いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】愛と誠

2013-04-11 | 邦画 あ行

【「愛と誠」山根成之 1974】を観ました


おはなし
幼いころ、スキーで死にかけた愛を救ったのは、白馬の騎士な誠。運命は再び、二人をめぐり合わせ……

少年マガジンで、1973年から76年まで連載された劇画が原作です。連載中の74年に映画化されたので、お話としては、中途半端。もっとも、映画版は、このあと「続」「完結編」と、すべて主役の誠が違うという迷走っぷりなので、それくらい、どーでもいい気がしますけど。



まずは、ネルー(ネール)さん(インド出身・故人)のありがたい言葉がどどーん。

愛は平和ではない/愛は戦いである/武器のかわりが/誠実(まこと)であるだけで/それは地上における/もっとも激しい/きびしい/自らを捨てて/かからねばならない/戦いである―/パンディット・ネール

ちなみに、インドの初代首相のネルーさんですね。娘がインディラ・ガンジー。孫がラジーヴ・ガンジー。両方とも首相になりました。ひ孫のラーフルも、やがては首相になりそうな勢いで、なんていうか、日本の世襲政治家も真っ青な名門家系ということですね。

と、インドの政治は、この際おいておいて、ここは冬の蓼科高原のとある別荘。「愛、愛、愛」。スキーをかついだ8歳くらいの女の子にお母さんが声をかけます。「なあに」「今日はもうやめといたら」「大丈夫よ、ママ」。「愛、愛」。ガウンにパイプをくわえたイカニモなお父さんの呼びかけに、「ねえ、パパ。行ってもいいでしょ」とおねだりする愛。「気を付けるんだぞ」「はーい」。愛は斜面を滑り出しました。ぴゅー。

ぐんぐん上がるスピード。あちこちに飛び出した木を避けようにも、数が多すぎます。「助けて~」。と、そこに弾丸のように飛び出してくる少年。どさっ。まさに木に激突する寸前の愛を、少年は間一髪、身を挺して助けたのでした。

泣いている愛の姿。と、「泣くな。泣くな、バカっ」と少年が声をかけましたよ。白黒の画面に、額にはそこだけ、真っ赤な血が。微妙にビニールテープみたいな質感がなんとも。「お前、別荘の子だな。金持ちの子だから助けたなんて思ったらブッ飛ばすぞ。やい、そう思ってるか」「思わなーい」。それより、ボタボタ血が出てるけど、大丈夫ですか。「早く行け。早く行けってば」という少年の声に、こちらを振り返り振り返り、去っていく愛。少年は、愛の落とした赤い手袋を握りしめ、それを見送るのです。っていうか、早く病院に行け。

バシュッ。森の中でアーチェリーをしている10人ほどの女子高生たち。えーと、ここはシャーウッドの森でしょうか。いいえ蓼科です。そんな中、的のど真ん中を射抜いている美少女?がいますよ。「さすが、早乙女さん。何をやっても運動神経抜群ね」と言われるやいなや、「まぐれ、まぐれ」と言いつつ、さらにど真ん中に命中させる。そんな大人げないロビンフッド少女の名前は早乙女愛(早乙女愛)です。あ、役名を芸名にしたので、名前が一緒なんですからね。

さて、その夜、キャンプファイヤーを囲む女子高生たち。「えーみなさん。このロマンチックな夜を記念いたしまして、お互いの初恋の思い出を語ってもらうことにします」。そう当然、始まるのは恋の話ですね。うぞーむぞーの恋バナも終わり、早乙女愛にお鉢がまわってきましたよ。「さ、イヤとは言わせないわよ」「初恋、そう言えるかどうか分からないけど、場所はそう、この蓼科高原だったわ」。いや、イヤどころか話す気まんまんの愛。「そう。彼はね、私にとっては白馬の騎士なの。白馬の騎士」。ぽわわーん。あの少年が、白いポニーにまたがり、白い鎧を着て、走ってきます。もちろん、額からは血だらだら。さらに白馬の騎士が通ったあとは、白い粉の跡が残っているというオマケつき。「その後、その彼とは?」と聞かれ、首をぷるぷる振る愛。「父が別荘を手放して、新しいのを軽井沢に建てたもんだから」。そこはかとなく、ムカっとするのは自分が小物だからでしょうか。ともあれ、愛は現場を訪ねてみたものの、少年が住んでいたと思しき場所も火事で跡形も無くなっており、少年の手がかりは皆無だそうですよ。

翌朝、森を縦貫する林道の、それもど真ん中でラジオ体操をしている早乙女愛とゆかいな仲間たち。と、そこにお約束な不良バイク軍団がやってきました。げへへ。女の子たちを追い回すバイク野郎。「きゃあ、離してぇ」。おっと、今度は草を口にくわえた青年と、お仲間の学ラン軍団が乱入してきましたよ。「粋がるんじゃねえよ、ひよっこのクセに」「なにい」。ボカスカ。ボカスカ。バイク軍団と学ラン軍団が戦っている隙に、愛を残し、ゆかいな仲間たちは逃げていっちゃいました。それもすごいイキオイで。

