが、まあ、これは仕方ない部分もありますね。自力で動けない兵は置いていくしかありません。さもないと全滅するだけですから。「退却」がなく「転進」があるように、「降伏」の代わりに「自決」を求められる動けない兵たち。婦長さん(もたいまさこ)や鶴田真由が土下座をして謝ったりしていますが、キュルキュルと戦車が近づいてくる音がしますよ。さあ早く、逃げなくちゃ。傷病兵たちの自決する手榴弾の爆発音を後ろに聞きつつ、ジャングルの奥へ奥へ。と、風間トオルが慰安婦の水木薫に聞いていますよ。「キミ、慰安婦は志願してきたの?」。えーと、そんなことイキナリ聞くか、普通。しかし、これは脚本の早坂暁さまの深い考えがあってのことなのです。「チガウ。ダマされてツレテこられた」と言いつつ、回想モードにはいる水木薫。ぽわわーん。はい、鬼のような女衒に、女たちは小突き回され、取りたくもない客に体を何度も何度も犯されています。もう、日本人って最悪最狂なクズだって、早坂先生は言いたいわけですね。

ま、それはともあれ、欲情しちゃった遠藤憲一の部下たち。看護婦さんたちの水浴びを見て、襲い掛かってきましたよ。きゃー。あれー。風間トオルがササっと現れ、来るな、来たらコレを爆発させるぞ、と手榴弾のピンを引っこ抜き、鶴田真由をかばいます。足を負傷していたのに、この素早さ。風間トオルも水浴びを覗いていたんじゃないのか、という若干の疑問も湧き上がってきますが、そこらへんは突っ込まないでおきましょう。武士の情けです。

一触即発の雰囲気が漂うなか、慰安婦の水木薫が「あたしが相手してやるよ」と言い出しました。もちろん、好きこのんでじゃありません。ゲヘヘ。じゃあお前でもいいか、と好色そうな視線を向ける鬼畜な日本兵たち。と、その時、ズダダダと銃声がなりました。「クニ子、もういいんだ」と、的場浩司が、重機関銃を腰ダメにして登場です。えーと、ランボー?

でも、ここはアメリカ軍の支配地域。そこで、銃声なんか立てたら……。ほら、迫撃砲がドッカンドッカン降り注ぎ始めましたよ。これはもう、欲情している場合じゃありません。あわてて逃げ出すみんな。おっ、橋の上にアメリカ兵が現れました。ズドドドド。重機関銃を連射する的場浩司。狙いはバッチリ。機関銃弾を喰らったアメリカ兵たちはのけぞり……いえ、のけぞらずに、プールに飛び込むみたいに、前向きにピョーンと川に飛び込んでいますが。ここらへんは、出目監督の演出の素晴らしさというか、出目クォリティ全開です。

ともあれ、どうにか危機を脱したみなさん。危機を脱すれば、またムクムクと湧き上がるものがあるのは、当然です。遠藤憲一は織田裕二を手招きして、二人だけでコッソリ相談です。「どうだ、一番キレイな看護婦渡さないか」。そんな相談をされているとは、露知らず、離れた場所で待っているみんなのところに、銃声が一発響いてきました。まだ煙をあげている、そうイヤってほどモクモク煙をあげているピストルを片手に、織田裕二がジャングルからひとり出てきました。えーと、やっちゃった。みんなは、何となく気まずそうな、それでいてホッとした顔つきです。

「出発だ」と、織田裕二は怖い顔でひとこと。しかし、的場浩司は別行動を取ると言い出しましたよ。どうせ死ぬなら、せめて海岸線に行きたい。もしかしたら友軍の潜水艦に助けてもらえるかもしれないし、ダメでモトモトと言うのです。「どうだ、お前も行くか」「うん」。水木薫も的場浩司についていくそうです。「クニ子さん、おやめなさい」と止める鶴田真由に、「あたしキム・ハルジャ。クニ子違う」と、さりげなく強制連行を匂わせつつ、バイクに乗り込む水木薫。さあ出発です。バババ。

海岸線をバイクが疾走しています。戦闘機の機銃掃射もなんのその。さらには、日本軍の埋めた地雷も、たくみなハンドルさばきでかわしながら、的場浩司の駆るバイクは走ります。的場浩司にしっかりしがみついた水木薫がアリランを歌いだしました。アーリラン、バババ。アリラン、バババ。しかし、とうとう、高速機銃弾が二人を貫きました。ドシャッ。倒れたバイクは地雷に接触して、二人はドッカーンと爆発四散してしまうのです。

そんなことを知らずに、北へ北へ向かう織田裕二たち。ズカーン、ドカーン。婦長のもたいまさこが負傷です。慌てて薬バッグからキニーネのビンを取り出す鶴田真由。しかし、もたいまさこは「キニーネは兵隊さんのために、取っておいて。私はいらない」と言うのでした。なんていう自己犠牲の精神でしょか。しかし、鶴田真由はひとこと。「すいません、もうありません」。えーと、ここは笑いを取るとこなんでしょうか。早坂脚本の奥深さが、ボクにはどうも理解できないんですが。

それはともあれ、「津坂さん、アレをください。アレを」と言うもたいまさこ。ここで言うアレとは青酸カリかなんか、とにかく一瞬で死ねるクスリのことです。しかし、首を横に振る鶴田真由。「ラクにさせてください」と懇願するもたいまさこに、織田裕二が熱く言います。「ダメだ。生きろ。みんなで生きて日本に帰るんだぁ」。おっと、洞穴があるぞ。あそこなら休めるかも。もたいまさこを置いて、みんなで洞窟探検。しかし、そこには日本兵の死体がゴロゴロと転がっていました。そして、死体の一部には、食べたあとが。ギャーッ。慌てて洞窟を飛び出すみなさん。ハアハア。こけつまろびつ、もといた場所に場所に戻ると、もたいまさこが静かに待っていました。そりゃ静かなはずです。なんと、もたいまさこは舌を噛み切って死んでいたんですから。「婦長さん、婦長さーん」と鶴田真由は号泣していますが、なんだかなあ。

すっかり仲村トオルのことを忘れていました。とりあえず特攻隊に志願して、鹿屋基地に配属された仲村トオルは、エライ人から特攻の作法について指導をうけます。それは最後まで目を開けていろ、というもの。家族にそっと別れを告げたりしつつ、いよいよ、仲村トオルが飛び立つ日が来ました。早稲田の同級生と共に、離陸する仲村トオルの零戦。さっきまで特攻隊員が大勢いたはずなのに、飛んでいるのはお友達の零戦と2機のみ。ここらへんは、大人の事情ってやつでしょう。ブワーッとガソリンを噴いているお友達の零戦。しかし、二人はもう戻ることは許されません。ニュースフィルムの流用を使いつつ、お友達は爆死。そして、仲村トオルは「目を開けろ。目を開けろーーっ」と絶叫しつつ、見事敵艦に体当たりです。

織田裕二と愉快な仲間たちは、いよいよ追い詰められました。あたりにはアメリカ軍がうじゃうじゃと集まり、投降を勧告してきます。「相原一等兵、田中一等兵、キミたちは降伏しろ。看護婦もだ」と宣言する織田裕二。しかし、織田裕二はひとり突撃する気のようです。「こんな自殺みたいな戦争で死ぬのは無意味です」と風間トオルは止めますが、織田裕二はニッコリ笑って言うのです。「いや、これから先の戦闘は自分の戦争としてやるつもりです。大負けはしているが、ワントライくらい奪いたい」。さすが、明治のラグビー部。東大とは根性が違いますね、根性が。そんな熱い織田裕二に影響されたのか、残った部下や看護婦さんたちは、俺も、私もと織田裕二の後に続くことにしました。風間トオルと鶴田真由を残して、突撃を始めるみなさん。手榴弾の袋をラグビーボール状にして、織田裕二が先頭を走ります。後に続くみなさんは、次々と銃弾に倒れていきますが、織田裕二はなにしろ戦闘機に走り勝った男ですからね。「トライ、トライ、トラーイ」、見事、敵陣にトライをキメて大爆発するのでした。

残った風間トオルと鶴田真由は、ヨロヨロと逃亡中。しかし、風間トオルがドサッと倒れます。「好きだ。こんなところでしか、好きな人と出会えなかった」「はい、相原さん」。ガクッ。あいはらさーん。

緒形直人が物見櫓のてっぺんに登っています。下には近在のみなさん、そして石橋蓮司を始めとする憲兵たちがワラワラと集まっているようす。「いたぞ、捕まえろーっ」「ひこくみーん」。そんな罵声を浴びつつ、「みなさん聞いてください。この戦争は負けるんだぁー」と緒形直人は絶叫しながらビラを撒きはじめました。ヒラヒラ、ヒラヒラ。しかし、間の悪いことに、そこに空襲警報のサイレンが。近在のみなさんは、蜘蛛の子を散らすようにいなくなり、残ったのは物見櫓の上で呆然としている緒形直人と、それをものすごい目ぢからで睨んでいる石橋蓮司だけなのです。

当然、捕まってしまい、緒形直人は広島憲兵隊に連行されました。拷問されながらも「負けるんだぁー」「こんな日本は負けた方がいいんだぁ」と喚きまくる緒形直人。これには石橋蓮司も完全にブチキレます。「だまれ許さん」「国賊、死ね」と軍刀を振りかぶり、バサッ。ピカッ。ズゴゴゴゴ。キノコ雲が立ちのぼります。

うーん。緒形直人が気づくと、そこは一面のガレキの山。遠くに原爆ドームがポツンと立っているのが見えます。おや、焼け跡に何か青く光るものが見えます。その青いものは、どんどん数を増していきます。「勝村。相原、芥川ーっ。帰ってこーーーーいっ」と、またまた絶叫する緒形直人。

その言葉に答えるように、モノクロな織田裕二がムクっと立ち上がります。モノクロな風間トオルが鶴田真由の手を借りて立ち上がります。おっと、モノクロな仲村トオルは泳いでいるようです。

パッと画面が切り替わると、そこは現代の国立競技場。フィールドのど真ん中に寝ていた緒形直人が目覚めました。仲間に「おい、さっきの連中は」と問いかける緒形直人ですが、仲間は「何トボケてるんだよ」と相手もしてくれません。おっかしいなあ。トボトボとロッカールームに戻る緒形直人。しかし、ロッカーの前には、ドロドロに汚れた半長靴や、軍用ブーツがあるじゃありませんか。「やっぱりそうか。帰ってきたんだ」と緒形直人は、再び、フィールドに飛び出して行きます。

フィールドに出ると、ドロドロのラグビージャージをきた織田裕二、仲村トオル、風間トオルが立っています。なにか話しているようですが、声はいっさい聞こえません。しかし、それでもいいのです。「行くぞっ」と声をかけて走り出す緒形直人。パス。タックル。気づけば的場浩司たちもやってきて、みんなで楽しくラグビーをするのでした。おしまい。


えーと、まず一言。これは反戦映画ならぬ反日映画に思えます。とはいえ、根拠を示して冷静に描くなら、主義主張を超えて感銘することだって可能です。しかし、この映画については、その告発がきわめて表面的すぎます。これでは、ただ感情的に日本人は野蛮だと金切り声をあげているだけです。

お定まりの、悪い憲兵、朝鮮人の強制連行、そして人肉嗜食などマイナスなイメージのオンパレード。しかし、考えてみると、人肉を食べるというテーマだって、市川崑監督の「野火」のように、一本を費やしても語りきれないほどの重いテーマです。それをファッションのように、とっかえひっかえ出してくる、このセンスは何なんでしょう。

