いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】女吸血鬼

2007-11-05 | 邦画 あ行

【「女吸血鬼」中川信夫 1959】を観ました



おはなし
天草四郎の後裔、美和子が行方不明になって20年後。ひょっこり帰ってきた美和子は、まったく年を取っていませんでした。その背後に蠢く吸血鬼の影。美和子の娘、伊都子とフィアンセの新聞記者を巻き込んだ冒険が今始まる……のかな。

とりあえず「女吸血鬼」は出てきません。出てくるのは月に怯える男吸血鬼のみ。月に怯えるのは狼男では、というツッコミは当然です。

白手袋をはめた手が、ハンドルを回しています。その手とともにタイトルロール。スピードメーターが映し出され、速度が100キロになろうとしています。男の声が聞こえます。「おい、もっと飛ばしてくれよ」「はい」。これはタクシーのようです。あっ、女が飛び出してきました。どすん。「ひいちゃいました」とやけに淡々と言う運転手。運転手と男が車の外に出てみますが、誰もいません。「おい、ひいてないじゃないか」「不思議ですなあ。確かにひいたと思ったんですが」。しかし、ひかれたはずの女はどこに行ったんでしょうね。

さて、松村家では一人娘伊都子(池内淳子)の誕生日パーティが行われています。フィアンセの民夫は遅れていますが、とりあえずケーキを切り分けることに。ザクッ。伊都子は誤って自分の指を切ってしまいました。ダラダラ。思わず顔を見合わせる伊都子の父重勝(中村虎彦)と執事。「奥様が失踪なさいましたときも、指に怪我をなさいました」と不吉なことを執事は言い出すのです。ここ重要ですから、覚えておいてくださいね。

さて、伊都子のフィアンセで、新聞記者の民夫(和田桂之助)がやってきました。来る途中で、女の人をひいたけど、その人をこの家の庭でまた見たんだよねえ、と「社会正義を実現する」新聞記者とは思えないNG発言をかましています。

バン。部屋が真っ暗になりました。停電のようです。そして、暗闇の中、響き渡るブザーの音。なんということでしょう。20年も開かずの間だった部屋からブザーが聞こえてくるのです。慌ててみんなが、部屋に入ってみると、ベッドには美女がひとり横たわっていたのでした。まあ、美女っていうのは言葉のあやですけどね。ところで、停電なのに、なんでブザーが鳴るんだとか、開かずの間と言いつつ、普通にドアが開くじゃないか、というツッコミは無しの方向で。この程度で、ツッこんでいると、キリがありません。

さて、横たわる美女は重勝の妻で、20年前に失踪した美和子(三原葉子)でした。そして、不思議なことに美和子は、20年前とまったく変わらない若さを保っていたのです。思わず「これがきっと天草の血をひいた者の呪いに違いない」とつぶやく重勝です。

「それじゃ、お母さんお大事に」とスチャッと手をあげて去ろうとする民夫に、伊都子は記事を書かないでと頼み込みます。「いわば、片輪か病気と同じよ。うちの恥になることですもの」。ひ、ひどすぎます。

さて、二期展では、無名の新人が描いた絵が特選になったと評判です。早速、デートを兼ねて見物にでかける民夫と伊都子。しかし、絵を見てビックリ。なんと、そこに描かれているのは美和子ではありませんか。唖然としている伊都子に、黒のソフト帽に黒眼鏡の謎の男が声をかけてきました。「お嬢さん、よほどこの絵がお気に入りのようですね」。男はお供の小人と共に悠然と去っていくのですが、いったい何者なんでしょうね。もっとも、演じてるのが天知茂ですから、こいつが吸血鬼に決まってますが。

さて、男はホテルの一室で「作者不明の特選の絵か」「謎の名画か。ふっふっふ」と笑いつつ、新聞を読んでいます。そこに、お供の小人が、展覧会からその絵を盗みました、と報告に来ました。満足そうに笑った男は、いきなり顔色を変えます。「ハッ。チビ、カーテンを閉めろ」。しかし、そこは小人の悲しさ。モタモタして、カーテンが上手く閉められません。「月だ、月がっ」と叫んで苦しみ始める男です。どうにかカーテンも閉まり、はあはあ言っている男。しかし、そこに女給がやってきて、「ご気分でも悪いんですか、冷たい空気でもお入れしましょう」とカーテンを開けちゃったではありませんか。まったく余計なことを。煌々と光る月明かり。男の口からはニョキっと牙が生えました。「きゃーっ」「かぷっ」。哀れ女給は噛み殺され、ホテルの廊下にポイです。

数日後、展覧会から盗まれた絵が、松村家に送りつけられました。民夫がやってきて、これは盗まれた絵です、と断言します。伊都子も「お母様そっくりでしょ」と重勝に言っています。確かに、その絵のモデルは美和子のそのもの。というか、丁寧に描かれた段々腹が、まさに三原葉子そのものです。

家に帰って以来、意識不明で寝込んでいた美和子が、夜中にむっくり起き上がります。階段を降りて、問題の絵の前に。「あゝ怖い。許してぇ」と叫んでバッタリ倒れる美和子。「美和子、どうしたっ」「お母様っ」と駆けつけるみなさん。意識を取り戻した美和子は、すっかり記憶が戻ったようです。とりあえず、良かったのか?

