いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】明治大帝と乃木将軍

2007-08-31 | 邦画 ま行

【「明治大帝と乃木将軍」小森白 1959】を観ました



おはなし
日露戦争で乃木将軍は、、以下略。ともあれ夫婦で殉死したのです。

とりあえず「明治天皇と日露大戦争」の中から、乃木将軍のエピソードを抜き出し、さらに明治天皇の崩御の後、殉死するまでを描いた作品です。

さすがに、同じ話を何回も書くのは面倒くさいので、詳細は「明治天皇と日露大戦争」に譲ることにして、この映画であらたに付け加えられたエピソードは、以下のとおり。



予備役に入った乃木将軍(林寛)は、田舎暮らしを楽しんでいます。とりあえず畑なんか作ちゃって、エコ生活を満喫中。気分はヒッピー系芸術家でしょうか。ラブアンドピース。



思い起こせば、西南の役の時。部下を率いて戦っていた乃木将軍は、西郷隆盛の賊軍に軍旗を奪われてしまいました。とりあえず軍旗を奪われるのはとっても恥ずかしいことなので、自決しようとする乃木将軍。しかし同僚の児玉源太郎(沼田曜一)にたしなめられて、さらには明治天皇(嵐寛寿郎)おん自ら乃木に気にしないようにとのアリガタイお言葉。これでどうにか自殺を思いとどまった乃木将軍ですが、思えば、この頃から自殺願望は密かに育っていったのですね。



近衛師団長をしていた乃木将軍ですが、日露戦争が始まり第三軍の司令官に栄転です。明治天皇からしっかりやれ、と言われ大将に昇進までしちゃいました。戦う場所は、日清戦争で戦った旅順要塞。前回は一日で落とせたけど、ロシア相手だと苦労するかなあ。



第2回総攻撃を前にして、別れを告げに来た次男の保典。しかし、おかしいです。たしか次男の保典は高島忠夫が演じていたはず。それが和田桂之助に代わっているではありませんか。まあ和田桂之助は、前作の木口二等卒(死んでもラッパを放さない人)から順調なステップアップですけど、高島忠夫さえ呼べないほど、この映画の予算は少ないんでしょうか。心配です。



戦いのシーンは基本的に「明治天皇と日露大戦争」の使いまわし。実際の公開は2年ほど離れているので、問題は無かったのかもしれませんが、こっちは中一日で見ていますからね。ほら、ここでこの人が倒れてぇ、バタっ、みたいなデジャブ気分を味わってしまいました。
まあ、そんなこんなで旅順陥落。めでたいということで、国内では提灯行列です。おや、この提灯行列も見たことがあるような。そう「明治天皇と日露大戦争」で、日本海軍が勝利したときの提灯行列じゃありませんか。これくらいは、新しく撮ればいいのに。そこまで金が無かったんだあ。



戦争も終わり数年が立ちました。人力車に乗った乃木大将。止せばいいのに、年老いた俥夫に、タイヘンだねえと声をかけてしまいました。息子は日露戦争で死んだんだと言い出す俥夫。
「乃木大将のおかげで、いくら兵隊を送っても次から次へと殺されちまったんですよ。乃木大将は血も涙もねえ、人殺しのひでえ大将ですよ」と言われてしまい、乃木大将はちょっとドキドキです。



退役した乃木将軍ですが、明治天皇の肝いりで学習院長になることになりました。これから孫も通うし、「まかせるぞ」とまで明治天皇に言われ感謝感激です。それに元気よく遊ぶ子供たちを見ている乃木将軍はまさに好々爺の面持ちです。



明治天皇がご発病しました。乃木将軍はもちろん、国民みんなが心配し、平癒を願っています。しかし病勢が衰えることも無く、明治天皇は崩御されてしまったのです。空っぽの玉座を見て、呆然と立ち尽くす乃木将軍。
礼服に着替えた乃木将軍と夫人。明治天皇の霊柩が映し出されます。辞世の句が朗々と読み上げられるなか、二つのシーンがカットバックされて映画は終わります。
さすがに小林正樹監督「切腹」のような痛そうな切腹シーンは一切ありませんでした。

一作目の天皇と呼ばれた渡辺監督、そして二作目のベテラン並木監督と比べて、本作は明らかに若い小森白さんが監督です。そして、ひたすら使いまわしの映像。さらに高島忠夫は無論、宇津井健も天知茂もいない寂しさ。しかし、逆に言うとこれこそが「新東宝クオリティ」な感じがしないでもありません。

最大の売りのはずだったアラカンの明治天皇も、今回はあまり出番なし。前作の勢いからすると、今回は覆面でもして馬を乗り回すんじゃないかと思っていたんですが、さすがに当人も現場も、そして観客も飽きちゃったのかもしれませんね。
とは言え、半年後には同じ小森白監督で「皇室と戦争とわが民族」が作られ、アラカンは神武天皇をやっているのが、さすが新東宝ですけど。







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【映画】天皇・皇后と日清戦争

2007-08-29 | 邦画 た行

【「天皇・皇后と日清戦争」並木鏡太郎 1958】を観ました



おはなし
朝鮮半島の支配権を巡って真っ向からぶつかる日本と清。三国干渉のおかげで霞んでしまったものの、その勝利の原動力は、実に偉大なる明治天皇と皇后の存在があったからなのです。。ということかな。

監督は天皇と呼ばれた渡辺邦男に代わりこれまたベテランの並木鏡太郎。売りは天皇に加え皇后が出ること。前作に比べ、皇后が出ている分、豪華なんでしょうか。

歴史的なお話として、日清戦争は朝鮮半島を巡る日本と清の争いでした。まあ、ここらへんについての歴史認識は微妙過ぎる問題なので、あえてツッコムのはやめておきますが、ともあれ双方に言い分がある戦争だったということで。(もちろん全ての戦争がそうですけど)
ただし、この映画に関しては、ラッパの木口が死ぬのが威海衛の後だったり、歴史的にはかなりムチャクチャです。まあ原作が、社長の大蔵貢自身ですから、見栄え重視ということなんでしょう。

とりあえず清相手に、ガンガン交渉しているタフ・ネゴシエーターがいます。男の名前は大鳥圭介。もちろん京マチ子と京唄子が全然違うの同じくらいに、鳳啓助とは違いますから。ちなみに、真っ白な髪に、どこまで長いんだと思うくらいのもみ上げで、誰だか分かりませんが、演ずるのは丹波哲郎です。

もちろん、大鳥圭介は賊軍として五稜郭で官軍と戦ったほどの漢ですから、清を怒らせるなんて、朝飯前です。それに演ずるのが丹波哲郎となれば、相手だって冷静ではいられません。早速、よく分からないままに日本と清は開戦することになりました。

そうなれば、まず必要なのは兵隊さん。田舎でも、山田一太郎というヤケッパチな役名の青年(高島忠夫)が徴兵されていたのです。この山田青年は、おばあさんと二人暮らしのマジメな農村の青年。どう見てもオツムはあんまりよく無さそうですが、体は頑健そうです。しかし、旧軍では長男(一人っ子)は徴兵しなかったといいますが、婆一人子一人の跡継ぎがいきなり徴兵されてしまうなんて、なんか不思議な感じです。

とりあえず、若山富三郎が敵陣に殴りこむという、まるで勝新の「兵隊やくざ」みたいな光景にクラクラしつつ、日本軍は前進していきます。

さて、軍歌に「戦友」という曲があります。♪ここはお国を何百里 離れてとほき満州の♪で始まるこの曲は、14番まである大作ですが、要は倒れた仲間を、泣く泣く置いて突撃し、帰ってみたら既に仲間は死んでいました。しょうがないから遺品の時計を持って帰るのさ、みたいな内容なんですけど、これを高島忠夫が大真面目に演じています。基本的に、カラオケのBGVと思っていただければ間違いありません。やるなあ、新東宝。とりあえずこの段階で、この映画は史劇ではないということがハッキリしました。

もちろん、その後も軍歌「雪の進軍」(映画「八甲田山」で健さんが歌ってましたね)にあわせてのお芝居やら、もう何が何だか分からない状況に、頭はクラクラを通り越しグラグラです。

ちなみに海では、宇津井健が軍艦の弾込めとして、負傷しても立ち上がるゾンビ演技で、男のハートをガッチリつかみつつ、よく分からないけど、日本軍は勝ち続けるのでした。

ともあれ、要衝の威海衛を陥とし、破竹の勢いの日本軍に清はとうとう講和を申し出てきました。下関にやってきたのは全権大使で、西太后の信任も厚い、清の実質的な指導者の李鴻章。しかし、その李鴻章を襲った壮士が一人。はい天知茂です。ほとんどこの映画唯一のダメ役なテロリストを演じた天知茂は、その後台詞もないまま消えて言ったのです。しかし、前作のアジ演説をぶつ代議士役といい、天知茂はここぞという場面に登板しますねえ。

ともあれ、第一次大戦の原因がセルビア皇太子の暗殺だったように、普通、仲の悪い国の元首なり偉い人を暗殺するというのは、とてつもなく「顔が真っ青」な行為ではあるのですが、ここでは違います、なにしろ日本軍はイケイケですから。このまま直隷平野を押し渡り北京を占領しちゃえばいいのです。(史実じゃなくて、この映画の話ですからね)

イケイケの日本軍は、「死んでもラッパを放しませんでした」な木口小平二等卒が戦死し(バックには浪曲?が流れて、強引に雰囲気を盛り上げます)、高島忠夫が戦死したあたりが攻勢限界だったようで、一気に盛り下がります。ちょうど、下関講和会議の最終会談もうまくまとまったようですし、ここが止めどきでしょうね。とりあえず戦争には勝ったことだし。

提灯行列で盛り上がる国民。しかし、そこにとんでもない凶報が舞い込んだのです。それはロシア、ドイツ、フランスの三国干渉。せっかく日本兵の血で奪い取った遼東半島を返せというムチャな要求に、当然、瞬間湯沸かし器状態で、沸騰する世論。

日夜続く反対デモに皇后、そして明治天皇も心を痛めます。しかし、平和主義の明治天皇の聖断は下りました。三国干渉を受け入れましょう。

よく分かりませんが、伊勢神宮で祈る天皇皇后両陛下。ありがたいことです。


史実にもある程度忠実で、いい意味で大作感のあった前作に比べ、今作は何だかよく分からない映画になってしまいました。もちろん大蔵貢流のキワモノ映画ということでは、今作こそが新東宝カラーが出ていますけどね。

とりあえず、この映画の売りは明治天皇。そして、ニューカマーの皇后です。

皇后を演ずるのは高倉みゆき。女海賊に、女死刑囚、さらにはレズな修道女まで、何でもござれな高倉みゆきですが、これが意外と良いのですよ。黙ってまじめな顔をしていると、本当に皇后らしい気品が満ち溢れています。もちろん、戦場の兵士を気遣って夜なべで包帯を作ったり、陸軍病院の兵士を見舞って、敵も味方も兵士たちは、みんな大感激!みたいな見せ場が用意されているのは言うまでもありません。

明治天皇を演ずるのは嵐寛寿郎。前作で、そのソックリぶりに唖然としたアラカン天皇は、その成りきりぶりに磨きがかかっています。前作では、前線の兵士たちを思って、猛暑の中、冬服で通したアラカンは、今度は寒いなか、暖房も入れずに頑張っています。もちろん、それを見た侍従が、感激にむせび泣くのは当然のことです。

そして、今回、アラカン天皇はさらなるパワーアップを遂げたのです。お忍びで馬を飛ばすアラカン。付き従うのは侍従ただ一人。おや、荷車を押していた農民親子が、車輪を轍に落とし困っているではありませんか。早速、押してやれ、と侍従に命ずるアラカン。親子はエライ大将様の優しい行動に大喜びです。農民に聞けば、なかなか暮らし向きは楽ではなさそうです。そこでアラカン天皇は侍従に一言。役料をつかわせ。ははっ、と侍従は「自分のお財布」からお金を出して農民に渡すのです。ありがとうございます、という言葉を後ろに、颯爽と馬を飛ばして去っていくアラカン。このままでは、そのうち諸国漫遊でも始めそうな勢いです。

ちなみに、高島忠夫が死ぬシーンで出てきた要塞ですが、なんだか見覚えがあるよなあ、と思っていたら「姑娘と五人の突撃兵」と同じでした。確かに同じ監督で、同じ年の映画。だったら使いまわしをしないと、MOTTAINAIですよね。(MOTTAINAIは、あっという間に恥ずかしい言葉になりそうですが)


(馬でお忍び中のアラカン天皇)

(今回の目玉は高倉みゆき皇后)

(天知茂はアジテーターからテロリストにクラスチェンジ)

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【映画】明治天皇と日露大戦争

2007-08-27 | 邦画 ま行

【「明治天皇と日露大戦争」渡辺邦男 1957】を観ました



おはなし
激戦となった203高地を巡る戦い。世界史上に残る大勝利の日本海海戦。しかし、その勝利の原動力は、実に偉大なる明治天皇の存在があったからなのです。。ということかな。

監督は天皇と呼ばれた渡辺邦男。売りは天皇が出ること。これは、もしかしてシャレですか?

歴史的なお話として、日露戦争の前には日清戦争がありました。これは日本が割とトントンと勝ちまして、有利な条件で下関講和条約までこぎつけた、いわゆる勝ち戦だったのです。しかし、ここで問題が。それはロシア、フランス、ドイツが文句をつけてきたのです(三国干渉)。結局、日本はせっかく割譲させようとした遼東半島を失うはめに。その後、列強各国は清に各地を割譲させ、ロシアは旅順、大連を租借し、旅順に一大要塞を築き上げてしまったのです。そもそもロシアの脅威を排除するために欲しかった遼東半島が、そのロシアに割譲されてしまったのですから、日本国内では怒りの声が満ち溢れました。一般に戦争は国が勝手に始め、国民は迷惑すると思われていますが、ことこの戦争に関しては、完全に国民がイケイケだったのです。

さて、映画はロシアの横暴を国民に訴えている代議士たちの光景から描かれます。熱弁を振るっているのは天知茂。さすが新東宝オールスター映画。この映画では色悪の出番はないのですが、ここでムリヤリに天知茂も出演を果たしたのでした。良かったね。

ともあれ、国内では、代議士たちが開戦を訴え、東大の博士たちまでもが開戦をすべきだという意見書を大々的に発表する(七博士建白事件)など大騒ぎ。そんな中、明治天皇(嵐寛寿郎)は「よもの海 みなはらからと 思ふ世に など波風の たちさわぐらむ」などと歌を詠みつつ、開戦には反対です。そうすると困ってしまうのが、伊藤博文などの重臣たち。もちろん、彼らもロシアと日本の国力が隔絶していることは承知していますから、戦争なんて始めたくないのです。しかし、このまま放っておいたら、いつ国民がクーデターを起こすか分かりやしない。まさに板ばさみ状態ですね。
ともあれ、粘り強い交渉も結局は決裂。あらためて、御前会議で国交断絶が決定されたのでした。

と、ここで一つ。先ほどの天皇の作った短歌(御製)ですが、これは基本的に達筆で描かれた歌が画面に映し出され、そこに朗々と読み上げる声がかぶさるというスタイルになっています。基本的に歌会始を思い浮かべていただければいいかと。この映画の続編、そのまた続編も同じスタイルですが、なんだかお正月っぽくてオメデタイですね。

さて、開戦後、まずやることにしたのが旅順閉塞作戦。ヨーロッパからはるばるやってくるロシアバルチック艦隊と、旅順のロシア艦隊が合流したら、日本の海軍ではとても太刀打ちできません。そのため、旅順港の入り口に古くなった船を沈めて、港を塞いでしまおうというのです。そこで指揮官に選ばれたのが広瀬少佐(宇津井健)。戦前の小学唱歌に「広瀬中佐」というのがあって「杉野は何処」と、船内に閉じ込められた部下を探す「軍神」広瀬中佐の姿が歌われていましたが、まさにそれの、実写化です。これは、かなりおじいさん・おばあさんにはウケたでしょう。まして演じているのが宇津井健ですから、思わず目頭が熱くなるというものです。

まあ宇津井健の熱演はともかく、作戦自体はあんまり成功しなかったので、相変わらず旅順艦隊は港にこもったままです。こうなると、陸上から旅順を占領してしまって、艦隊を拿捕破壊するか、艦隊が港の外に飛び出すように仕向けなくてはなりません。そこで、旅順占領の命を帯びたのが乃木将軍の率いる第三軍。しかし、要塞は当時の新兵器機関銃で守られ、鉄壁の布陣です。総攻撃に続く総攻撃は、見る見る日本兵の命を喰らいつくし、その血を飲み干し続けます。

そんな中、暑い盛りに冬服のまま、戦死者名簿を見つめている明治天皇。戦場では兵士も冬服のまま戦っていいるのだから、と暑い夏にも関わらず頑張っているのです。ただ、これは明治天皇だからできるので、皆さんはやめておきましょうね。熱中症は怖いですよ。

ともあれ、海軍を中心に乃木将軍を更迭しろ、という声が高まってきました。はやく旅順を見下ろす203高地を占領してくれないと、海軍も困っちゃうのです。そんな中、乃木将軍は次男と会っています。長男は日露戦争に従軍して、すでに戦死。そして次男(高島忠夫)も、密かに死を覚悟して最期にひと目、父の乃木将軍に会いに来たのです。最期に一緒に食事をしようという乃木将軍。しかし、その食事は兵と同じとても粗末なものだったのです。

一方、大本営にいる明治天皇も、これまた粗末な食事をしています。兵の苦労をともにする君主と司令官。まさにエライ人の鑑ですね。もっとも、粗末な食事をとって部下を殺す将軍より、フォアグラでもトリュフでも食べていいから、部下を殺さない将軍の方が、兵はありがたがるとは思いますけど。

明治天皇は乃木を代えたいという最高戦争指導会議の意見に「乃木を代えることはならん」「乃木は近いうちに必ず旅順を陥とす」と断言します。あくまで部下を信頼する素晴らしさ、重臣たちは大御心の深さ、広さに恐縮してしまうのでした。

次男の高嶋忠夫が、白襷をした決死隊に出て戦死したりしつつも、どうにか総攻撃の結果、203高地は陥ち、その後、旅順も陥ちました。これで、海軍も心置きなくバルチック艦隊と戦えるというものです。

バルチック艦隊は対馬を通るか、それとも津軽もしくは宗谷を抜けるのか。悩む連合艦隊。しかし、九州沖で「敵艦見ゆ」の一報が。勇躍、連合艦隊は出撃です。もちろん「敵艦隊見ゆとの警報に接し連合艦隊は直ちに出動、これを撃滅せんとす。本日天気晴朗なれども波高し」の電報が打電され、明治天皇はそれをじっと聞いています。

旗艦三笠には「皇国の興廃この一戦に在り。各員一層奮励努力せよ」のZ旗が上がりました。後に第二次大戦では頻発されてしまう旗ですが、とりあえずメデタサ倍増な感じです。
一時期はパチンコ屋の音楽としてしか認識されていなかった軍艦マーチと共に、ミニチュアの船が走り回ります。しかし、この特撮はけっこうハイレベル。「新東宝としては」なんて枕詞をつけなくても、十分通用するんじゃないでしょうか。

ともあれ、海戦は大勝利に終わりました。国民たちは提灯行列でお祝いをしています。そんな国民の喜びを見ている明治天皇。映画の最期は伊勢神宮かなんかのカットで終わります。


新東宝の社長、大倉貢は弁士に見切りをつけ場末の映画館を買収。あれよあれよと言う間に、資産を増やし、気づいたら映画会社の社長さんになっていたわけですが、その姿勢はあくまで娯楽重視。映画は「芸術」ではなく、「キワモノ」だということを確信していた人でした。そんな大蔵貢が、徐々に傾いてくる新東宝復活の起爆剤として考えたのが、「映画に天皇を出す」という大博打。この映画の10年後に撮られた岡本喜八の大傑作「日本のいちばん長い日」ですら昭和天皇は後姿や手だけの出演でごまかしているというのに、堂々と顔を映して、台詞までガンガン喋らせようというのですから、まさにタブーに挑戦なのでした。演ずる嵐寛寿郎は、最初は引き受けたくなかったそうですが、いざ演じてみれば完璧なナリキリ演技。確かに肖像画と見比べてみると、違うのは当たり前なんですが、とりあえず画面にすっと出た時の迫力が、もう何と言うか有無を言わさず明治天皇であるぞよ、な感じです。

さすがに新東宝が社運をかけて製作しただけあり、陸戦シーンはとんでもない物量作戦で迫力十分。それに海戦の特撮シーンもかなりの見ごたえでした。そして、そこに過不足無く有名なエピソードを挟み込むなど、映画の作りとしてもまさに王道。要は金、ヒト、物を大量に投入すれば、下手な小手先の細工はいらない、という見本のようなものでしょう。

結局、この映画は大当たりをして、新東宝に莫大な収益を与えました。でも、新東宝自体がもともと儲かる体質だったわけでもなく、やがてあぶく銭も尽きてきます。困った。よし、またまた天皇を出すしかない。今度は、皇后付きだ。ということで、次回作は「天皇・皇后と日清戦争」です。


(とりあえずアラカン天皇の映画ですね)

(シネスコを生かして、延々と続く隊列を撮る。この遠近感がスゴイ)

(えー、趣味の宇津井健ということで)

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【映画】放課後

2007-08-25 | 邦画 は行

【「放課後」森谷司郎 1973】を観ました



おはなし
亜矢子は女子高生。隣家のサラリーマン研二に恋とも憧れともつかない気持ちを抱いています。しかし、亜矢子の行動で、研二と妻夏子の間がギクシャクしてきて……

エロティックなシーンはありませんが、どことなくロマンポルノ風味の漂う作品でした。いやらしさではなく、空気感がです。

井上陽水の「夢の中へ」が流れる中、モノクロで撮られた高校の風景がスケッチされていきます。

世田谷線の宮の坂駅を降り立ったセーラー服の少女は、顔見知りのサラリーマンを見つけて、腕を組んで歩き出しました。少女は高校1年生の中西亜矢子(栗田ひろみ)、そしてサラリーマンは、少女の隣家に住む北沢研二(地井武男)です。