まあ、そういった硬い話は抜きにすると、この映画、なかなか面白いです。もちろんトンデモ方向に、ということなのは言うまでもありませんが。ラグビー馬鹿な織田裕二は、手榴弾のラグビーボールを持ってトラーイだし、風間トオルは戦争そっちのけで鶴田真由と恋愛。緒形直人は原人生活をエンジョイして、的場浩司はランボーものですから。なんだかマトマリがゼロなところが、大笑いです。

企画の岡田裕介と監督の出目昌伸といえば、「霧の子午線」などトンデモ小百合ちゃん映画の名コンビ。そして、やっぱり岡田裕介と、脚本の早坂暁といえば、普及の名作「北京原人 Who are You ?」の名コンビです。そして、その三人が組んでいるんですから、こうなったらコワイものは何もない感じです。どこか誰も知らないヘンな世界に、一直線でしょう。

それにしても、完全に破綻したシナリオを救う最後にして最狂の手段。夢オチを使うとは、恐るべし早坂暁。









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【映画】投資令嬢

2008-12-10 | 邦画 た行
【「投資令嬢」枝川弘 1961】を観ました



おはなし
株式投資が趣味の女子大生、チズ子(叶順子)はステキな男性に出会ってクラクラ。

基本的になんでもないラブコメですが、協賛が山一證券ということで、かなり強引に株の話が続いたりするところがお茶目です。この映画を観ると、山一證券で株を買いたくなること間違いなし、みたいな。


ここ東和大学では鈴木教授(根上淳)が、源氏物語の授業の真っ最中。と、女子大生3人が一斉に「時間よ」とイアフォンを耳に差し込みました。「ラジオを聴きながら源氏物語の勉強ってのは、どんなもんですかなあ」とイアフォンを取り上げる鈴木教授。しかし、ビックリ。なんと、彼女たちの聴いていたのは、音楽ではなく株式市況だったのです。「キミたち、株やってんですか」と驚く鈴木教授に、「あら、株は現代の常識ですわ。ねぇーっ」と悪びれない3人です。

ということで、タイトル。ドーンと「協賛 山一證券」の文字が躍っていますよ。そして、映るのが早稲田大学の大隈講堂。とはいえ、これはあくまで東和大学です。ええ、誰がなんと言っても東和大学なんです。その東和大学の部室では、投資研究会が相談会を開催中。ああ、あの3人組の姿も見えますね。リーダー格のチズ子(叶順子)、ちょっとカル目なみさを(野添ひとみ)。そして、いまいち地味な晴美(宮川和子)です。もっとも、地味な晴美には、しっかりカレがいるらしく、婚約までしたらしいので、世の中は分からないものです。

さて、チズ子の実家は古本屋さん。そこにおばさん(藤間紫)がお見合いの話を持ってきました。お父さん(松村達雄)やお母さんもスッカリ乗り気ですが、肝心のチズ子にはまったくその気なし。「秀才なんて面白みないわよ。安全で利回りがいいかもしれないけど、妙味がないわねえ。だいたいね。おばさんはシツコすぎるわよ」、どうもチズ子は全てを投資に結びつけるクセがあるようです。

そんなチズ子は、みさをの持ってきた世界大戦勃発か?というガセネタをきっかけに、ウームと考え込みました。「あたし、夕べ寝ないで考えちゃった。あたしたち、米ソの対立っていうことに神経質すぎやしないかしら。二つの世界の対立っていうことは、今は常識だけど反対に米ソの接近ということも考えられるんじゃない」。「まっさかあ」と鼻で笑うみさをに、チズ子は力説しちゃいます。「と、素人は思うでしょ。ところが私は、新大統領ケネデー氏(と言ってる)に、もっと進歩的なことを期待してるの。つまりね、近いうちに中共の国連加盟が実現すると思うの。そうすれば、日中の貿易再開。ということになると、絶対注目されるのは、OK肥料よ」。ふーむ、そういう考え方もありますか。

OK肥料の株は欲しいが、金はなし。ということで、チズ子とみさをは金を稼ぐことにしました。山頂にある山小屋に行って、チキンラーメンで一儲け計画です。単純な商売ですが、山小屋で食べるチキンラーメンは大人気。あっというまに大もうけです。ところが、これに怒ったのが、同じようにアンパンで一儲けを企んでいた愚連隊のみなさん。「俺たちはな、パンは売っても、只のパン屋じゃねえんだぞ」。おうおう、姉ちゃんたち、儲けをよこしな。あれー、たすけてー。どりゃー。おっと、ハンサムな青年(大瀬康一)が飛び込んできて、愚連隊のみなさんをノシている音(だけ)が聞こえますよ。愚連隊をノシた青年は「じゃあ」と爽やかに去っていきます。「みさを、どうする」「どうするって、あたし全然イカレちゃったわ」と、ぽーっとした視線で、青年を見送る二人。おっと、気づいたら青年はいないじゃありませんか。「大魚を逸したわね、チーズ」「うん、すごい希望株だわ」。
しかし、愚連隊がせっせと山の上までアンパンを担いで登って、地道に商売をするのかどうか知りませんけどね。

ともあれ、儲けたお金で、OK肥料の株を買い、ご満悦な二人。しかしチズ子の予想に反して、株は一向に値上がりしません。さてさて、どうなるのでしょう。ケネディならぬケネデー氏は頑張ってくれるんでしょうか。

それはそうと、二人は、独身の鈴木教授にちょっとお熱。どうも、学者馬鹿で、どんくさいところが気になるようです。しかし、チズ子が古本を届けにいったとき、妙齢の女の人を見たのでさあタイヘン。「僕なんかのところに来てくれる人はいないよ」とか言っていたのに、どういうことよ。ムキーッ。「インチキだわ」「最低ね」「暴落だわ」「大暴落よ」。ムキムキーっとしながら、二人が歩いていると、そこにダンプカーがキキーッと止まりましたよ。「いよう」と声をかける青年の顔をみると、なんと山の上で、爽やかに愚連隊をボッコボコにしてくれた青年じゃありませんか。いやーん、運命感じちゃう。ということで、「ねえ私たちクサクサしてるんだけど、どっか面白いところに連れてってくんない」というみさをのリクエストに答えて、青年は二人をナイトクラブに連れていってくれたのです。それがもう、超がつく高級なお店。「本当に大丈夫。ここ高いって有名よ」「失礼だけど、あなたの月給なんて一時間ですっ飛んじゃうから」と、二人が口々にいさめても、青年は平気の平左なばかりか、どうも常連の様子ですよ。「運転手の月給じゃ、こんなとこ来れっこないよねえ」とみさをが言えば、「とすると、何か悪いことしてるんじゃないかしら。何しろ、彼は謎の人物だわ。ものすごい希望株か、でなかったら大暴落の危険性があるボロ株よ」と株にたとえるチズ子。どうも、株から頭が離れないようです。

さて、チズ子のおばさんは小唄のお師匠さんなので、今日も出先で稽古中。今日のお弟子さんは、伝説の相場師、大石伝兵衛(東野英治郎)です。稽古のあと、「ねえ先生、つかぬ事を伺いますけどね。先生の坊ちゃん、お嫁さんは?」と切り出すおばさん。「実は私の姪なんですけどね」と、チズ子のお見合い話を始めちゃいました。写真を見せると、伝説の相場師な伝兵衛も、チズ子を気に入った様子。よっしゃ、早速報告だ。ぴゅーん。

しかし、チズ子は気のない返事。まして、相手が大石伝兵衛の息子と聞いた瞬間、拒否反応です。あの伝兵衛の言うとおりに株を買ったら、うまくいかなかったのよ、プンスカ。「とにかく写真くらい見たらどうなの」とおばさんが言っても、「見る必要ない」の一言です。

と、そこにみさをと晴美がやってきました。なんと、晴美のお父さんが、仕事で穴を開けて、このままでは倒産まちがいなし。そうなれば、晴美は婚約したカレと結婚できないそうですよ。じゃあ、3人の株を売ってお金を作ろうよ、と男気をみせるチズ子ですが、あいにくOK肥料の株価も低迷しているので、どうも足りそうにありません。そうだっ、OK肥料の株を担保に、お金を大石伝兵衛に借りよう。さっそく、みさをと晴美を引き連れ、意気揚々と出かけるチズ子です。

「うーん。お話はよく分かりました。分かったけどだなあ、このOK肥料を担保にはもらえないなあ」といい顔をしない伝兵衛。もう、こうなるとチズ子は、日中関係の今後の見通しやら、自分の分析をとうとうと述べることに。しかし、伝兵衛はチズ子の分析を認めようとはしないのです。ムキーッ。「せっかくですけど、あたし、あなたの息子さんとの縁談、キッパリとお断りしますわ」「ああ、こっちからお断りだ」。あーあ、喧嘩別れです。

怒りに燃えたチズ子は、なんとなく工事現場をウロウロ。あの時の、ダンプカーの彼はいないかしら。あっ、いたいた。早速、食事をしつつ、お見合い相手の父親の悪口です。「そうなの、今度のはね、株式評論家の息子なのよ。とにかく、そのオヤジときたら」。「いやあ、ぼくにも嫁さんの話があってさ。その娘さん、株に夢中なんだってさ。株にねえ」と答える青年。ギクぅ。「あたし、あなたのお名前、まだ伺ってなかったけど、何て仰るの」「ああ、ぼくは大石研次郎」。んまあ、なんてことでしょう。

ガガーンとショックを受けたチズ子。「まずったなあ。あーあ。でも、あの石頭のオヤジと今さら仲直りはできないわ。後悔するなんて、チーズにしてはみっともないぞっ」と、自問自答してみますが、覆水盆に返らずですね。一方、大喜びなのはみさを。チーズは研次郎さんとのお見合いを断ったんだから、私に権利があるわよね、と、研次郎に猛然とアタック開始です。あまつさえ、「彼とドドンパ踊っちゃった。彼、うまいのよ」とか、チズ子に自慢をしてくるありさま。それにしても、ドドンパですか。オバQのドロンパなら知ってるんですけど、ドドンパってのは、どんな踊りか知らないなあ。

それはともあれ、結婚が決まり、いきなり財テクに目覚めた鈴木教授に、資産運用を相談されたチズ子とみさを。もちろん、そんな時には山一證券です。教授を山一證券に連れて行くと、見るからに頼もしそうな證券マンが、山一のサイケンオープンなんかを勧めてくれたりして。そのうえ、なんと、利回りは7分4厘で元金保証だったりして。はい、宣伝の時間でした。

山一證券を出て、「さて、これからどうする」と尋ねるチズ子。「あたし、これからダンプカーのところに行くっ」とみさをは悪びれません。「チーズは棄権したんだからね。妬く手はないよ。じゃ、さよなら」、ピューン。しばし呆然とみさをを見送ったチズ子ですが、ふと思いついて、先回りをすることにしました。

研次郎に会うなり、「ずばり聞きますけどね。あなた、みさを好き?」と聞くチズ子。「せっかくだけど」という研次郎の答えに、「断るの」とうれしそうです。しかし、次に続く言葉にショック。「僕には好きな人がいるんだ」「そう。いるの」、ガーン。「だけどね、片思いらしい」と研次郎が言っても、とりあえずガーン、ガーン、ガガーンです。と、そこにみさを登場。「ずるい。見損なったわ。絶交よ」、うわーん。ダダダと走り去るみさをを、呆然として見送るチズ子です。

