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邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】世界大戦争

2006-07-18 | 邦画 さ行

【「世界大戦争」松林宗恵 1961】を見ました。 

おはなし
戦後16年、各地で頻発する紛争はどれも、東西の緊張を高めるものばかり。日本政府も懸命に平和アピールを行いますが、効果がありません。
しかし,人々は平和を願いながら、一日一日の生活を懸命に生きています。
田村茂吉(フランキー堺)の一家もそんな平凡な家庭の一つ。もっとも重要な問題と言えば長女の結婚話くらいで、頻発する紛争も株価にどう響くか程度の関心しか持っていません。地球を破滅させてしまうような戦争を偉い人たちが起こすわけはないと信じていたのです。しかし……。


まず、特撮について。これは特技監督が円谷英二で、もっとも脂の乗りきっていたころの作品ですから、文句のつけようが無いすばらしさ。特に複数の戦闘機の空中戦なんかは、いったい全体どうやって撮ったのか見当もつきません。ワイヤーで吊ってるとしても、よく絡まないものだと。また、ラストの核爆弾で、豪火に焼かれる町並みもすごい迫力でした。

さて、肝心の人間によるお芝居の方ですが、これも期待にたがわぬ素晴らしいもの。さすが松林宗恵監督。自ら海軍士官として部下を率いて戦い、戦後は僧侶でもありつつ、監督として名を成した人だけあります。フランキー一家の情景。長女と恋人の恋。母子家庭の情愛などを丁寧に描いていったあとの破局。これは職人気質を持つ松林監督だからこそ、描けた世界だと思います。

フランキーと乙羽信子夫婦は、さすがにどちらもベテランだけあって、長年連れ添った夫婦の静かな愛情を余すところなく表現していますし、長女星由里子と船乗り宝田明の若いカップルも、その純愛がまぶしいくらい。これが、最後にはみんな死んでしまうんだよなあ、と思うと余計に悲しくなってきます。

また、母子家庭の親子役で中北千枝子が出ていますが、さすがに成瀬巳喜男の常連だけあって「貧乏そうな庶民」役はお手の物です。この作品のプロデューサーは、特撮、パニック映画など東宝の大作映画のほとんどを手がける田中友幸ですが、意外と奥さんの中北千枝子が田中プロデューサーの映画に出ることは少ないので、この点でも貴重な作品でしょう。

あくまで、世界に平和を訴え続ける日本政府。これも豪華な出演陣で、首相に山村聰。外務大臣が上原謙。防衛庁長官に河津清三郎。官房長官が中村伸郎でした。本当にこんな内閣があったら、さぞ強力な政府ができるんでしょうが、現実は甘くないですねえ。

もはや、戦争は不可避となって人々が争うように避難を始めた終盤。フランキー一家は、家で最後の食事を取ります。精いっぱいの豪華な食事が食卓に並び、事情を知らない幼子たちは大喜び。もう、ここらへんで涙腺が緩まない人はいないでしょう。フランキー夫婦の複雑な表情。海にいる宝田が案じられてならない星由里子の真っ赤に泣きはらした目。

フランキーは言います。
「俺たちはしあわせじゃねえか」
家族そろって最後を迎えることができて幸せだと言うのです。しかし、その後には慟哭しながらこうも言うのです。
「原爆でも水爆でも来てみろ、俺達の幸せに指一本ささせないぞ。母ちゃんには別荘建ててやるんだ。 冴子には凄い婚礼させてやるんだ。春江はスチュワーデスになるんだ。一郎には大学に行かせてやるんだ。俺が行けなかった、大学に」
数分後には中断される庶民の夢。永久に閉ざされる未来。涙。涙。

「私は貝になりたい」のフランキー堺だからこそできた名シーンでした。

今でこそ、最終核戦争の恐怖は遠くになりましたが、数十年前までは、いつか戦争が起きて人類は全員死んでしまうとみんな真剣に思っていたのです。そんな時代につくられた、この映画。当時の観客に与えたインパクトはさぞ大きかったことでしょう。

おなじ、核戦争の恐怖を描いた、東映の「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」もお勧めです。

 

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