地井武男を家の前まで送った栗田ひろみは、そのまま隣の自宅に入り、私服に着替えてから、再び地井武男のところに出かけました。
実は、隣家は栗田ひろみの同級生、勉(沢井正延)の家。しかし、親が北海道に転勤になったため、1階を親戚の研二、夏子(宮本信子)夫妻に貸しているのでした。

ということで、いまいち状況が飲み込めないものの、地井武男の所に、栗田ひろみや沢井正延がたむろしていることの説明終わりです。なんか「タッチ」みたいだよなあ、と思わないでもありませんが。

沢井正延は写真マニア。宮本信子の写真を撮ったり、ヌード撮影会に出かけたりと、今だったらレースクイーンの写真を激写しているだろうなあ、という高校生。そんな沢井正延が、栗田ひろみとその親友・めぐみ(加藤小夜子)の写真を、パチパチと撮っていると、町を歩いている地井武男を見つけたのです。それも女連れ。早速、盗撮しまくる沢井正延です。どうやら、加藤小夜子によると、地井武男の連れている女性は、高校のハンサムな先輩・小宮(島村美輝)のお姉さんで、スナックをやっている人だそうです。

沢井正延が、地井武男の写真を現像しているのを見ながら、栗田ひろみは思いっきり地井武男をかばっています。しかし、奥さんの宮本信子が仕事から帰ってくると、うって変わって、写真を見せつけ、すれちがいじゃないのとか、煽り始めるのでした。しかし、宮本信子はまったく動揺してない、もしくは動揺していないように見せているので、何となく不満そうな栗田ひろみです。

翌日、ハンサムな先輩を見つけた栗田ひろみと加藤小夜子。先輩にお姉さんの写った写真みせちゃおうか、と言い出した加藤小夜子に「ダメよ」と栗田ひろみは止めていますが、先輩が近づいてくると、自分から走って行って写真を見せて、あれこれ吹き込もうとしています。でも、先輩にはまったく相手にしてもらえず、ムクれちゃう栗田ひろみなのです。

どうやら加藤小夜子によると、先輩のお姉さん・由紀(宇津宮雅代)は、かなり浮気な人らしいです。「浮気」な人っていう言い方に時代を感じますが、まあ尻軽女ということなんでしょう。それをフムフムと聞いている栗田ひろみと沢井正延。
栗田ひろみは、沢井正延に「さっきのこと、絶対黙ってなくちゃダメよ」と言いつつ、宮本信子を見た瞬間、宇津宮雅代が「浮気」なことをペラペラと喋り始めるのでした。

さすがの宮本信子も、その夜、地井武男に「あたし会社辞めてもいいのよ」と言い出しました。浮気を疑う宮本信子に「俺がいつ浮気したんだよ」と怒る地井武男。しかし、やがてその会話が「いやーん」な感じになるのを、沢井正延は2階でハアハアしながら盗み聞きをしているのです。

地井武男と栗田ひろみが仲良くテニスをして、栗田ひろみがつまづいたふりで「あっ」とか言いつつ地井武男に抱きついているとき、宮本信子は宇津宮雅代のスナックを探していました。

スナック・キャンディを見つけて店内に入る宮本信子。しかし、お目当ての宇津宮雅代はいないようです。
「ああ、恥ずかしい。あたしとしたことが、こんなところまで乗り込んできたりして」と首を振り振り、店を後にする宮本信子。しかし、帰ろうとすると、向こうから歩いてくる宇津宮雅代を見つけてしまったのです。顔を見る前ならともかく、顔を見てしまうと気持ちも穏やかではいられません。家に帰ってキャンディに行ったことを告白する宮本信子。それを聞いた地井武男がムクリと動きました。いきなり「やめてよ。暴力だけは」と絶叫する宮本信子。ええっ、これはドメスティック・バイオレンスの映画なんですか、と思いましたが、別に地井武男を手をあげるわけでも何でも無かったのです。すでに、この映画は良く分からん。

地井武男、沢井正延、栗田ひろみ、そして親友の加藤小夜子は、箱根に小旅行に来ています。いったい、どんな組み合わせなんだ。そもそも高校生の娘を、男との旅行になんか親が出すのか、という疑問がフツフツ湧いて来ますが、この映画世界では「有り」なんでしょう。

とりあえず箱根の小桶園に泊まった4人ですが、そこにはハンサムな先輩たちがウエィターのバイトに来ていたのです。その夜、ディスコで踊りまくる栗田ひろみたち。先輩たちも踊っています。

いきなりシーンが変わると、お土産を買った栗田ひろみたちが帰ってきちゃいました。えっ、長々と映したディスコのシーンはなんだったのか、と思わないでもないんですが、イメージショットなのか、それともディスコで踊る栗田ひろみに商品価値があったのか、まあどっちかなんでしょう。

しかし地井武男の家には誰もいません。宮本信子は突然の出張で関西に行ってしまったそうです。よっしゃ、とばかりに地井武男と沢井正延にスキヤキかなんか作って、甲斐甲斐しく働く栗田ひろみ。しかし、地井武男はタバコを買いに行くと行って、早々に退散。一人でキャンディに出かけてしまったのです。

出張から帰ってきた宮本信子は、栗田ひろみのお母さんに、仕事辞めようかなあ、と相談しています。だんだんギクシャクしてきた夫婦仲に危機感を覚えたのか、かわいい奥さんになろうかなあ、と弱気な感じです。
しかし、かわいい奥さんでいられたのも、地井武男の着物からキャンディのマッチが出てくるまででした。

ハンサムな先輩と歩いている栗田ひろみ。井上陽水の「いつのまにか少女は」をバックに、歩く二人が延々と映し出されます。「もっと歩きたいの。小宮さんのうちに連れて行って」と言い出す栗田ひろみ。もちろん、先輩の家はキャンディですからね。キャンディに行った栗田ひろみは、宇津宮雅代と会うと、地井武男と宮本信子は最近仲が悪いとかなんとか吹き込み始めるのです。おい、目的はソレかい。
ともあれ、あること無いこと吹き込んだ栗田ひろみが、家に帰ろうとしていると、地井武男に偶然出会いました。地井武男のコートに、そっとキャンディのマッチを滑り込ませる栗田ひろみです。

当然、またまたキャンディのマッチを発見した宮本信子は激怒。「どうせ男の人なんて外で何してるか分かりやしない」と言い出しました。売り言葉に買い言葉。「それは女も同じだろ」と言い返す地井武男に「んまーっ」と怒っちゃう宮本信子でした。しかし、「んまーっ」って言い方はないよなあ。
結局、宮本信子は「しばらくあなたの傍を離れて、頭を冷やします。頭と一緒に心と体も冷えてしまったら帰ってこないかもしれません」というヘンに文学的な書置きを残して家出してしまったのです。

奥さんが出て行ってしまった地井武男のやることはただ一つ。キャンディに行って飲むことです。事情を聴いた宇津宮雅代は、私は関係ないのに、と地井武男を見つめています。そう、この段階まで、地井武男と宇津宮雅代は別に浮気も何もしてなかったようですね。あくまで、この段階までは。

栗田ひろみはキャンディを訪ねました。すると「誰と寝ようが勝手じゃないか」という大きな声が聞こえてきます。どうやら、ハンサムな先輩が、キャンディのウエイトレスというかホステスさんとデキてしまい、それを怒った宇津宮雅代に先輩がキレかえしている模様です。弟をひっぱたく宇津宮雅代。でも効果音は、パンチの効果音なので、違和感ありありというか、宇津宮雅代がマッチョになってしまったみたいです。ホステスさんは「あらやだ。克彦さんとママ、夫婦じゃあるまいし」とチクリとイヤミを。

そんな修羅場をじっと見ていた栗田ひろみに、ふっと気づいた先輩は「子供はさっさと帰れよ」と怒鳴ります。とりあえずダッシュで走り出す栗田ひろみ。やっぱり子供と言われたのが悔しかったんでしょうか。

さて、大阪に転勤することに決まった地井武男は、一人で荷造りをしています。そこに駆け込んできた栗田ひろみは「あたし研二さんのこと好きなんだもん」としがみつきます。思わぬ展開に、とりあえず栗田ひろみを押し倒してキスをしてみる地井武男。まあ、据え膳食わぬは……ですね。

そこに家出していた宮本信子が帰ってきました。慌てて離れる二人。宮本信子は開口一番「大阪に転勤ですって。本当にごめんなさい」としおらしい態度で、会社を辞めて私も大阪に行くわ、と言い出したのです。なんとなく微笑みあってる二人。いきなり仲間外れになった栗田ひろみは、黙って外に出て行ったのでした。

夕立がやってくるようです。庭をじっと見つめてたそがれている地井武男。何を考えているのでしょうね。宮本信子が帰ってくるのが、もう少し遅ければ、と思っているのか。とんでもないことにならなくて良かった、と思っているのか。どっちでしょうね。

激しく雨が降り出しました。両手を広げて、雨の中をクルクルまわる栗田ひろみ。ちょっとベタな演出に凍りつきそうです。

井上陽水の歌が流れ始めました。栗田ひろみと沢井正延がテニスをしている風景が、スローモーションやらカットバックなどを使って映し出されます。カメラに向かって飛んできたテニスボールのストップモーションで映画は終わります。

とりあえず、小悪魔的な少女が大人を振り回すというのは、文学・映画上でひとつのパターンとして存在するわけですが、ここで問題なのは、そのパターンがなりたつ前提として、無垢な少女が、無意識の媚態を示して、大人の男を破滅させていくことが必要だということです。

その観点から、この映画を見たときに、アチャーっと思うところは、主演の栗田ひろみがあまり無垢に見えないところと、媚態の点においても「物足りない」ところです。その点で、どうみても栗田ひろみは、神秘的な美少女というより、悪戯をして大人を困らせる子供にしか見えない。

もっと言えば、振り回される大人であるべき地井武男も、まだ31歳ですから、まあ子供じゃないけど大人でもないよね、くらいにしか見えないのです。

もう一人の主人公と言うべき写真好きの男子高校生の存在も含めてこの映画を見渡すと、大人をからかうことが好きな娘と、とにかく頭の中は女の裸しかない男子。それに、あわよくば良いことないかなあ、とギラギラしてるヤングアダルトの「痛い」群像劇といったところかもしれません。

主演の栗田ひろみは、今で言うと堀北真希風の顔立ちで、パット見はかわいいのですが、よく見ると顔のパーツが真ん中に集中している感じ。僕としては、あんまりカワイイとは思えませんでした。

対して宮本信子は、嫉妬する表情もかわいいし、かなり良い感じです。正直「マルサの女」以降の宮本信子しか知らなかったので、こんなにチャーミングだとは思いませんでした。

監督は森谷司郎。「日本沈没」「八甲田山」と大作を連発していく森谷監督が、その直前に撮った映画が、この「放課後」です。なんか、あまりに毛色が違うのでクラクラしてきますが、これもまた若気の至り?なのかなあ。

ともあれ、古臭い台詞回しに大時代な演出という、およそ青春映画とは思えないブツですが、微妙に笑えるので良しとしましょう。







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【映画】大巨獣ガッパ

2007-08-24 | 邦画 た行

【「大巨獣ガッパ」野口晴康 1967】を観ました



おはなし
南海の孤島で発見された奇妙な生物ガッパ。それを日本に連れ帰ったところ、親ガッパが襲ってきて……

日活の怪獣映画という時点で激しく間違っているような気もします。

一隻の船が航行しています。目的地は南太平洋のキャサリン諸島。乗組んでいるのは雑誌記者の黒崎(川地民夫)、カメラマンの小柳(山本陽子)、それに東都大学の殿岡(小高雄二)をリーダーに町田(和田浩治)、ジョージ(藤竜也)など生物班の面々です。

雑誌界の革命児、船津社長(雪丘恵介)は雑誌プレイメイトを大成功させ、次は南海をテーマにした一大レジャーランド建設を計画していました。そこには南海の小鳥や動物が放され、やはり南海の美女たちが歌ったり踊ったり、サービスをするという壮大なプランです。

そして、南海の小鳥や動物を採取するのが東都大学の生物班、南海の美女たちをごっそりスカウトするのがプレイメイト記者黒崎の任務なのでした。もう、この段階で、エコノミックアニマル日本な匂いがプンプンしてきますね。

さて、キャサリン諸島に近づいた一行は、そのなかの一つ、オベリスク島が激しく噴火しているのを見つけました。観測すると、島にはイースター島そっくりの石像があったりして楽しそうなところ。よし、じゃあ、最初にオベリスク島に上陸しようじゃないか、と決断する一行。その決断はどこかおかしい。

ともあれ上陸した一行は、原住民の村にたどり着きます。トーテムポールが飾られ、タムタムと太鼓が叩かれる中、踊り狂う原住民たち。いや、トーテムポールは北アメリカだろ、という突っ込みはなしです。その村の酋長は「お前たち日本人か。中隊長、どれか」とカタコトの日本語で気さくに話しかけてきました。どうやら、ここは戦争中に日本の占領下にあったようですね。(きっとカロリン諸島のことを言いたいんでしょう)

火山がドッカーンと噴火する中、歓迎のダンスが繰り広げられ、酋長は「日本人約束した。また来る。たくさん寝て、あなたたち来た。もうガッパ怒りやめる。もう大丈夫。みんなうれしい」と上機嫌です。「ガッパって誰かしら」と、しごく当然の疑問を発する山本陽子の意見はあっさり無視して、「ねえ先生、この人たち、日本に連れて帰ったら」と言い出す和田浩治。女隊員も「あなたたちの住める土地が日本にできるのよ」と、なんだかムチャクチャ調子に乗ってるんですけど、当時の日本人。

「とにかく石像のところまで行ってみよう」と川地民夫と山本陽子は、一足お先に探検にでかけます。やがて石像のところにたどり着いて「同じだ。イースター島の石像と同じだ」と感嘆の声をあげる川地民夫。いや、ぼくにはどうみてもモアイというより、エジプトの石像にしか見えないんですけど。

その時、グラグラっと地震が起きました。ガラガラと崩れていく石像。そして、石像の倒れた跡には、洞窟が出現していたのです。現地人の少年サキが「いけない、ガッパ怒る」と止めるのを聞かずに、洞窟に入っていく二人。

そこは輝く湖のある不思議な地下世界でした。「あたしたち生きているのね」と言い出す山本陽子。突然、なんでそんなこと言い出したのか不明ですが、女は夜景とかイルミネーションが好きなんだよ、という監督の声が聞こえてくるようです。

さて、洞窟の奥には巨大な卵がありました。折からの余震で、ゴロゴロ転がり落ちた卵が、ペキペキっと割れていきます。あっ、なんかヘンなものが出てきました。そのヘンなものは、さささっとどこかに行ってしまいます。ナンなんでしょう。
その時、生物班が川地たちを探しにやってきました。「ちょっとした獲物を発見したんだよ」「まだその辺にいるかもしれない」と嬉しげな川地民夫。一行が辺りを見回すと、いました。ガッパです。とりゃっ。とりあえず生まれたばかりの子ガッパを捕まえる一行です。このガッパというのが、なかなか表現が難しいのですが、両手両足のあるズングリした体に鳥の頭。それに背中から羽根が生えているというものです。てっきり名前からして河童みたいなものかと思っていたのですけど、どちらかというとマヌケなガーゴイルと言ったほうがいいかも。

ガッパを捕まえたということで、原住民たちは喜びの踊りの真っ最中。しかし、原住民の少年サキは「これいけない、ガッパ怒る」と一人、心配顔です。それを聞いた川地民夫は「じゃあ、こいつを湖の底にぶち込めば気が済むっていうのかい」と答えていますが、何も子供相手にそんな言い方しなくても。それに、抗争相手を東京湾に沈めるわけじゃないんだから。

ともあれ子ガッパを船に積み込んで、意気揚々と日本を目指す一行です。もっとも、その頃、オベリスク島は、突如現われた父ガッパ、母ガッパに踏み潰され、阿鼻叫喚な騒ぎ。唯一生き残ったサキ少年は、アメリカの潜水艦に救助されていたのですが、そんなことは知らないもんね。

日本で朗報を待っていた社長は、ガッパを捕まえたという連絡を受けて、興奮ぎみ。早速、モーターボートで船を迎えに行き、ガッパを見てホクホクしています。これは大きく育ててプレイメイトランドの目玉にするしかない、とソロバンを弾くのでした。

東都大学の研究施設で大きく育っていく子ガッパ。一週間で50センチ大きくなったそうですから、中々の成長速度です。そんな中、驚くべきデータが出てきました。なんとガッパの脳波は鳥に近いもので、遠く離れた仲間に自分の居所を伝える能力がありそうだというのです。「信じられないなあ」とつぶやく和田浩治。というか、かつて裕次郎や旭と並んでダイヤモンドラインの一翼を担った和田浩治が、大部屋俳優以下の扱いな方が、ぼくとして「信じられないなあ」。

さて、父ガッパと母ガッパは、猛スピードでサキ少年を救った米潜水艦をかすめたあと、空に急上昇。貨物機とニアミスなんてしちゃいつつ日本を目指しています。そして、相模灘から熱海に上陸し、街を壊し始めたのです。

政府は自衛隊と米軍に撃退協力を依頼、早速自衛隊の戦車部隊が、砲撃を始めます。とか言って、どう聞いても効果音はライフルのそれ。こういうところで、効果音のライブラリーが小さいところは苦労しますねえ。ともあれ、ガッパの口から出た怪光線でドロドロに溶けていく戦車たち。なんてことでしょう。戦車隊全滅です。それなら、飛行機の出番。最新鋭のF-104Jでどうだ。ああ、これまた怪光線でバタバタ落とされていきます。

さて河口湖に移動した父ガッパ、母ガッパは湖の中に身を潜めています。これは困ったとお偉い人たちは対策会議を始めました。そこで、東都大学生物班の小高雄二は、一つの提案をしました。ガッパの弱点は音だから、3万ヘルツの音を聞かせれば、ガッパは苦しくなって湖から飛び出してくると言うのです。そんな小高雄二を見て、「ガッパに愛情を持っていなかったのね」と嘆く山本陽子。しかし川地民夫は「男には誰にでも野心がある。フッ」と笑うのです。「でもキライだわ。あなたも殿岡さんもキライ」とスネてみる山本陽子ですが、まあ我慢してください。

その頃、河口湖に米海軍のマクドナルドさんに連れられてサキ少年がやってきました。サキ少年は川地民夫に「ガッパ、子供かわいい。だから返してください」と訴えますが、すでに、スピーカーを積んだ無人モーターボートは、遠隔操縦で湖底に沈み、スイッチが入るのを待っていたのです。

きーーん、高周波の音が湖水を震わせます。両手に握りこぶしを作り、フルフル震えているガッパ。きーーーーーーん、もう我慢できません。湖面に飛び出したガッパは、地対空ミサイルホークの連続射撃を受けます。おりゃおりゃ、ドッカンドッカン。苦しさに暴れたガッパのおかげで津波が起こり河口湖周辺は壊滅。ガッパは日光方面に逃げていったのです。

やっぱり子ガッパを返しましょうと言い出す山本陽子。確かに、自衛隊の手に負えないなら、平和的にお帰りいただくのが一番です。しかし社長は激怒しています。せっかくの儲け話をふいにしたくないようです。社長の娘が「パパお願い、返してあげて」とおねだりをしても「うるさい。こんなバケモノに母親も糞もあるもんか」と暴言を吐く始末。これには川地民夫も「社長、それでも人の親ですか。あんたはまるで人が変わった。キチガイの言うことなんか、我々は聞けません」と怒り出しちゃうのです。でも自分の社長にキチガイはないと思いますけどね。

日光を壊滅させたガッパは京浜工業地帯に向かっています。はやく止めなくては。でも熱海、河口湖、日光、そこから京浜工業地帯っていうのは、動きがヘン過ぎです。まったく脚本家の人は日本地図をもう一度、じっくり見て欲しいですね。

火を吹くコンビナート。一行はヘリで子ガッパを羽田空港に降ろします。早く、早く気づいてくれ。子ガッパも鳴きます。しかし、火事の音で父ガッパ、母ガッパは子ガッパの声が聞こえないようです。しょうがない。テープに取っておいた子ガッパの鳴き声を、スピーカーから大音量で流してみましょう。「気が付いた」

父ガッパが、そして母ガッパが羽田空港にやってきました。親と子の再会です。ズシン、ズシン、と近づいていく親子。というのは嘘で、なんかガッパはやけにスタスタ歩いているんですが。ああ、こういうところが分かっていませんね。怪獣がスタスタあるいてどうするんだよ、と日活を叱りたいです。

ともあれ、ガッパたちはしっかりと抱き合っています。空港の見送りデッキに横一直線に並んで、熱い視線を送る人間たち。「当たったわ、あたしたちの賭けが当たったのよ」とつぶやく山本陽子です。そして、ガッパたちは飛んでいきました。

「我々はあわただしい毎日の中で、人間としてもっとも大切なもの。素朴なものを忘れていたんだ」と川地民夫は言います。これは大切ですね。怪獣映画の最後は、なんとなくそれらしい反省の言葉が必要です。
「そう、払った犠牲は大きかったけど、ガッパは我々に貴重な体験を残していったのかもしれないな」と小高雄二。いや、それはちょっと無責任だろ。
負けじと山本陽子が言います。
「あたし、今度会社を辞めることにしたの。あたしって結局平凡な女だったのね。玉ねぎを刻んだり、オムツを洗ったりしてるのが、いちばん性にあっているんだわ。あたし、、ううん、じゃサヨナラ」
おいおい、自分語りを始めた挙句、去って行っちゃいましたよ。それに、言ってる内容はフェミニストの人が聞いたら、真っ赤になって怒り出しそうな内容だし。

小高雄二が川地民夫に言います。「キミ、小柳君を一人で帰してしまっていいのかい」
慌てて、山本陽子を追いかけていく川地民夫でした。

いやあ、ヘンな映画でしたね。表面上は特撮怪獣映画を真似ているものの、漂うテイストが、どことなくおかしいです。

それに、特撮がやっぱり手馴れていない感じでした。悪くは無いんです。でも、ちょっとしたところでノウハウの無さが露呈しています。例えば、飛行機が爆発するところ。これが円谷だと、火薬がゆっくり燃えることで、「ドッカァーーン」といかにも大きな物体が爆発しましたよ、という効果を出すんですが、この映画だと「バンッ」とあっという間。それに戦車のところでも書きましたけど、特殊効果の音源ライブラリーが揃っていないので、全部がありものの「小さい」感じの音なのも情けない感じです。

極端に台詞の少ない和田浩治は、まあ良いとして、兄貴こと藤竜也の出番が少なかったのも残念。だいたい役がジョージっていう日系アメリカ人っていうのもどうかと思います。というかこの役は岡田眞澄でいいんじゃないでしょうか?