顔を合わせるとツンツンしていた二人を見かねて、晴美のカレの井上くんが、こんなことを言い出しました。「恋愛というのは勝負なんだから、争うのもいいが、どっちか脈のある方を、その彼に選ばせたらいいじゃないか」。うーん、なるほど。超高級ナイトクラブでは、ラストになると、蛍の光が流れて、恋する二人は、踊りながらキスをするんだそうです。それなら、研次郎をナイトクラブに誘って、どちらかラストダンスに選ばれた方が、恨みっこなしの勝者ってことで、ひとつ。

で、ナイトクラブ。研次郎は妙に寂しそう。それも、その筈。こんど"ダムの方"に転勤になるそうです。「ダム工事って、どの辺」「ちょっと遠いところでね」。えー、どこかなあ。あっ、北海道。とかなんとか、ノンキなことを言っている二人ですが、研次郎の言葉を聞いてビックリ。「南ベトナムですよ」。へぇー、って嘘ぉ。
「今まではね、まだ当分の間は結婚しないつもりで、ノンキに構えていたんだけど、今夜は真剣に考えてみようと思うんですよ」とシミジミしている研次郎。と、そこに蛍の光が流れ始めました。ドキンとする二人。「ああ、もうラストか。早いなあ」、ドキドキ。「じゃあ、ひとつ」、ドキドキドキドキ。おっと、研次郎はトイレに行っちゃいました。ガックリする二人。「みさを。二人とも脈が無さそうだよ」「そうらしいねえ。やっぱり、片思いの女の人が、よっぽど好きらしいね」。

振られたチズ子は、ヤケッパチで、おばさんの持ってきた見合い話を受けることに。と、見合い当日、OK肥料の株が、なんだか鰻登りにあがっていますよ。よし、お見合いの前に、伝説の相場師、伝兵衛のトコに寄っていこうっと。

「先生が、この間、ボロのチョンに仰ったOK肥料が、今朝の寄り付きでとうとう200円台に乗せました。やっぱり、私の勘に狂いがなかったことを認めていただきたくて伺いましたの」と、伝兵衛に言うチズ子。「いやはや、どうもあんたには負けたねえ」と、さすがの伝兵衛も、チズ子にはかないません。「しかし、チズ子さん。ひとつだけ、この伝兵衛の言うことを聞きなさい。その株は手放したまえ」。ここまで来たのがイイとこだ。これ以上、持っていても後は下がるだけだよ、という伝兵衛のアドバイス。チズ子はこれに猛反発すると思いきや、「分かりました。仰るとおりにします」と妙に素直です。はい、二人は仲直りをするのでした。そのまま、山一證券に行って、株を売り、見合い会場のホテルに向かうチズ子。しかし、伝兵衛は急に、もったいない気がしてきましたよ。「惜しいことをしたわ」、研次郎の嫁にもらえばよかった。うーん、そうだ。よし、研次郎の気持ちを聞いてみよう。奥さんが、手遅れでしょうと言うのも聞かず、「ボヤボヤしていると値上がりしてしまうぞ」と、研次郎の職場に電話をかけさせる伝兵衛です。

はい、お見合いです。相手は、マザコン気味のお医者さん(渥美清)。もちろん、チズ子はやる気ゼロもいいとこです。と、ホテルの車寄せにダンプカーがキキーッと走りこんできました。止めるフロントを押しのけながら走ってくる研次郎。「あっ、ダンプカー」とチズ子の目が輝きます。「とにかく、出よう」とチズ子を強引に研次郎はチズ子をダンプカーに乗せました。ぶぶー。

「チズ子さん、僕と結婚してくれませんか。そして、僕と一緒にベトナムに行ってくれませんか」「あなた、いつか好きな女の人がいるって仰ったじゃない」「ええ、片思いのね。その相手が実を言うと、あなたなんです」「実は私もあなたに片思いだったのよ」。えーと、好きにしてください。ともあれ、プロポーズを受けるチズ子。でも、ベトナムに行っても株はやるわよっ。「でも、ベトナムに行って、どうやって株を」「あちらの株を買うのよ。北は共産圏だけど、南は資本主義でしょ。資本主義のあるところ、必ず株はあるはずよ」。アハハ、ウフフ。二人を乗せたダンプカーは兜町を走り抜けていくのです。


まあね、なんてことないラブコメなんですけどね、時代を感じさせる一本でした。まず、協賛の山一證券。ツブレちゃいましたからねえ。映画の中で、山一證券を持ち上げる台詞を聞くたびに、複雑な気持ちになります。盛者必衰というか、栄枯盛衰というか。

そして、当時の世界情勢の分析っていうんでしょうか。まず中共(って言い方がスゴイけど)の国連加盟が実現しそうってトコロ。結局、中華民国に代わって、中華人民共和国が国連の代表権を獲得したのは、この映画の公開から10年後の1971年。日中国交正常化は、その翌年の1972年ですから、予想としては、全然外れまくってます。これだと、OK肥料の株価も、すぐ下がりそうですよね。

そして、研次郎がダム工事で、南ベトナムに行くというくだり。チズ子は、この年の1月に大統領になったケネデー氏に期待を寄せているようですが、結果は、この年の暮れにケネディ大統領は南ベトナムに軍事顧問団を派遣。あとは、ズルズルと深みにはまって、ベトナム戦争の泥沼化ですからね。もう、タイヘンなことに。それに「南は資本主義でしょ」と株を買いまくったら最後、紙切れ同然になっちゃう雰囲気濃厚です。

まあ、そんな外しまくった予想をもとに作られた、この映画。さらに、いつもの大映と毛色が違うのは、お父さんの松村達雄や、お見合い相手の渥美清が出ているところ。なんだか、ヘンに松竹な匂いが漂ってきます。うーん、なんだかなあ。テイストが合わないというか、渥美清がヘンに浮いているというか。どうにも、とらえどころのない、珍品な作品でした。

それにしても、元金保障で、年7.4パーセントのサイケンオープン。今、あったら、速攻でお金を預けるんですが。







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【映画】守ってあげたい!

2008-12-08 | 邦画 ま行
【「守ってあげたい!」錦織良成 2000】を観ました



おはなし
やりたいことが見つからず、自衛隊に「でも」入隊してみようと思いたったサラサ(菅野美穂)は……。

この映画のキーワードはダラダラ。うまくやれば、面白い素材なのに、テンポが悪すぎるので、とても損をしています。

「4分の1回転まわせ」「4分の1回転よし」。緊張した声が響きます。そう、ここは不発弾の処理現場。あたりは規制線が引かれ緊迫しています。しかし、そんなことは安西サラサ(菅野美穂)にとっては、ぜーんぜん関係なし。もう、近道できないじゃない。ブーブー。と、それくらいの感覚です。

ネギやら何やらを買って、いそいそとカレのアパートにやってきたサラサ。これでカレに手料理をご馳走しちゃうんだぁ。えへ。ドアノブをガチャリと回すと、ビビったカレの顔。そしてベッドにいた別の女が、勝ち誇った表情で「私のこと愛してるんだってぇ」とかのたまうのです。ムキーっ。

傷心のサラサは、これから何をすればいいんだか分からなくなっちゃいました。と、そんな時、幼馴染のヒトシにあっていい事を聞いたのです。「陸上自衛隊は2年で任期終了なんだ。退職金もあるし」。ピーン。こ、これは。とりあえず、やりたいことが見つかるまでの2年間、自衛隊に入るのもいいかも。それに退職金がみ・り・ょ・く。

婦人自衛官は人気で、14倍の競争率だそうです。しかし、なぜだか受かってしまったサラサ。もう覚悟も何もないままに、営門をくぐります。

入隊したサラサは、約3ヶ月の前期教育の間、2区隊の3班に配属されることになりました。しかし、この3班はトンデモない班でした。隊長の市ヶ谷一佐(宮下順子)の意向で、イキのいい人間を採用してみたのですが、イキがいいというより、どうみてもヘンな人間の集まりでしかなかったのです。

やる気ゼロのサラサ。ミリタリーオタクの島馬京子(宮村優子)、父親が自衛官でファザコンの牛尾衛子、バブルがはじけてもなおイケイケな桜吹雪鳥子、イジメられっ子の亀田ひろみ、元ヤンキーの鰐渕景子、それに女子プロレスから逃げ出した大熊ゆかり。そんな個性のありすぎる7人。そして、それをまとめる中蜂三曹(杉山彩子)は、以前訓練で、新隊員を死なせたことがあるという「悪魔」の班長なのでした。

訓練が始まっても、3班のやる気のなさは歴然。イジメられっ子の亀ちゃんは、身体検査で服を脱ぐことすらできない恥ずかしがりやだし、イケイケな鳥子は化粧にばかり夢中で、訓練はテキトー。ファザコンの牛は、何かというと「あたしの父は一佐で……」ばかりを繰り返し、ヤンキーの鰐はアチコチでガンを飛ばしまくっています。実銃訓練では、ミリタリーオタクのシマウマが勝手に64式小銃の分解を始め、その横では女子プロ崩れの熊ちゃんが、許可もないのに射撃を開始している始末です。え、サラサですか。もちろんイイ加減です。

当然、そうなると班長の中蜂三曹の怒りはヒートアップ。「お前ら7人だけだ。何をやってもダメなのは。自衛隊は落ちこぼれを救うボランティアじゃない」と、更なる猛訓練を課すのですが、効果があるのか、ないのか。いや、むしろ逆恨みを買ってしまったようですよ。落ちこぼれ3班の7人は、中蜂三曹の弱点を探すぞ大作戦を開始です。女である以上、「どんな女でも、男の前ではか弱き子羊です」と島馬が言い出し、中蜂三曹の部屋をあさって、男の痕跡を探すことにしました。風呂の隙を狙い、トランシーバーで連絡体制を作り、さあ部屋あさり開始です。しかし、この組織力とか実行力を訓練に生かしてくれればいいんですけどねえ。

残念というか、なんと言うか中蜂三曹の私物をあさっても、男っけはゼロ。しかし、サラサはトンデモないものを発見してしまいました。それは、古い新聞のスクラップ。日空機墜落事故で、自衛隊員に助けられた奇跡の少女の記事でした。助けられた少女の名前は中蜂三曹あやめ。そう、鬼の中蜂三曹は、飛行機事故の生き残りだったのです。思わずバイト仲間だったリカに「リカ、人って色んなこと背負って生きているんだねえ」と10円メール(ふ、古い)を出したサラサの表情は少しだけピリっとしたようです。

さすがに、何をやってもダメな3班を、副隊長(温水洋一)は切捨てにかかりました。しかし、中蜂三曹は「私は2区隊3班の班長です。彼女たちは私が責任を持ちます」と、切捨てを拒否。副隊長は「よし、東富士のコンパス行進で、彼女たちが脱落したら、辞めさせるというのはどうだね」と条件を出し、中蜂三曹はそれを飲むのです。さあ、どうなるんでしょう。

壁のぼりで、柄にもなく根性を見せたサラサに、中蜂三曹は話しかけます。「誰かを守るということは理屈じゃない。副隊長はお前たちを辞めさせるつもりだ」。「そんなぁ、いくらあたしたちがダメだからって」と抗議するサラサに、中蜂三曹はさらに言い渡すのです。「来週のコンパス行進、一番で旗とってこい。安西、今のこと他の隊員には言うな」。