重勝は、今こそ松村家の全部を話そうと、重い口を開きました。「松村家は天草四郎の後裔にあたるんだ」と言い出します。20年前に、祖先の地を訪ねてみようと九州は島原に旅行した重勝、美和子夫妻。しかし、重勝が釣りをしている間に、美和子は忽然と消えてしまったというのです。ここで思い出してください。執事が、奥様が失踪した時に指を怪我したとかなんとか、言っていましたね。でも、指なんか怪我してないし、そもそも執事は九州に来てません。なんかテキトーだなあ。

美和子が続けて話し始めます。「その時、私は何か目に見えぬ力に誘われるように彷徨っていきました」。美和子が歩いていると、絵を描いている男がいます。あ、もちろん天知茂ですからね。「とうとうきましたね、待っていたんです」と不敵に笑う男。「あなたはこの花の香りに誘われ、私に誘われてきたんです」と胸元のバラをスッと差し出します。「いい匂い」と言うが早いか、美和子は失神してしまいました。しかし、バラと天知茂。何と言う組み合わせでしょう。似合いすぎです。

ベッドに寝かされている美和子。マントを羽織った男は、燭台で美和子というか三原葉子の巨大バストをグリグリしています。そして、そのままガッツンガッツンつつき始めました。男は完全に陶酔して言い始めます。
「俺はお前を愛している。俺の愛を受ければお前は未来永劫、今の若さが衰えない。数百年、変わらぬ若さの俺の血がお前の体を駆け巡るのだ。うれしいだろ美和子。お前は今こそ、この俺の愛した勝姫になるのだ。如月城の勝姫に」

男の名は竹中信敬。天草四郎の娘、勝姫(三原葉子 二役)に仕える武士でした。しかし、島原の乱が起こり、居城の如月城は、まさに落城目前。そして、勝姫は竹中にこう言ったのです。「おお、月が昇る。あの月と共に、あたしも如月城と運命を共にするのじゃ。あたしはあの月が憎い。恨めしい。竹中、介錯してくりゃれ」
「俺は勝姫を愛するあまり、その血を吸った。人の生き血を吸った俺は、その時以来死ぬに死ねないのだ」

「ダメだ。描けん」と絵筆を放り投げる竹中。美和子は、あの展覧会の絵のポーズをとっています。しかし、その表情はこわばっているのです。まあ、いきなり拉致されて、ヘラヘラ笑う人はいないでしょうが。「美和子、笑ってくれ。この俺のために。この絵のために笑ってくれ」と哀願したかと思うと、いきなり怒り出す竹中。「お前はこの俺を裏切るのか。見よっ」。おお、何と言うことでしょう。そこには、蝋に固められた、下着姿の美女たちの物言わぬ彫像が立ち並んでいるではありませんか。いずれも三原葉子のように、プックリしたグラマーなのがミソです。そうか、竹中の趣味は、太めグラマーだな。しかし、蝋で固めたって、どんなんや。どうも、根本的な部分で、蝋人形とゴッチャになっていますね。蝋人形って、中に人が入ってるわけじゃありませんからね。

ともあれ、そんな竹中のイタイ趣味に呆れたのか、竹中が恐れる満月の夜、美和子は脱走したのです。そして、途中でタクシーに跳ね飛ばされたりしつつ、家に逃げ帰ったのでした。

さて、ホテルの女給が殺された事件がありましたね。その時、竹中は止せばいいのに、血を吸った女を、自分の部屋の前に投げ捨てておいたので、取調べを受けることになっちゃいました。ジリジリと時間を気にする竹中。早くしないと、夜になって月が昇っちゃう。ようやく、取調べから解放され、車を飛ばす竹中。しかし、時既に遅し。月が昇り、冴え冴えとした光を放ち始めてしまったではありませんか。むがが。あわてて車を止め、バー「エンゼル」に駆け込む竹中。ふう、ひと安心。ところが、車のトランクに入っていた小人も、バー「エンゼル」に入ってきたかと思うと、いきなりカウンターの上に乗って暴れだしてしまったのです。ここは意味不明。小人は自分が暴れて竹中を救いたかったのか、単に暴れたかったのか、ワケ分かりません。ともあれ暴走した小人は、酒瓶を投げつけると、窓のガラスがガチャン。そこから射した月の光で、竹中は恐ろしい吸血鬼に変身してしまったのです。これはまさに自爆アタックでした。

竹中は、とりあえずボインボインなホステスの血を吸い始めました。やっぱり趣味が……。「たまたま」そこにいた民夫が見守る中、次々とボインボインなお姉さんの血を吸いまくった竹中は、元気いっぱい、車で逃げていくのでした。唖然としていた民夫ですが、「たまたま」竹中が落としていった画帳を見つけて、ピピンと閃きました。"今の男は、あの絵を描いた男だ"と。

