いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】地平線がぎらぎらっ

2007-11-14 | 邦画 た行

【「地平線がぎらぎらっ」土居通芳 1961】を観ました



おはなし
刑務所の新入りが盗んだというダイヤを手に入れるため、同じ房の囚人たちは一緒に脱獄したのですが……

この年に倒産してしまった新東宝。その最後に、ぎらぎらっと輝いたのが、この映画でしょうか。ちょっとこじつけくさいですが。

♪ぎらっ、ぎらっ。ぎらっ、ぎらっ。あの地平線が光ってる。そこにはオイラの夢がある♪とジェリー藤尾の歌声が響きます。

ヤクザに追われる男、強姦魔、麻薬取引をしているマドロス、有閑マダムを脅迫して捕まる男、ホステスの妻に言い寄る男を睨んでいるバーテン。そんな男たちが点描されます。

そして、ここは刑務所の27番房。今、新入りが入ってきました。こっそり持ち込んだタバコを牢名主に渡すあたりが、なかなか刑務所の仁義に通じているようです。何をしたんだい、と聞かれて「かかあにちょっかいを出した野郎のどてっぱらに風穴開けちまいまして」と答えていますが、よく見れば先ほどのバーテンじゃありませんか。

房にいるのは牢名主のカポネ(多々良純)。有閑マダムを脅迫していた教授(天知茂)。強姦魔の色キチ(大辻三郎)。マドロスの海坊主(晴海勇三 )。そして、今入ってきたバーテン(沖竜次)です。

と、そこにもう一人新入り(ジェリー藤尾)が入ってきましたよ。開口一番、「狭めえところだな」と悪態をつく新入り。そのうえ、「俺、しんぼうって言うんだ。ダチはマイトって呼ぶんだ。今日からおっさんたちとは仲間なんだからよ、マイトって呼んだってかまわないぜ。ま、仲良くやってこうよ」と、まったく口の利き方をしりません。
当然、回りの囚人からは「新入りの癖にでっけえ顔をするな」と布団蒸しにされてしまうのです。

その後も、マイトは夜中に起きだして、バケツをドラム代わりに♪ぎらっ、ぎらっ。ぎらっ、ぎらっ。あの地平線が光ってる♪と歌いだしちゃうなど、やりたい放題。そのたびに、5人は焼きを入れるものの、どうにもマイトには効いていないようです。

「全学連には政府も手を焼いているんだ。どだい、今の若けえ者は俺たちと考え方が違うんだよ。礼儀も作法もねえんだ」とあきらめ顔の教授ですが、カポネは、こっそり持っていた薬で毒殺してしまおうと計画するのでした。ところが、驚くべき情報が入ります。なんと、マイトは宝石強盗で、その宝石はいまだに見つかっていないというのです。マイトに聞くと「地平線がぎらぎらしてるところに、ちゃあんと埋めてあるんだ」と得意顔。ってことは、マイトを脱獄させ、宝石を山分けにすれば、みんなは大金持ちではありませんか。

一足先に出所した海坊主の協力で脱獄を計画するみんな。海坊主経由で持ち込まれたヤスリで、鉄格子をほとんど切り終わったところに、房を変えられてしまうというアクシデントもありましたが、教授の超絶テクニックで、次々と鍵を開けて脱獄は成功するのでした。

裏切ろうとした海坊主を殺して5人になった仲間は、運転手を殺し、グロンサンの宣伝カーを奪って逃亡を開始しました。もちろん、目指すは宝石が埋めてあるというぎらぎらしたところ。

途中、バーテンが女房のところに寄りたいと言い出したり、子供が「わーい宣伝カーだ」と群がってきて、風船を配ったりするはめに陥りつつも、宣伝カーは走り続けます。

あっ、女の子が3人歩いています。これは行きがけの駄賃に襲うしかありません。早速、くじ引きをして、マイト、カポネ、それに色キチが女の子たちを襲うことにしました。しかし、マイトに追われた女の子は、橋から落ちて気絶。そして色キチとカポネは、ハンターに見つかり大ピンチです。まあ、無事にハンターからは銃を奪い、ついでに色キチを射殺できたので、カポネとしては、分け前が増えてホクホク顔です。もちろん。仲間には色キチはハンターに撃たれて死んだと、とぼけていますが。