さて、東富士の演習場で、前期教育訓練の総仕上げ、コンパス行進が行われることになりました。コンパスを頼りに、班ごとに行進をし、最初に目的地の旗を取った班が勝ちです。もちろん、ダラダラと行進をしているのは3班。やたらとオシッコ休憩を取って、これじゃ他の班に勝てませんよ。その上、中蜂三曹が姿を消したものだから、3班はますますやる気ゼロに。「あんたたちは、何も知らないからぁ」と文句を言うサラサ。「えっ、辞めさせられる」と他のメンバーは今さらながらに焦っていますが、これから張り切っても間に合うかどうか。いえ、まだまだ挽回は可能です。

ゴロゴロ、ほら90式戦車が走ってきました。その前に倒れこむイケイケの鳥子。「どうしたの」「いやーん、訓練中に足をくじいて」「いいよ、乗ってきなよ」。ゾロゾロと顔を出す他のメンバー。見事、ヒッチハイクに成功です。ガラガラ。73式装甲車に乗り込み、ご満悦のみんな。ありがとー。よし、さらに行進です。

しかし、夜になると雨が降り出し、どんどん激しくなる一方。翌朝には、水無川上流で土石流が発生したという連絡まで飛び込み、隊長は訓練の中止を決断します。各班に「状況中止」の命令が無線で伝えられます。えーと、無線機を落っことして、壊しちゃった3班以外は、ですけど。思わず、新型73式小型トラック(という名前のパジェロ)で本部を飛び出す中蜂三曹。さあ、3班は助かるのか。

はい、3班は迷った挙句、演習場に隣接する民家の側までやってきちゃいました。その上、そこではがけ崩れで民家が一軒、ペシャンコになってるじゃありませんか。救助に当たっていた近所の人たちは、「おお、来てくれたか。早く、早く」と、3班のことを災害派遣隊と勘違いしているようす。えーと、どうしよう。とりあえず、みんなでモソモソしてみますが、まあ、何もしないわけにはいかないですよねえ。

早速、ガレキの下にもぐる女子プロ崩れの熊ちゃん。せーの、よいしょー。ズボッ。良かった男の子が助け出されました。と、思ったらガラガラ、グワッシャーン。「イ”ヤ”?、ぐまヂャーン」。みんなの絶叫が響きます。っていうか、このシーンおかしすぎ。出演者の女の子たちが一斉に金切り声を上げていて、何を言っているんだかさっぱり分からない。まあ現実でも、こんな感じになるんだろうなあ、とヘンに臨場感がある反面、映画としてはどうなんだ、としばらく考え込んじゃいます。

キキーッ。おっと中蜂三曹がパジェロで駆けつけてきましたよ。「なんだよ、女の自衛官ばっかり来やがって」と、呆れ顔の近所のみなさんをよそに、テキパキとガレキにパジェロのウインチをつなぐ中蜂三曹。よーし、引っ張れー。メキメキ。中蜂三曹はささっとガレキの下にもぐりこみ、熊ちゃんと逃げ遅れた女の子を見事、助け出すのでした。ガラガラ、グワッシャーン。「イ”ヤ”?、はんちょー」。えーと、今度は中蜂三曹が下敷きに。何をやってるんでしょう。ま、それはともあれ、グッタリしている女の子を病院に連れて行かなくては。しかし、パジェロは動かなくなったと、近所の人たちが言っています。うーむ、あっ、バイクだ。ヤンキーの鰐が運転、サラサが女の子を抱っこして、とりあえず出発です。演習場を縦断するのだ。ぶろろー。

ぶろろー。ぶろろー。ぶぉーん、ボカッ。あっ、バイクが転倒です。しかし、ノンキに救助を待っていられません。怪我をした鰐を置いて、女の子を担いで歩き出すサラサ。「この子の命は私にかかってる。あきらめちゃいけない。私はこの子を。私は守ってあげたい!」。えーと、とりあえずガンバレ。

一方、がけ崩れ現場には、ヘリが到着。シュシューッと34連隊のレンジャーたちが降下してきます。今までとは打って変わった、手際のよさでサクサクとガレキを取り除いていくレンジャーの皆さん。はい、あっさり中蜂三曹は救助されました。
「34連隊の橘三佐です」と、カッコよく敬礼する橘(古尾谷雅人)の横顔に見とれる中蜂三曹。ぽわわーん。思い出がよみがえります。そう、あの飛行機墜落現場で、私を抱いて、ヘリに吊り上げてくれた。「それじゃ頑張ってください。失礼します」と去っていく橘を見送りつつ、中蜂三曹はそっとつぶやくのです。「また助けてもらっちゃった」。あ、ちなみにサラサも、どうにか車道に出て、一般人の人に助けてもらえたようで、とりあえず良かったです。いや、ホント。

そして迎えた前期教育の修了式。もちろん落ちこぼれの3班も、みんな無事に修了できたようです。「ちょっとだけだったけど、名残惜しいねえ」と、約3ヶ月暮らした部屋を見るサラサ。もちろん、横にいるみんなも同じ気持ちです。隊舎を出ると、そこには中蜂三曹が。ピシッ。見事な敬礼をキメたあと、ニッコリと笑うサラサ。もう、ここぞとばかり、カメラはそんなサラサをグルグル360度回りながら写しちゃうのです。


えーと、惜しい。惜しすぎます。なんでこうなるかなあ。色んな特技を持った落ちこぼれたちがやってくる、というのは良い設定です。しかし、その設定がまったく生かされていません。せっかく出てきたエリート班との対比もできてないし、キャラの掘り下げがゼロです。やっぱり、落ちこぼれたちが、それぞれの特技を生かしてエリートたちを打ち負かすみたいな、熱い話を作れなかったものでしょうか。

また訓練シーンも、見せ場のひとつになるんでしょうが、そこもいまいち。射撃訓練や催涙ガスの体験訓練など、面白そうな素材はあるのに、料理の仕方がまずくて、おいしそうに見えません。これはもう、料理人である監督の失敗以外のなにものでもありませんね。

その代わりといっては何ですが、陸上自衛隊の全面協力を得たので、装備品がたくさん出てくるのは見所。AH-1Sコブラが対戦車ミサイルをぶっ放し、90式がグォーッとスライドしながら走っているのなんか、もう最高でした。

しかし、この映画を観て、自衛隊「でも」入るかと思う人がいるんでしょうか。いや、そもそも、その程度の動機で来られても、自衛隊の方で困っちゃうんじゃないかと思うんですが。







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【映画】女房学校

2008-12-05 | 邦画 な行
【「女房学校」井上梅次 1961】を観ました



おはなし
松代、つね子、まりの3人は、夫に不満アリ。たまたま、3人がそれぞれの夫を好きになったことから……。

女優は山本富士子、叶順子、朝丘雪路、そして井上監督の奥さんである月丘夢路。男優は森雅之、川崎敬三、川口浩と、賑やかなメンバーで作られたおしゃれな諷刺喜劇です。井上監督の軽快な語り口もあって、とても楽しい映画でした。

♪女房なんて、女房なんて、みんな見栄ぼうで欲っぱり。他人の亭主がよく見えて、隣の女房がウラメシイ♪ そんなテンポのいい歌で、この映画は始まります。

<リーン、リーン>
夜中に電話が鳴ります。「ちょっと誰かいないの」とブツブツ言いながら、受話器を取ったのは、料亭「山むら」の若女将・松代(山本富士子)。しかし、取った電話はとても奇妙なものでした。マダムXと名乗る、謎のセクシーボイス女が、「実は、あたくし今、あなたのご主人と一緒にいます」と言い出したのです。場所はPホテルの307号室。なんですとー、慌ててハイヤーを飛ばす松代。307号室に入ると、なるほど女がひとりいます。「失礼ですけど、マダムXって……」。しかし、そこにいたのは、菊川つね子(叶順子)。彼女もまたマダムXに呼び出されてきていたのでした。トントン。夫、今度こそマダムX登場でしょうか。しかし「どこにいるの、私の夫は」と飛び込んできたのは、露木まり(朝丘雪路)です。やっぱり、マダムXに呼び出されたみたいですね。

<ハッハッハ>
と、インターホンから笑い声が響きましたよ。おっと、これこそマダムX。4時になったら私は現われると、謎めいたことを言うマダムXは、続けて言います。「マダムXはね、この世の人間じゃありませんの。幻です。亡霊ですの。まだ30分ありますわ。ごゆっくり考えてみてください。どうして今度のような事件が起こったか。そうすれば、私の正体がみなさんにもお分かりのはずですわ。一昨日はたしか土曜日でしたね。ほら、覚えていらっしゃるでしょ。あの日、皆さんは……」。「そう、あの日よ」とつぶやく叶順子。「あの日だわ」と朝丘雪路。「あの日」と山本富士子。

<ドンドンッ>
怒っています。山本富士子が怒っています。美人なだけに、まさしく「柳眉を逆立てて」怒っています。怒られているのは、夫の浩介(森雅之)。森雅之は金にならない青い金魚の研究をするばかりで、無職の身。そのため、山本富士子がお得意さんの菊川課長に就職を頼んだのに、森雅之は面接をすっぽかしてしまったのでした。「見てごらんなさい、この部屋を。金魚金魚金魚(と15回)」。なるほど、部屋は金魚鉢で一杯ですね。「あなたは、私に一生オンブする気。あたしだけをコマネズミのように働かせる気。そうね、そうね、そうね」。ドンドンッと座卓を叩く山本富士子。湯のみがピョーンと飛んでますよ。「芋虫よ。一文の価値もないわよ。菊川さんをごらんなさい。菊川さんを」。山本富士子はどんどんヒートアップ。「出て行け、もう我慢ができないわ。愛想が尽きた。出て行ってよ」。「そうですか」とスタスタ出て行く森雅之。同じ婿養子の身の上で、森雅之の立場がよく分かるお父さん(小沢栄太郎)が、懸命にとめたものの、森雅之は飄々とどこかに行ってしまったのです。

<はーっ>
怒っています。叶順子が怒っています。怒りをピアノにぶつけています。今日は2度目の結婚記念日なのに、夫の菊川(川崎敬三)は、仕事仕事で、会社に電話をしても上の空でまともに相手をしてくれないのです。せっかく、銀座に飲みに行こうと思ってたのに。ばあや(浦辺粂子)に、「仕事の虫よ。虫けらよ」と当り散らす叶順子。はーっとため息の一つもこぼれます。「いっそ契約結婚にすればよかったわ、私も」。そう、従兄弟の高野俊吉はオシャレに契約結婚をしているそうで、なんだか羨ましく思えてきましたよ。「そうだわ、俊ちゃん誘ってみよう」。早速、電話をすると、テレビプロデューサーの奥さん・まり(朝丘雪路)にフラれた俊吉(川口浩)は、即オーケー。いっそ、浮気しちゃおうかしら、と考えちゃう叶順子でした。

<ホーッホッホ>
接待で「山むら」にやってきた川崎敬三。しきりに若女将の山本富士子を口説いています。甘い言葉に満更でもなさそうな山本富士子。と、そこにプロデューサーのまりがやってきましたよ。森雅之先生に、ぜひ科学番組に出演していただきたい、と言い出すまり。最初はダメ亭主を褒められてホーッホッホだった山本富士子ですが、まさか亭主は追い出したともいえず困ってしまいました。その上、「きっと先生って素晴らしい方でしょうね」ポワワーンと朝丘雪路が盛り上がっているのを見て、だんだんムカムカしてきましたよ。んもう、あんな亭主のことなんて、知らないわよ。帰って、帰ってください。もう、気分がクサクサするから、川崎敬三とナイトクラブに遊びに行っちゃうわ。