それはともかく、一度は見て損の無いこの映画。なにより、テーマ音楽のぶっ飛びっぷりは想像を絶する楽しさです。思わず、アマゾンでラスト一枚をポチっとしてしまいました。


(脇役な兄貴と和田浩治)

(山本陽子と川地民夫が主役っていうのも微妙)

(子ガッパ)

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【映画】直撃!地獄拳

2007-08-22 | 邦画 た行

【「直撃!地獄拳」石井輝男 1974】を観ました



おはなし
麻薬組織の壊滅に失敗して、責任を取り辞任した警視総監の嵐山は、3人の凄腕を集めました。目標は、マフィアから麻薬を奪取して組織を壊滅させることですが……

インタビュー本を読むと、石井輝男監督は空手映画が嫌いだそうです。しかし、そのおかげか、空手映画の枠を超えた、ハチャメチャな映画ができあがりました。

「人選はこの3人に決定する。手段、方法は選ばん」と書類を秘書に渡す男。男は嵐山(池部良)といって元警視総監。女は姪の恵美(中島ゆたか)です。
恵美は確認するように、3人の男のプロフィールを読み上げ始めました。

「甲賀竜一、祖先は甲賀忍法の宗家。幼少にして両親を失い、祖父白雲斎に養育さる」

祖父白雲斎の命令で、少年(下沢広之)が竹の上を飛ばされています。身の丈ほどもありそうな竹を軽々と飛び越える少年。しかし、じいちゃんは次に突き立てた日本刀の上を飛ぶように命じます。「同じ高さのものが飛べぬはずはあるまい」と言うのです。しかし、それとこれとは話が別。少年は怪我をしてしまいました。未熟者め、と叱るじいちゃん。たまったもんじゃありません。さらにヌンチャクの修行など、特訓を受ける少年です。

そして10年後。少年こと甲賀竜一(千葉真一)は大きく育ちましたが、相変わらずしごかれているようです。「まだ会得できんのか、関節はずしが」と縛られている千葉ちゃんを叱るじいちゃん。千葉ちゃんは縛られてゴロンと転がされているのです。もう、イヤだとゴネル千葉ちゃんにじいちゃんは、これも甲賀宗家に生まれたものの宿命だ、と涼しい顔です。「科学万能の時代ですよ」とフクれる千葉ちゃんに「科学は万能ではない。絶えず訂正されていく仮説じゃ」と答えるじいちゃん。いや、素晴らしい。これはまさに科学の本質を突いていますね。反証可能性があるものこそが科学であるというのを、まさか東映の映画に教えてもらうとは、予想だにしませんでした。
ともあれ、「こんなウチにいたら、俺の青春は灰色だ」と、どうにか逃げ出そうとする千葉ちゃんですが、そのたびにじいちゃんに見つかり、ケチョンケチョンにされてしまうのです。

「隼猛、元警視庁麻薬課第一課長。麻薬捜査のベテラン。現在、ヤクザの世界に身を投じ、一匹狼の殺し屋」

親分(名和宏)と女(芹明香)がベッドでいちゃついているところに、殺し屋の隼(佐藤允)が乗り込んできました。驚いた親分が誰にいくらで頼まれた、と聞くと五竜会に300万で雇われたと素直に答える佐藤允。じゃあ、600万出すから代わりに、五竜会の会長をやって来い、と親分に頼まれた佐藤允はあっさり同意します。「前金じゃねえとやらねえ主義なんで」と親分から金を受け取った佐藤允は、「仕事には固てぇ男なんで」と親分を殺してしまいました。横にいた女は「あたし見なかったことにするわ。だからお願い。殺さないで」と服を脱ぎ始めます。あたしの誠意を受け取ってというのです。

そんな顛末を聞いている五竜会の会長(室田日出男)。誠意には誠意と、女に300万円をやってしまったというクダリでは大笑いです。それを見て「冗談は嫌いな男なんで」と答える佐藤允。「仕事はまだ済んじゃいないんで」と言うや否や、ドリャっと会長にナイフを叩き込みました。思わず目の玉がビヨヨーンと飛び出してしまった会長です。

「桜一郎、日本伝合気道師範。好色の上、性格粗暴。道場を追われ、放浪の果て殺人を犯す。現在、宮森刑務所にで死刑の執行を待つ」

中島ゆたかが千葉ちゃんに、100万円で桜(郷?治)を脱走させるように頼んでいます。報酬はともかく中島ゆたかのミニスカートから覗く足にクラクラきた千葉ちゃんは、プラス100万で、仕事を請け負うことにしました。もっとも手付金は1万円だけですが。
もちろん、甲賀忍法でサクサクっと郷?治を脱走させることに成功した千葉ちゃん。ここらへんは「激突!殺人拳」っぽいですね。

さて、ここは池部良の邸宅。「おじさま、来たわ」と中島ゆたかが言うのと同時に、佐藤允がやってきました。どうやら、警視総監の池部良と、元麻薬課長の佐藤允は旧知の仲。というよりは同志だったようです。少し遅れてやってきたのは郷?治。これが水色の上下に、水色の帽子という派手なカッコで、いかつい顔に似合わないったらありゃしません。しかし、先に出たはずの千葉ちゃんだけが遅れています。ブツクサと文句を言う郷?治に、奴はもう来てるよ、と答える佐藤允。そう、千葉ちゃんは天井にへばりついていたのです。なにもニンジャの末裔だからって天井にへばりついている必然性は「ゼロ」ですけど。

座の微妙な雰囲気を無視しつつ「ところで、俺たちに何をやらせようって言うんだい」と質問する千葉ちゃんに、池部良は事情を説明し始めました。

ニューヨークに本拠を置くマフィアが、日本に進出し麻薬を派手に売りさばいています。日本総支配人のマリオ・水原(津川雅彦)は、南米の大使令嬢を使って密輸をしているため、外交官特権に阻まれ、警察も手を出せない状況。それなら、強引にブツを押さえるしかないと、編成されたのが佐藤允の部下で編成された6人の特攻隊だったのです。しかし、うまいこと廃工場におびき出したと思ったのもつかの間。部下たちはマフィアの用心棒たちに皆殺しにされてしまいました。もちろん、警察がこんな違法捜査を行っていたことは公にできません。そのため、6人の部下は失踪扱いにさせられ、佐藤允は依願退職、そして池部良も責任をとって辞任したのでした。

話を聞かされ「ふん、とんだ浪花節だ」とバカにする郷?治。「何っ」と激怒する佐藤允に「隼、その男の言うとおりだ。だがな、この浪花節はどんなことがあっても歌い続けねばならん。目的完遂まではな」と答える池部良。おおっ、この台詞はカッコよすぎです。

ともあれ、千葉ちゃんは何十億の金に目がくらみ「よし乗った!」、郷?治は中島ゆたかの太ももに目がくらみ「乗ったぁー!」と、軽いノリのまま、マフィアからの麻薬奪取計画が決まってしまったのです。

ナイトクラブに潜入した3人と中島ゆたかは、津川雅彦が大使令嬢を連れて麻薬取引をしている現場を見張っています。よし、停電をさせている間にヤクを奪い取ろうと計画する4人。しかし、実際は千葉ちゃんが一人でヤクを持ち逃げしてスタコラと逃亡。もちろん、マフィアは千葉ちゃんを追ってきます。襲い掛かる使い手たち。しかし千葉ちゃんはパンチで敵のあばら骨をむしりとるなどの、ムチャな技でピンチを切り抜けるのでした。

翌朝、一人で持ち逃げしようとした千葉ちゃんと、千葉ちゃんの脱出に協力しなかった佐藤允がするどく対立。「よし勝負だ。さあ来い」と言う佐藤允の胸に、あばら骨すらえぐりとる千葉ちゃんの正拳突きが炸裂します。しかし、佐藤允は平気な顔で、なぜか千葉ちゃんの拳から血がタラリ。あせった千葉ちゃんがさらに追いかけると、そこには落とし穴が。「てめえ、汚ねえぞ」と穴の底から叫ぶ千葉ちゃんですが、佐藤允は「てめえの育った甲賀屋敷なんか仕掛けだらけじゃねえか」とぼっこりヘコンだ鉄板を胸から出すのでした。

「いいかげん仲直りしようぜ」と言う佐藤允。どうやら、大使令嬢が父の転任に伴い帰国することになり、マフィアが安全に麻薬を密輸できるのもあと一回。しかし、その一回でマフィアは10年分もの麻薬を一気に密輸して、その末端価格は200億くらいになりそうです。またまた「よし乗った!」と安請け合いをする千葉ちゃんに学習能力はあるんでしょうか。

その日から、次々とマフィアの用心棒たちが倒されていきました。それもことごとくベットインしているところを襲われます。もちろん襲っているのは千葉ちゃんと郷?治。当然のごとく、外人女性のハダカも写るわけで、千葉ちゃんのアクションとオッパイという、実に分かりやすい見所作りが、実に東映っぽくてステキです。

ニューヨークでは、津川雅彦が「実に恐るべき敵です。主な奴らはほとんど倒され、アジトの護衛は裸同様の状態です」とボスに訴えています。そんな津川に「お前にみやげの用意をしてある」と言うボス。それはシシリアのレオーネと闘拳チャンピオンのローンウルフ(安岡力也)、それにボクサーのブレーザー西山(西城正三)と言った濃いメンバー。果たしてどうなるのでしょうか。

一方、佐藤允はマフィアを廃工場におびき出して、麻薬を奪う計画を立てました。前回、その手で失敗しているのに、またやろうっていうのも、かなりの精神力です。早速、羽田に張り込む一同。しかし、羽田空港にやってきたのは、ローンウルフなどいかにも強そうな奴らです。あっさり「計画変更だ」と助っ人を呼んでくることにする佐藤允。千葉ちゃんと郷?治は、とりあえず敵のアジトまで尾けていって、見張っていろということになりましたが、千葉ちゃんにそんなことができるでしょうか。

はい、できませんでした。一人で麻薬をかっぱらうために、アジトに忍び込んでいってしまう千葉ちゃん。しかし侵入を予想していたマリオこと津川雅彦は、睡眠ガスを噴射して千葉ちゃんを眠らせてしまったのです。

佐藤允は空手道場に行きました。助っ人を頼むことにしたのです。しかし、道場の師範はそっけない態度。ただ、後輩の倉山田(倉田保昭)だけが、付いてきてくれることになりました。まあ、日本のドラゴンこと倉田保昭さえ来たら、10人力ですからね、良かったんじゃないでしょうか。ちなみに千葉ちゃんは15人力くらいかなあ。

麻薬を買い付けに国内組織のボスが集まっている中、「みなさん、これから面白いショーをお目にかけよう」と宣言する津川雅彦。いきなり横に立っていた大使令嬢の服をサーベルで切り裂きます。あらわになるオッパイ。もうボスたちは、ヒューヒューと思春期の中学生のような喜びかたです。そんな中、ちょっと憮然としながら「これから本当に面白いショーが始まるんですがね」と言ってみる津川雅彦。そこにクスリで朦朧として動けない千葉ちゃんがドサリと置かれました。この千葉ちゃんを、蹴りでもパンチでも良い。一番、遠くまで飛ばしたものに2百万の賞金を与えると、津川雅彦は言います。面白がって、千葉ちゃんを殴り飛ばし始める参加者たち。ちゃんと、0メートル00みたいに、距離を測っているのがバカらしいです。しかし、西山こと西城正三は、本当の元フェザー級世界チャンプですから、学芸会のような下手っぴな台詞で「死んだような奴とやるのは性に会わない」と断わるのでした。

「西山もういい」とサーベルを一閃させる津川雅彦。あっ、西城正三の目が切り裂かれました。うずくまる西城正三。その時、千葉ちゃんの方は、じいちゃんの「忍法は仮説ではない」という言葉が頭にリフレインしています。。。。千葉ちゃん、復活!千葉ちゃんは敵と空中戦を繰り広げ、敵を圧倒。倒れている西城正三を救い起こしますが、西城正三はガクっと死んでしまったのです。

後輩の倉田保昭の車を飛ばしている佐藤允。倉田は、ローンが残っているのに、と心配そうです。途中、車で洗濯物を引っ掛けると、ついでに女の服まで脱げてイヤーンという、えらくアメリカーンなギャグを織り交ぜつつ疾走する車。一方では、アジトで敵と戦っている千葉ちゃん。この車のシーンと格闘のシーンが、高速でカットバックされていくのは、冗談抜きで、とてもカッコいいです。

とりあえず、アジトの玄関をドッカーンと突き破って突入する車。上半身裸の倉田保昭が大暴れです。女必殺拳でも、同様のシーンはありますが、それより数倍、カッコよく面白い。やっぱり、千葉ちゃんの映画だと気合の入り方も違うのかもしれません。敵をキックで、そしてパンチで倒していく倉田保昭。しかし、頭の上から石像を投げつけられ昏倒。「先輩、車の払い頼みますよ」と言って死ぬのでした。まあ主役じゃないとはいえ、この死に方はあまりにチープ。いちおうクレジットは特別出演なんですけどね。

麻薬を持って逃げ出した津川雅彦の車を、佐藤允と千葉ちゃんの車が追います。しかし、車は断崖絶壁で立ち往生。佐藤允は無事に脱出できたものの、千葉ちゃんは崖に引っかかってしまいました。とりあえず佐藤允は一人で戦っているようですが、いつまで持つことやら。でも、千葉ちゃんだってニンジャの末裔。どこから取り出したのか、デッカイ鍵爪のついたロープをテヤっと投げ上げ、崖からよじ登り始めました。

「どうやら柔らけえところに打ち込んじまったみたいだな」とブツブツ言いながら登っていく千葉ちゃん。一方、鍵爪が太ももに刺さってしまった安岡力也はウンウンうめいています。ようやく崖を登りきった千葉ちゃんは、あっさり安岡力也の目をつぶし瞬殺。安岡力也もローンウルフとかタイソウな役名を貰った割には情けない感じですが、まあ倉田保昭ですら、あの死に方ですからね。

「ハアーッ」と気合を入れまくってる千葉ちゃんに、「お前、生きてたのか。神様みてえな野郎だな」と呆れている佐藤允。確かに千葉ちゃんはメチャクチャですから、それも当然です。ともあれ、残ったマフィアをみんな倒した二人。あとは、マリオこと津川雅彦と、金髪こと大使令嬢が残るのみです。

「私を殺してもマフィーアは絶えない」とヘンな喋り方をする津川雅彦は、「が、クスリは渡さない」と麻薬の入ったカバンを断崖から投げ落としてしまいました。白い粉が舞っています。そして、サーベルを取り出した津川雅彦は、それを自分にブスっ。サーベルはそのまま大使令嬢をも貫きました。「ハアッ」と言いつつ、へっぴり腰でジャンプする津川雅彦。二人の体は、断崖絶壁に消えていきました。

「あーあ。俺の貸し金はどうなるんだい。俺は手付金1万円しか貰ってねえんだぞ」とぼやく千葉ちゃんに、佐藤允は笑いながら「そんな渋いツラするなって」とタバコに火をつけてやるのでした。

とりあえず、石井監督はインタビューでもノルかノラナイしか言わない監督で、空手映画はノラナイ部類だったそうですが、その結果、これでもかというほどの小ネタギャグをぶち込んで、何ともいえないヘンな空手映画ができあがりました。

佐藤允は、東宝のイメージが強く、どちらかというと正統ギャング映画の方が似合っていますが、ここではハチャメチャな役を嬉しそうに演じています。実際、石井監督も「ノッテいた」と言ってるようですし。
郷?治は、この映画の前に出演した「0課の女 赤い手錠」では「人の皮をかぶった獣」な役でしたが、この映画では「獣の皮をかぶった人」くらいには進化しています。もうちょっとで普通の人間になれるかもしれません。
中島ゆたかは、後にテレビシリーズや映画などで、暗い影を感じさせる美女、という役どころを得意としていましたが、この映画では明るい感じ。特にミニスカートからすっきり伸びた足には、もうクラクラです。
津川雅彦は、もともと大映、日活、松竹と名門を渡り歩いてきた映画界の御曹司。もちろん東映でも、叔父さんのマキノ雅弘に呼ばれて、昭和残侠伝シリーズに頭の弱い役などで出演していますが、この映画ではちょっと勝手が違ったようです。そもそも東映における悪のボスは、マジメに役作りとかをしてはいけないものです。とりあえずノリで突っ走り、一秒でも多くフレームに写ってやりたいというギラギラした人間じゃないと勤まりません。その点、津川雅彦ではイカガワシサが足りなかったようです。

千葉ちゃんは、さすがの一言。もちろん格闘シーンの体のキレはもちろんのこと、コメディ演技もかなりイケてます。もしかしたら内心では、空手シーンをもっと増やして欲しい、とかあったのかも知れませんけどね。まあ、石井監督が撮るという段階で、マトモな空手映画になるわけありませんし。

ちなみに、千葉ちゃんの少年時代を演じた下沢広之は、のちの真田広之。こんな時代から千葉ちゃんのお弟子さんだったんですね。







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【映画】憲兵とバラバラ死美人

2007-08-20 | 邦画 か行

【「憲兵とバラバラ死美人」並木鏡太郎 1957】を観ました



おはなし
仙台の連隊で、井戸から女の胴体が発見されました。早速、地元憲兵隊が捜査を開始しましたが捜査は難航。そこで、東京の憲兵隊から腕利きの小坂曹長が派遣され……

タイトルは、ドーンとインパクト勝負ですが、内容としては普通の「刑事ドラマ」と思っておけば、まず間違いないかと。

夜の神社で男女が密会しています。
「なぜ、あなたはハッキリあたしと結婚するって言ってくださらないの。あたしのお腹にはあなたの子供ができてるのよ。なぜ黙ってるの」と、男をなじっている女。「分かったわ。あなたとお金持ちのお嬢さんとの噂、やっぱり本当だったのね。私だまされてたんだわ」。後姿しか見えませんが、軍服を着ている男は、女に何を言われてもシドロモドロです。「あなたの部隊の隊長さんに相談に行くわ」とまで言われた男は、ようやく「分かったよ、キミと結婚するよ」と答えます。しかし男は「うれしいわ」と言う女を押し倒して胸をまさぐりつつ「この女さえいなかったら、俺はあの美しい娘と莫大な財産を手に入れることができるんだ」とつぶやいています。

仙台歩兵4連隊が満州に出動してから6ヶ月たったある日。仙台の留守部隊では初年兵たちが騒いでいます。井戸の水が臭いというのです。それを見咎めた上官が、井戸をさらうことを命じると、そこから出てきたのは女の胴体でした。

手足と頭を取られた死体は早速、東北帝大の石川博士のもとに運ばれ司法解剖を受けることに。その結果、妊娠5ヶ月のまだ若い女の胴体であることが判明したのです。とりあえず、連隊はかん口令を布きますが、そんな話を隠しておけるわけもなく、新聞に派手な記事が大々的に載ってしまったのです。

さすがに、これを解決しないと憲兵隊のメンツに関わります。分隊長は絶対に犯人を見つけろ、と部下たちに檄を飛ばし、憲兵曹長の萩山(細川俊夫)は早速、捜査を開始したのです。

地元の警察署からも、現場の井戸を見たいと老刑事がやってきました。しかし細川俊夫は「部隊内は憲兵の権限ですから」と見せようとしません。その上、殺されたのは女ですから我々も捜査の責任が、と粘る老刑事に「憲兵の捜査では頼りにならんというのかね」と恫喝まで始めてしまう始末です。結局、細川俊夫は「目下、女出入りの多い兵隊を洗っております」と上司に報告してわが道を行くのでした。

死体発見から1ヶ月。進まぬ捜査に、東京の憲兵隊から応援が派遣されることになりました。細川俊夫は「仙台の憲兵隊の恥であります」と上司の分隊長に食って掛かりますが、
犯人が捕まらない以上、仕方ありません。

応援に来たのは小坂憲兵曹長(中山昭二)と高山憲兵(鮎川浩)。しかし、細川俊夫は、イヤミタラタラで、ろくすっぽ話をしようともしないのです。

小坂曹長と高山は、高山の知り合いの小料理屋に投宿することにしました。そこは、喜代子(若杉嘉津子)、しの(江畑絢子)といった美人姉妹がやっている店。しかし、しのにデレデレな高山はともかく、マジメな中山昭二は喜代子の熱い視線に気づいていないようです。まあキリヤマ隊長ですからね。

中山昭二は警察にきちんと挨拶をして、大学の石川博士にも話を聞くという、理想的な捜査振り。それをこっそり尾行して、ちくしょうと怒っている細川俊夫とは大違いです。

しかし、細川俊夫に朗報がもたらされました。兵の一人が、井戸にモノを投げ込む音を聞いたと証言してきたのです。そして、そこにいたのは当時炊事班長をしていた恒吉軍曹(天知茂)だったそうです。早速、当時の出入り業者たちに、天知茂の女関係を聞く細川俊夫。すると、どうやら天知茂には、当時妊娠中の彼女がいたものの、その女は現在行方不明という、状況証拠的に真っ黒で怪しさ爆発なのでした。もちろん、細川俊夫は東京の憲兵に勝ったと大喜びで天知茂を捕まえたのです。

一方、中山昭二は大学の石川博士から耳寄りの情報を仕入れました。素人が死体をバラバラにするには、最低でも1時間は必要だそうなのです。しかし、1時間もかかって死体をバラバラにするなんて、どこででもできる作業ではありません。すると、犯人はどこか1時間かかっても大丈夫な場所で作業をしたはず。うーん。

