いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】ターン

2006-10-13 | 邦画 た行

【「ターン」平山秀幸 2001】を見ました。



おはなし
銅版画家の真希(牧瀬里穂)は、ある日交通事故に遭います。そして気づくと、今までと何も変わらない、でも人っ子一人いない世界にいたのでした。その世界は、事故の時間(14:15)になると、前の日の同じ時間にターンしてしまう不思議な世界。孤独に苛まれた真希ですが、何ヶ月も経過したある日、一本の電話がかかってきて生活が一変します。電話をかけてきたのは、デザイン会社に勤務する青年の洋平(中村勘太郎)。真希は、本来の世界で、自分は植物人間になっていることを聞きます。
二人は、電話線を通じて、惹かれあっていきました。しかし、誰もいないはずの世界で、真希は一人の青年・柿崎(北村一輝)に出会います。柿崎もまた交通事故に遭っていました。そして、柿崎にはさらに秘密があり……。


まず、この世界のお約束。事故の時間を境に、24時間前に戻ってしまい、それを延々と繰り返す。世界は、基本的に事故当時のままだけど、ただ人が一人もいない。電話も使えない、テレビも映らない。牧瀬里穂が、この世界に戸惑い、この法則を見つけ、一本の電話によって現実の世界との接触を果たすまでの序盤が、とても面白いです。

恐るおそる近所の世界を探索し、徐々に行動範囲を広げていって、誰もいない街で買い物をしたり、ホテルのプールを独り占めにして泳いだりする。もし骨折してしまっても、事故の時間になれば全てリセット。けっこう楽しそうです。
でも、それが何ヶ月(という期間は意味を成しませんが)も続き、終わりが見えないとなると。ちょっとイヤですね。牧瀬里穂も、変化の無い日々が苦痛になって、ラジカセで小鳥の音を流してみたり、自宅の庭にホースで雨を降らせてみたり、どうにか変化をつけようとするのですが。

そんな時に鳴った一本の電話。文字通り飛びつくように電話を取った牧瀬里穂は、その電話相手の青年の中村勘太郎に電話を切らないで、と懇願します。
そして、中村と話していく過程で分かったことは、現実の世界にも自分はいる。ただ事故後、一度も目を覚ましていない、ということ。
そして、自分のいる世界は事故当時の6月のままだけど、現実の世界は12月になっている。それに自分のいる世界はターンしても、現実の世界では途切れずに電話がつながっている、ということです。

中村のはからいで、お母さん(倍賞美津子)が電話口に来ます。しかし、中村には聞こえる牧瀬の声も、お母さんには聞こえず、またお母さんの声も牧瀬には聞こえません。母と牧瀬しか知らない二人だけの合言葉「お風呂上がりはインド人」を中村に聞いて、着いて来たものの、倍賞はすごく疑わしそうな顔をします。まさに絶品の演技。
牧瀬が電話越しに叫ぶ「母さん聞いて、わたし生きてる。わたしここにいるから」という言葉が悲しく響きます。
翌日、病室で、昏々と眠り続ける牧瀬を見ながら「嘘よねえ、いるなら母さんにも聞こえないはずないもん」とつぶやく倍賞。こちらも悲しいですね。

牧瀬と中村はデートをします。もちろん実際に会うことはできませんから、時間と場所を決めて、そこに行くだけです。扇芭蕉(旅人の木)が茂る植物園で、高層ホテルのレストランで夜景を見ながら。二人の心は徐々に近づき、現実世界の牧瀬も刺激テストに反応するなど、何かが変わってきていることを予感させます。

しかし、そんな時、牧瀬の世界で大きな変化が。誰もいない世界で、一台の走り去る赤いスポーツカーを見つけたのです。そこに乗っていたのはさわやか好青年の北村一輝。牧瀬は、ちょっとグラっと来ちゃいます。電話で話すしかできない中村より、目の前にいるちょっとイイ男の方が気になるのは、まあ当然と言えるでしょう。そんな、牧瀬の微妙な女心を察知した中村は、北村のことを調べます。すると北村は、幼児誘拐の犯人だったのです。このことを牧瀬に知らせなくてはと、焦る中村。しかし、二人をつないでいた電話は、悪い偶然で切れてしまいます。二人が話をする手段は、これで失われました。
一方、牧瀬の世界でも、北村が徐々に本性を現します。どうやって調べたのか、牧瀬の家にズカズカと上がりこんでくる北村。勝手にあちこちをいじりながら「芸術家か、思い込みが激しいわけだ」と本性丸出しな態度を見せます。ここらへん、ちょっと怖いです。なにしろ、牧瀬には助けを求める人はいません。というか、世界には他に誰も人がいないわけですし。
そしてターンして目覚めたとき、目の前には北村が。もう「ひぃっ」って感じですね。ニヤッと笑いながら、5分あれば色々できるとうそぶく北村は完全にイカれています。
見ている方も、この先、どんなダークな展開になってしまうんだろう、と愕然とする一瞬です。しかし、この後、北村は苦悶にのた打ち回りながら消えていきます。
「向こうの柿崎さんが死んだ」とつぶやく牧瀬。その目からは涙が。
そして、現実世界で眠っている牧瀬の目からも涙が零れ落ちます。

二つの世界は、確実にシンクロしてきています。

翌日、牧瀬は久しぶりに銅版画を作ります。題材は、中村とのデートで見た扇芭蕉。思いのたけを込めて作った作品は素晴らしい出来でした。「一日限りの最高傑作」とつぶやいた牧瀬は、それを現実世界で、自分が眠っているはずの病院に飾ろうと思います。家を出ると、冷たい風が吹いています。今までに無かったことです。

病院に着いた牧瀬は、そこに母と中村が、眠っている牧瀬を車椅子に乗せて、押している姿を見つけます。もう一人の自分に近づいていく牧瀬。二人が触れ合った瞬間。
牧瀬は目を覚ましました。その手には、扇芭蕉の銅版画が。そして言いました。
「ただいま」と。

まず苦言から。
二人の電話が切れてしまった理由がひどすぎです。電話中に突然やってきた中村の上司が、ズカズカと上がりこみ、「おっと」という感じで、電話を切ってしまうのですが、これは段取り芝居以外の何者でもありません。見てて唖然としてしまいました。もしかして、このためだけに柄本明はキャスティングされていたのか、と。

それと、牧瀬に頼まれ中村は電話を繋ぎっ放しにしておくことになるのですが、「一日4千円くらいだそうですよ」と細かいことを言っている割には、コードレス電話機はいつもテーブルの上に置きっぱなし。電池がどうなっているか心配になります。

牧瀬の世界は、まあ何でも有りですけど、その分、現実世界はディテイルを大事にして欲しかったところです。

良かったのは、とにかく北村一輝。さすが役者バカと言われるだけあります。その迫力の演技は特筆モノでした。まあ、本来はハートウォーミングな「ちょっと泣けるいい話」程度に留まる題材を、いきなり恐怖のどん底に叩き込む、そのイカれた演技は素晴らしいとしか言いようがありません。

あと牧瀬里穂も良かった。「これは自分の映画」と思い切って、全力で打ち込んでいる姿勢が見ていてひしひしと伝わってきました。そういう「気持ちが入ってる」芝居って、何がしか心を打つものがあるんでしょうね。






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