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【映画】港へ来た男

2008-06-02 | 邦画 ま行
【「港へ来た男」本多猪四郎 1952】を観ました



おはなし
新沼五郎は、商船学校出の若い船乗り。凄腕の鯨獲り、岡部の船に乗組んだ五郎は……

本多猪四郎監督の、監督昇進第3作目です。そして、伝説の大プロデューサー田中友幸と組んだ、初の作品でもあります。主演は、本多監督の盟友である黒澤明の映画でも、名コンビぶりをみせた三船敏郎と志村喬。って、聞くと凄そうでしょ。ところが。

港に入港してきたキャッチャーボートが、鯨を水揚げしています。その様子を見ている若い男の背中。バンっと振り向くと、甘い顔のマドロスさんです。この男の名は新沼五郎(三船敏郎)。商船学校出の彼は、ここ金華山の捕鯨基地に新米乗組員として赴任してきたのです。

「見習い運転士で入ろうだなんて、とんでもねえ話だ」と、所長(藤原釜足)に怒っているのは、伝説の鯨獲りである岡部(志村喬)。どうも、話題は三船敏郎の扱いについてのようですよ。「いやあ、君にみっちり仕込んでもらおうと思ってさ。本人もぜひとも、と希望しているんだが、学校出にしちゃめずらしく骨のある奴でね」と弁解に余念のない藤原釜足ですが、志村喬は「物事には順序ってものがあるよ」と、船乗りたるもの甲板洗いから始めるべし、という持論を曲げないのでした。

そこにやってきた三船敏郎。革ジャンを着込み、背中に「なぜか」ライフルを背負っている男らしい姿に、志村喬は三船を受け入れることに決めたようです。というか、受け入れないと、ここで映画が終わってしまうんですけど。

志村喬が船長を勤める天洋丸の船員たちにも歓待され、順調な滑り出しの三船敏郎。ついでに、下宿先の料亭「喜楽」の看板娘、その子(久慈あさみ)にも惚れられ、順風満帆です。しかし、船員仲間からは、「あの子にだけは惚れるんじゃないよ。いいかい、あの子は船長が心底から参っている女だ」と釘を刺されたので、注意しておかないと。

「一人前の砲手になるにはだ。いいか、罐焚きからコツコツたたき上げることだ」と、三船敏郎に説教している志村喬。酒は入ってるし、目の前には大好きな久慈あさみがいるので、志村喬のお説教も、いつもより念が入ってます。今朝のザトウクジラも俺が一発でしとめた、と自慢している志村喬に、「聞きにくいものね、自慢話って」と冷たい久慈あさみは、どうも志村喬のことが好きじゃないみたいです。しかし、三船敏郎はあくまで、「口の悪い人間に悪人はいないよ。腹の中はいい人なんだ」と優等生な対応振り。男が男に惚れたんだか、それとも学校出の如才なさなのか、そこらへんは今のところ不明。

出航した天洋丸。しかし、そこに密航者が。西沢信吾(小泉博)という、この青年。実は志村喬の隠し子だったりするのです。しかし、まさか小泉博が実の子と知らない志村喬は、「なんだこいつは」とパンチ一発です。そんな時でも、調整役を買って出る三船敏郎。「俺もお前くらいの時だったかな、密航してな。無性に海に出たくなって。お前はどうなんだい。大方、そんなとこじゃねえのか、えっ」と理解ある兄貴を気取ってみたり、小泉博が志村喬の子供だと聞くと、「よし、じゃあ俺がキャプテンに話してやろう」と気さくな兄貴になってみたりします。まあ、とにかく兄貴なんです。

「や・め・て・く・だ・さ・い」と断わられても、「まあ、悪いことはいわねえ。俺んとこにしばらくいろよ」と強引な三船敏郎は、とりあえず小泉博を子分にゲットです。まあ、良かったね。

ボースンの整備ミスで、捕鯨砲が不発だった志村喬は、怒りまくり。バカヤロ、と子分、じゃなかった船員を殴っています。もちろん、止めに入る三船敏郎。しかし、「おめえ、大事なこと忘れてるぞ。鯨獲りを育てるにはだ、可愛がらなくちゃならねえ。おめえは甘やかすってもんだ、分かったか」と、逆に怒られ、ちょっとムカっです。きっと内心では、俺は商船学校出だぞバカヤロ、とか思ってるんでしょうね。

帰港したみんなは、料亭喜楽で大宴会。志村喬は、借金のため売りに出ている喜楽を買い取り、久慈あさみを女房にして、左団扇だガッハッハ、な計画を立てているようです。しかし、三船敏郎は、とりあえず「いろんな意味」でフラストレーション溜まりまくりですから、そんな志村喬を殴ってしまうのでした。