宿泊先の小料理屋に戻った中山昭二は老刑事の訪問を受けました。老刑事は"憲兵のくせに"威張っていない中山昭二がすっかり気に入ってしまったようです。また中山昭二も「いや、警察の人も陛下の命令で社会秩序の維持に任じている方です。バカにするなんてもってのほかです」などと優等生な発言をするものですから、余計ですね。

ある日のこと、中山昭二は、息子が陸軍病院で手術を受けるのだ、という婆さんに出会いました。「手術」という言葉にピクっと反応する中山昭二。「手術、病院、陸軍病院、手術。手術室なら誰にも見られず1時間かかって死体を切断できる。1時間かかっても」と大発見な気分です。早速、陸軍病院を訪れた中山昭二ですが、そこに不気味なネコの鳴き声が聞こえてきました。ふと見ると、ネコの顔が女の顔に見えてきます。おお、これは奇跡?気づくとネコはスタスタと井戸の金網の上にちょこんと座っています。

井戸の上にかけられた金網は、小さく穴が開いています。そう、まさに首くらいは通る程度の穴が。よっしゃ、コレは井戸をさらうしかありません。すると、案の定、井戸からは数本の黒髪が出てきて、さらにズルっと黒髪の束が出てきて、そして頭蓋骨まで出てきたのでした。

中山昭二は大学の石川博士のところに頭蓋骨その他を持ち込みます。しばし待つと「ぴったり合いましたよ」という石川博士の声が。とりあえず遺体に手を合わせた中山昭二は「悔しいだろう。犯人は必ずあげてやるよ」と語りかけるのです。ここまで良い人だと、ちょっといじめたくなりますね。

さて、細川俊夫は天知茂をせっせと尋問中。天知茂が衣服の横流しをしている事実も突き止め、自白を迫りますが、天知茂は断固として女を殺したとは言わないのでした。「そんなにしらばくれるなら、よし、貴様の体に聞いてやる」と拷問を開始する細川俊夫。しかし「体に聞いてやる」って、悪代官でもなかなか言わない台詞ですよ。

細川俊夫が「恒吉は絶対に犯人だと確信します」と分隊長に言っている横で「自分は苛酷な拷問を容疑者に加えることに反対なんです」と、批判的なのが中山昭二。中山昭二は、当時炊事班長だった天知茂が、糧秣を盗んでいたところを目撃されただけだと考えているのです。その理由は天知茂が「小悪党だと思う」から。まあ、天知茂の場合、小悪党か大悪党かは別として、悪党だというのは、もう定番ですけど。

ともあれ中山昭二は「分隊長どの。自分は今度の事件は被害者が誰であるのかを知るのが第一であると思います。女の身元さえ分かれば犯人は自ずから浮かび上がります」と至極真っ当なことを言いますが、細川俊夫は「それはあなたの方針でしょ。分隊長どの。自分は自分のやり方でやります」とダダをこねるのでした。

はい、「自分のやり方」とはこうでした。いきなり逆さ吊りになっている天知茂がシバかれています。「まだ吐かんのか。殴り続けろ」と命令する細川俊夫。なんだか江戸時代テイストになってきました。それにしても、本気で逆さ吊りにされている天知茂を見ると俳優さんってタイヘンな職業だなあ、と思います。

さて陸軍病院に足しげく通っていた中山昭二は、耳寄りな情報を聞きつけました。連隊から陸軍病院に何人かの下士官が病院に派遣されているというのです。早速、事件当時、病院に派遣されていた下士官の写真を手に入れた中山昭二は、4人の下士官の中のいずれかが犯人ではないかと直感するのでした。

中山昭二が宿泊先の小料理屋に帰ると、姉妹のもとに妙子という娘が遊びに来ていました。若杉嘉津子は「妙子さんのお婿さんは自分から志願して満州にいらしたんですって」と中山昭二に語ります。「志願して?」と眉をひそめる中山昭二。それに、その婚約者の写真を見せてもらうと、なんと病院に派遣されていた下士官の一人・君塚軍曹ではありませんか。病院に勤めていて、結婚が決まっているのにわざわざ誰もが嫌がる満州へ志願する男。これはもう絶対にあやしい。そう確信する中山昭二です。

常日頃、人と仲良くしておけば良いことがあります。老刑事は、外地に出征する兵士は、だいたい家族か恋人と記念写真を撮るものだ、と市内の写真館を回って、君塚軍曹の写真原版が残っていないか探してくれることになりました。また助手の高山憲兵は、君塚軍曹が使役していた兵隊を調査する役目をもらいます。

調査の甲斐あって、君塚軍曹の使役が、事件当時、軍曹に頼まれて大きな包みを病院から連隊まで運んだことを思い出しました。聞けば、まさに胴体を包んだ"こも包み"と同じ大きさです。これは、もう死体を捨てたのは軍曹意外に考えられません。

しかし、これだけではまだまだ軍曹を逮捕する証拠には欠けてます。中山昭二は、大学を訪れ、女の骸骨に問いかけます。「あんた、一体誰なんだ」。ハッ、中山昭二はまたヒラメイちゃいました。虫歯の跡だ。歯医者にあたれば、もしかして、この女の正体が分かるんではないか。ビンゴ。何人目かの歯医者が、これは確かに自分が治療した歯だ、と証言したのです。カルテから女の名前は伊藤百合子、県の経理部長の家の女中であることが判明したのです。

その後、老刑事が、君塚軍曹と被害者が一緒に写った写真を入手。さらには、被害者が経理部長宅に送った転居のハガキが君塚の筆跡であることも判明しました。

そういえば、拷問されていた天知茂ですが、彼の行方不明になった情婦というのがひょっこり顔を出しました。情婦は天知茂と喧嘩をして、プイっと北海道に行っていたそうなのです。これでは天知茂の「色悪」の名が泣くというものです。

「わが憲兵隊は君塚を犯人と断定する」と分隊長の断が下りました。早速、功労者である中山昭二が君塚軍曹捕縛のため、満州に派遣されます。
軍曹は気配を察知して脱走したものの、そんなことで中山昭二の正義の追及からは逃れられないのです。ということで、えらくあっさりと君塚軍曹(江見渉)は発見され、「お前も軍人だ。軍人らしく罪の裁きを受けるんだ」と逮捕されてしまったのです。

とりあえず、中山昭二がネコとか霊に導かれて遺体を見つけちゃったりするところが、オカルトしてますが、実に地味な刑事モノでしたね。

見所と言えば、いかにも犯人っぽい天知茂が、女と金に汚い小悪党だった、というところでしょう。あと、天知茂の逆さ吊りのところとか。
それと若杉嘉津子が、こんなおばあさんを貰ってくれる人があるかしら、と中山昭二に流し目を飛ばすところも、見逃せません。

しかし、逆に言うと、それしか見所がないのも事実。結局、中山昭二には今ひとつ華が無いんですよね。もしコレが宇津井健が主役だったら、もっと違った、ググっと面白い映画になったような気がするんですけど。

ということで、同じ並木監督作品だと、宇津井健が主演の「姑娘と五人の突撃兵」の方がはるかにワケ分かんなくて面白かったです。


(キリヤマ隊長)

(マジで吊り下げられる天知茂)

(こんなおばあちゃん、とか言いつつ中山昭二に猛アタックの若杉嘉津子)

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憲兵とバラバラ死美人 [DVD]

【映画】やくざ絶唱

2007-08-17 | 邦画 や~わ行

【「やくざ絶唱」増村保造 1970】を観ました



おはなし
やくざの立松は妹あかねのことを愛しています。それは兄妹の範疇を超えた愛です。しかし、そんな立松にあかねは距離を置くようになり……

赤字に陥った大映は、この年、日活と共同でダイニチ映配という配給網を作りました。そして、比較的客の入るエログロ・バイオレンス路線に転換しようとしたのですが、時既に遅し、翌年には潰れてしまったのです。そんな時代の空気の中で作られたこの作品、テーマは兄と妹の愛というショッキングなものですが、そこは増村保造らしく愛憎の強さが印象に残る作品に仕上がりました。

まあ、とんでもない作品ではありますけど。

立松実(勝新太郎)は石川組のやくざ。かなりの強面で、周りから恐れられています。今日も舎弟の本田が新興勢力の東風会のチンピラにからまれているのを見つけるや、あっという間にボコボコにして、治療代をせしめてしまうほどの喧嘩の強さです。しかし、パトカーのサイレンが聞こえると、舎弟や相手のチンピラが呆れるくらいのスピードで脱兎のごとく逃げ出すのです。
「兄貴って不思議だな。喧嘩は強いがサツには弱いんだから」と言われた立松は「パクられちゃたまらねえや。たとえ一日でも娑婆を留守にするわけにはいかねえんだ」と答えるのです。その理由とは……

ポルノ映画を真剣に見ている女子高生。立松の妹のあかね(大谷直子)です。映画を見終えたあかねが夜道を歩いていると、舎弟の本田が「よお、これから踊りに行かねえか」と声をかけてきました。しかし、「兄ちゃんよ」というあかねの声と共に血相変えてやってくる立松。何も聞かず、いきなり舎弟をボコボコにした立松は「おい、あかねに手を出す奴は、てめえだって親分だって許さねえ」と息巻くのです。

あんなカスと付き合うんじゃないと怒る立松に、「あの男がカスなの。じゃあ兄ちゃんだってカスじゃない」と言いはなつあかね。思わず立松は握りこぶしを固めますが、乱暴するなら私はホステスかコールガールになるとあかねに言われると「分かったよ、俺が悪かった。勘弁してくれ、なっ、頼むからウチ出るな」とヘナヘナになってしまうのです。

ある日、家に老人が訪ねてきました。老人の名は犬丸泰助(加藤嘉)。立松とあかねは異父兄妹で、あかねの実の父が、この泰助なのです。泰助は、最近迎えたという養子の裕二(田村正和)を紹介しつつ、あかねを引き取りたいと申し出てきました。もちろん激怒する立松。裕二も「あなた方のことは義父からよく聞いています。ぼくを弟と思って付き合ってくれませんか」とか言ってみますが、立松に「黙ってろ、お前は」と一蹴されておしまいです。まあ、田村正和の分際で、勝新に口をきこうなんて百年早いといったところでしょうか。

夜、酔っ払った立松が、あかねの部屋に入ってきました。寝ている振りをするあかね。立松はあかねの腰を抱きながら「あかね、お前ってやつがいるから兄ちゃんは」と恍惚としています。そこに、ガラガラと音を立てて、立松の情婦・可奈江(太地喜和子)が帰ってきました。「デッカイ声を出すな。あかねが起きるじゃないか」と怒りまくる立松。もちろん可奈江も黙ってるわけもなく、二人は痴話喧嘩を始めてしまいました。それを布団の中で聞きながら、そっと顔を背けるあかねです。

校庭の木陰で小説を読んでいるあかね。そこに教師の貝塚(川津祐介)が「キミ、何を読んでいるんだい」と声をかけてきました。本が好きなら貸してあげようとか、今度兄さんと話をしてあげようか等と、あれこれ言ってくる貝塚。しかしあかねは「私に近づく男ならみんな殴るんです」「兄には見境がつきません。先生だって若い男ですもの」と相手にしようとしないのでした。

石川組の縄張りを徐々に侵食し始めた東風会。このままではマズイと、組長は立松に東風会会長を殺すように命じました。しかし立松としては刑務所に入るのはまっぴらごめん。舎弟を身代わりに刑務所に入れるなら、と殺しを引き受けたのです。まあ、一日でも妹と離れたくないのですね。

組長からもらった支度金で、あかねに浴衣を買ってきた立松。当然、情婦の可奈江としては面白くありません。「あんた、あたしよりあかねちゃんの方が好きなのね」と食って掛かります。そうなれば売り言葉に買い言葉。「ひっこんでろ、すべた」「あたしがすべたなら、あんたはなんだい。ヒモじゃないか」「何ぃ、このキチガイ、淫売」「キチガイはあんたよ」
そして、結局、可奈江は出て行くことになりました。「夫婦気取りで楽しみなさいよ。だけど区役所の戸籍係は受け付けないよ」という捨て台詞を残して。

そのまま、東風会会長を殺しに向かった立松ですが、何もしませんでした。いや、何もできなかったと言った方が正しいかもしれません。
一方、あかねは兄から貰った浴衣を着て、口紅を差し、教師の貝塚のアパートに出かけました。「先生、入ってもいい?」とあかねが部屋に入っていくと、貝塚は「キミ、香水を付けているね。口紅も。まるで別人だ」とあかねの魅力にクラクラです。
「抱いてください」と言うあかね。「スタンドを消して」「帯を解いて」。どうも指図が好きな女のようです。「先生、愛して。愛して」だから、指図するなって。

ことが終わり、「将来、必ずキミと結婚するつもりだ」と、ひたすら謝っている貝塚。しかし、あかねは「いいんです、そんなこと」とつれない態度です。「もう、このアパートにも来ません。学校で会っても話しかけないでください」と言うあかねに「これっきりなんてイヤだよ」とぐずる貝塚ですが、あかねは追い打ちをかけるように「今夜は初めから体を捨てるつもりで来たの。相手は誰でも良かったの」と言うのでした。この娘、兄並みにイカレタ性格のようです。

家では立松があかねの帰りをじっと待っています。そこに帰ってきたあかねは、今、男に抱かれてきたの、と兄を挑発するようなことを言い出しました。誰に抱かれたと聞いても答えないあかね。立松は「言え」とパンチ。「言えっ。言うんだ」とパンチ。するとあかねは「殴ってよ。もっと殴ってよ。殴り殺してよ、兄ちゃん」と立松に抱きつくのでした。
もう大学に行かない、思い通りに生きると言い出したあかねに、頭を抱える立松。しかし結局は「あかね、好きなようにしろ。俺も好きなように生きるさ」と言い残して立松は家を出て行くのでした。

情婦の可奈江が勤めているバーに繰り出した立松ですが、バーでは東風会のチンピラたちが我が物顔に飲み、騒ぎ、可奈江にカラんでいました。「おい、俺のスケどうするんだよ」と睨みつける立松に「上等だ。てめえの来るのを待ってたんだ」と殴りかかるチンピラ(平泉征)。そこからは、もうムチャクチャ。3人のチンピラをぶっ飛ばし、止めに入った警官を殴り倒し、さながら暴風と化したかのように暴れ狂った立松はそのまま逮捕されてしまったのです。

捕まっている立松の所にあかねが差し入れを持ってきました。俺は1年か2年刑務所に入るという立松に「あたしから逃げるためにやったの」と言い出すあかね。「あたしから離れるために刑務所に入るの。そうね」と断言しています。

高校を辞めたあかねは働き始めます。しかし、その頃、あかねの父が病気で亡くなってしまいました。その遺産相続問題をキッカケに、何となく養子の裕二とデートをするようになったあかね。海辺で砂だらけになりながら「転がりチュー」をしてみたり、なかなか青春しているようです。

一方、立松は舎弟から、裕二とあかねが付き合っているという話を聞きました。そして、組では立松が東風会会長を殺すのが怖くなったから、わざと暴力事件で警察に捕まったのだと笑っているという話も。この笑っている、という部分にピクっと反応する立松。
「みんな笑っているんだな……娑婆に出るから保釈金出してくれよ」

家に帰ってきた立松に「兄ちゃんなんで帰ってきたの。遺産のため。あたしに会うため」と言い出すあかね。どうもあかねには、男のメンツという選択肢は思い浮かばないようです。思ったようなリアクションを得られないあかねは、わたしお妾(めかけ)になると言い出します。いつもなら兄ちゃんは、これで激怒するはず。しかし立松は何も言いません。「兄ちゃん、お妾になるって言ってるのよ。聞いてるの。いいのね兄ちゃん」……無反応です。とりあえず、あかねは家を飛び出しました。早速、勤め先の社長のところに行って、今夜泊まる所を見つけてください。と頼むあかね。この異常な行動力の源泉はナンなんでしょうね。ともあれ、棚ボタだと喜んだ社長がホテルを取り、押し倒そうとすると「やめて言うわよ、兄ちゃんに」とか言い出すあかね。社長も、立松の狂犬ぶりは話に聞いているので、「すまん」と謝ってスゴスゴ帰っていくのでした。

あかねは裕二に電話をしました。今ドコという裕二に「ホテルよ。どうしても会いたいの。すぐ来て」とワガママです。裕二がホテルに来ると、あかねは下着でお出迎え。思わず生唾ごっくんで、キミのためなら何でもやるよ、という裕二に「じゃ抱いて」と言うあかね。

とりあえずキスの前に顔をじっと見つめて「抱いていたい、朝まで」とバッチリ決める裕二こと田村正和。もちろん、この台詞は「あの」田村正和の口調ですから。でも、実際はあかねの手のひらで転がされているような気もしますけど。

ともあれ、一夜が明けて「こうなったら一日も早く、キミと暮らしたい。どうせいつかキミの兄さんとぶつかるんだ」と悲壮な決意を固める裕二。でも立松こと勝新は怖いぞー。

家に帰るやいなや、あかねは「ただいま、兄ちゃん。夕べはね、ホテルに泊まったの、裕二さんと一緒に」と言い出しました。裕二としてはハメられたという気分かもしれませんが、とりあえず「裕二です」と挨拶から入ってみることにしました。「あたしたち結婚の約束したの。もう兄ちゃんの世話にはならないわ」とさらに立松を挑発するあかね。裕二としては、逃げ出したい気分でしょう。「妹が幸せになるんだもの。許してくれるわね」と言いながら裕二に抱きついて、じぃーっと立松を見つめるあかね。
ようやく立松は「あかねは俺のもんだ。誰にも渡さねえ」とノッてきました。とりあえず、ノッてきた証拠に、ドスをテーブルに出してみます。
あかねは裕二に「裕二さん、あたしが欲しかったら兄を殺して。それが男でしょ」と言います。「そんなバカな」と答える裕二。「殺さなければあたしたち一緒になれないわ。殺して」「ダメだ。できない」「そう、じゃ帰ってよ。帰って」「キミ」「あたし、あなたがキライになったわ。男らしくないもの」

もう、裕二は完全にかませ犬状態。さすがに色男の田村正和といえども、勝新太郎と比べられると小僧扱いですね。ともあれ、裕二は追い返されてしまったのです。

「兄ちゃん、とうとう二人きりになれたわね」とあかねはイカれた目付きでドスを握ります。「これでいいの。うれしい。兄 ち ゃ ん !!!」とドスを振り回すあかね。「俺を殺す気か」とビックリする立松に「そう、兄ちゃん殺して、あたしも死ぬわ」とあかねはまた刺そうとしてきました。狂ったように暴れ狂うあかねを抱きとめた立松は「あかね。お前俺が好きか」と問います。「好きよ」と答えたあかねは、死んで、死んでよと絶叫しながらドスでひたすら突きかかってくるのでした。

お前を死なすわけにはいかねえよ、と出て行く立松。残されたあかねはドスを見つめながら、ウワァーンと号泣し始めました。

外では、裕二が帰るに帰れず、道端で立ち尽くしています。「てめえ、ホントにあかねが好きなんだろうな」と睨みつける立松に、ビビリながら「もちろんです」と答える裕二。
「あかねを幸せにしろよ。一生幸せにしろよ」と立松は言って、去っていきました。

東風会会長がしけこんでいるトルコ風呂に現われた立松。見張りを殴り倒し、個室に乗り込みます。そして、東風会会長に弾丸を撃ち込みます。一発、二発、三発。全弾六発を撃ち尽くし、動かなくなった会長を見つめている立松。と、そこに用心棒のチンピラが踊りこんできました。ドンッ。ドンッ。ドンッ。次々と弾丸が立松の体に叩き込まれていきます。全身を撃ちぬかれ、ボロ布のようになった立松が映し出されています。

いや、なかなか意外性のある作品でした。とりあえず、前半部分は妹に異常な執着を見せる兄の物語と思わせておいて、後半、どんどんヘンな方向に急カーブしていく演出は最高です。

勝新太郎は黒尽くめの上下に黒シャツというヤクザスタイルがとことん似合っています。髭も生やしているし、どの角度から見てもヤクザそのまんま。これを見てしまうと、東映のヤクザが可愛く見えてくるから不思議です。これに対抗できるのは、松方弘樹@県警対組織暴力くらいじゃないでしょうか。

いずれも大谷直子に弄ばれちゃう川津祐介と田村正和ですが、この映画の一年前の「黒薔薇の館」でも、そろって三輪明宏に弄ばれていました。まあ、その程度のポジションだったんだよ、と言えばそれまでですけど、そろいもそろって何やってるんだよ、といった感じです。特に川津祐介は、松竹ヌーベルバーグに欠かせない、若手スターだったはずなのに10年という時は残酷ですねえ。

さて、大谷直子です。岡本喜八監督の「肉弾」で清純なヌードを見せてデビューした後、第2作目の映画がこれですが、前作とは違うヒートアップぶりが「大谷直子」という女優の成長を感じさせます。清楚な顔の奥に秘めた狂気、みたいなのが、この女優さんの魅力ですが、それにしてもこの映画はスゴイ。
なにしろ、勝新とがっぷり組んで、一歩も譲らず、

全編、目を見開いて、さらには瞳孔まで開いちゃってるんじゃないの

というくらいの熱演でしたから。

それにしてもこの映画は、増村保造の映画ではありますが、勝新太郎と大谷直子の神がかりというか、悪魔つきな演技が炸裂した奇跡的な映画だと思います。シネフィルと呼ばれる人たちの間での評価は分かりませんが、ぼくとしては、その「パワー」に完全に圧倒されました。







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【映画】女系家族

2007-08-15 | 邦画 な行

【「女系家族」三隅研次 1963】を観ました



おはなし
大阪船場の老舗、矢島商店の当主が亡くなりました。残った遺産を巡って争う3人姉妹ですが、そこに当主の子を宿しているという女があらわれて……

山崎豊子流のコテコテっとしたお話が楽しい一本です。キャストも見事にハマっていて、これぞ大映、これぞ大阪は船場といった感じでしょうか。これが、東映だと微妙にヤクザ臭が漂ってきますから。