<ムキー>
ナイトクラブでしっぽり踊っている山本富士子と川崎敬三。それを、叶順子は目撃してしまいました。ムキー。仕事で今日は帰れないんじゃなかったの。もう、こうなったわ川口浩と徹底的に遊んでやる。ええ、遊んでやるわ。「俊ちゃん覚悟してね。今夜は帰さないわよ。朝まで踊るのよっ」。

<ドキドキ>
まさか目撃されていたとは知らない川崎敬三は、山本富士子をホテルに誘いました。ためらいつつもオーケーする山本富士子。ホテルに着くと、慇懃なホテルマンが声をかけてきます。「いらっしゃいませ。お泊りでしょうか、お遊びでしょうか」。ドキドキ。ああ、私は人妻。いけないわ、いけないわ。アレー。と、思ったら、部屋のドアを開けると、そこは秘密カジノ。紳士淑女がルーレットに一喜一憂しているのです。

ぺしっ。くたびれた座布団に花札がたたきつけられます。ここは山谷のベッドハウス。おなじ博打でもエライ違いですね。ところが、博打に興じる男たちは、先ほどから高いびきで、グーグー寝ている男が気になってしかたありません。まったく、うるせぇなあ、こいつは。はい、寝ているのは家を追い出された森雅之。ところが、そこにドヤドヤと警察がやってきました。保護願が出ていると、森雅之を連行していくのです。どうやら、キチガイと思われているようですが、いったいナゼ。

<パチパチ>
朝焼けの公園を歩いている叶順子と川口浩。もし運命がちょっと狂ってたら、二人は結婚してたかもね、と叶順子は軽くジャブを打ってみます。もちろん精一杯、可愛く目をパチパチさせて。「俊ちゃん。このまま駆落ちしちゃおうか」。おや反応がない。「ねえ俊ちゃん、あたしを抱いて」。おっと、川口浩は、叶順子の告白を冗談と思って帰ってちゃいましたよ。ムカッ。仕方がないので、家に帰った叶順子。いそいそゴルフ支度をしている川崎敬三に、昨日のナイトクラブの件を持ち出しました。「君、行ってたの」とオドオドする川崎敬三ですが、よっぽど「大事な」ゴルフなんでしょうか、「今夜帰ってきてから、ゆっくり話し合おう」と慌てて出かけていってしまうのです。
と、そのころ、山本富士子もゴルフの支度の真っ最中。おやおや、そういうことだったんですね。森雅之はどうしたんだろう、と心配する小沢栄太郎に、ポンポン啖呵を切って山本富士子は出かけていきました。「しかし、どこにいるんだろうなあ。お前たちのご主人は」と金魚に話しかける小沢栄太郎です。

<てきしゅーっ>
はい、金魚のご主人、森雅之は警察の保護室に留められています。同室には、ヘンな男(西村晃)がひとり。と、西村晃がイキナリ立ち上がって「てきしゅー。総員配置につけーっ」と叫びだしました。うわっ、キチガイです。それもかなり重症のもよう。「匍匐ぜんしーん」、しかたなく一緒に匍匐前進をする森雅之。しかし、さすが西村晃。キチガイをやらせたら、この人の右に出る人はそういませんね。なにしろ、目が飛んじゃってますから。ともあれ、困り顔で匍匐前進をしている森雅之ですが、そこに救いの神ならぬ看守さんがやってきましたよ。奥さんが迎えにきたぞ、と森雅之を保護室から出してくれました。ほっ。しかし、女房のヤツ、ここまでして、僕を探すだなんて、やっぱり愛されてるんだなあ、シミジミ。と、思ったら現れたのは山本富士子ではなくて、朝丘雪路じゃありませんか。どうやら、朝丘雪路は森雅之を探すために、荒技を使ったようです。これは女房じゃないと森雅之が訴えても、警察の人はキチガイを見る目だし、うーん困りました。ヒソヒソ声で、朝丘雪路はテレビへの出演を依頼してきます。もし断わったらどうなるんでしょ。「もう一度、お入りになります?」。ちくしょー。

<ビリビリ>
箱根のゴルフ場にいる川崎敬三と山本富士子。今夜は泊まるつもり、「菊川さんも付き合ってくださるんでしょ」と山本富士子は嫣然と微笑みます。いやぁ、そのぅ。女房が待ってるし、うーむ。と、そこに叶順子の怒りの電報が届きました。うわっ、全部バレてる。夫の浮気を察知した叶順子は、そのまま川口浩のアパートに。「俊ちゃん。ねえ、引き取ってくれない、あたしの身柄」。さすがにここまで積極的に出られると、川口浩だってニヤケ顔になるというものです。と、いきなり蒼白に。なんと、朝丘雪路がドアのところに仁王立ちしてるじゃありませんか。あのっ、そのっ。「まるで押しかけ女房ですわね」と、結婚契約書をビリビリにした朝丘雪路は、「どうぞお幸せに」と出て行ってしまうのです。「代わりにあたしが来てあげる」と、ぜんっぜん悪びれない叶順子は。お父様に離婚の話をしてくるわ、と喜び勇んで出かけていくのでした。とりあえず呆然とする川口浩です。

<ガチャン、ツーツー>
お父さんの小沢栄太郎がひとり寂しく碁を打っていると、森雅之が帰ってきました。良かった、良かった。しかし、森雅之は、テレビに出るんで必要な本を取りにきただけです、と戻る気はなさそうです。と、そこに山本富士子から小沢栄太郎に電話が入りました。「えっ、今夜ウチに帰らない。なにっ、箱根に泊まる。誰と?ん、菊川」。困った表情で、小沢栄太郎は受話器を森雅之に渡しました。「あーら、あなたいたの」「いたのって、キミ」「帰ってこなくたっていいのに」、ガチャン、ツーツー。今度こそ、怒って家を出て行く森雅之です。

困った小沢栄太郎は、行きつけの店「ナポリ」のママに善後策を相談に行くことにしました。しかし、そこにママを狙う恋敵の神林(千田是也)もやってきて、一触即発、それというのも千田是也は叶順子のお父さんだったのです。千田是也が、ウチの娘の婿を誘惑したなと怒れば、小沢栄太郎も、浮気は男が悪いに決まってる、と言い返します。ちくしょー、表へ出ろ。よしっ。と、そこにコツコツとママの靴音が響きます。「ママ」「ママ」、うわーん。

<うっふーん>
山谷のベッドハウスに舞い戻った森雅之。そこに、辺りをロケットオッパイで悩殺しつつ朝丘雪路がやってきましたよ。「ねえんセンセー。好きよーん。ねえ、寝ましょうよーん」。いや、よーんじゃ無いだろ。しかし、そこは知性派の森雅之です。「キミは恋愛結婚かい」と穏やかに言い出し、順々とバカなことは止めるように説得をするのです。うーん、それもそうかも。「ありがとうセンセー」チュッ。ロケットオッパイを振りふり去っていく朝丘雪路なのでした。とはいえ、帰ってみれば「関西に出張にいきます」とメモが残されているだけで、川口浩は不在。ブルンブルン。ロケットオッパイをユサユサさせて朝丘雪路は悔しがるのです。

<ムカッ ムカムカ>
「すると、つね子。間違いなく別れるんだね、菊川君と」と念を押している千田是也。叶順子がコクコクうなづくと、千田是也は意外なことを言い出しました。賛成だ。あの男は前からキライだった。表面は誠実なふりをして、裏では何を考えとるか分からん。さらに、限りなく悪口が飛び出します。ムカ。ムカッ。ムカムカ。ムキー。いくらなんでも、亭主の悪口をそこまで言われたら、叶順子も黙ってはいません。そんなことないわ、と反論開始です。仕事熱心だし、浮気するくらいの甲斐性がなくちゃ、男として失格よ。「じゃあ、なぜ別れるんだい」と千田是也。グッとつまって、叶順子は何も言い返せません。

<プンスカ>
そのころ、箱根の温泉旅館で、差し向かいでお酒を飲んでいる山本富士子と川崎敬三。「松代さん、後悔してない」「後悔するくらいなら、初めから来やしないわ」。山本富士子が上目遣いに川崎敬三を見上げます。ずっきゅーん。色気にノックアウトされた川崎敬三は、先にお風呂に入ってくるよとソソクサ。うふっ。余裕の笑みで、そんな川崎敬三を見送った山本富士子ですが、ふと部屋にかかった絵を見て、顔を曇らせます。き、金魚。うーん、落ち着きません。そうだ、プールで泳ごう。なんか突然に、夜のプールで泳ぎだす山本富士子。いちおう、これは水着ショットのサービスってことなんでしょうかね。ま、それはともあれ、気を取り直してやってきた川崎敬三がしつこく「もう一度聞くけど、後悔しないね」と言い出しました。「しない」、顔が接近します。チュー、と、いきなりプールサイドの電話がリンリン鳴り出しました。はい、もしもし。ええっ。なんと小沢栄太郎から電話で、森雅之が自動車事故で重症を負ったそうです。あわてて車を呼んで、箱根から東京に戻る山本富士子なのでした。しかし、帰ってみれば、それはウソ。森雅之の居場所すら分からないっていうじゃありませんか。「バカにしないでください」と山本富士子はプンスカ怒ってます。と、そこに電話が鳴りはじめました。。「ちょっと誰かいないの」、はい、ここで映画は最初のシーンに戻りました。

<ハーハッハ>
ホテルの一室に集まった三人。約束の時間が来て、マダムX(月丘夢路)が現れましたよ。赤、青、黄色の灯りに照らされて、まさにマダムXの名に相応しい幻想的な雰囲気。「あたしの主人は」「誰なの、あなたは」「どこにいるのよ、あたしのハズは」と口々に言う三人を抑えつつ、あなたたちは欲が深い、と断言しちゃうマダムX。「いいところを見ずに、悪いところばかり見ていれば、人の物が欲しくなる。現にあなたがた、たとえひと時とはいえ、お互いにご主人を交換するような大それた考えをお持ちになったんじゃありませんか」。ギクッ。ギクッ。ギクッ。よく知ってるわね。「ふふふ、だってあたくしは人間じゃありませんもの。幻ですわ。みなさんの心の中に棲む悪魔のように、貪欲でワガママな心の亡霊ですもの」。確かに赤青黄色ライトな月丘夢路は怖すぎで、思わず三人はビビってしまいます。しかし、気の強い山本富士子は反論。「でも、あたしたち女は、心から男を頼り、信頼できてこそ本当に幸福なんだわ。女の全てを捧げて、何の悔いもない男を求めて、どうしていけないのかしら」。「ハーハッハ。どうやらみなさん、男を買いかぶりすぎていらっしゃるようですね。トンデモない。そんな男がいるもんですか。いればバケモンですよ。あたしに言わせれば、気が小さくて、ワガママで、威張りんぼで、その上、女好きで、奥さんがいなくなると一日だって生きていけないんです。それが男の正体ですわ」。えーと、ほっといてください。

「もし、どうしてもみなさんがマダムXの姿をご覧になりたければ、電気をつけてご自身の体を鏡に写してごらんなさいまし。そこにいつでもマダムXがおりますわ。ではみなさん。どうか広い心でご主人を見てあげてくださいましね。でないと、今度は本当に誘惑してしまいましてよ。悪魔の優しい心で。ハーハッハッハッハッ」。