翌朝のこと。久慈あさみに「夕べのこと覚えてる」と聞かれた三船敏郎は、「何かやりましたか」と記憶ゼロ。どうやら久慈あさみを抱きしめたらしいですが、そんなこと覚えちゃいません。「本当に覚えてないの。キャプテン殴っちまったことくらいは覚えてるんでしょ」と言われ、「エッ!」と驚愕しています。な、なんてことを。商船学校出のエリートコースだったのに。

とりあえず、所長の藤原釜足に「こともあろうに船長を殴るとは何事だ」と、こってり絞られる三船敏郎。「その癖を出したら、絶対に辞めてもらう約束だったろ」とか言われていますよ。どうも、三船敏郎には酒乱の気があるようですね。しかし、所長が「これ見ろ」と差し出した紙には、おまえクビ、と書いてあるわけではなく、かえって「第一富久丸船長ヲ命ズ」とありました。さすが商船学校出は違う。いきなり船長に抜擢です。

それを知った志村喬は、あんな若造に船をまかせるとは、と激怒。一人でムキになって、天洋丸と第一富久丸、どっちが鯨を獲るか勝負だ、と燃えています。しかし、そんなことを知らない三船敏郎は、岸壁で近所の子供たちと遊んでいる真っ最中。子供たちが投げ込んだビンをライフルで撃ちまくるという、ほのぼのした遊びです。うーん、エリートもいろいろタイヘンそうだな。ストレスとか、フラストレーションとか。

三船船長、ライフルの腕を生かして、捕鯨砲を撃ちまくっています。快調、快調。

喜楽でしょんぼり酒を飲んでいる志村喬。どうやら、三船敏郎に負けた模様。その上、久慈あさみから、「鯨撃つなんて、そうムズカシイもんじゃないって、言ってたわ。塀に石をぶつける気持ちで撃てば、当たるんですって」とか言われ、ますますショボーンです。しかし、ここで調子に乗らないのが、エリートの条件。三船敏郎は、「そのちゃん。長い間世話になったけど、これから引っ越すことにしたよ」と久慈あさみに言い出します。社宅が空いたから、などと言いつつ、問い詰められると、「そのちゃん。俺はキャプテンが好きなんだよ」と告白する三船敏郎。確かに、女のことで伝説の鯨獲り船長と仲が悪くなるのはいかにもマズイですからね。それにしても三船敏郎、ドライだ。

ショボーンな志村喬は、掟に背いて三船敏郎の獲物を横取りしたり、どうも暴走気味。というのも、今後の成績次第で、南氷洋に派遣されるキャッチャーボートの船長に選ばれるかどうかが、決まるのですから。しかし、そんな暴挙に納まらないのが第一富久丸の船員たちです。「今度だけは俺に免じてガマンしてくれ。頼む」と三船敏郎に頼まれたって、腹の底から納得できるわけもありません。しかし、ガマンも限界。悪態をついた船員が、いまや敵の天洋丸の船員たちにボコボコにされたことから、両船の船員たちは大喧嘩になってしまうのでした。

あるお休みの日。三船敏郎のところに久慈あさみがやってきました。「あたしね、結婚するのよ」「ほう、そいつはメデタイなあ。誰と」「あんたと」。驚愕する三船敏郎に、久慈あさみは「あら本気にしてるの」と言いつつ、志村喬と結婚すると言うのです。もちろん「うれしいでしょ。あなたのお望みどおりよ」というイヤミ付きなのは言うまでもありません。

「ね、本当にどうなってもいいの。あたしは」、切々と訴える久慈あさみから目を逸らす三船敏郎。「あたしが本当に好きで、キャプテンと一緒になると思ってるの。ねえメッツさん(三船のこと)、こっちを向いて。目を逸らさないでまっすぐ」。そう言われても、三船敏郎の目は泳ぎまくりです。「また逸らすっ」と怒られても、困るのです。「あんたは自分に嘘ついてまで、そんなにいい子になりたいの」と言われ、「そのちゃんっ!」と一瞬だけ燃え上がる三船敏郎ですが、やっぱり出て行くのでした。しかし、ここで問題なのは、三船敏郎のヘタレっぷりよりも、久慈あさみの戦略のうまさ。知らないうちに、あなたの本当の気持ちは私を愛しているのよ、ええ、そうなのよ、みたいに思わせてしまうところですね。なんだか、私を愛さなかったら、男性失格、人間のクズだ、と知らず知らずに思ってしまいそうな勢いです。