「ご臨終です」。大阪は船場の老舗「矢島商店」の当主が亡くなりました。当主には娘が3人います。長女の矢島藤代(京マチ子)は出戻りの総領娘。次女の千寿(鳳八千代)は婿を取って矢島商店を継いでいます。そして、三女の雛子(高田美和)は、花嫁修業と称して、毎日遊び歩く生活です。

矢島商店は3代続く女系家族で、亡くなった亡父も婿養子。そのせいか、娘たちも気位ばかり高く育ってしまったようです。

葬式も終わり、親戚一同が集まった席で、大番頭の宇市(中村鴈治郎)が先代の遺言状を読み上げ始めました。それによると、矢島商店の営業権は次女の鳳八千代に。長女の京マチ子には、貸家50軒を始めとする不動産を。そして三女の高田美和には、株式と書画骨董を与えるというのです。それ以外の財産は共同相続財産とし、遺言の執行人として大番頭の中村鴈治郎を指名していました。

「わては不満だす」と、まずは先制パンチをかます京マチ子。京マチ子は、いったん家を出た出戻り娘ですが、意識の中では戦前のように、自分が全ての遺産を相続する気だったのです。「相続財産の目録は、法律上誰が作りますねん」と大番頭の中村鴈治郎を牽制しつつ、主導権を握ろうとする京マチ子。しかし、婿を取って、実質的に自分が女主人だと思っている鳳八千代だって、黙ってはいられません。そして、三女の高田美和には、先代の女主人の妹・芳子(浪花千栄子)が味方に付き、まさに骨肉の争い勃発な雰囲気です。

と、そこで中村鴈治郎が実はもう一通、お預かりしている遺言状があります、と言い出しました。その遺言状には、先代に妾・文乃(若尾文子)がいたこと。そして、その妾も身が立つようにして欲しいと言うようなことが書いてありました。怖い顔をする京マチ子。あんた知ってたんでしょ、と中村鴈治郎を責める浪花千栄子。いきなり耳が遠くなった振りをしてトボケル中村鴈治郎。とりあえず、座の雰囲気も最悪になったところで、一ヵ月後に改めていろいろ話し合うことに決まったのです。

中村鴈治郎はその足で早速、若尾文子のところへ。「わてがついててお味方しますよって」と取り入っています。どうも、遺産の話し合いの時とは違って、ふてぶてしい感じです。その上、家には証券やら貯金がガッポリ。さらには矢島家秘蔵の雪舟の掛け軸まで持ち出している様子。

中村鴈治郎は自分の女、君枝(北林谷栄)の所に行きました。あなたも遺産はもらえるのかと問う北林に、そんなもの当てにしてないと言い切る中村鴈治郎。とりあえず、遺産の動きどきが狙い目ということで、イロイロとちょろまかす気のようです。

京マチ子は踊りの師匠(田宮二郎)に、不動産売買について相談を持ちかけました。踊りの師匠の癖に、ヘンに不動産について詳しい田宮二郎は、知り合いの不動産屋を使って、土地を安く査定。これで、遺産分割の時に持分が少ないと、ゴネさせることにしたのです。

一方、三女の高田美和についた叔母さんの浪花千栄子は、お道具調べの真っ最中。古道具屋に骨董品の鑑定をさせつつ、ついでに京マチ子の持ち物の資産価値を調査しています。もちろん、それは次女の鳳八千代も同様。京マチ子が嫁入りの時に着ていった着物をコソコソ調べているのです。

そんなこんなで迎えた遺産分割の話し合い。京マチ子は、商売や、株・骨董品はいくらでも税金をごまかせるけど、土地は税金をごまかせないので自分が不利だと言い出し、叔母さんや次女は、そもそも結婚の時に貰った骨董品や着物は生前贈与だと言い返すわで、話は付きそうにありません。ご隠居は、共同財産をうまく塩梅しろと執り成しますが、どうも決着は付きそうにありません。

そこに呼びつけられた若尾文子がやってきました。姉妹の争いは別として、若尾文子相手には団結する矢島家の面々。オドオドと挨拶する若尾文子に「ああ、温泉芸子さんでおますか」と嘲りの視線を向ける京マチ子。しかし浪花千栄子は羽織を脱ごうとしない若尾文子の様子に、厳しい視線を向け、無理やりに羽織を破って脱がしてしまうのです。
「お腹のやや子、何ヶ月でおます」と問い詰める浪花千栄子に「四ヶ月でおます」と消え入るような声で答える若尾文子。「やや子産んで、その子で取るもの取ろうと言わはんでんな」と京マチ子も敵意むき出しです。

京マチ子は田宮二郎のもとに「ホンマにどないしたらよろしいやろう」と相談に行きました。田宮次郎に妾の子でも認知されれば、嫡出子の半額は遺産を取られると聞いて愕然とする京マチ子。さらに妹たちより、たとえ竈の灰一掴みでも相続が多くないとイヤだ、と泣き崩れています。そんな京マチ子を押し倒す田宮二郎。「若、こんなところで~ん」と京マチ子の鳴き声は甘い声に変わってしまったのです。

とりあえず共有財産のうちから山林が欲しいと決意した京マチ子は田宮二郎をお供に、山を見に行くことにしました。しかし山守の男は、どうも中村鴈治郎と結託している雰囲気。その上、足を挫いてしまった京マチ子は弱り目に祟り目な気分で、ブルーです。その後、宿に戻った二人。田宮二郎に足をさすられて、陶然とした表情の京マチ子。「けど、うらやましいな。一億円もの財産を女一人で相続できて、いったい何に使いはるおつもりだす」と田宮二郎がジト目で熱く見つめたかと思うと、いきなりキスをしてきました。「わてを利用しっぱなしで、遺産相続が済んだらどこぞの若旦那を相手に選びなはるのと違いまっか」「何を言わはりますねん。若こそあたしをこないにしてしもうて。あたしをどないしはるおつもりですのん」「こないするだけでおます」
椅子に座っている京マチ子の背後から、かぶさるようにキスをする田宮二郎。とりあえず、これを「秘儀逆さチュー」とでも名づけておきましょうか。もちろん、これに対抗できる女性は、どこにもいません。

若尾文子は、妊娠腎にかかったそうです。このままだと子供はもちろん、母体にも危険かもしれません。それを聞いて大喜びする矢島家の面々。早速、様子を見に行こうと話がまとまりました。「行くときはパリっと豪奢なお衣装で行かなあきまへんで。本宅のもんの格式を見せんのですさかい」と京マチ子も、張り切っています。
でっかい外車で乗りつけたのは、三姉妹に叔母さん、それに大番頭。
ズカズカと上がり込んで、言いたい放題の三姉妹ですが、その上、勝手に産婦人科医を呼んで、若尾文子を診察させようとしました。嫌がる若尾文子を寄ってたかって押さえつけ、医者を呼びます。さすがに医者は、本人の同意がないと診察できませんと怒っていますが、とにかく強引なのが、矢島家の面々ですから、若尾文子もしかたなく同意するのでした。

さすがに、医者から出て行きなさいと言われて、別室に下がった京マチ子、鳳八千代、それに浪花千栄子。しかし、医者がスコープで若尾文子の大事なところを診察し始めたときに、ガラっと襖を開けてニヤニヤ笑うのでした。もう、ここまで来ると、明らかにやり過ぎだと思います。

怒涛のような訪問が終わり、若尾文子の付き添い婦の北林谷栄が「悔しおましたやろ。あんなえげつないマネされて」と若尾文子を慰めます。もちろん北林谷栄は中村鴈治郎の女ですから、実はスパイなんですけどね。北林谷栄は、親切めかして、先代から子供を認めるというような書付を預かっていないかと、しつこく聞き出そうとします。しかし、若尾文子は、何ももらっていないと寂しそうに言うのでした。とか言いつつ、ふっと見せる笑いが、とてもすさまじいんですけど。

北林谷栄は中村鴈治郎に、押入れからゲタ箱まで、隅々探したけど書付は無かったと報告します。「そうかあ、さっきの様子から見て、やっぱり何も持ってへん、ちゅうのがホンマらしいなあ」とガックリする中村鴈治郎に、北林谷栄は「文乃さんってホンマ欲のない人ねえ」と言うのでした。いや、そんなわけ無いと思いますが、

ともあれ、中村鴈治郎は逆襲を開始しました。京マチ子には、踊りの師匠との関係や、不動産屋に安く土地の見積もりをさせたことをネタに脅迫して、山の権利は京マチ子のモノにして良いから、山の伐採権を半分寄越すことを認めさせます。
鳳八千代夫妻には、矢島商店から独立して新会社を作ろうとしている計画を知っていると脅し、さらに自分が受け取っているリベートの半分を渡すことで手を打ちます。
そして、高田美和の後見人の浪花千栄子には、こっそり隠していた雪舟の掛け軸を渡すから、その代金の3分の1を欲しいと持ちかけるのでした。

結局、ウヤムヤのうちに、けっこうな分け前を手に入れることになった中村鴈治郎。三姉妹の強欲にうまく付け込んだかたちです。そして、とうとう親戚が集まっての遺産分けの日がやってきました。

中村鴈治郎の腹案どおり話が進み、万々歳と思っていたところに若尾文子が男の赤ん坊を抱いてやってきました。「あんた言いたいことは何ですねん」と切り口上な浪花千栄子に、若尾文子は静かに対峙します。子供は先代の子です、と言う若尾文子に矢島家の面々は、絶対に認めないとの構え。しかし若尾文子は「生まれるお子が自分の子であると記されたお手紙もちょうだいしてますし」と切り札を切ってきました。それに、先代から生前サインをもらっておいた出生届も出してきたと言うのです。

なんて悪どいことをするのか、と若尾文子を罵る矢島家の面々に「悪どいのはとうさん方でおます」と言い切る若尾文子。自分がどんな屈辱的な目にあったか、それに書類があることを事前に言っていたら、あなたたちは子供を亡き者にするために、どんな手でも使ってきたでしょうと反論です。

グッとつまりつつ、それでも「あたしらは認めまへん」と繰り返す京マチ子。しかし、若尾文子はまだ隠し玉を持っていたのです。それは先代の残した遺言状でした。

ご隠居に命令されて中村鴈治郎が遺言状を読み上げ始めました。新しく生まれた子供も相続人に加えること。それに山林は、その子供に相続させることなどが、震える中村鴈治郎の声で読み上げられていきます。中村鴈治郎の額から汗がタラリと流れます。さらに、別に用意された書面には、中村鴈治郎の悪事一切が記されていました。中村鴈治郎は口をパクパクさせています。

中村鴈治郎は許してあげて欲しいと言う若尾文子に、一族の長老格のご隠居も、身内の恥を晒したくないと感謝しています。この子は立派に育てますと言って、仏壇に一礼して、毅然とした態度で去っていく若尾文子。カメラは仏壇の上に飾られた矢島一族の写真を舐めていきます。そして、座敷には呆然として座っている親戚一同。

親戚一同、それに中村鴈治郎は座敷を出て行き、三姉妹だけが残りました。
今では京マチ子も憑き物が落ちたように「三代続いた女形家族もこれで終わりや。却って良かったんやわ、きっと」とサバサバしています。結局、家では昼行灯のように、何を考えているか分からなかった父こそが、中村鴈治郎の悪事を全て見抜いており、そして自分の死後のゴタゴタまでも予見していたかのようです。

田宮二郎と会った京マチ子は「あたし舞の稽古、やめさせていただきます」と宣言し、驚いている田宮二郎をよそにして、外に出ました。外は日差しがきついようです。まぶしげな表情をした京マチ子は、ひたすら道を歩いていくのでした。

2年前の「女の勲章」では悪魔的な美しさで、京マチ子、若尾文子を手玉にとっていた田宮二郎ですが、今回はいまいち精彩を欠きました。というのも、今回は中村鴈治郎が出ていたから。本当に、京大阪のちょっと小ずるい人物を演じさせたら、中村鴈治郎の右に出るものはいませんね。徹底的な巨悪ではなく、小悪党。これが中村鴈治郎の持ち味です。

とは言え、田宮二郎の口説きっぷりも中々。新東宝の天知茂も良いですが、田宮二郎も色悪が本当に似合います。

そして、若尾文子。もう、見た瞬間、絶対に無欲なわけない、と思わせる風貌がさすがです。タフというか生命力が強いというか。とにかく一筋縄ではいかない悪女を演じさせると、どうしてこんなに光り輝くんでしょう。若尾文子が悪女っぷりを全開にし始めると、水戸黄門で、印籠が出てきた後のように「よっ、待ってました」と言いたくなってしまいます。

主演は京マチ子ですが、これもまた良いです。とことん自分勝手で、気が強いものの、どこか間が抜けていて、そんなに悪い人じゃないな、と思わせる演技がとてもうまいです。さすがグランプリ女優ということで。

しかし、この手の大阪船場を舞台にしたお話。ボリューム的には連続ドラマでじっくり見せたほうが良いかもしれませんが、それだとかなりお腹いっぱいになりそうです。かなりギトギトしていますしね。その点、映画だと2時間ですっきり終わるので、ちょうど良い満腹感にひたれるので、オススメですよ。


(高田美和、鳳八千代、京マチ子、浪花千栄子)

(冷や汗たらりの中村鴈治郎)

(妖しい笑みの若尾文子)

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【映画】博徒一代 血祭り不動

2007-08-11 | 邦画 は行

【「博徒一代 血祭り不動」安田公義 1969】を観ました



おはなし
博徒の桜田丈吉は新津に弟分の勇一を訪ねたところ、、恩人の音次郎に再会しました。しかし、音次郎の組と勇一の組は、跡目争いで対立しており……

市川雷蔵の遺作です。病をおしての出演、そして早すぎる死を考えると、涙なくしては見られません。

賭場荒らしの男から金を取り立てるために、二人の博徒がやってきました。桜田丈吉(市川雷蔵)と、弟分の輪島勇一(金内吉男)です。しかし、男は抵抗し、丈吉はあやまって男を刺し殺してしまったのです。見れば男は病身の妻のためにムリに金を工面した様子。妻の妹のお園(亀井光代)からも「こんな兄でも、姉や私にとってはかけがえの無い頼りだったんです」となじられた丈吉は、生来の義侠心から、金を取らずにその場を立ち去ったのでした。

とは言え、親分に金を渡さねば、それはそれで丈吉の男が廃ります。やむを得ず、賭場で大きく博打を打つ丈吉。とんとん拍子に金を増やしていく丈吉ですが、最後の大勝負と張り込んだときに、旅の男(近衛十四郎)に手も無く負けて、すっからかんどころか、有り金を全部はたいても足りないくらいの大負けをしてしまったのでした。

持っていた見せ金が新聞紙だったことから、賭場の連中に殺されそうになった丈吉を助けたのは旅の男でした。男は負けを帳消しにしてくれたばかりか、「遠慮は要らねえ。どうせ旅で集めたあぶく銭だ」と500円もの大金を丈吉に渡すのでした。感謝して名乗ろうとする丈吉に「いや、聞かねえでおこうよ。俺も名乗らねえ。これから先々、決してわしを探すんじゃねえぜ」と男気を見せる旅の男。さらに「おめえさん、いいかい。男は一生に一度、必ずてめえから死ににかかるときがある。仁義のためだ。その時は預かりものの命と思うんじゃねえぜ。遠慮なく使いなさいよ」とまで言われた丈吉は、もう大感激です。

弟分の勇一に、親分への金を託した丈吉は、みずから従容として自首をすることに。それこそが、男気を教えてくれた旅の男に対する、せめてものけじめのつけ方だったんでしょう。

「そして六年」

ここ新津の街では、土地の大親分、泉谷剛造(石山健二郎)が病の床についており、跡目を北松市蔵(金田龍之介)に継がせようと考えています。しかし、それに反対しているのが大親分の兄弟分、杉谷理三郎(富田仲次郎)。理三郎は、自分の息のかかった大戸国五郎(遠藤辰雄)を跡目に据え、自分も甘い汁を吸おうと考えているのです。大親分の面前で、北松は罵倒され、辱めを受けます。当然、いきり立って杉谷や大戸を殺そうと息巻く北松の子分たち。しかし、北松はあくまで自重するように子分に命じるのでした。

そんな、新津の街に降り立った丈吉。出所した丈吉は、弟分の勇一を訪ねてきたのです。勇一は、大戸組でとんとん拍子にのし上がり、大戸親分の片腕にまでなっていました。兄貴分の丈吉に会えた勇一は大喜びで、うちの親分に会ってくれと、下にも置かない歓待ぶりです。大戸親分も、北松と喧嘩中ですから、腕の立ちそうな丈吉を離そうとしません。

そこに、北松の子分・島崎が殴りこんできました。うちの親分をバカにしやがって、という理由です。しかし衆寡敵せず、あっという間に大戸の子分たちにのされた島崎。傷だらけの島崎の顔を踏みにじる大戸に、傷に焼酎をぶっ掛け拷問する勇一。しかし、島崎は北松との盃を割ってから、殴りこんでくるほどの任侠をわきまえた男。そんな男に対して、この仕打ちは無いだろうと、丈吉はすっかり気分が悪くなってしまいました。

「そこの人、頼む、俺を殺してくれ」と丈吉に頼む島崎。丈吉は島崎の男気に答えるために、ドスを島崎の胸に突きたててやったのです。「兄貴、出しゃばるんじゃねえ」と怒る勇一に「てめえこそ引っ込んでろ」と一喝した丈吉は、「この人はわっしに預からせてもらいます」と島崎の死骸をかついで、歩き出しました。

北松一家まで島崎の死骸を届けた丈吉。見れば、北松の親分も任侠道をわきまえた素晴らしい親分。丈吉はすっかり感服してしまいました。

一方、納まらないのは弟分の勇一。飲み屋で丈吉にくどくどと文句を言っています。と、そこに若い女がお使いから帰ってきました。「おめえさん、もしや」と絶句する丈吉。なんと、その若い女は、かつて丈吉が殺した男の義妹、お園だったのです。あの時のことを詫び、金を渡そうとする丈吉。しかしお園は「あなたを許せないんです」と、いっこうに金を受け取ろうとはしないのでした。

新津の駅。丈吉は再び草鞋を履くことにしました。しかし、そこに襲い掛かってくる北松一家の若い衆。どうやら、丈吉を島崎の仇を思い込んでいるようです。それを汽車から降りてきた男が止めに入ります。男の顔を見た丈吉はビックリ。かつて世話になった旅の男だったからです。

男の名前は小洗音次郎(近衛十四郎)。北松一家の代貸しをしている音次郎は、丈吉と前後してお勤めをして、今日、仮出所して新津に戻ってきたのでした。その上、義兄と姉を失って身寄りの無かったお園を、親代わりに育てていたのも音次郎ですから、丈吉としては二重三重にも恩を感じて、このまま旅に出るなんてことは考えられなくなったのです。

男気溢れる音次郎の帰還に、北松親分も大親分も大喜び。早速、音次郎を後見人に、北松親分へ跡目を継がせる話が具体化してきました。

こうなると面白くないのが、大戸親分と、その後見の杉谷親分。彼らは、邪魔者の音次郎を消すことにしたのです。実行犯に選ばれたのは勇一たち。しかし、襲われた音次郎を間一髪で助けたのは、予想通り丈吉だったのです。

大恩のある音次郎を狙うなんて、と怒る丈吉。しかし、結局は「たった一人の兄弟分だからな」と勇一を許し、見守ることにしました。そうこうする内に、襲名披露の日が近づきます。もう、これで心配は無い、旅に出てくれと丈吉に音次郎は言います。最初は勇一が何をするか、と心配していた丈吉も腰を上げることにしました。ところが、そんな時に勇一が問題を起こしてしまったのです。こともあろうに、大戸組が世話になっている社長さんの女に、勇一は手を出してしまったのです。

このままでは勇一は、責任をとって死ななくてはなりません。そうなると、丈吉としては、弟分の代わりに自分をどうにでもしろ、くらいは言わないとカッコがつかない雰囲気です。
しかし、そう言ったところ、大戸の親分は待ってましたとばかりに、じゃあお前が音次郎を殺して来い、と丈吉に命令をするのでした。

雪の中、音次郎を呼び出した丈吉。丈吉のただならぬ態度に、「もう何も言いなさんな。おめえさんの目を見れば分かる」と音次郎は言います。「そうでしたか。お察しの通り、お命頂戴しなけりゃなりません」と答える丈吉。しかし、丈吉はひそかに死を決意して、ドスを懐に入れずに、この場に臨んでいたのです。もちろん音次郎の鋭い視線が、それを見抜かないわけもありません。控のドスを渡し「立会人は降る雪だけだが、力の限り闘って男の死に花を咲かせようじゃねえか」と言うのです。そうでした。音次郎相手に、黙ってやられようなんて、かえって失礼です。

雪の中の立会い。実力は伯仲。いつ果てると知れない勝負が続きます。と、その時、銃声が響きました。命と出世を餌にぶら下げられた勇一が、卑怯にも音次郎を狙撃したのです。倒れ伏す音次郎。丈吉が「やったのは」と下手人の名前を告げようとすると「いけねえ。それを言うんじゃねえ。誰も見ていねえんだ。俺も知らねえこったよ」と言って、あくまで丈吉の立場を考えて音次郎は死んでいったのです。

北松一家を訪ねた丈吉は「お身内に加えて下さい」と、北松の親分に頼み込みました。「音次郎に代わって、このわしを」と感激する北松。早速、盃を交わすことに。まあ、英雄は英雄を知る、ということでしょうか。

いよいよ、襲名披露の日。しかし、取り持ち人の役をまかされた杉谷親分が顔を見せません。もちろん、北松親分の顔をつぶすために、わざと欠席しているのです。騒然とする襲名披露の会場。このままでは、北松親分はもちろん、大親分の顔も丸つぶれです。そこに、自分が取り持ち人をやりましょうと言い出す丈吉。丈吉は見事な作法で、無事、取り持ち人の大役を果たし、北松親分は大いに面目をほどこしたのでした。

しかし披露を終え、北松親分が礼を言うために丈吉を呼び出そうとすると、丈吉はいませんでした。勇一との間に決着をつけるために、大戸組に乗り込んだのです。とりあえず、杉谷親分や大戸親分をサクっと倒した丈吉に、勇一が銃口を向けてきました。