マダムXは忽然と消えてしまいました。狐につままれた気分の三人。悪魔だなんてバカにしてるわ、と言いつつも、でも、鏡が気になります。鏡に自分を写して、「あたしがマダムX」とつぶやく朝丘雪路に、「そうよ、悪魔のように貪欲なんだわ」と反省する叶順子。

ハーハッハ。車に乗った小沢栄太郎、千田是也。そしてマダムXことママが笑っています。「うまく行きましたな」「いやあホッとしましたよ」。はい、マダムXの芝居は、この三人が仕組んだのでした。ほら、三人の奥さんたちは、いそいそと車に乗り込んでいますよ。きっと、早く家に帰って、夫の帰りを待つんでしょう。まずはメデタシメデタシです。

♪亭主なんて、亭主なんて、みんな弱くて寂しがり~ではおしまーい♪


えーと、この映画のテーマは「不倫ダメ」ということでいいのかな。まあ、一言でいってしまうと、見も蓋もないような気もしますが。

見所としては、山本富士子のトバシっぷりと、森雅之のヘタレっぷりのコントラストの面白さ。それに、叶順子もとてもキレイに撮られていて、うれしい限りです。あと、ギリギリまで謎めいていたマダムXもいい感じです。もっともオープニングのクレジットでマダムXが月丘夢路なのはバレバレなんですけどね。それと、西村晃のキ印っぷりも、ヘンな迫力があって楽しかったです。

しかし、この映画を観てて、ずっと心に何か引っかかっていたんです。んーーーー、朝丘雪路の顔が誰かに似ているっ。うーーむ。あっ! なんか朝丘雪路って、田中真紀子に似ています。それに気づいてからは、もう朝丘雪路が朝丘雪路に見えず、とても困りました。







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【映画】秘録おんな寺

2008-12-03 | 邦画 は行
【「秘録おんな寺」田中徳三 1969】を観ました



おはなし
岡っ引きに追われ、根岸にある芳照寺に逃げ込んできたお春。しかし、そこはトンデモない尼寺で……。

大映末期に咲いた徒花、安田道代の主演作です。もう少し生まれるのが早ければ、もっといい役にも恵まれたんでしょうが、なにしろ時代はエログロ路線に入るあたりですからね。なんていうかキワモノ路線ばかりに出演しているようなイメージが付きまといます。


根岸の芳照寺が映し出されます。「御仏に仕える尼の数、門跡あわせて三十人。この寺、ただの尼寺ではない。門跡には代々将軍家ゆかりの息女がなり、ために、この寺には十万石の格式が与えられている。人々はこの寺を俗に、根岸のおんな寺とも呼ぶ」だそうですよ。まあ「十万石の格式」を名乗る寺は、それなりにあるので、念のため。

ともあれ、その芳照寺に、今、お春(安田道代)が飛び込んできました。どうやら岡っ引きに追われているようです。当然、お寺を支配するのは寺社奉行で、町奉行配下の町方はウカツに出入りできません。「ちくしょう、こっちへ出て来い」と岡っ引きは悔しがりますが、お春はあっかんべーです。

「お願いでございます。私を尼さんにしてくださいませ」と、優しそうな尼さんに頼むお春。うーん、門跡さまに聞いてみないと。はいはい、待ちます待ちます。なにしろ、寺の外に出たら捕まっちゃうし。じーっ。じーっ。待てど暮らせど、お春は一室に放っておかれます。「ちぇっ。ひと一人、坊主にするだけなのに」ブツブツ。おっと、ようやくお呼びがかかりましたよ。まったく、待たせるんだから。

「頭が高い」。ははぁーっ。平伏しているお春の前に、門跡の紫月院(しめぎしがこ)が静々とやってきましたよ。しかし、この紫月院、どうみてもイジワルそうな顔をしています。案の定、蛇のような目付きで、「そなた、この寺に入った以上、どのようなことをする覚悟じゃ」と言い出しました。どのようなことって、言われてもねえ。「はい、どのようなことでも」と答えるしかないじゃありませんか。「わらわの足を舐めい、と申したらどうする、どうなのじゃ」と嵩にかかる紫月院。グヌヌ。ムカツクけどしかたない。ぺろっ。クハハハと笑った紫月院は、お春の髪を無造作に切り落として、スタスタと行っちゃうのです。なんか気分悪ぅ。

「こうして、お春は芳照寺で御仏に帰依する身となった。尼としての名前は俗世の時の"お春"から取って、春香。春の香りと書く」だそうで、つるっぱげの春香は、ペーペーの尼として雑巾がけライフをスタートさせるのです。とはいえ、この春香、ただのつるっぱげではなく、何か目的を胸に秘めている様子。早速、紫月院の部屋に行こうとしていますよ。と、しきり戸では門番の恵秀(田中三津子)ががっちりガード。お前のような新参者がここから中に入ることは許されん、と怒りつつ、奥に住む尼さんたちを「さりげなく」紹介してくれたりします。

三老は妙順(松村康世)。さる北陸の有名なお寺の出だそうで、春香を寺に入れてくれたのも、この人です。顔つきからすると、いい人っぽい感じです。
二老は教円(中原早苗)。先々代から仕える、いわば、この寺の主だそうです。なるほど、確かに下から這い上がったズルそうな顔をしていますね。
一老は仙珠(長谷川待子)。西国の大名のご落胤だそうで、そう言われれば、ちょっと高飛車な感じかな。
そして、「門跡紫月院さまは、かしこくも現将軍家のおん従妹姫ぎみにあたらせられる」そうです。

はい、その紫月院はタバコをぷかぁと吐き出しながらアクビ中。どうも退屈だわ。そうだ、新入りがいたじゃない。「今宵は、あの女清めてやろう」と冷酷そうな笑みです。ニヤリ。

尼さんが一同に会した中、不安そうな春香。どうやら清めが始まるようですよ。ズリズリと引き出される仏像。一老の厳しい声が飛びます。「衣を脱ぎなさい」。「脱げって」と唖然とする春香に一老は続けます。「今宵はことのほか寒さが厳しく、これから生涯お仕えする御仏が寒いと言っておられます」。えーと、つまりハダカになって、仏像にしがみつけということですか。イエース。

「はよういたさぬか。御仏さまにお風邪を引かすつもりかえ」とニヤニヤしている紫月院。しかたありません。バサっと衣を脱ぎ、腰巻一丁になるつるっぱげ春香。こうですか? もっと。えーと、こうですか? だめ、もっと。うわーん、こうですかぁ?。春香がハダカでクネクネしているのを、紫月院は邪悪な笑みを浮かべながら、楽しそうに見物しているのでした。

それから数日後。「紫月院さま、本日はお退屈しのぎの例の品が届きまする」と一老が紫月院に言上しています。なるほど、重そうな長持が寺に届きましたよ。うっ、重い。持っている尼さんたちは必死です。しかし、ヨロッ。ドスン。あーあ、落としちゃいました。落とした英信(水町由香里)は真っ青です。なぜかというと、「針供養じゃっ」。ほら、一老が怖い顔をしています。

ギリギリ、ギリギリ。ハダカにむかれて、逆さ吊りにされる英信。そして、英信と一緒に長持を運んでいた尼さんたちに、ジャジャーンと燭台が渡されました。もちろん、燭台の先には、蝋燭を刺すための針がキラリーン。「そなたたち、英信の針供養をいたせ」。躊躇する尼さんたち。「えーい、英信と同じ、針供養を受けたいか」と紫月院はキレる寸前ですよ。と、そこに「待って」と一発で衣を脱ぎ捨てた春香。「お願いでございます。どうぞ、あたしも英信さんと一緒に」。

これに感動した紫月院は、みんなを許してくれたとさ、めでたし、めでたし。。。になるわけもなく、春香も逆さ吊りになっちゃいました。紫月院の命令で、みんなが燭台の針を刺していきす。ぷすっ。うっ。ぷすっ。むぎゃ。ぷすっ。むーーん。やっぱり、ウレシそうな顔で見物している紫月院なのでした。

寝床に戻った尼さん一同。ぷすぷすされた英信は、一緒に長持を担いでいた浄念(小林直美)に「あんたが悪いんだ」とキレまくり。「およしよ、およしったら。あんたがよろめいたのは、浄念さんのせいばかりじゃないよ。あの長持、何が入っていたか知らないけど、ヤケに重かった。それで、ねえ、あんたたち。あの中の品物が動いたような気がしなかったかい」とみんなに聞いてみる春香。そういえば、何だか。一月まえにもあったよね。うんうん。それを聞いて、春香は顔色を変えるのです。

さて、新人尼は雑巾がけ以外にも、夜回りのお仕事が。しかし、夜回り中、春香をガバッと空き部屋に連れ込む尼さんがいるじゃありませんか。なんと、しきり戸の番をしている恵秀です。ハーハー。ハーハー。やばい、興奮している。「私はあんたと二人きりになりたかったんだよ」ハーハー。あれーっ、押し倒される春香。で、どうやらコトが終わったもよう。しかし、こうなれば、あとは春香のペースです。「ねえ、恵秀さま。あたし、一度しきり戸の中が見たいわ」「そんな、そんなこと」「ねぇん、いいでしょ」。

まんまと、奥に潜入することに成功した春香は、紫月院の部屋をそぉっと覗いてみました。やっぱり。紫月院は長持に若い役者を入れて、寺内に連れ込み、あっはんうっふんの真っ最中だったのです。おやっ、春香が側にあった短刀を見つけ、鞘をそっと抜きました。いったい何を。ガタン。物音にビビって、ササッと逃げ出す春香。しかし、三老に見つかってしまったようです。しかし運の良いことに三老はいい人ですから、「すいません、見逃してください」と春香が言うと、あっさり許してくれましたよ。ただし、「分かりました。今宵のことは、私は忘れます。その代わり、あなたも忘れるのです。たとえ何かを見たとしても、たった今、この場限りで」。うーむ、何だか謎めいてきましたね。この寺には何が隠されていて、そして春香の真の目的とは、何なのでしょう。

朝も早くから、尼さんたちはお掃除、お掃除。と、仲間の浄念さんがオエーッとしてますよ。「どうしたの大丈夫?」、オェーッ。「あんた、ひょっとしたら赤ん坊が」、オエーッ。とりあえず、オエーッは、春香と浄念さんだけの秘密ということにしたのですが、逆さ吊りにされて、浄念さんを恨んでいる英信も、その秘密を知ってしまったようです。大丈夫でしょうか。

はい、大丈夫じゃありませんでした。ピシィッ、パシィッ。紫月院が狂ったように、浄念さんにムチをふるっています。あうっ、はうっ。苦しむ浄念さん。そして、とうとう浄念さんは自らの舌をガブッ。死んでしまいました。止めに入るのが一瞬遅く、浄念さんを死なせてしまった春香は、思いっきり紫月院にガンを飛ばしてみますが、もはや後の祭りです。

態度が悪いということで、春香はお仕置きを受けることに。紫月院と一老が監視するなか、池に入れと命令されるのです。パリン。薄く張った氷を踏み破りながら、池に入る春香。というか、安田道代は演技抜きで寒そうです。俳優って、タイヘンな仕事ですね。ザパーッ。水を頭からかけられる春香。「二度と紫月院さまにたてつくようなこと申してみよ。その時こそ二老ともども、この寺から追放じゃ」ザパーッ。「二老ともども」とつぶやく春香に、またザパーッ。