さて、草をくわえた青年はバイク軍団に蹴りを入れつつ、さりげなく額にかかった前髪をあげてみたりしてますよ。そして、そこには三日月形の傷が。それを見たバイクリーダーは驚愕して、叫びます。「フーテンタイガーかっ!」。フーテンタイガーは答えます。「この三日月傷はな、伊達じゃねえんだ」。「くっ、これで勘弁してくれ」とお金を置いて逃げていくバイク軍団。はい、ここで背景が白バックになり、くるりと振り向くフーテンタイガーの姿をしつこくリピート。くるり。くるり。くるり。やっぱり髪をなびかせ振り向く早乙女愛のリピート。ふぁさっ。ふぁさっ。ふぁさっ。ニカっと笑うフーテンタイガーの顔に、あの少年(血まみれビニールテープ付)がオーバーラップしました。ああ、これはあの時の白馬の騎士だわ。ぱっと顔を輝かせた早乙女愛ですが、白馬の騎士は意外なことを言うのです。

「あんたがたからもいただこうか。痴漢よけの用心棒代をな」。んまっ。早乙女愛は答えます。「お金はあげられません」。「なにっ!」「お金を少しばかりあげても、いいえ、例え大金をあげることができても、それで済むことではないわ」。そう言いつつ、自分の額をピッと指し示す愛。「私のココへ傷をつけてください。あなたと同じ傷を」。「なんだと」「それでオアイコになるわ」。と、そこにゆかいな仲間たちが警官を連れて戻ってきましたよ。「サツだあ」。蜘蛛の子を散らすように逃げていく学ラン軍団。もちろんフーテンタイガーな白馬の騎士も逃げようとしますが、早乙女愛の足元タックルで逃げられやしません。おい、こら、離せって。「フーテンタイガー。今度こそ少年刑務所にブチ込んでやるぞ」。ガチャリとフーテンタイガーに手錠をはめ連行していくお巡りさん。あとには唖然としている愛が残るのみです。

さっそくお父様(鈴木瑞穂)に頼み込む愛。お父様はエライ人らしく、代議士に手を回し、フーテンタイガーの少年刑務所送りをやめさせてくれました。「お父様、もうひとつ、お願いがあるんです」。

「えー、今度、転校してきた太賀誠くんです」。はい、お父様の力で、あの青年、太賀誠(西城秀樹)は早乙女愛の通う「名門」青葉台高校に転校してきたのでした。ちなみに学費、家賃、食費は支給するけど、あとは自分でアルバイトでもしろという条件。ま、それはともあれ、帽子をかぶり、ポケットから手を出さない誠に、先生はお怒りモード。「とにかくポケットの手を出すっ」。わかったよ、おりゃああ。イキオイ良く出した手が先生の顔にクリーンヒット。うっ、バタっ。口から血がたらー。はい、先生は救急車で運ばれちゃいました。

さて、太賀誠にできた子分というかパシリによると、この青葉台高校はラグビー部とボクシング部が勢力を持っているそうです。ラグビー部キャプテンは城山郷介(高岡健二)。ボクシング部のキャプテンは火野将平(織田あきら)といい、青葉台高校の両横綱だそうです。「どっちも怖い人ですから、オタクみたいな人は近づかない方がいいんじゃないすかね」「おもしれえ。覚えておこうか」。

ぽこん。ぽこん。一方、のん気にテニスをやっている愛。もちろんスローでスコート近辺を撮るのはお約束ということで。はい、テニスを終えた愛が水を飲んでいると、そこにメガネ君がやってきましたよ。「早乙女くんっ」「どうしたの。そんな怖い顔して」。メガネ君は黙ったまま手紙を渡し、去っていきます。「岩清水くーん、ちょっと待ってよお」。

さて、圧倒的な運動能力を見せつけ、ラグビー部とボクシング部にいい顔をみせる太賀誠。どうやら、その真意は両部、そして両キャプテンの対立を煽って「青葉台という名門高校を俺のカラーに塗り替えてみせるぜ」だそうですよ。そんな誠を愛は難詰します。
「卑劣よ、あなたのやり方。ラグビー部にもボクシング部にも入る気もないのに、ただ二人のキャプテンの勢力を利用しようと思って、両方にエサをちらつかせてるだけじゃない」

「分かっちゃいねえ」と言い返す誠。はい、ここで自分語りを始めちゃいました。それによると、愛を助けた時の傷がもとで、誠は破傷風になり、半年間も寝込んだそうです。そして、その医療費がかさみ、一家は土地を売るはめに。そして母は家出、父も蒸発。誠も小学2年生を二回やるはめになりイジメられたんだとか。

「知らなかった。知らなかったのよ」ガックリとくずおれる愛。スタスタと去っていった誠の代わりにさきほどラブレターを渡して逃亡した岩清水クン(仲雅美)がやってきました。「早乙女くんっ」「大丈夫、大丈夫よ」「君たちのヒミツは守る。断じて誰にも言わないっ」「ありがと」。えーと、単なるストーカーってことでOK?