慌てず騒がず諸肌脱ぎになる丈吉。「親分とか代貸しだとか、そんなもんが男の値打ちだと思うんなら、俺の背中のお不動さんをぶち抜いてみろ」と啖呵を切ります。そうか、これでタイトルの意味がようやく分かりましたよ。

とりあえず、半狂乱になって撃ちまくる勇一。しかし、一発たりと当たりません。やっぱりお不動さんパワーでしょうか。兄貴勘弁してくれ、と泣き出す勇一を刺す丈吉。勇一は「兄貴、ひどいよ。おれを刺し殺すのかい、ひどいよ」と最期まで見苦しく足掻いて死んでいったのです。

雪の中、歩いていく丈吉。それを見送るお園。汽車の警笛が、ポーッと聞こえます。


こ、これはひどい。まるっきり東映の昭和残侠伝のコピー。それも劣化コピーです。こんなものが遺作になってしまっただなんて、市川雷蔵はさぞ無念だったんじゃないでしょうか。

もともと下血などをくり返し、癌に蝕まれていた雷蔵。しかし、雷蔵の妻は、大映の永田社長の養女。それに、雷蔵自身、大映の屋台骨を支える唯一無二の大スターでした。そんな雷蔵が、病気を理由にゆっくり養生できる環境はどこにも無かったのです。挙句、病をおして出演した結果、体調が急速に悪化して、雷蔵は帰らぬ人になってしまいました。

主人公は義理と人情に縛られ苦悩する丈吉という男ですが、それより何より、雷蔵自身の生き方がまさに義理に縛られていたようです。大映という映画会社への義理。日本映画界に対する義理。そんなものが、この不世出の俳優の死期を早めたのでしょう。
実際「雷蔵、雷蔵を語る」という本を読むと、市川雷蔵が一俳優としてではなく、一人の映画人として、いかに日本映画を愛していたかがよく分かります。画面から受けるイメージそのままの端正な文章(本当に名文です)で綴られる雷蔵の言葉は、まさに素晴らしいの一言です。

ともあれ、結果を知っているせいもあるかと思いますが、雷蔵の落ち窪んだ頬などを見ていると、胸が詰まります。メイクの達人と言われ、メイクを落とした素顔で街を歩いても、誰も気づかなかったと言われる市川雷蔵ですが、明らかにメイクでも隠しきれない病の侵食の後が見えているのです。

これが雷蔵の遺作では悲しすぎる。せめて、この一本前の「眠狂四郎 悪女狩り」が遺作であったら良かったのにと思います。雷蔵の相手役を多く務めた藤村志保が出ているし、監督は雷蔵がその才能を買って、同年代の盟友とまで思っていた池広一夫ですし。







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【映画】火の鳥

2007-08-10 | 邦画 は行

【「火の鳥」市川崑 1978】を観ました


おはなし
ヤマタイ国、マツロ国、クマソの国、そして高天原族、4カ国の人間たちの愚かしい争いを、不死の命を持つ火の鳥が見守っています

もちろん原作は手塚治虫のマンガ。その膨大な作品群の中から、神話時代を舞台にした黎明編を実写化したものです。脚本は詩人の谷川俊太郎ですが、基本的に原作のエピソードを過不足無くうまくまとめ上げたのではないでしょうか(と、ちょっと偉そう)。ただ、火の鳥は原作もしくはアニメに限るので、ここでは実写版にたいするツッコミをメインに書こうと思います。そのため、基本的に文中では役名ではなく、俳優さんの名前を書きますので、ご了承ください。

「くにざかい」
荒野を一人の男が歩いています。カメラがググッと寄っていくと弓彦(草刈正雄)が歩いていました。荒野をさまよう草刈正雄と言えば、何と言っても「復活の日」のラストを思い出しますね。あっ、猪が草刈正雄に突進して来ました。タァーっとジャンプして猪を射殺ろす草刈正雄、さすがです。そこに岩陰からスクネ(大滝秀治)が出てきて「お迎えに参りました」とオベンチャラの嵐です。しかし、草刈正雄は「岩陰にもう一人いる」と、あくまで冷静。バレては仕方ないと出てきたスサノオ(江守徹)は、どことなく悪人風です。
そもそも、江守徹のヤマタイ国は、草刈正雄のマツロの国を攻めない代わりに、火の鳥を仕留めてもらう取り決めを交わしました。そこでやってきたのが、マツロの国一番の弓使いの草刈正雄だったのです。
そこに火の鳥が飛んできました。というか、正確には火の玉ですね。瞬間的に弓を取り出し、矢を射つ草刈正雄。「手ごたえあった」と自信ありげですが、当然、火の鳥はやられませんでした。

「マツロの国」
「天弓彦が、あんなにあっさり、この国を出て行くとは思わなかったな」と草刈正雄の噂をしている男たち。「お前に捨てられたからだろ」と言われたウズメ(由美かおる)は艶然と微笑んでいます。と、そこに謎の騎馬軍団がマツロの国を襲ってきました。男たちは殺され、女が乱暴されていきます。しかし由美かおるは不細工なメイクをして、かろうじて生き残ることに成功したのです。

「ヤマタイ国」
ヒミコ(高峰三枝子)が狂ったように踊っています。おん年60歳とは思えぬ体の柔らかさで、ベターっと前屈したりして、かなりの迫力。一方、真っ黒な衣装に身を包み、亀甲占いをしているのはイヨ(草笛光子)。草笛光子は、争いの調停を頼まれているのですが、思いっきり悪人と善人を取り違えて、霊力は無さそうな感じです。
思わず高峰三枝子の弟である江守徹は「イヨ、あんたの霊術は間違っている」と正直な感想を口走ってしまいますが、高峰三枝子は私の弟子に何か文句あるの、とキレまくりです。江守徹は、姉さんのまじないに頼っていては国の力も衰えると、しごく真っ当な反論をしてみますが、高峰三枝子は「何を言う。私が若く美しくある限り、国の行く末を案じることはない」と言い切るのです。そして、火の鳥の血こそ、不老不死を実現する妙薬ということで、ヤマタイ国は国を挙げて、火の鳥の探索に余念が無いのでした。

「クマソの国」
小屋で女が病の床に臥せっています。女の名はヒナク(大原麗子)。クマソの族長(加藤武)の娘で、弟はナギ(尾美トシノリ)と言います。夫のウラジ(沖雅也)は大原麗子の病を治すために火の鳥を探しに行っていますが、果たして沖雅也に捕まえられるかどうか。
ところで、クマソの国に見慣れない男が漂着しました。男の名前はグズリ(林隆三)。加藤武は、見慣れぬ部族の男は殺してしまえという男らしい性格なので、林隆三も危うく殺されるところでしたが、林隆三は大原麗子の病気を治すという条件で命を助けてもらったのです。

その頃、沖雅也は火の鳥を見つけ「これで女房が助けられる」と矢を射ちますが、予想通りハズレ。「こうなったら素手で生け捕りにしてやる」と突っ込んでみたものの、火の鳥は"燃えているから"こそ火の鳥なのです。案の定、アチチと黒焦げの死体になって帰ってきた沖雅也。一方、大原麗子は林隆三の治療で命を取り留めました。「今日より二人は夫婦だ」と高らかに宣言する加藤武。ホント、男らしすぎです。

しかし、林隆三の正体は、実はヤマタイ国のスパイ。夜、人が寝静まったところを見計らって、ヤマタイの軍船を導く任務をおびていました。その誘導で、海から上陸してきた猿田彦(若山富三郎)率いるヤマタイ軍は一気にクマソを蹂躙。さすがの加藤武も「海からの夜襲とはぬかった」と悔しがっています。もちろん、男らしい加藤武も、一騎打ちで若山先生に歯が立たないのは言うまでもありません。
「姉さん、グズリは、グズリは敵の回し者だったんだ」と悔しがる尾美トシノリは、皆殺しにされた仲間の仇をとろうと若山先生を弓で狙撃してみます。しかし先生がやられるわけもなく、尾美トシノリは捕らえられヤマタイに連れて行かれたのです。

尾美トシノリを連れて、高峰三枝子に拝謁した若山先生は、滑稽なくらいに感激しています。よっぽど高峰三枝子に心酔しているようです。しかし、ご機嫌斜めな高峰三枝子に「そのこせがれを殺せ」と言われて「ええーっ」とビックリ仰天。ペコペコして、どうにか命を取るのだけは勘弁してもらえたようですが。
それから奇妙な生活が始まりました。若山先生はもちろんヤマタイ全部を憎んでいる尾美トシノリと、そんな尾美が可愛くてしかたない若山先生。先生は尾美を一人前の弓使いにすべく、狼の群れの中に放り出してみたり(アニメ)、それで怪我をした尾美を看病しようとして、薬草をせっせと調合してみたり(クシャミで尾美を家2軒分ほど吹き飛ばしてみる)と、まさにマンガそのまんまな展開が繰り広げられます。
そうこうするうちに、ある程度弓が上達した尾美トシノリに、一人の少年・オロ(風吹ジュン)が近づいてきました。「おいクマソ野郎、一緒にヒミコをやっつけないか」と風吹ジュンは言います。もちろん、尾美が断わるわけもなく、、狙撃したら、、、失敗しました。逃げ出した尾美に代わって、若山先生が罰を受けることになりました。マダラバチの穴倉に押し込められるという罰です。果たして若山先生の命はどうなることやら。

そんなことに関係なく、ニヒルな草刈正雄は火の鳥を倒すため鉄の矢を作っています。全部が鉄なら、火の鳥の熱でも矢が焼けてしまうことはない。さすがです。そして、とうとう矢が完成しました。よろこぶ高峰三枝子は、何を血迷ったのか草刈正雄を誘惑。胸に手を押し当てさせて、アッハン言ってます。それを目撃した弟の江守徹は激怒。目の中に悪魔の陰が射しています(アニメ)。そのまんま、怒りのままに牛を倒した江守徹は、その死体をヒミコの神殿に投げ込むという暴挙に。当然、これはヒミコの権威を犯す行動として、江守徹は目をつぶされたうえで、追放されてしまったのです。

さて、皆既日食が起こりました。住民はみんなパニックです。しかし真っ暗になったのはチャンスと、尾美トシノリは風吹ジュンに手助けしてもらい牢から若山先生を救い出すことにしました。でも、もう少しというところで見張りに見つかり、二人の代わりに射ち殺されてしまう風吹ジュン。惜しい犠牲でしたが、尾美トシノリと若山先生は無事に、舟でヤマタイを逃げ出すことに成功したのだから、結果オーライでしょうか。
意識を取り戻した若山先生は「俺をヒミコさまのところに帰してくれー」と叫びますが、舟は大海原の真っ只中。もうどうしようもありません。それに、若山先生は長い牢暮らしで体はボロボロ。特に鼻は大きく膨らんでまるで天狗様のようになっています。そんな若山先生の鼻に口をつけて毒を吸いだす尾美トシノリ。なんと「転校生」で小林聡美とファーストキスをしたのかと思っていたら、若山先生がファーストキスの相手だったとは。
ともあれ、クマソの地に上陸した尾美トシノリと若山先生。しかし、その後には高峰三枝子自身が率いるヤマタイの大船団が続いていたのでした。

一足先んじて、火の鳥の住むという火の山にたどり着いた尾美トシノリと若山先生。そこにタイミングよく火の鳥が飛んできました。「射止める」と走り出す尾美。しかし火の鳥は「幸せを求めているからこそ、あなたは死ななければならないのよ」とテレパシーで語り、尾美は崖をゴロンゴロンと落ちていったのです(ここらへんは、本来哲学的な部分ですが、ここではバッサリとカット)。尾美が気絶からハッと気づくと、目の前には林隆三がいました。姉さんの仇と怒りまくる尾美に林隆三は「姉さんは生きている」と言います。それどころか子供もいる、と言う林に「嘘だ」と絶叫する尾美。どうやら林隆三と大原麗子はクマソを蘇えらせると、張り切って子作りに励んでいるそうです。そのためにも「俺はヒナクを死なない体にしたい」と、林隆三もまた火の鳥を狙っているのでした。
一方、尾美とはぐれた若山先生は、草刈正雄と出会いました。「俺はヒミコに雇われている身だ。見つけ次第、お前を討てと命じられている」とニヒルにキメる草刈正雄に「よかろう、しかし俺はみすみす討たれないぞ」と答える若山先生。でも若山先生は、もし俺がやられて、お前が火の鳥の血を手に入れたら、その血を俺のせがれにやってほしいと、草刈正雄に頼むのです。一進一退の勝負が続きます。しかし、甲乙付けがたい勝負は、尾美トシノリの乱入で、ウヤムヤになってしまいました。

「これがお前のせがれか」と若山先生に問う草刈正雄。エッ、とビックリしている尾美トシノリの横で、身もだえしながら恥ずかしがっている若山先生。草刈正雄は二人に、自分の故郷でもあるマツロの国に落ち延びろと言い残して去っていくのでした。うーん、ニヒル。
とは言え、ヒミコの軍勢は間近に。尾美トシノリは若山先生に逃げろと言います、「バカ、俺がお前を置いて逃げると思うのか」と怒る先生。しかし尾美トシノリも負けてはいません。「逃げてくれ、逃げて欲しいんだ。俺はあんたが好きだから死んでもらっちゃ困るんだ」「ちょ、ちょっと待て。今、お前何て言ったんだ。俺を好きだと、そう言ったのか。もう一度言え」「好きさ、大好きだよ」「もう一度」「これは誰にも内緒だよ。もう二度と言わないよ」「分かった。分かったからもう一度言ってくれ」「好きだ、大好きだ」
いや、男と女ならともかく。尾美トシノリと若山先生の台詞っていうのが、なんともはや。

さて、火の山に近づいたヤマタイ国の一行。高峰三枝子は、おそらくその女優人生の中で初めて、軍勢に命令を下しています。「さ、全軍、火の山へ進め~」。すごく恥ずかしそうです。というか、迫力ゼロ。しかし、それと同時に火の山は大噴火。火山弾がドッカンドッカン降り注いできます。腰ぎんちゃくの大滝秀治が「ヒミコさま、火の山を沈めるお祈りを」と頼みますが、高峰三枝子は「助けて~」と言うばかり。
その噴火は林隆三、大原麗子カップルも襲っています。しかし、たまたま逃げ込んだ洞窟は、入り口がガラガラと崩れて抜け出せません。その上、抱いていた赤ん坊は死に、深い深い穴のそこに閉じ込められてしまった二人でした。
別の場所では、地面がムクムクっと盛り上がったかと思うと、尾美トシノリが「ああ、助かった」と出てきました。しかし、辺りには若山先生がいません。「死んじまったんだろうか」と心配する尾美。しかし、横には「いかにも」な感じで蟻塚みたいなものがあるじゃないですか。とりあえずホジってみる尾美。すると、そこからは予想通り若山先生が出てきたのでした。もう、これじゃマンガだよ(もちろん、原作はマンガですから)。

とりあえずマツロの国目指して旅をする尾美トシノリと若山先生。しかし彼らは、足が四本で首が二つの「ヘンな獣」の襲撃を襲撃を受けてしまいました。まあ、それは馬に乗った高天原の兵士のことなんですけど、馬を見たことの無い二人にとっては、ヘンな獣に見えたんですね。そして、高天原の兵士にとっ捕まった二人は、ボスのジンギ(仲代達矢)の前に引っ立てられました。俺に仕えろ、と言う仲代達矢に、若山先生はイヤだと答えます。「では仕方ない。殺せ」。しかしその時、由美かおるが飛び出してきて「私はあの男を夫にしたいのです」と命乞いをします。とんでもなくオカメな由美かおるが、これまたとんでもなく醜男の若山先生を夫にしたいというので、大笑いをする高天原の兵士たち。若山先生は、さすがに由美かおるの醜さに、ドン引きしていますが、「あの子はどうなるの。逃げられっこないわ」と言われてしまうと、何も言えなくなってしまうのでした。

しかし夜になって由美かおるが夜の化粧をしてきます、と言って奥に引っ込み、そして戻ってくると、なんとビックリ。由美かおるはとてつもなくキレイな姿であらわれたのです。由美かおるは、高天原の男たちから貞操を守るためにワザと不細工なメイクをしていたのですが、そんな細かいことはどうでもいいこと。若山先生は由美かおるにチューされて、喜びのあまりロケットのように上に飛んでいくのでした。

ここらへんから、色んなことが同時進行していきます。
大原麗子は、日がわずかしか差さない穴倉で子供を産み、タケルと名づけました。
仲代達矢は、いよいよヤマタイ国に侵攻して、そこに自分たちの国を打ちたてようとしています。
草刈正雄は、石を薄く薄く削ったもので一種のサングラスを作り、オール鉄製の矢で火の鳥を射ち落としました。

そして、ヤマタイ国では、高峰三枝子が病の床に就き、腹心の草笛光子が権力の座を取って代わろうとしています。そのためには、魏の国王から送られた金印が必要。そしてまさに草笛光子が病床から金印を盗もうとしたその時に「裏切り者」と絶叫した高峰三枝子は、金印を草笛光子の額にガツンと叩きつけるのでした。草笛光子は、額にハンコが食い込み絶命。いちおう有名女優なんですけどね、草笛光子だって。それがこんな死に方とは。
そこに追放されていた江守徹が戻ってきました。怒る高峰三枝子に、今は争っている場合じゃない、と言う江守徹は、北から高天原一族が迫っていることを告げるのです。
しかし「姉さん、民の心はすでに姉さんを離れている」という江守徹の諫言を聞いているのかいないのか、高峰三枝子は金印を胸に押し当てて悶えているのでした。もうすっかりイカレてしまったようです。

「弓彦が戻ってきました」と女官たちの声が聞こえます。ニヒルな草刈正雄は「ばあさん、火の鳥だ」とドサっと袋を投げ出しましたが、高峰三枝子は「火の鳥、あたしのもの、永遠の命」と言って死んでしまうのでした。
ちなみに女官たちは、木原光知子、ピーター、カルーセル麻紀の3名。約1名、違う性別の人が混ざっているような気がしますが、気のせいでしょうか。本当は木原光知子の代わりに三輪明宏が出ていれば完璧だったんでしょうが、そうすると迫力で高峰三枝子と並んでしまいますからね。難しいところです。

いよいよ高天原一族を率いて、ヤマタイ国を襲う準備をしている仲代達矢。そこに由美かおるが戦勝を祈願して踊りましょうと言い出しました。さすが西野バレエ団出身。上手いです。そして踊りつつメイクを落とすと、そこからは輝くような美しい顔が。そんなこんなで仲代達矢が色仕掛けにハマっている間に、尾美トシノリと若山先生は無事、脱走に成功したのです。

一方、話し合いで解決したいと、高天原の軍勢に向かっていった江守徹。しかし、途中で高天原の騎馬斥候隊に見つかってしまいました。聞く耳を持たずに江守徹に襲い掛かる8人の騎兵。江守徹は馬の首をバサっバサっと斬り飛ばしますが、衆寡敵せず死んでしまうのです。でも江守徹も、こんなに強い役は初めてじゃないでしょうか。なにしろ座頭市の8倍くらい強い感じですから。

防戦準備に余念が無いヤマタイ勢。そこに尾美トシノリと若山先生が戻ってきました。「おーい、天の助けだ。猿田彦が戻ってきた」と意気が上がるヤマタイ勢。草刈正雄も「どうやら仲間同士になってしまったようだな」とニヒルに笑っています。ついでにニヒルな草刈正雄は「火の鳥を仕留めたら、お前に血を飲ませてやってくれと頼まれた」と惜しげもなく火の鳥を埋めた場所の地図を尾美に渡すのです。
若山先生は騎馬に対抗するため、火を放った草玉を転がすという秘策を考えました。さすが、若山先生。腕だけではなく頭も切れるのです。しかし、いきなりの豪雨で秘策は「秘」のままに。まあ、こんなこともあります。結果、ヤマタイ勢は大敗。最後の切り札である火の鳥の血を取りに行ってくると言う尾美トシノリに、「父さんと呼んでいけ」と頼んだ若山先生は、尾美が見えなくなると「ナギ、お別れだな」とつぶやき、一人、高天原勢に特攻していくのです。
仲代達矢と一騎打ちをしている若山先生。個人の力量では誰にも負けません。しかし、卑怯にも高天原勢は、四方八方から若山先生を射殺したのです。その時、若山先生を射抜いた弓兵たちが、次々と倒れていきます。草刈正雄です。ニヒルな草刈正雄が弓を射ているのです。残った仲代達矢に「さあそのまま逃げろ。どこまでも逃げろ。だが言っとくが黄泉の国まで走らぬ以上、俺の矢はお前の背中を貫くからな」と渋くキメる草刈正雄ですが、「弓彦、この女をお前は知ってるか」と言われて、あきらかに動揺するのでした。そう、そこに引き出されたのは由美かおる。草刈正雄は地元で由美かおるに振られてからニヒルな男になったのですが、やっぱり恋の炎は消えてなかったようですね。思いっきり油断していた草刈正雄は槍で刺し殺されました。

仲代達矢は由美かおるに「猿田彦も死んだぞ」と無情に告げます。そして由美かおるに「妻になれ」と言うのですが、「私のお腹にはこの人の子供がいます」と由美かおるはキッパリ断わるのでした。「日が照り続ける限り、命は根絶やしにできないのよ」と仲代達矢に説教をする由美かおる。そんな由美かおるの神々しさに仲代達矢は、何も手出しをできないのでした。しかし、若山先生、やることが素早いな。

「あそこだ」と尾美トシノリは地面を掘り出しました。地面からは火の鳥を入れた袋が出てきます。「火の鳥だ。不老不死の血だ」と喜ぶ尾美。しかし、火の鳥の死体は干からび、血の一滴も出てきません。そこに仲代達矢たちがやってきました。「これは誰にも渡さないぞ」と言いきる尾美は、しかし、あっさり刺されます。と、その時、落雷が落ち、木が燃え上がりました。尾美は苦しい息の中、火の鳥の死骸を炎の中に投げ込み息絶えます。
炎の中から火の鳥がよみがえりました。しかし、剛毅な男である仲代達矢は「放っておけ。俺は火の鳥なんか興味ない。永遠の命、そんなものが何の役に立つ」と言い切るのです。火から復活した火の鳥は高く高く飛び去っていくのでした(アニメ)。