懲りない春香は、紫月院のお出かけにあわせて、またしきり戸の奥に潜入しました。スタタ。「さあ、逃げるんなら今のうちだよ」。しかし、救いにきたのにも関わらず、若い役者の梅之助はノンキに酒なんか飲んでますよ。「だからバカだ腑抜けだっていうんだよ。殺されてもいいのかい」。「殺される?」と聞き返す梅之助に、「あたいの兄貴も、あんたと同じように、紫月院のワナにかかり……」と、自分の兄のことを話し始める春香。そう、能狂言師だった春香の兄は、一老に拉致されて、この寺に連れ込まれました。そして、紫月院の愛撫に答えなかったために、ムチで打たれ、素っ裸で堀に投げ込まれたのです。春香は、その証拠を掴むため、顔なじみの岡っ引きに頼み、追われているフリをして、この寺に潜入したのでした。さあ、逃げるよ。と、部屋を出たら、紫月院が怖い顔でギロリ。ガーン。紫月院は体調不良で、そうそうに寺に戻ってきていたのです。

ビシッ、バシッ。縛られてムチ打たれている春香。「将軍さまのイトコだとかナンだとか、澄ました顔しやがって。あんたのやってること、ありゃいったい何だい」「わらわが何をしようと、お前たちの知ったことではないわ」、ビシッ、バシッ。ムチ打ちにも飽きた紫月院が去ると、春香の脱出大作戦開始。燃えている蝋燭に、後ろ手に縛られた自分の手を近づけます。ジリジリ。ジューッ。肉の焼ける匂い(想像ですが)と共に、ブツッと縄が切れました。よっしゃ、脱出だ。と、思ったら、そこに三老さんが。ギクッ。しかし、しつこいようですが、三老さんはいい人だったので、ヨロヨロでボロボロの春香を自室に匿ってくれたのです。サンキュー、三老さん。少し休憩して、元気を取り戻した春香は、「三老さまありがとうございます。お別れします」と言って、部屋を出ました。もう、出た瞬間に、目をグワッです。そのまま、お隣の二老さんの部屋に侵入。どりゃー。「あんたもカワイソウな人だ。あんた、この寺から追い出されるんだろ。あたしは、門跡と一老が話しているのを聞いたんだ。そのあんたが、何も紫月院に忠義立てする必要はないじゃないか」。しかし、二老は何も話そうとはしません。まあ、得体の知れない春香の言葉を信じるわけもないですね。

「言わないのかよ。言わないなら仕方が無い」、チャキーン。カミソリを振りかざす春香。なにしろ、頭をつるっぱげにするのに、みんなが使いますからね、尼寺にはカミソリがゴロゴロ転がっているのです、多分。い、言う。言います。そう、やはり春香の兄、巳之吉はここで殺されていました。そして、二老は後のために全てを日記に書き残し、さらには巳之吉の遺品である鼓まで、後生大事に取ってあったのです。「この鼓、貰っていくよ。あたしは、この鼓の持ち主の妹」と、台詞をビシッとキメた春香は、スタスタ去っていくのでした。えーと、殺す価値もない、哀れまれちゃった二老はというと、うぎゃーっと奇声を発しながら一老の部屋に乱入。「一老さま、もはやこの上は、ともども地獄に落ち、罪の劫火に焼かれましょう」とか言いつつ、短刀をぐさーっ。そして、自らも首を刺して死ぬのでした。えーと、そうですか。はい。

さて、紫月院の部屋に乗り込む春香。「門跡さん、この鼓に見覚えがあるだろうね。お前さんは私の仇だっ」「そうか、ワケありげなおなごだと思うておったが。仇。ヒャーハッハ」。よく分かりませんが、紫月院は悪の大王みたいになってきましたよ。ギラリン。かたや、正義のカミソリ。かたや、悪の懐剣を持って睨みあう二人。ひぃーっ。巻き込まれた梅之助が、「なぜか」置いてあった油ツボにけつまずいたりしています。さらに、紫月院が無礼者と燭台を投げつけたりして。

ボボーッと燃え上がる炎に遮られ、春香は紫月院に近づくことができません。「たとえ、この炎に焼かれようとも、そち如き下賎の者の手にはかからぬ。キャーハッハ」。ほとんど、本能寺の業火の中に斃れた織田信長のようなノリで、紫月院は自害して、炎の中に消えていくのでした。ボボーッ。えーと、これは勝ち、なのかな。

ま、それはともあれ。それから数年後、日本各地で、鼓を持った尼さんを見たとか、見ないとか。いろいろあったようです。おしまい。


えーと、この映画のポイントを挙げるとすると、ハダカで仏像にクネクネ。ハダカで吊るされ、針をぷすぷす。それに、ハダカでムチ打たれて、イヤーン。と、この三点だと思われます。しかし、言葉で書くと凄そうですが、実際のところは大映のお上品なオブラートが二重三重にかかってますから、ぜんぜんたいしたことないです。

じゃあ、安田道代の復讐譚として観たらどうか。これもねえ。一老、二老は勝手に潰しあい、紫月院も完全に自爆ですからね。せめて、兄の形見の鼓をえいっと投げつけるとかアクションがあれば良かったんですが。それが、紫月院の頭にゴィーーーーンと当たったりすると、別の意味で大笑いできて、随分楽しい映画になったのに。惜しい、惜しすぎます。

まあ、そこらへんの中途半端さを含めて、まさに大映末期の映画。ハダカ路線に開き直った日活や、最初から開きっぱなしの東映に比べると、どことなく「上品なお嬢様が、ムリに汚い言葉を使ってる」みたいな、倒錯した感じが漂ってきてナイスです。







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【映画】甦れ魔女

2008-12-01 | 邦画 や~わ行
【「甦れ魔女」佐藤純彌 1980】を観ました





おはなし
東京オリンピックで女子バレーが正式種目になって以来、常に決勝で戦ってきたソ連と日本。そして今、モスクワでの両国の戦いを直前に迎え……

東映と、ソ連のモスフィルム、ソビンフィルムの合作映画です。監督は、合作映画なら「この人」の佐藤純彌。協賛に日本体育協会や、日本バレーボール協会、さらにJOCまで加え、お祭りムードをバッチリ盛り上げるはずだったのですが、まあ、あんなことになってしまったのは残念でした。映画の作りとしては、セミドキュメンタリータッチというか、実際の両国ナショナルチームの練習、試合風景と、架空のヒロインのドラマパートをうまいこと繋げた意欲作です。

まずは、東京オリンピックのニュース映像から映画は始まります。このオリンピックで初めて正式種目になった女子バレーボールの決勝戦。激突するのは、ソ連と日本です。もちろん、ここでは「東洋の魔女」と言われた日本チームが、初めての金メダルを手中にしたのです。そして、1968年のメキシコ五輪。やっぱり決勝戦はソ連と日本。今度はソ連が優勝です。そして、1972年のミュンヘン。三度目のソ連対日本の戦いは再び、ソ連に栄冠が輝きます。

そして、「1976年。モントリオールオリンピックにおいても、決勝戦に進出したのは日本とソ連だった。四度目の対決が迫っていた」そうです。さあ、どうなる。

と、ここはモスクワ郊外の湖。ビキニな女の子で、一方の主人公であるターニャ(タチアナ・ワシレエヴァ)が、うわっ、バレーボールの決勝戦をテレビで見なくちゃと焦っています。慌ててボーイフレンドのワーニャとヒッチハイクで、モスクワに戻るターニャ。ムダに緊迫したシーンの連続で、どうにかモスクワのアパートに帰ったターニャは、めでたくオリンピックを観戦することができました。ちなみに、ターニャは英語を学んでいる高校生という設定。台詞のみの話ですが、両親がユネスコで働いている云々、とありますので、恐らくはかなりエリートの娘さんですね。まあ、そうでなくちゃ、優雅に湖で遊んだりとかもできないでしょうし。ともあれ、ソ連のエリート娘だと思っておいてください。

はい、今度は日本の田舎。日本側主人公である、めぐみ(磯貝恵)がお母さん(中村玉緒)を手伝って、ミカンに農薬をバリバリ撒いています。その肩にはポータブルラジオ。やっぱり、聞いているのはソ連と日本の女子バレーボール決勝戦のようす。

ということで、二人の様子と決勝戦を交互に映しつつ、結果は日本の勝利。やったぁ↑なめぐみと、ガックリ↓なターニャ。しかし、誰が予想したでしょう。この二人が、次のオリンピックを支える大黒柱になるだなんて。えーと、みんな予想してますね、はい。

さて、めぐみサイドのお話。めぐみの高校にバレーボール協会のお偉いさん・増田(三橋達也)がやってきました。目的は監督の吉岡(西郷輝彦)を口説いて、かつての名門、安芸津産業の監督に就任してもらうこと。しかし、西郷輝彦は高校の監督の方が向いていると断わり、かわりに有望なめぐみを安芸津産業に推薦するのです。とは言え、三橋達也としては選手発掘よりも、次のオリンピックを見据えて、有能な指導者発掘が目的だったらしく、話は物別れに。

ゲボッ。うわっ、めぐみのお母さん、中村玉緒が血を吐いています。どうやら、原爆に被爆した影響で白血病を発症したもよう。江田島のおかげんさん(お祭り)の美しい風景をバックに、玉緒ちゃんはあっという間に無念の死を遂げてしまうのでした。そして、お葬式の席。めぐみを誰が引き取るかで、親戚が醜い争いをしています。そんな光景を見ていられずに、外でサメザメと泣いているめぐみ。これは俺がどうにかするしかない。監督の西郷輝彦は、自分の意思をまげて、めぐみのために一肌脱ぐことにしました。「先生は安芸津産業の話を引き受けようと思っているんだ。めぐみも一緒に来るか」。コクコクと頷いて、うわーんと泣き出すめぐみ。西郷輝彦は、そんなめぐみの肩をやさしく抱くのでした。

さて、ターニャの方に視線を移しましょう。モスクワの高校チームの主力選手のターニャのもとに、シベリアのバレーボールチームの監督・カメネッキー(以後カメと略)がスカウトをかけてきました。エリート娘で、外国語大学への進学も決まっていたターニャは「シベリアじゃあね」と断わってはみますが、「君が入れば国内選手権を取れる」というカメの言葉に、思わずグラグラです。えーと、どうしよう。よし。決断の早さが魅力なターニャは、早速シベリア行きを決心しました。とりあえずボーイフレンドのワーニャに、「ワーニャ、私を忘れないでね」と釘を刺すのは忘れませんが。

しかし、シベリアですよ。木を数えるしかない場所ですからね。スターリン時代だったら、ほとんど死罪と同じような場所に行くなんて、ターニャもけっこう度胸あります。

とはいえ、シベリアに行ってみると、カメは豹変。鬼のようなトレーニングにターニャはすぐさま泣き言モードに突入。しかし、そこはチームメイトのありがたさです。モスクワから来たエリート娘のターニャを、強引にシャワー室に連れ込んでくれて、頭からお湯をぶっ掛けてくれました。そして、聞くのです。「バレー好き?」。「好きよ」と答えるターニャに、重ねて「他に何が好き?」と聞くチームメイト。「皆に好かれること。好きになって」。えーと、ターニャはたくましいお嬢様タイプですね。

