いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】鴛鴦歌合戦

2006-09-19 | 邦画 あ行

【「鴛鴦歌合戦」マキノ正博 1939】を見ました。



おはなし
とある貧乏長屋。笠張りをして生計を立てている娘・お春(市川春代)がいます。父の狂斉(志村喬)は骨董狂いで、稼いだ金は、全部ガラクタに使ってしまう道楽者。隣に住む、浪人者の浅井禮三郎(片岡千恵蔵)は色男で大店の娘・おとみ(服部富子)に言い寄られたり、武家の娘(深水藤子)に思いを寄せられたりと大モテ。彼のことが大好きなお春は、毎日やきもきしています。ある日、親切な殿様(ディック・ミネ)に掛け軸を買ってもらい大喜びの父でしたが、その殿様がお春を見初めてしまったからさあタイヘン。掛け軸代の五十両を返すか、お春を殿様の妾に差し出すか。絶体絶命のピンチです。


マキノ正博(雅弘)監督の撮ったオペレッタ。片岡千恵蔵が急病で予定の映画が流れ、急きょ映画を一本撮らなくてはいけなくなり、わずか「7日間」で完成させたのがこの映画です。
とはいえ、娯楽作品として一級で、とてもやっつけ仕事には見えません。結局、マキノ監督を始め、引き出しの多いスタッフ・キャストがいたからこそできた奇跡のような作品なんでしょう。

冒頭、おとみちゃんと若旦那たちの♪おとみちゃんたら、おとみちゃん~のナンバーからワクワクしてきますが、とにかく全編にわたって素敵な曲の目白押し。
殿様役のディック・ミネが放つ♪僕は若い殿様、家来どもよろこべー~や♪僕はおしゃれな殿様、君は可愛い乙女~などは、もうおかしくておかしくて。
それに、志村喬の歌のうまいことにもびっくりです。レコード会社からスカウトが来たと言うのもうなずけます。


(愉快な殿様 ディック・ミネ)

また、ビジュアル的には、志村喬と市川春代が笠張りをしているので、空き地一面に並べられた傘が圧巻です。水玉や色とりどりの傘がずらっと並ぶシーンは素晴らし過ぎます。ただ、一つ、文句があるとすればカラーで見たかった。カラーだったら、もっと凄かったのに、もう涙が出るほど凄かったろうに。

ストーリーは、基本的に悪い人がひとりも出てこないという、明るいお話。もちろん誰も死なないし、五十両のかたに市川春代を妾にしようとする殿様・ディック・ミネですら愛すべきキャラクターです。五十両の工面ができず困ってしまった志村喬も、うーんと悩んだあとに、ポンと膝を打って「あっ、夜逃げしよっ」と能天気です。
でも、そこに殿様と部下がやってきて、市川春代を連れていこうとします。「助けてー」
それを商家の寮(別荘)の二階から見つけた片岡千恵蔵。はっとした表情のショットから、一階の土塀を開けて飛び出す千恵蔵までが、他のカットを入れず一つながりになっているのでスピード感に溢れています。うーん、カッコいい。そして大立ち回り。もちろん「斬られるほどの悪い人」は一切出てこないので、千恵蔵も刀を抜かず、素手で相手をばったばったと倒していきます。ここらへんは、病み上がりと言えどもさすが千恵蔵。体のキレは抜群です。もちろん、相手をするのはベテランの斬られ役の人たちですから、相乗効果もあると思いますが。
敵を追い払ったあと、志村喬の持っていた何でもない壺を目に留める古道具屋さん。「あっ、文久の茶入だっ」なんと一万両の茶入だというのです。浮かれる志村喬と市川春代。市川春代は、喜んで「これで私たちも大金持ち」と片岡千恵蔵にすがりつきますが千恵蔵は渋い顔。
「わしは金持ちは嫌いだ。ことに成り上がりの金持ちはなお嫌いだ」と立ち去ろうとします。
それに答えて「うん、分かったわ」と微笑む市川春代。その茶入をたたき割ってしまいます。驚き嘆く志村喬に「怒っちゃイヤ」という市川春代。そのままお金より大切なものがあるという♪あたしゃ今こそ~♪花の心~♪娘あっぱれ~のテーマをみんなで大合唱。なんか胸がほのぼのしてくる終わり方です。

でも、なんてことない壺が実は…っていう展開は山中貞雄の「丹下左膳余話 百万両の壺」と同じ。マキノ正博を頼って監督になった山中貞雄。二人の関係を考えると、この映画の前年に戦病死してしまった山中に捧げるマキノ監督のレクイエムのような気もしてきます。「ホントだったら、お前にこそ、こんな映画をもっともっと撮ってもらいたかったんだぞ」とマキノ監督は思っていたかも知れませんね。


(最後はみんなでニッコリ)

 

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