それから何年も経ちました。僅かしか日が差さない穴の底。そこに若い青年のタケル(田中健)がいます。父の林隆三はすでに死に、今、母の大原麗子も重い病気で寝ているようです。そんなある日、田中健が穴倉から、空を見上げると、そこに火の鳥が飛んでいくのを見かけました。「お父、お母、火の鳥だ」と叫ぶ田中健。良く分かりませんが火の鳥から勇気をもらったのでしょうか。田中健は「俺は今日こそ、この崖を登ってやる」と、骨をナイフ代わりに崖をよじ登っていきます。基本的にリポDのCMを想像していただければOKです。力尽きそうになると「生きるのよ」という火の鳥の声が聞こえます。「俺に説教するのか、たかが鳥のくせに」と頑張る田中健。そして、とうとう崖の上につくことができました。
田中健は「お父、行ってくるぞ。お母、待っててくれ」と新たな地への第一歩を踏み出します。穴の底では大原麗子が息絶えています。田中健の前には、はるかな山並みがどこまでもどこまでも続いているのでした。

予想以上にシッカリした映画というのが感想です。もっとトンデモ風味全開なのかな、とワクワクドキドキしていたのですが、手塚治虫の世界観をかなり忠実に再現しているようでした。ただ、それでも「なぜに実写」という疑問が舞い起こるのも事実。例えば、大島渚の「忍者武芸帳」は、全篇にわたって白土三平のマンガをコラージュして作る、という画期的な作りで驚嘆させられましたが、それほどの突き抜け方はしていないようです。

まあ、色んな意味で面白かったので、アレコレ言う必要はないのかもしれませんが。


(尾美としのりと若山先生)

(由美かおる、やりすぎです)

(侍女の中に、女性が一人。誰でしょう)

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【バイク】エストレヤ

2007-08-08 | バイク
【「エストレヤ」カワサキ 2007】を買いました



おスペック
2007年モデルで、フューエル・インジェクション化やタコメーターが装備され、一気に近代化されました。


さて、終わるかと思ったバイクシリーズですが、いきなりの復活です。なにしろ新車を買いましたから。

買ったのは表題どおりカワサキのエストレヤ。250ccの単気筒エンジンを積んだクラシカルなバイクです。もっとも07モデルでは新・排ガス規制をクリアするために、フューエル・インジェクションが搭載され、ついでにタコメーターや、デジタルのオド、トリップ、時計。さらにはプッシュキャンセルのウインカーまで「新」搭載されたのが、目玉になっています。もっとも、プッシュキャンセルのウインカーなんて、20年位前から普通にあったような気もしますが、まあそれはそれとして。

とりあえず、マジェ400を売り払ったので、バイクを買うことは決定していましたが、中々後継機種が決まりませんでした。

今回の条件は、車検のない250cc以下のバイクであること。後ろにGIVIのトップボックス(GIVI箱)を付けたいのでキャリアが純正、社外を問わず存在すること、というものでした。

でも、昔のバイクには普通にキャリアが付いたものですが、今のバイクってキャリアが付くものが恐ろしく少ないのです。オフロード車は、伝統的にキャリアが付くのですが、それ以外のバイクだとほぼ壊滅状態。そうなると必然的に、ホンダのホーネットか、カワサキのエストレヤくらいしか選択肢がありません。

そのため、ほぼ強制的にエストレヤを買うことになったのですが、これが乗ってみると、なかなかのくせ者。まず、女の子にでも乗れることをキャッチフレーズにしているだけあって、座席高はかなり低め。そうなると必然的に男が乗ると、足の部分が窮屈になります。いわゆる膝の曲がりがキツイ、という状態ですね。プラス、想像はしていたもののエンジンはかなり非力。この二つの理由で、スポーツライディングをしようとすると、かなり苦労することになりそうです。

もっとも、スピードを出したければTDM900に乗ればいい、と思わないでもないので、この点に関しては妥協できますけど。

それよりなにより困るのは、フューエル・インジェクション。これはTDM900にも付いていますし、そもそも昔乗っていたBMWにも付いていましたから、目新しさはないのですが、どうも違和感が抜けません。

車の世界では早めに普及したフューエル・インジェクションが、なかなかバイクで普及しなかったのは、結局のところドンつきと呼ばれる症状がなかなか解決できなかったからです。足でアクセルを操作する車と違い、手でスロットルを微妙に操作するバイクは、ライダーの微妙なコントロールにエンジンが忠実に反応しないと、おそろしく乗りにくい乗り物になってしまいます。その点でフューエル・インジェクションは、スロットルをオープンしてから、若干遅れてエンジンが反応するので、バイクでは採用が進みませんでした。とは言え、世の中は厳しい排ガス規制に燃費規制がかかる時代。もう、バイクだからキャブレターでも、ということが言えなくなってきたのです。

まあ、そんな理由は納得しつつも、やっぱりキャブの方がコントロールしやすいのは事実。もう、こうなってくるとアナログレコードとCDの音質は、どちらがいいのか、というような世界に入っているような気がしますが、それでもキャブレターのエンジンのほうが好きだなと思ったのでした。

でも、文句を言っても仕方ありませんし、慣れればある程度先読みをして乗れるようになるものですから、エストレヤのエンジンにも、そのうち慣れるだろうと考えています。

とりあえず、買ったばかりの感想なので、おいおいエストレヤの感想はアップしていくつもりです。



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【映画】無法者

2007-08-06 | 邦画 ま行

【「無法者」佐伯幸三 1953】を観ました



おはなし
北海道の営林署に赴任してきた高木は、地元のボスの不正を許せません。彼を慕う駒子と協力して、ボスの不正の証拠を握った高木ですが、ボスは証拠を消し、そして高木を殺すために、山に火をかけ……

血沸き肉踊る山林アドベンチャー、とは言い過ぎかもしれませんが、意外な展開にビックリ仰天な作品でした。

とりあえず、タイトルの後に「後援 林野庁」の文字がドーン。なんだか只事でない雰囲気が漂います。

そしてタイトルロールが終わると、テロップがドドーン。
「これは北海道という処が遠く海を隔てた未開の別天地と思はれていた頃の物語です」

いや、未開ですよ。「恐竜百万年」ですよ。若尾文子がラクウェル・ウェルチな感じかもしれないんですよ。

北海道のある町。ここにある蔦屋という料亭では営林署の職員たちが、手持ち無沙汰そうにしています。というのも、新任職員の歓迎会を開こうとしているのですが、肝心の本人が遅刻しているのです。「遅いですねえ」という部下に、署長は「もう来るだろ。高木君というのはね、いつもは牛のように黙りこくっているが、ひとたびコトが道理を外れたとなると、猛然と立って上役であろうと何であろうと追及を緩めぬ男だそうだ」と答えるのですが、いったいどんな男なんでしょう。

とある牧場では、地元の松田組の無法者たちが、臆病そうな牧場主を脅しています。金を返せないなら牧場を寄越せ。それがイヤなら娘を差し出せという、お決まりの無法ぶり。そこにやってきた男が「年寄りに乱暴はやめたまえ」と無法者たちを得意の柔道で投げ飛ばしています。はい、こんな男でした。これこそ、新任の営林署技手・高木権平(菅原謙二)なのです。

料亭に目を戻すと、地元のボスで松田組を率いる松田大八(進藤英太郎)が、図々しく座敷にあがりこんでいます。進藤英太郎は、選挙に出るから資金作りに山をひとつ伐らせろ、と署長たちに直談判。さすがに署長たちがイヤーな顔をしているところに、菅原謙二が遅れて登場しました。馴れ馴れしい進藤英太郎のことがいっぺんに嫌いになったらしい菅原謙二は「署長、今日は僕の歓迎会でしょ。こんな無法者の同席はお断りしましょう」と言い放っちゃうのです。

翌日、山に入るために軽便鉄道に乗っている菅原謙二に、先輩の仁羽技手(丸山修)が「高木君、山での仕事はやりにくくなるかもしれんよ」と忠告しています。そりゃ、いきなりボスと喧嘩ですからね。「とにかく山は無法者の巣だからなあ」と嘆く先輩はとても気が弱そうです。

山奥の作業事務所では、女たちがワイワイ騒いでいます。どうやら、一人の娘が、ボスの進藤英太郎の子供を堕させられた上に、捨てられて泣いているようです。からかう女たちに「およしなさいよ」と威勢よくまくし立てるのは、先ほど菅原謙二の前を通り過ぎていった娘。その名をお駒(若尾文子)といい、菅原謙二が助けた気の弱そうな牧場主の娘です。

さて、作業事務所に来た菅原謙二は、バリバリとチェックを始めました。当然、あちこち見られると困ってしまう進藤英太郎は部下の無法者たちに口止めです。

山奥の伐り出し場では、無法者たちが馬を追い立てながら大声で騒いでいます。それをボケっと見ている菅原謙二。そこに若尾文子がやってきて、無法者たちに「やめて」と言い出しました。木材運びの馬でバクチをするなというのです。若尾文子は菅原謙二に「あんた、今度来たお役人さんでしょ」と聞きます。「そうだ」と答えると「そんなら何故黙って、バクチなんかやらせてるの」と詰め寄ってきました。「あれがバクチか?」と重ねて尋ねる菅原謙二に「あんた、トウヘンボクねえ」と呆れ顔の若尾文子です。
ちなみに、このシーンの若尾文子は、毛皮の上着を着ています。さすがにラクウェル・ウェルチな露出度はムリですが、それでもカワイイので許せます。

その後、父を助けてくれたのが菅原謙二だったと知った若尾文子は、菅原謙二に胸キュン。以来、二人が共に歩いている姿が山で見受けられるようになりました。さらに、若尾文子が伐採禁止地区の木が伐られているのを菅原謙二に教えたため、ボスの進藤英太郎としては、不正がバレそうだし、好きな女を取られそうだしで、どうしたって菅原謙二を生かしておけないという気持ちになってきました。

「来たぞ」。無法者たちは丸太を上から落として、菅原謙二を殺す計画を立てているのです。それを偶然知った若尾文子は馬を飛ばします。そして、沢を走って走って走りまくります。「高木さん、危ないっ」。ドンガラ、ズドドンと落ちてくる丸太。二人はかろうじて沢にかかった木橋の下に隠れて難を逃れることができました。しかし、このシーンは中々の迫力。本当に崖の上から何本もの丸太を叩き落していますから。

菅原謙二を倒せなかった進藤英太郎はヤケになって崖の上から銃を乱射しますが、それが当たるわけもなく、二人は逃げ去ってしまいました。部下の無法者が「親方、もうあの手しかしょうがねえ」とトロッコを指差します。いったい、何を企んでいるんでしょう。

ボスの不正の証拠をつかむために菅原謙二は町に降りることにしました。ところがトロッコに乗って走り出すと同時に若尾文子も飛び乗ってきます。「あぶないじゃないか、キミ」と言う菅原謙二ですが、その実、まんざらでも無さそうです。走るトロッコ。スピード感が心地よい感じです。しかし途中で、ポイントの切り替えのために、二人がトロッコを降りた隙に、無法者はトロッコのブレーキをそっと壊しました。それを知らずに、再び走り出す二人。グングン、スピードが乗ってきます。あっ、向こうで材木が線路を塞いでいます。ブレーキ、ブレーキ。しかし、ブレーキレバーはポロっと取れてしまいました。ドッカーン、材木にぶつかったトロッコは脱線し、二人は投げ出されてしまったのです。

と、ここまでのシーンは、本物のトロッコ使用。そのため、これまた迫力満点です。それに吹き替えとはいえ、実際にトロッコから人が投げ出されていますし。

「しかし、卑怯なことをする奴らですなあ」と小学校の先生(宇野重吉)が菅原謙二に語っています。ここは病院。菅原謙二は負傷したようです。「今んところ、山は警察の手の届かないところだし、奴らこの後、どんなこと企むか分からんから十分気をつけてください」と忠告する宇野重吉。いきなり宇野重吉が出てきて、何が何だか分かりませんが、ここから話はさらにワケ分かんない方向に。

菅原謙二は小学校で生徒たちに講演をしています。お題は木の大切さについて。木は色んなものを作るのに役に立つし、その上、山の保水力保持に役立つ、みたいな話をしています。おそらく、ここが「後援 林野庁」なところなんでしょうね。ともあれ、演説をぶっている菅原謙二は「そういう大事な木を使って金儲けをしようとする悪い奴がいる。そういう奴は山の狼だ」と言って、話を終えるのでした。

それを聞いていた進藤英太郎の息子・大吉くん。大吉くんは家に帰るなり「僕、高木先生大好きだ」「お父ちゃ、山の狼け」と言い出しました。当然、ぶち切れまくる進藤英太郎です。

今日はお祭りの日。村では草競馬が行われます。もちろん、菅原謙二も若尾文子も出場することに。パカラッ、パカラッ、快調に飛ばす二人。しかし、そんな二人を無法者あらため山の狼たちが襲ってきます。ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、菅原謙二は妨害を排除して優勝しました。準優勝は若尾文子です。

全裸で川につかって水浴びをしている若尾文子。もちろん、超の付くロングショットで本当は誰か分かりませんけど。ともあれ水浴びを終えた若尾文子は、焚き火をしている菅原謙二の横に座ります。「あたし今日の競馬負けちゃった。負けて嬉しかった。負けやしない、権平さん、絶対に誰にも」とノロケまくっています。

どこかで水害が発生し、被災地では材木の需要が高まっています。ここ北海道の営林署でも、山の新たな伐採を許可することになりました。当然、自分に許可が出ると思い込んでいる進藤英太郎。しかし署長は、今度の許可は入札で決めると言い出したのです。「それは高木の横槍だすか」と色めき立つ進藤英太郎に、署長は「それは私の決めることです」と骨のあるところ見せるのでした。

しかし、進藤英太郎の怒りは収まりません。菅原謙二に握られた盗伐の証拠を消し、ついでに儲かり、さらに菅原謙二を殺す良い方法を思いつきました。それは盗伐した85号林を燃やすこと。燃えてしまえば証拠は残らず、さらに周囲に飛び火すれば、焼け跡からタダで材木を伐り出せる。ついでに菅原謙二をそこで殺せば、死体も燃えて一石三鳥です。

さて、菅原謙二が木の大切さを講演したので。地元の小学校では生徒たちが山に登り、植林をしています。大丈夫かなあ。

署長に報告をしている菅原謙二。今こそ、森林警察権を発動すべきです、と力説しています。そこに「山火事だあ」の声が。町から山を見ると、どうも85号林が燃えているようではありませんか。いきなりキリっとした署長は、テキパキと部下に指示を飛ばし始めました。キミは木を伐って防火帯を作れ、キミは連絡に当たれ。そして菅原謙二たちには、騎馬で火災の真っ只中に突っ込み救助をせよという命令が下ったのです。

煙に巻かれる小学生たち。火災は予想以上の広がりを見せ、進藤英太郎の持ち山にも燃え広がっています。泡を食った進藤英太郎は、自分の子供を助けるために山に入りました。若尾文子もまた子供たちを救うために山に入っています。若尾文子に燃えあがった木が倒れかかってきます。「駒子、危ねえ」と自らを投げ出して助ける進藤英太郎。進藤英太郎は大怪我です。

駆けつけた菅原謙二たち騎馬隊は子供たちを救い出します。しかし「子供がひとり不明なんです」との言葉に、菅原謙二は再び燃え上がる山の中に突入していくのです。そんな菅原謙二を狙っている山の狼たち。銃をぶっ放すは、ナイフで襲い掛かるは、やりたい放題です。しかし、柔道家の菅原謙二は、これを投げ飛ばす、投げ飛ばす。鬼のような強さです。

手当てを受けた進藤英太郎は、山から救い出された子供たちをじっと見つめています。しかし、いつまでたっても息子の大吉くんは戻ってきません。悔しそうな表情の進藤英太郎。そこに菅原謙二は大吉くんを馬に乗せて戻ってきました。進藤英太郎は、菅原謙二にひたすら礼を言いながら気を失ったのです。

意識を取り戻した進藤英太郎。しかし大吉くんは「お父ちゃんはやっぱり山の狼じゃ。バカバカ」と泣き出してしまったのです。進藤英太郎は、そんな息子の姿に「お父っちゃは、すぐ警察行ってくる」とつられて泣き出しました。進藤英太郎は、こんなこと言えた義理ではありませんが、と前置きをしつつ釈放されるまで、息子の面倒を見て欲しい、と菅原謙二に頭を下げるのです。菅原謙二もまたもらい泣き、、、、はせずに「はあ」とメンドくさそうに答えるだけ。どうも、そういうのはキライなんでしょうか。これじゃあ、話が続かない。ともあれ「可愛がってもらうんだぞ」と息子に言う進藤英太郎。子供はすがり付いて泣いています。男泣きの進藤英太郎。この段階で、いったい誰が主役なんだか、よく分からなくなってきました。

とりあえず、そんな愁嘆場を無視して馬で走り出してしまう菅原謙二。若尾文子が馬で追いかけます。「高木さーん」「おーい、来いよー」。二人は走り去っていくのです。

最後の最後で話は、怪しい方向に流れてしまいましたが、かなり力の入った作品だと感じました。とにかくスゴイのが、最後の山火事のシーン。本気で木をガンガン燃やしています。立ち木が何本も火を吹き上げている横を馬が疾走し、煙がモクモクと出ている横を小学生たちが走っていく。もちろん、合成も使われていますが、かなりの部分はガチです。良くこんな撮影ができたなあ、と呆れるばかりですが、これこそが「後援 林野庁」の底力なんでしょうね。しかし、それにしても山の男はみんな無法者扱いで、営林署職員だけが正義の味方っていうのも、どうかとは思いますけどね。

若尾文子はデビューの翌年。つまり、カワイイったらありゃしません。特にカワイイのは前半の毛皮を着た文子タン。それに競馬の時に鉢巻をキリリと締めた文子タンでしょうか。このお姿を見れるだけでも、この映画には価値があります。


(インディ・ジョーンズ?)

(西部劇?)

(いや、キャンペーン映画なのか?)

(いえ、若尾文子たんを楽しむ映画でした)

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【映画】帰って来た女必殺拳

2007-08-04 | 邦画 か行

【「帰って来た女必殺拳」山口和彦 1975】を観ました



おはなし
毎度のことですが、行方不明になってしまった知り合いを日本に探しに来た李紅竜が、悪の組織をぶっ潰します。

いつものようにオープニングは分割された画面で魅せる志穂美悦子の演武です。

またまた、いつものように、舞台は香港の裏町から。
「紅竜くん」と声をかけてくる湘さん(千葉治郎)に、「実は従姉の秀麗が失踪してしまったんだ」と声をかけられた李紅竜(志穂美悦子)。「失踪の日、秀麗はある女と会っていた。スージー・ウォンという秀麗の友達だ。情報では彼女は横浜のエムパイアという店にいるそうだ」と湘さんはドラクエで冒険のヒントを教えてくれるおじいさんみたいに丁寧に、李紅竜の冒険の指示をしてくれるのでした。ついでに、秀麗の妹の麗花が横浜にいるよとか、組織に関係するファイルはここに、と言った後、殺されてしまう湘さん。まあ、いつものことです。

よく分からないまま、紅竜は秀麗の娘・リカちゃんとともに、いつものように(しつこい)日本に渡るのでした。

横浜に着くと、味方より敵が迎えに来るといういつものパターン。しかし、そこにバイク(多分、カワサキのKH250)に乗った娘が助太刀をしてきて、紅竜は危地を脱したのです。ちなみに、その娘の名はミッチー(ミッチー・ラブ)。紅竜とは武道大会で知り合ったそうです。

とりあえず秀麗の妹、麗花(張美和)のところにリカちゃんを預けた紅竜は、クラブ・エムパイアに花売り娘に化けて潜入しました。早速、スージーを発見した紅竜。スージーは「日本に来ればいい働き口があるというので、秀麗さんを誘ったの。ムリヤリ、こんなところに連れられてきて」と泣きつつ、秀麗が中華街のボスである王龍明の情婦にさせられていることを教えてくれるのです。もちろん、その直後、スージーが殺されてしまうのは言うまでもありません。

中華風な銅鑼がゴーンと鳴らされ、ボスの王龍明(山本麟一)が車椅子に乗って登場しました。周りには、どうみても色物な武道家がズラリ。「今、わしに必要なのは訓練に訓練を重ねたプロフェッショナルだけだ。今からそれを選ぶためのデスマッチを行う」と厳かに宣言する王。とりあえず、このデスマッチに勝つと、王の四天王になれるそうです。とは言え、武道家は8人なので、一勝すれば四天王ですが。鎖を振り回しているデブとか、槍と楯をもった土人(もちろん日本人)、それにリアル黒人さんなど、いかにもかませ犬っぽい武道家が敗退し、残ったのは4人。最も、そのうち3人は、やっぱりかませ犬っぽいので、重要なのは、まるで怪傑ゾロみたいな格好をした蛇倉(石橋雅史)くらいでしょう。もちろん、名前に相応しく蛇革のジャケットを羽織ったお洒落さんです。

「さあ飲め。俺には無限の財産がある」と上機嫌の王。と、そこに男が現われ「せっかくの四天王だが、その程度の顔ぶれじゃあ、天下の王龍明の格を落とすんじゃないのかい」と言い出しました。「誰だ、貴様は」と色めき立つ四天王たちに「あんたこの道で、何年飯を喰っているんだい。黒崎剛を知らねえとはもぐりじゃねえのかなあ」とうそぶく黒崎(倉田保昭)。王は「お前が地獄突きの黒崎か」と感心しています。とりあえず、キック一発で色物四天王の一人を倒し、四天王の座に納まる黒崎。王は気前良く、女ドラゴンを倒したものには1千万をやろうといって、その場を解散したのです。

ボスは寝室に戻ると、情婦の秀麗(川崎あかね)に「お前は薬学の知識もあり、それにこれほど素晴らしい体の女、そうざらにはいない」と言いつつ、羽根ほうきでオッパイを撫で回します。はい、状況説明かつお父さんへのサービスカット終わりです。