ピューン。アエロフロートは、ソ連のバレーボールチームを乗せて飛びます。目的地は日本。モントリオールのエース選手、スベトラーナなどに混じり、ナショナルチームのコーチを兼ねるカメの秘蔵娘、ターニャも一緒です。

早速、ソ連チームと日本チームの親善試合が行われました。バシッ、バシッ。快調にアタックをキメるターニャの姿を観客席から見守っているのは、西郷輝彦とめぐみです。「よく見とけよ。あれがターニャだ」。はいっ、ジーーーーーーーッ。いや、めぐみ、見すぎだって。試合後、三橋達也の紹介で、カメとターニャ、西郷輝彦とめぐみがお食事をすることになりました。新進気鋭の指導者同士。そして、その秘蔵娘同士ということで、意気投合するみなさん。よく分かりませんが、心が通じているようでなによりです。

ヘンな刺激を受けたのか、西郷輝彦の猛特訓が始まりました。「ちきしょー、新しい監督が来てからひと月。朝から晩までランニングだ」とこぼす選手に、エースのイシが答えます。「カワイコちゃん連れて乗り込んできやがってさ、私ら踏み台に自分だけイイカッコしようってんだ」。なんだか、西郷輝彦の特訓は、めぐみの立場すら悪くしそうな雰囲気です。それを知ってか知らずか、タイヤを引っ張って走るとか、ボールぶつけまくるなど古典的な特訓にまい進する西郷輝彦。倒れたちょっと太めの選手には「おら、お前鯨じゃねえんだ。起きてこい」とかNGワードも連発です。おっと、とうとうエースのイシがキレました。プッチーン。練習を堂々と退席したうえ、夜の体育館にめぐみを呼び出しです。スパイク30本。どっちが先にブロックをぶち抜けるか勝負だよ。「あんたが勝ったら一人前として認めてやるわ。そのかわり、あたしが勝ったら、二度とでかいツラさせないよ」。おりゃあー。練習以上に張り切るイシ。しかし。あうっ。おや肩を痛めたみたいです。でもまあ、めぐみにとっては、これからでかいツラできるのでラッキーでしょうか。

さて、シベリアでも、カメが気合入りまくり。「君たちはたるんでる。たとえ練習試合であっても、それが生涯で最後の試合だと思え」と檄を飛ばしてますよ。しかし、しらーっとしている選手たち。むっかー。よし、お前ら髪を短く切ってこい。監督の命令とあって、泣く泣く髪を切ってくる選手たち。しかしターニャはひとり反抗して、ロン毛カツラにフルメイクという、ひとりロシア革命を遂行してみるのです。当然、カメは激怒して、お前なんか出て行けーっ、ということに。ターニャはロシア人らしく、「チェーホフの”三人姉妹”のように、モスクワへ」と文芸的な台詞を残し、泣きながらモスクワに帰るのでした。

しかし、モスクワに帰れば楽しい生活が。誕生日パーティかなんか開いてもらったりして、ついでにワーニャにプロポーズされたりと、愉快なターニャ。おっと、そこに電報が来ましたよ。「許し乞う。誕生日おめでとう。帰り待つ。チーム一同」。えーと、カメ、いきなり詫びいれてますけど。どうします?

ターニャの戻ったシベリアチームは快進撃。いきなりリーグ優勝を成し遂げちゃいました。多分、シベリア開闢以来の快挙だったのかどうか知りませんが、盛大な祝賀パーティまで開かれる騒ぎです。と、その祝賀会会場にやってきたのは、ソ連いちの人気歌手バルテネフ。どうみてもG・ハリスンのパチモノにしか見えませんが、歌うのはロシアンムード歌謡なのが、玉に瑕です。しかし、そんな人気歌手を見たことのないシベリア出身の選手たちにとっては、彼はまさに白馬にのった王子様状態。そうなると、モスクワっ子のターニャとしては、後に引けません。「三日で射止めるわ」と宣言して、「バルテネフをメロメロにしてあげるわオーッホホ作戦」の開始です。

はい、いきなり二人は結婚しました。えーと、おめでとう。

ターニャがそんなことをしている間も、練習に励むめぐみ。エースのイシが肩を壊し、トレンチコートを着て、港をひゅるるーっと去っていったので、エースに昇格です。やっぱり、バレーボール選手は、練習してナンボのようですね。

そして迎えた、1978年のレニングラード世界選手権。背中のCCCPという文字に恥じない迫力で、ドリャアっとスパイクをキメまくるターニャの姿があります。しかし、大方の予想を裏切り、ソ連はキューバに敗退。日本もキューバに負け、1位キューバ、2位日本、3位ソ連という大番狂わせが起こったのです。ソ連の監督や、ベテランのスベトラーナあたりが、粛清の恐怖かなんか知りませんが、真っ青になっているのを見て、自分まで暗くなるターニャ。そういえば、「結婚したの忘れてたわ」。ということで、バレーボールから逃避して、(親切に)観光名所をさまようターニャとGハリスン(のパチモン)。しかし、パチモンがサイン攻めにあっているのを見ると、生来の負けん気がムラムラとターニャの心に忍び寄ってきましたよ。「許して、私が悪いの。さようなら」とイキナリ、お別れを宣言しちゃうのです。パチモンですか。もちろん、捨てられた子犬のような目をしてますけど。ついでに、「私は外国語大学の学生に戻ります」と、ターニャはバレーボールも辞めちゃうのでした。なんてマイペースなんでしょう。

モスクワに帰り、ワーニャの部屋の呼び鈴をピンポン、ピンポン、ピンポンとしつこく連打するターニャ。しかし、いつまでも待ってると思ったワーニャは自分以外の女と結婚しちゃったうえに、その奥さんに勝ち誇った目をされちゃいましたよ。むきー。思わず、夜のモスクワを彷徨して涙ポロリンのターニャです。っていうか、これが何の映画だか分からなくなりそうです。

一方、めぐみはマジメにバレーボール道に精進しているせいか、チームは実業団から日本リーグにステップアップ。そして、三橋達也が西郷輝彦に、めぐみをナショナルチームにくれと言ってきましたよ。「それはないでしょ先輩。やっと、ここまで這い上がってきたんですよ」と抗議する西郷輝彦ですが、三橋達也としてもナショナルチームの強化のためなら、どんな悪者にでもなる覚悟です。そのまま、安芸津産業の社長(丹波哲郎)に直訴する三橋達也。んーーーーっ、本人にキメさせよう、と丹波哲郎も玉虫色な返事です。

めぐみが社長室に呼ばれました。事情を説明されためぐみ。さあ、どうする。「はい、全日本に行かせてください」。ガーーーンな表情の西郷輝彦。俺が。俺が育ててきたのに。

早速、全日本合宿に参加するめぐみ。と、ここで大人の事情が発動。練習風景は、ホンモノの全日本ナショナルチームの練習風景です。鬼のような形相で、小島監督が選手を怒鳴りまくり、スパルタな世界が展開しています。当然、いくらカット割りでごまかしても、素人のめぐみこと磯貝恵が練習に参加するのはムリというかムチャなので、めぐみはボールを拾ったり、床掃除をしているのみ。それなのに、磯貝恵の表情がガチガチに強張って、怯えた目付きをしているのが、なんともリアルでした。まあ、それはともあれ、お話の都合上、他の選手と交錯するめぐみ。きゃーっ。はい、足が折れました。これで、全日本の練習に参加していない言い訳が立ちます。以上、大人の事情の時間でした。

モスクワでブラブラしているターニャ。そこにシベリアの監督から、ナショナルチームの監督に成り上がったカメが迎えにきましたよ。「君がいなくても……いや、君がいなくてはやれない」と殺し文句を吐くカメに、グラっとくるターニャです。

ということで、日ソ対抗バレーボール大会が大宮で行われました。エースとして参加するターニャ。しかし、どうにも調子があがらず、カメとしても悩みどころです。そうだ、ライバルのめぐみに会わせれば、ターニャも奮起するかもしれない。三橋達也に、メグミはドーシテます、と聞いてみるカメ。おお、骨オッテマスか。じゃあオミマイにイキマショー。ソーダ、それがイイ。

ぴゅーん。新幹線は一路京都に。なんだか、ジャパニーズお寺を見学しているカメとターニャ。おや、怒鳴り声が聞こえますよ。なんでしょう。

「歩けぇ、自分の足で歩いてみろーっ」「松葉杖を捨てろ。捨てろーーっ」。西郷輝彦がめぐみに怒鳴っていました。唖然とみているカメ、ターニャ、三橋達也の前で、ヨロヨロと歩きだすめぐみ。「歩けるだろ。飛べるよ。飛んでみろ」と西郷輝彦の要求はエスカレートします。「モスクワに行きたくなののか。オリンピックに出たくないのか」と怒鳴る西郷輝彦に、「行きたい。出たい」とジャンプしてみるめぐみ。「左足を使ってなーい」「できませんっ」。「怖がるから痛いんだよ。これはどうだっ」と、日本古来のボールぶつけを始める西郷輝彦。どりゃ、どりゃ、どりゃーっ。日本のバレーボール選手たるもの、ボールをぶつけられると、自動的にレシーブ体勢をとるように条件付けをされていますから、めぐみは半ベソでレシーブを開始するのです。

「泣いてんのか」「泣いてませんっ」。バコッ。またボールが直撃です。「じゃあ笑ってみろ」、ボスッ。「笑ってみろ。泣くんじゃない、笑うんだ」。思わず、引きつった笑いを浮かべてみるめぐみ。「止めてっ」とターニャが走り出します。そのターニャの姿を見て、恥ずかしくなったのか、ダッシュで逃げるめぐみ。はい、ふたりは夕暮れの海岸に。やさしく抱きしめるターニャの胸にすがってシクシク泣くめぐみ。「あの人たちは、勝つことしか考えていないのよ。私たちの体は鉄じゃないのにね」とターニャに慰められて、今度はウワーンです。

ま、そんなこんなで、1979年8月。モスクワ・プレオリンピックが行われることになりました。新興国キューバに日本は快勝し、決勝戦はソ連対日本。そして、日本が再び勝利をおさめるのでした。しかし、全ては本番のため。雪辱を期し、練習に励むソ連ナショナルチーム。他方、オリンピック連覇を狙い、アホみたいな特訓に励む日本ナショナルチーム。そして……。

ロッキーみたいな音楽をバックに、西郷輝彦とめぐみが砂浜を走っています。波がザッパーン。しかし、そんなことを気にせず、二人はどこまでも走り続けるのでした。


こんな宿命のライバルであるソ連と日本が、モスクワオリンピックでどうなったのか。もちろん、一定以上の年齢の方はご存知ですね。アフガン侵攻に反対して、アメリカや日本はモスクワオリンピックをボイコットです。そして、次のロサンゼルスオリンピックは、報復にソ連や東欧諸国がボイコット。結局、両者がともにオリンピックの舞台に揃うのは、1988年のソウルオリンピックまでお預けになってしまいました。ついでに言うと、日本の女子バレーボールチームは、幻のモスクワ以降、実力が低下。今のところ、一度も決勝戦には進めていないのです。

しかし、なんだかヘンテコな映画ですが、熱い気持ちはバッチリ受け取りましたよ。ホンモノのナショナルチームの、強烈としか言いようのない練習風景。そして、ベタだけど燃えるスポ根な展開。ついでに、ターニャのお嬢様っぷり。なんだか、観終わってスゴク得をした気分になれる一本でした。







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