「あゝ、あの絵が。あの絵が。あたしは殺されます。あの金の十字架があたしを迎えにきたのです」と叫んでいる美和子。重勝が「金の十字架?あっ、いつのまに」と、悲しくなるくらいの棒読み演技で驚いています。チャリーン。いかにもな効果音と共に、映し出される絵。おお、確かに、顔の部分にこれ見よがしに、金の十字架が貼り付けられているではありませんか。
「私には分かっています。あの地底の王様が私を迎えに来たのです」と諦めた様子の美和子です。

どこから入り込んだのか、寝室に現われた竹中は、重勝を蹴り倒して、美和子をさらっていきました。果たして、美和子はどこに連れて行かれたのでしょう。

さて、記者の民夫は、直感をもとに独自の調査を開始。とはいえ、竹中はホテルの宿帳に、真っ正直に本名と住所を書いていたので、あっさり島原に逃げたことがバレてしまったのです。吸血鬼の癖に、宿帳に本当のことを書くなよな、と注意してあげたい気分です。

島原に着いた民夫と伊都子は、警察と共同して、地底の王国を探すことに。ちょうど、こそ泥が地底にあるお城を見たと言っていたので、場所もすぐ分かるでしょう。

と、ここからはドタバタ風味。拉致された伊都子を追って、地底の宮殿に入り込んだ民夫は、吸血鬼竹中と対決することになりました。マントを翻しつつ、ムチを振るい、サーベルで突いてくる竹中。もう、民夫は防戦一方です。しかし、竹中はもともと戦国時代の武士だったんじゃ。なんで素人相手に、てこずってるんでしょう。まあいいや、ともあれその時、かなりトホホな理由で、地底宮殿の天上がスッポリと抜けました。煌々と射してくる月光。竹中は見る見るうちに吸血鬼に変身していきます。しかし、大事なことがひとつ。ここにはエネルギー源のムチムチ、ボインボインなお姉さんはいないのです。変身を通り越して、あっという間に老人になってしまう竹中です。

「美和子、俺の勝姫。呪われた天草の血がついに滅び去る時が来たのだ。この永遠の生命の最後の足掻きを見ろっ」と竹中が指を指すと、そこには蝋で固められた美和子の姿が。竹中は、よく分かんないまま、宮殿内の、毒沼に自らの身を沈めていくのでした。

部下の鬼婆(五月藤江)が、観念したのか火薬庫に火を放ちました。ドッカーン。大爆発です。間一髪脱出できた警察のみなさんや、民夫、伊都子は呆然と跡形もなく吹き飛んだ地底宮殿の跡を見つめるのでした。

もう、ムチャクチャです。昼間に地底宮殿に入って、天井がスッポ抜けると、外は月夜。それで、そこから脱出したらやっぱり昼間、なんてのは、まだカワイイ方。そもそも、十代で死んだ天草四郎の娘が、どうしてムッチムチな三原葉子なんだよ、と厳しく問い詰めたい。それに、姫って何だ、お付きの武士って何なんだ。どうも、天草四郎とキリシタン大名を完全にゴッチャにしているところが、ダメですね。そんなふうに、前後のつながりとかは一切無視、勢いさえあればOKな映画作りは、ハッキリ言いましょう。 「最高です」

ある意味でグダグダのグズグズなこの映画。そんな映画でも、あくまで「真面目に」吸血鬼を演じる天知茂の素晴らしさ。どんな映画でも全力投球な天知茂という人の、心の気高さというか、人間としての「格の高さ」にシビレます。

もちろん、ムチムチボディに、純真な心を秘めた三原葉子の頑張りも捨てがたい魅力です。

そして、どんな無理な脚本であっても、それなりに魅せてしまう中川監督の力量。まさに職人としての実力があるからこそ、この映画には、吸血鬼の悲哀みたいなものが感じられて、うかつにも「良い映画」だなあとか思わされてしまうのでした。


(クリストファー・リーよりイカシてます←言いすぎ?)

(この恰好で、天知茂=天草四郎と勘違いする人多し)

(お絵書き中)

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2 コメント

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女吸血鬼 (アパッチ)
2009-01-09 00:46:38
新東宝奇想天外路線の最高傑作の一つですねぇ。
設定に一切ツッコミを入れずに見ればね。
娯楽映画の手本かも知れませんね。
でも、新東宝の俳優さんは、本当に真面目に演技してます。だから、私は、新東宝映画が好きなんです。
天知茂はもちろん素晴らしいですが、
執事役の杉寛、この人のムードは素晴らしい。
こういう役をやらせたら日本一と思います。
新東宝には、こういう、素晴らしいベテラン俳優がたくさんいます。
ただ一つだけ、ツッコミを入れたら、和田桂之助が強すぎることですね。何でそんなに強いんだ!
スイマセン、ツッコミ入れちゃいました。
マジメ (いくらおにぎり)
2009-01-09 14:20:34
アパッチさん、こんにちは。

ホント、マジメが一番ですよね。真剣にやっているからこそ、人の心を打つ。どんなにお金がなかろうが、セットがチャチだろうが、真剣に作っている映画は、どこか違うと思います。

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