四天王に襲われた紅竜。やってきたのはブルース・リーのパチものです。両手両足を突っ張って、狭い壁の間をスルスル上っていくのが紅竜(というか志穂美悦子)の得意技らしく、ここでもパチものと一緒に、登っていく紅竜。ちょっとマヌケです。倉庫の屋上に登った二人は、黒ヌンチャクと赤ヌンチャクで激突。もちろん紅竜はあっさり色物四天王の一人を倒したのでした。

夜、麗花が怪しい動きを見せています。寝ている紅竜の枕元に怪しいお香を置き、窓の鍵をそっと外すのです。しかし、紅竜は寝たふりをして、バッチリとそれに気づいていたのでした。ドッカーン。そこに赤い服を着た四天王が乗り込んできました。当然、紅竜の連続ハイキックで、赤四天王はノックアウト。これで四天王も二天王になってしまったようです。

王の秘密倉庫に忍び込んだ紅竜。そこでは秀麗の「薬学」知識を生かして、濃塩酸と硝酸を使い金を溶かして密輸していたのでした。必要なのは薬学より化学の知識じゃないのか、と深刻な疑問も湧いてきますが、それはそれ。ともあれ、身動きをした紅竜は、薬ビンをガチャガチャいわせたため、慌てて逃走。秘密倉庫にまで忍び込まれた王は激怒しまくるのです。

「ボス話がある」と蛇倉が王に提案しました。紅竜をやっつけたら2千万円ちょうだいと言うのです。とりあえず演ずるのが山本麟一さんですから、この王というボスもケチではありません。もちろん気前良くOKです。しかし、そこに来たのが黒崎。「蛇倉、闇取引は汚ねえ」とよく分からないまま、どちらが紅竜をしとめるか、トランプ勝負を始めてしまいました。お約束どおりイカサマをする蛇倉。それを見破った黒崎は、一発蹴りを入れて、紅竜暗殺の権利を手に入れたのでした。

ボスの屋敷に麗花がやってきました。「クスリを。早くクスリを」と完全にヤク中です。それを見咎めて「麗花、また王の片棒を担いでいるの」と怒る姉の秀麗。いや、自分こそ王の情婦で、密輸の手伝いをしてるじゃありませんか。ともあれ、紅竜さんに頼んで、リカちゃんと香港に逃げなさい、という秀麗。しかし、そんな話をしているところをボスの王に見つかってしまったのです。麗花を脅迫して紅竜をおびき出させるボスの王。もちろん、紅竜は「絶対に」おびき出されるに決まっています。

場所は港の引込み線。良く分かりませんけど、横には砕石の山が積んであり、なかなかワイルドな光景です。そこに呼び出された紅竜が立っていると、砕石の山の上から声が聞こえてきました。「紅竜。ランカケッサツの拳、見せてもらおうか。トゥアーッ」と叫んで黒崎が、砕石の山をヨタヨタと降りてきます。さすがに和製ドラゴンの倉田保昭と言えども、ジャンプできる高さではなかった模様。

ひとしきりキック、パンチの応酬をしたあと、「なかなかやるな。ここじゃ面白くねえ、どうだ」と言う黒崎。どうだ、と聞かれても困りますが、ともあれ鉄橋の上に移動する二人。下では蛇倉が、二人の戦いの様子をじっと見ています。そして、黒崎の攻撃が決まり、紅竜は海に落下して行くのでした。

女ドラゴンこと紅竜を倒したので上機嫌の王。これを取っとけ、と札束を気前良く黒崎に渡します。その上、「さあお前たちどんどんやれ」と宴会です。なんだか山麟さんが演じると、悪の親玉も「人間だよなあ」としみじみしてしまいます。楽しそうにお酒を飲む悪人たち。この幸せがいつまでも続くと良いですね。途中、無粋にも逃げ出そうとした麗花を投げナイフで殺し、秀麗はムチでシバいてみる王さんですが、まあ当然の報いということで。

しかし、紅竜は死んでいませんでした。隠れ家で、とりあえず額にタオルをのせて寝ています。海に落ちて風邪でもひいたんでしょうかね。そこにやってきたミッチーが「どう具合は?」と言いつつ、蹴りを一発。紅竜は慌てず騒がず、それを受け流し、バトルを始めてしまいました。「その調子なら大丈夫ね」とニッコリ言うミッチー。まったく武道家の挨拶は物騒でかないません。

秀麗に言うことを聞かせようとしたのか、王さんはリカちゃんの誘拐を計画。無事にリカちゃんを誘拐できたものの、その際に紅竜が追いかけてきたという報告を部下から受けました。「何っ、紅竜が生きている」と怒る王さんに、「いや確かに紅竜は地獄突きで殺した」と弁解をする黒崎。とりあえずリカちゃんを囮に紅竜を呼び出して始末することにした王さんは、ついでに「蛇倉、お前の出番だ」と何事かを画策するのです。

いつものようにおびき出された紅竜に、黒崎は「待ってたぜ、紅竜。この子と引き換えにお前の命を貰おうか」と渋くキメています。しかし、3人がいた小屋に、蛇倉たちは火を放ったのです。このままでは3人とも丸焼けです。「俺にかまうな、逃げろ」と2人を逃がす黒崎。しかし、脱出した紅竜は捕まり、ロープで宙吊り。ついでに、秀麗は王さんに撃ち殺されてしまうのでした。「お母ちゃん、死んじゃイヤ」と泣き出すリカちゃん。紅竜は、カラスの餌にしてやると、宙吊りのまま放置プレイされてしまうのです。

「みんな昨日はご苦労」と部下の皆さんに現ナマをどっさり用意している王さん。これなら部下も喜んで付いてくるというものです。しかし、そこに放置プレイから脱出した紅竜が乗り込んできました。大事な部下をなぎ倒す紅竜を撃ち殺そうとする王さん。しかし、そこに死んだと思われていた黒崎が飛び込んできて、キックを放ったのです。その瞬間、車椅子から立ち上がって回転ジャンプをする王さん。ありゃ足が不自由じゃなかったんでしょうか。

「貴様は元関東軍憲兵中佐カンザキリュウゾウ」と説明くさい台詞を吐く黒崎。よく分かりませんが黒崎の父の仇だそうです。そんなことを言っている間に、洋服を脱ぎだす王さん。黒い腹巻に白いメッシュのシャツ。山麟さんの憎めない風貌と相まって、マッチョなバカボンパパみたいです。

とりあえず、黒崎は蛇倉とバトル開始。一時、苦戦する黒崎ですが、シャツを脱いで上半身裸になると明らかにパワーアップ。これぞ、倉田保昭の「上半身裸になると、気分はブルース・リーで戦闘力倍増」の法則です。まあ、そんなこんなで蛇倉はあっさり撃破されるのでした。

一方、紅竜は王さんと決戦中。「紅竜、私に勝てるかな」と王さんは、電気ショック内蔵の黄金の義手で紅竜を責めてきます。危うし紅竜。しかし、そこに蛇倉を倒した黒崎が合流してきました。

「待てい、こいつは俺にもやらせてくれ」と言う黒崎。黒崎と紅竜のダブルパンチが決まり、ダブルキックが炸裂します。哀れ、王さんは卑怯な黒崎と紅竜にやられてしまったのです。

最後はお約束の港。「お姉ちゃーん」とリカちゃんが走ってきます。それをヒシっと抱いた紅竜は、海を見つめながら唇を噛み締めるのでした。

回を追うごとにしょぼくなっていく女必殺拳です。今回は蛇倉役の石橋雅史も、まったく見せ場なし。倉田保昭も上半身ハダカでアチョーとか言ってるだけだし、どうにも盛り上がりません。そして、志穂美悦子の扱いのゾンザイさは、まるで主役とは思えません。だいたい、最後の決戦も倉田保昭との共同撃破って何事?と思います。

その代わりと言っては何ですが、山本麟一が出ていたのが救いです。相変わらず憎めない山麟さんの風貌は素晴らしいですし、とりあえず正義の側より悪の側の方が魅力的だという不思議な映画でした。


(山麟さん。座っているのは前年公開のエマニエル夫人の椅子ですね)

(いつも出てくる壁登り競争)

(倉田保昭と石橋雅史)

(やられる山麟さん)

(志穂美悦子はキレイですね)

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【映画】泥だらけの純情

2007-08-03 | 邦画 た行

【「泥だらけの純情」中平康 1963】を観ました



おはなし
不良にからまれているお嬢様と、それを助けたチンピラ。その身分違いの恋を描きます。

この映画の見所はズバリ小百合ちゃんのお嬢様ぶり。小百合ちゃんは、どちらかというと「貧乏でも、意志が強くて賢い娘」がハマリ役ですが、この映画ではリアルお嬢様に挑戦です。もちろん相手は、定番の浜田光夫です。

「乗れったら乗れよ」と不良学生に車に連れ込まれそうになっているお嬢さんが二人。一人は樺山真美(吉永小百合)といって、お父さんが外交官をしているお嬢様です。
そこに「やめろよ、どこの組のもんなんだ」と、チンピラの次郎(浜田光夫)が飛び込んできました。しかし、不良の一人がナイフを持ち出し、一触即発の雰囲気に。結局、浜田光夫は腹を斬られましたが、不良は転んで、自分の腹を刺してしまったのです。

実は、浜田光夫は麻薬を届ける最中でした。そして、怪我をしながらも相手の組に麻薬を届けたので、十分男を上げることになったのです。しかし、自爆した不良の方は、病院で様態が急変して死んでしまいました。そして、その不良が財界の黒幕のバカ息子だったりしたものですから、すっかりチンピラに殺されたマジメな学生という図式が出来上がってしまったのです。

傷も癒えた浜田光夫のところに、兄貴分の花井(小池朝雄)がやってきました。小池朝雄は浜田光夫の男気を褒めつつも、このままじゃ麻薬の取引がバレて組に迷惑がかかるので、自首しろと勧めます。「自首」と驚く浜田光夫に「ビックリしたようなツラするな。こちとらの世界は、こういう時が冷やっこいんだ」と答える小池朝雄。おお、カッコいいじゃないですか。

ともあれ、自首をした浜田光夫ですが、被害者の小百合ちゃんが名乗り出て、なおかつ小百合ちゃんの家が外交官というエリートだったために、あっさり釈放されました。しかし、浜田光夫としては、小百合ちゃんの家から5万円の謝礼が送られてきたことが不満でなりません。なんで直接、礼に来ないんだ、と小百合ちゃんの家に行って、待ち伏せまでしちゃう始末です。しかし、深窓の令嬢の小百合ちゃんは出てこないので、高い塀に立小便をして帰ってくるのですが。

面白くない浜田光夫は、バー・ミシシッピのお美津(国真澄)のアパートに押しかけ「何か面白いことねえか」と言い出しました。するとお美津は、クリームを渡します。ドキドキ、クリームで何をするんでしょうか。そのまま腕を上げるお美津。モジャモジャの腋毛を剃って、と言うのです。それって面白いんか?まあ、面白いと思う人もいるかもしれませんが、「腋毛プレイ」はあまりに上級レベル過ぎです。当然、浜田光夫は外に飛び出していきました。

あくる日、浜田光夫のボロアパートに小百合ちゃんが訪ねてきました。「お嬢さーん」と喜ぶ浜田光夫。小百合ちゃんは、喫茶店にも入ったことのないお嬢様ですが、浜田光夫が「ボクシング見に行かねえか」と誘うとけなげにもOKをするのでした。もちろん試合中は怖くて、顔を手で覆っていましたけど。

ボクシングを見た後、家に電話をする小百合ちゃん。
「ママに6時の門限を1時間延ばしてもらいました」「俺とボクシング見に行ったって」「いいえ」「なんて嘘ついたんだい」「お教えしません」「けち」「ママに初めてついた嘘ですから、誰にも言わずにしまっておきたいんです」
いやあ、最高。小百合ちゃんのお嬢さん演技にゾクゾクしちゃいます。

ちなみに、小百合ちゃんの夜の過ごし方は、9時半に「動物の生態」というTVを見て、10時半にはバイブルを読みながら眠りに付くそうです。

小百合ちゃんと別れた浜田光夫は飲み屋に行きました。コメディ番組を見て大笑いをしている客たちを尻目に、チャンネルをガチャガチャと変えます。動物の生態その3、と重々しいナレーションと共にはじまる番組。どうやら、今日はペンギンのようです。

それから二人の清い交際が始まりました。小百合ちゃんは懸命にボクシング雑誌を読んで下々の楽しみを理解しようと頑張り、浜田光夫は上流階級の小百合ちゃんにバカにされないように、スーツを新調し、新しい靴を買います。もちろん金はないので、ポン引きや恐喝で資金は調達するのです。

そんなある日、小百合ちゃんが開口一番「このごろママに嘘ばっかついているんです」と言い出しました。「どうしてよ」「あなたに嘘つきたくないから」ドッキューン。あの小百合ちゃんがひたむきな眼差しでこんなことを言い出したら、浜田光夫じゃなくても、ハートに直撃ですね。小百合ちゃんは続けて言います。「やめられませんヤクザ?ヤクザっていけないと思うんです、野蛮だし、法律にだって背いているし」。浜田光夫は、そんな小百合ちゃんに何も返事ができないのでした。

次の土曜日がきました。今日は、フランス語の先生が旅行のため、小百合ちゃんと一日一緒にいられる楽しい日です。しかし、ばっちりキメた浜田光夫が約束の場所に出かけようととすると、そこに刑事がやってきました。「売春斡旋容疑ならびに街頭における恐喝容疑で逮捕する」。あゝ、小百合ちゃんが待っているのに。

赤倉のスキー場から、小百合ちゃんはせっせと手紙を浜田光夫に出します。土曜日は半日待ちぼうけだったこと。病気じゃないかと心配していることなどです。もちろん「滑っている間だけは、スキーの面白さについ全てのことを忘れて夢中になってしまいます。私っていけない子だとつくづく思いました」なんて、胸キュンの言葉も忘れません。でも、手紙の終わりはいつも「ご返事ください」なのがかわいそうですね。しかし、浜田光夫は塀の中。だれも読むことの無い手紙だけが、浜田光夫のアパートに投げ込まれていくのでした。

だんだん小百合ちゃんの手紙はヒートアップ。
「ご返事ください。なぜご返事いただけないんでしょうか。今度こそご返事いただけないんなら真美はここで死んでしまうかもしれません」うわっ、ちょっと怖いよ、小百合ちゃん。

浜田光夫が保釈されました。顔に似合わず良い人物の小池朝雄が、一生懸命麻薬を売って保釈金を稼いでくれたのです。まあ、金の稼ぎ方にはいささか、いや、かなり問題ありますけど。しかし、親分はオカンムリ。これをキッカケに組の麻薬売買がバレたらタイヘンだと、浜田光夫に「そのスケとは金輪際切れろ」と厳命するのです。不服そうな浜田光夫に、兄貴の小池朝雄は「分かったよな、次郎」とすかさずフォローです。本当にいい兄貴だ。

小池朝雄は、浜田光夫に小百合ちゃんからの手紙の束を見せます。誰も読んでいない、だからお前も読むな、と手紙の束を火にくべた小池朝雄は、浜田光夫に
「タクアン生かじりしてる奴と、セロリに塩振って食ってる奴とは、体の匂いもはっきり違うだろうによ」と慰めるのでした。

すっかりやさぐれた気分で、バー・ミシシッピのお美津に会いにいった浜田光夫。ところが、腋毛プレイなお美津は、男ができたとかで、店にはいませんでした。仕方ない、帰るかとアパートに戻る浜田光夫。しかしアパートに帰ると、そこにはなんと小百合ちゃんが。思わず「お嬢さん」と声をかけた浜田光夫に、小百合ちゃんは「お会いしたくて飛んできました。毎日毎日、このお部屋でお待ちしてたんです」と驚愕の発言。これがカワイイ小百合ちゃんじゃなければドン引きしそうです。

ヤクザを辞めて固い仕事につきたい、という浜田光夫に、仕事を世話させてくださいと言い出す小百合ちゃん。ママのお友達の家の「使用人」が最近辞めたので、そこを世話しようという計画です。しかし、浜田光夫が小百合ちゃんの家に行くと、お母さん(細川ちか子)は「私たちがお付き合いできる人だと思ってるの」とまるで野良犬でも見るような扱い。浜田光夫はショックを受けて帰ってしまい、一本気な小百合ちゃんはお母さんに「ママ、ママは真美の敵よ」と言い切るのです。

またまたやさぐれた気分で酒を飲んでいる浜田光夫。そこに小百合ちゃんがやってきました。必ず仕事を探しますから、という小百合ちゃんに思わず「よしてくれよ、あんたこれ以上、俺に恥かかせる気かい。ほっといてくれよ」と声を荒げてしまう浜田光夫。しかし、小百合ちゃんはその真っ直ぐな目で「次郎さん、好きなんです。あなたが好きなんです」と言うのでした。これで完全にうろたえた浜田光夫は、「好き、この俺を。そんなこと言わねえでくれよ」とパニクって、近くにいた女の子の服をむしり始めるのです。もちろん小百合ちゃんは、びっくりして出て行ってしまいました。

久しぶりに組に顔を出した浜田光夫。しかし、組長の娘(和泉雅子)が浜田光夫と一緒になりたいと言い出し、そのうえ浜田光夫の逮捕で麻薬の商売もさっぱりのため、組長は激怒中です。そんな有様を心配した小池朝雄の兄貴は、「どうだ二三年行ってこねえか」と浜田光夫に言うのです。あ、もちろん刑務所に、です。「誰でも彼でもムショに突っ込めばそれで済むってもんじゃねえ。おめえは切り札よ」とニクイ台詞が泣かせます。浜田光夫は、しばし考えたあと、行くことを決意しました。

一方、小百合ちゃんの方は、お父様の任地のアルジェリアに行くことになりました。ちなみにお母さんは「アルジェリアは砂漠とモンスーンとテロのお国でしょ。お国柄からしてママに耐えられるお国じゃありません」ということで、パス1です。ちなみにパスは3回までだからね。

浜田光夫は、ムショに行く準備を整えました。あとは兄貴に警察までついて行ってもらう、ということで、早速、弟分が兄貴を迎えに行きます。そこに小百合ちゃんが「あたし、お別れを言いに参りました」とやってきました。
しかし、小百合ちゃんは突然「イヤです。あたしイヤです。あたし行きたくないんです。行きません。次郎さんも行かないで。本当は最初からあたし、もううちへなんか、、その覚悟で来ました」と涙目で訴えるのです。小百合ちゃんにこんなことを言われて、グラっとこない男は、日本はおろか世界にもいないことになっていますので、当然、浜田光夫もグラグラっと来てしまいました。

その時、外で車の止まる音が。兄貴が浜田光夫を迎えにきたのです。しかし兄貴が部屋に行くとそこはもぬけの殻。こうなると兄貴も立場上、「張るんだ。次郎を張るんだ」としか言いようがないじゃありませんか。

小百合ちゃんの捜索願が出され、警察まで動き出しました。とりあえず若い二人は、ミシシッピのホステスお美津のところに隠れます。それを弟分が嗅ぎ付け、早速、兄貴の小池朝雄にご注進です。「余計なこと聞いてきやがる」と苦い顔の兄貴。しかし、お美津の部屋に行くと、すでに二人はいなかったのです。「いねえんじゃ、しょうがねえや」とちょっとうれしそうな兄貴なのです。でも小池朝雄がこんなにいい役なんて、滅多にありませんね。

二人は、6畳一間のアパートに移っていました。ラーメンをすすり、ニコっと微笑みあう二人。しかし浜田光夫は「でもよ、帰るんだな、うちに」と辛い気持ちを隠して言うのです。「あたしの気持ちは決まっています」とポケットから睡眠薬を取りだし、「あたし死にます」と言う小百合ちゃん。浜田光夫はバカっ、と怒鳴ります。小百合ちゃんは「死にません。次郎さんと一緒にいられる限り」と反省するのでした。

浜田光夫が村田英雄の「王将」を熱唱するのを、泣きながら聞き入る小百合ちゃん。なぞなぞを楽しむ二人。二人で折り紙の鶴を折ってはみたけど、浜田光夫の鶴が不恰好。そんな、光景が優しくスケッチされます。

そして小百合ちゃんが「ねえ、雪ダルマこさえに行きません」と言い出しました。もちろん、そんじょそこらの雪じゃダメです。やはり伝統と格式の赤倉スキー場じゃなくちゃ。
二人は楽しそうに雪ダルマを作りました。そして雪合戦。「えいっ」「やったなあ」と、恥ずかしくなりそうな光景ですが、そこはさすが中平監督。巧みな切り返しの映像で、スタイリッシュに見せます。そして、小百合ちゃんのポケットから睡眠薬の入った小瓶がポロっとこぼれ落ちました。思わず、ハッとしたように見つめ合う二人。

対照的なお葬式が行われています。一つはとても豪華な、でもどこか寂しいお葬式。そして、もう一つは、狭苦しい部屋で行われるお葬式です。

祭壇でお焼香を済ませた小池朝雄兄貴は、「死ぬ奴があるかい」と言って、涙をこぼすのでした。

二人で折った鶴が映し出されます。そして「不器用だな、俺って」「ふふふっ」という楽しそうな二人の声が……

いやー面白かった。浜田光夫も上手いし、小池朝雄の兄貴っぷりも泣かせます。そして、何と言っても小百合ちゃんのお嬢さんっぷり。そこは生真面目な小百合ちゃんのこと。なんだか、お嬢さんのコスプレをしているみたいな、不思議な感じですけど、それがまた良いんですよね。思わず、時を越えて「こんなお嬢さんと出会いたいよなあ」と思ってしまいます。まして、リアルタイムで見た人なんかは、すっかり小百合ちゃんにノックアウトされてしまいますよね。

そして、最後。二人が死ぬシーンを一切見せない演出は素晴らしいと思います。そこでクドクドやるより、スパっとお葬式に持っていってしまうセンスは、さすが天才と言われた中平康監督ならではでしょう。

いずれにしろ、ガチな小百合ちゃん映画としても楽しめるし、中平監督の演出テクニックの冴えも楽しめる、この作品は2倍おいしい作品だと思います。









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