マイトは気絶した女の子を引っ担いできました。意識が戻った女の子はシクシク泣いていますが、なあに脱獄囚ですから、そんなことを気にもしていません。しかし、折り悪く宣伝カーが故障。テクテク歩き出す4人プラス1人。

銃を手に入れ強気になったカポネは、「この女は俺がもらったぜ」と言い出しました。しかしマイトは「撃ってみな。ダイヤモンドはパーだぜ」と動ずる様子もありません。グッとつまったカポネは、油断を突かれてマイトに銃を取られてしまうのです。よっしゃあ、とカポネをボコりだす教授とバーテン。よっぽどカポネの態度に腹が立っていたんでしょう。まったく脱獄囚には友情とか仁義なんて言葉は無縁のようですね。

脱獄囚が醜く争っている間に、マイトと女の子は二人で逃げ出します。「お前の名前なんてぇんだい」「八重ちゃんいうだ」「どこに勤めてんだい」「トランジスタ工場よ」。

懸命に走る二人ですが、八重(星輝美)が足をくじいてしまいました。そこに追いついてくる3人の脱獄囚。しかしマイトの命令で、3人は馬を作って八重を運ぶことになるのです。えー、ここらへんはよくわかりません。さっきまでいがみ合ってた3人が協力してたり、逃げた二人と対立するでもなく、馬を作って八重を運んだり。まあ、脱獄囚なんて、にわとりみたいに3歩走ると前のことを忘れてしまう、ということなんでしょうか。

さて、トラックに乗って、バーテンの女房がいる村を目指して走っている5人。いったい、いつトラックを盗んだのかは分かりません。まあ、そんなシーンはいらないや、と切ったんでしょうけど、アバウトすぎて感動です。やっとついた村は、村祭りの真っ最中。いきなり車を降りて、女房に会いに行ってしまうバーテン。残されたマイトは祭りに飛び入りで、太鼓を叩きだしてしまう始末。いい加減、ワケが分からなくなってきました。今のうちに逃げなよ、と言われた八重は、「責任取って」とマイトから離れようとしないし。

女房の実家に行ったバーテンは、女房(万里昌代)が若い男といちゃついているのを見つけてしまいました。包丁を振り回し、女房を追いかけるバーテン。そのバーテンを棒を持って追いかける若い男。スラップスティックみたいな演出です。女房はそのまま火の見やぐらによじ登り、半鐘をカンカン、カンカンと鳴らしだします。火事だ、と集まり始める村人たち。結局、バーテンは押し寄せた村人に捕まってしまうのでした。

これはタイヘンと逃げ出すカポネ、教授、マイトそれに八重。しかし、マイトはいきなりマムシに咬まれてしまいました。ま、マムシなんだ。

「このまま放っとくと死んじまうだ」と八重が言っても、カポネ、教授は聞く耳を持ちません。「おめえたちはマムシの怖さを知らねえんだ」と絶叫した八重は「おら、医者を呼んでくる」と走り出してしまいました。

それを無視してマイトを引きずっていくカポネと教授。さあ、宝石の隠し場所を言え。しかし、答えようとしないマイト。怒ったカポネが銃を突きつけるのを止めた教授は、「よせ、俺がやる」とマイトの頭を岩に叩きつけ始めるのです。まったく、血も涙もないですねえ。「よせよ、ダイヤモンドはお前らの足の下だよ」「柿が食いてぇ」とつぶやくマイト。「そうか、柿の木の下だな」と教授は大喜びです。しばらく行くと、ありました。確かに土手に柿の木が一本、ポツンと立っています。