志村喬と久慈あさみが結婚すると聞いた小泉博は激怒。なにしろ自分の父が、若い女と結婚するなんて、許せない気分なのです。「キャプテン、結婚するんですってね。おめでとうございます。フンっ。まったくおめでてえや」。「なにーっ」と瞬間湯沸器な志村喬に、小泉博は続けて言います。
「あんたは知らねえんだ。そのちゃんにはねえ、命を捨ててもいいというほど好きな人がいるんだ。誰だか教えてやろうか。メッさん(三船)だよ。メッさんも、そのちゃんが大好きなんだ。それにも気づかねえで」。そこに三船敏郎がやってきて、懸命に取り成しますが、小泉博はどんどんヒートアップ。「お前忘れてるだろ。これが俺のお母さんだ」、と一枚の写真を志村喬に渡すのです。むーっとした唇に、まん丸に目を見開く志村喬。その姿、まるでタコ。「ざまあみろ」と言って、小泉博は飛び出していくのです。

みんなが止めるのも聞かず、出航した天洋丸。志村喬は、いろんなモヤモヤを振り払うかのように、捕鯨砲を撃って撃って、撃ちまくります。しかし、海は台風で大時化。大丈夫でしょうか。

はい、大丈夫じゃありませんでした。「危険迫る。至急、救助方頼む。本線の位置、東経142度40。北緯38度25」という無線が天洋丸から入り、心配する鯨獲りの皆さんです。ちなみに、緯度経度を調べたところ、宮城の金華山沖、少し北よりの方みたいですね。

第一富久丸の船員たちが、三船敏郎に駆け寄り、行きましょうと言いだします。なんたる男と男の友情。海の男の心意気。「所長、富久丸が救助に行きます」と宣言した三船敏郎以下、第一富久丸の船員たちは、危険を顧みず、嵐の中を出航していくのでした。

その頃、岩礁に船底を破られ座礁した天洋丸(のミニチュア)では、懸命の作業が行われていました。えーと、なんの作業かは分かりませんが、きっと船を救う必死の努力だと思われます。と、その時。ボーッ、ボーッ、と第一富久丸の霧笛が聞こえてきたではありませんか。三船敏郎の素晴らしい操船で、ジリジリと近づいていくる第一富久丸。そして、三船敏郎の素晴らしい射撃で、アンカーロープがぴゅーっ。

救助された志村喬が船室で目覚めました。「お前には負けた。色々な意味でな。シャッポを脱ぐよ」と潔い志村喬に、「何を言うんですか、キャプテン」と三船敏郎だって偉ぶらずに謙虚です。小泉博にも謝る志村喬。「今さらオヤジと言えた義理じゃねえが、これから及ばずながら面倒みさしてもらえるか」。「義理もヘチマもないよ。この世の中に、俺のオヤジは一人きりだ。良かれ悪しかれね」とクールに答える小泉博ですから、次の瞬間、志村喬に抱きつき、うわーんです。えっと、良かった、良かった。

それからしばらくして、船団が南氷洋に向かう日が来ました。今は久慈あさみと結婚した三船敏郎。そして、志村喬、小泉博親子は、はるか南の果てまで鯨を獲りに行くのです。

流氷が、鯨の潮吹きプシューが、ペンギンのヨチヨチ歩きが船団を迎えます。ガンガン捕鯨砲を撃ちまくる三船敏郎を、「うん、うまい」と見つめる志村喬。小泉博も捕鯨砲を撃ってみたりして、志村喬としてはうれしい限り。巨大な鯨が引き上げられますが、それを小さく見せるほどの、母船の圧倒的な大きさ。いま、日本の捕鯨は絶頂期を迎えているようです。


……えーと、とりあえず微妙なデキ?でしょうか。アラクレな志村喬に、計算高い三船敏郎。それ以上に抜け目のない久慈あさみ。どんな組み合わせなんだ、おいっ。と、思わないでもありません。

まあ、いい人だった(らしい)本多猪四郎監督の映画を悪く言うのは、本当に心苦しいのですが、打席にたって思いっきり振ったら空振りの上にひっくり返った、みたいな映画です。もちろん、トンデモ愛好家としては、別の意味でオイシイ映画なので、観て良かったんですけど。

まあ、男対男の映画、もしくは大メロドラマとしては、ちょっとどうかと思わざるを得ませんが、捕鯨の部分は圧巻。いずれ記録映画から取ったパートかと思いますが、巨大な母船などは観ていて、血がたぎるものがあります。そうか、こんなデカイ船で、はるばる南氷洋まで行って鯨獲ってたんだ。この人たちのおかげで、貧乏な日本は外貨を稼ぎ、小学生たちは鯨の肉を給食で食べていたのか、と頭が下がります。正直言って、給食で鯨肉を食べるたびに、いつかは牛肉を食べてみたい、とバチアタリなことを思っていましたが、どうもゴメンナサイです。

ちなみに単純に「男汁溢れる」という観点でいうと、大映の「鯨神」の方がアツイです。志村喬も、熱すぎる鯨名主の役で出ていますしね。

それにしても、反捕鯨派の人が、この映画を観たら、怒るだろうなあ。


(ニコヤカな乱射魔)

(タコ)


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