たった一本のスコップを奪い合うようにして、穴を掘りまくる二人。そして、カポネは隙を見つけて教授を撃つのでした。「ダイヤは俺とお前のもんになったぜ」というカポネに「ダイヤか。あれはな、嘘だい」と答えるマイト。呆然として、「ダイヤは」というカポネに、「地平線の上にぎらぎら光ってらい。ざまあみろ」と追い討ちです。死ぬマイト。怒りの収まらないカポネは、大きな石をマイトの顔に叩きつけようとして、そして、撃たれました。教授が最後の力を振り絞ってカポネを撃ったのです。カポネの死体。教授の死体。そして笑みを浮かべて死んでいるマイト。

遠くから、医者を連れた八重が、懸命にこちらに走ってきます。

♪ぎらっ、ぎらっ。ぎらっ、ぎらっ。あの地平線が光ってる。そこにはオイラの夢がある♪
土手越しに、ぎらぎら光る太陽が沈んでいきます。

大蔵以降の新東宝は、エログロ路線が全開でありながら、強固なスターシステムを維持していました。男優なら宇津井健、天知茂、吉田輝雄に菅原文太など。女優だと、三ツ矢歌子、大空真弓、高倉みゆき、小畑絹子、三原葉子、万里昌代などなど。もちろん、他にもいますが、基本的には生え抜きのスターを適宜組み合わせて、大量の映画を製作していたのです。もちろん、他社やフリーの大物俳優を呼べないというのがベースにあったとは思いますが。その点で、ジェリー藤尾を主役に抜擢したこの映画は、まさに新東宝末期のドサクサに生まれた怪作と言えるでしょう。

天知茂は、脱獄シーンこそ目立っているものの、色悪目線のアップがないなど、あくまで助演に徹しています。そして、尻軽な女房役の万里昌代も、チラっと顔見世程度の出番。ヒロインこそ新東宝の中では中堅どころの星輝美を起用していますが、それだけでは、どうも「いつもの新東宝」と違って勝手が狂います。

ところどころに挿入されるコミカルなタッチ。そして、いくらピカレスク・ロマンにしても、あまりに救いのない展開。いったい、この映画は、どこを目指しているのか分かりません。とはいっても、けなしているわけではなくて、とことん乾ききったタッチで描かれるこの作品が、まるで松竹ヌーベルバーグの一篇であるような気がしてくるのです。
なんとも不思議な映画でした。

と、真面目ぶるのはここまでで、ジェリー藤尾の歌う♪ぎらっ、ぎらっ。ぎらっ、ぎらっ♪は最高。ノリもよくて、耳に残ります。囚人たちの鬼畜っぷりも、見ていて面白く、次は誰が死ぬんだ、と予想しちゃったりして。そして、なにより星輝美のかわいいこと。時代劇の北沢典子たんと並んで、新東宝にはめずらしい清純派女優さんです。基本的に新東宝の女優は峰不二子みたいな強烈キャラばかりなので、こういったクラリスキャラは本当に貴重です。もし、新東宝がつぶれなかったら、もっともっと大女優になったんだろうなあ、と思うんですが。

あと、この映画の最大最強のポイントは

「地平線がぎらぎらっ」

このタイトルにつきますよね。インパクトありすぎです。







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2 コメント

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地平線がぎらぎらっ (アパッチ)
2009-01-07 01:17:03
いくらおにぎりさんも、
星輝美さんが好きなんですね、私も大好きです。
新東宝女優で一番好き、いや、日本一好きな女優です。新東宝崩壊後、東映で少し出演しただけで、引退してしまって残念です。
ちなみに私は、NECOで10年に、女王蜂の怒りで、輝美さんを見てからのファンです。
最近、他のブログでも、輝美さんのファンがいるのを見て、うれしいです。この輪が広がるといいですね。

み、みはら (いくらおにぎり)
2009-01-07 16:13:24
アパッチさん、こんにちは。

……。すみません、新東宝で一番好きなのは、三原葉子と北沢典子たんだったりします。でも、星輝美さんも好きですけどね。逆に新東宝では池内淳子と三ツ矢歌子が「あんまり」かなあ。

星輝美さんの東映時代の映画は、「万年太郎と姉御社員」をブログで取り上げているので、もし良かったらご覧ください。

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