家に帰って岩清水クンからもらったラブレターを読み返してみる愛。そこにはこんなことが書いてありました。

君のことばかり/考えていた挙句/このことだけ君に伝えて/おく決心をしました。/お互い/まだ高校生で/恋だの愛だのという/感情には/慎重でなければならぬと/よく判っています。/だから一つだけ/僕の心からなる誓いだ/け伝えておきます。/
早乙女愛よ
岩清水弘は
君のためなら死ねる!

ちなみに部屋でラブレターを愛が読んでいる、その外では、傘をさした岩清水クンが立ち尽くし「早乙女くん。僕は君のためなら死ねるっ」とか言っているし。やっぱストーカーだ。

さて、岩清水クンのラブレターを読んでヒートアップしたのか、愛はすっくと立ち上がって言いだします。
「わたしは、早乙女愛は、太賀誠のために死ねるだろうか。いいえ、その前にわたしは彼を愛しているのだろうか。愛している。少なくともあの日の血にまみれた彼を愛している。永遠に変わらず。そして、あの彼のためなら、あの時の太賀誠のためなら、わたしは死ねる。たとえ今の彼がどうあろうと」。愛の脳裏に白いポニーにまたがった白馬の騎士がぽわわんと浮かびます。おら興奮してきたぞ。「あの時の太賀誠は今の彼のどこかに住んでいる。どんなに苦しい、厳しい愛であり、償いであろうとも、あの永遠の白馬の騎士のために、潔く死ねるわたしでなければ」。完全に自分に酔ってます。

さて、城山、火野、両キャプテンに呼び出されちゃう誠。「君はラグビー部、ボクシング部を両てんびんにかけているが、いつまで我々を焦らせば気が済むんだ」。と、そこに、よく分かんないけど「誠さんやめてっ」と愛も飛び込んできましたよ。ちょうどいいや。とりあえず、愛のせいにしちゃえ。いわく、早乙女家からの援助額が少ないから部活やってる余裕がないんですよ。ええ、それというのも、愛は俺を独占しておきたいんですね、これが。

「どういう意味だ」と聞く火野に誠は答えます。「惚れてるからさ、俺に」。愛を含め、周りの人間全員が口ぽかーん。「早乙女くん、ウソだろ」と城山。「否定してくれ、早乙女くん」と火野。そして愛と言えば。……、……。引っ張るだけ引っ張って、ひと言。「否定しません」。ががーん。よく分かりませんが、なぜか学校中が動揺してるみたいです。

下宿で♪白鳥(しらとり)は かなしからずやぁ~♪とか歌っている誠。外は夕暮れに変わったりして。ついでに愛からもらった時計をじっと見たりして。さらに幼い愛の持っていた赤い手袋も見ちゃったりして。えーと、多分、西城秀樹の見せ場なんだろうな。よく分からないけど。

ということで、愛はお父さんに援助金の増額を頼んでみますが、「そんな我儘は聞けん!」と日本刀を丸いのでポムポムしつつ一蹴されちゃいました。しかたありません。町に出た愛は、さっそくこんな看板を発見。「女店員募集!時間給三百円 バイトも可 純喫茶 窓」。さっそくバイトを申込み、信じられないことに、前金までもらっちゃいました。普通もらえませんよ、感謝しなくちゃ。

早速もらったお金を誠に渡す愛。「多くはないけど、お金が入ってます」。ひと言余計です。ふん、と軽くお金を受け取った誠ですが、去っていく愛を下宿の窓からじっと見つめたりして。ついでに手袋握りしめたりして。さらに、手袋の匂いを嗅いじゃったりして。お巡りさーん、ヘンタイがここにいまーす。

さて、学園の明星、清純天使とも謳われていた愛が、誠に惚れてます宣言をしたことで、早乙女愛ブランドの価値は急降下。愛が登校すると、教室の黒板に「誠/愛」な相合傘とか書かれちゃったりして。と、そこに登校してきた岩清水クンは、黙々といたずら書きを消し、「みんな。下劣な真似はやめたまえ」とか言ってますよ。おお、こいつ、実は男らしいヤツでは。ついでに、ちょっと話があると、愛をプールに連れて行く岩清水クン。「はっきり言わせてもらう。僕は君に失望した」。そういうと、岩清水クンは、愛からもらったお金で余裕ができた誠が、余った時間で、子分を増やし、そんな誠の引き起こす暴力革命がすぐそこに来ている、と重々しく断言するのです。ほほう、で、なぜ愛が誠にお金を渡したことを知っているんですか。お巡りさーん、ストーカーがここにいまーす。

黒雄高校とかいうところとボクシングの試合が行われ、ボクシングの助っ人な誠は、かなーり卑怯な手を使って辛勝しました。当然、運動部派は、それを苦々しく思っています。そのうえ、学園の明星で清純天使な愛がそんな誠に貢ぐために喫茶店でアルバイトをしていることを、城山、火野、両キャプテンがたまたま知ることになり、怒りはさらに増すばかり。くそーっ、いつかシメてやる。

一方、強いものになびくのは世の習い。誠の下には子分グループらしきものができてきましたよ。ほら、そんな彼らが隊列を組んで歩いています。♪タイガーグループ、万々歳♪。歌までうたってます。っていうか、かなり頭が悪そうだな。

そんな対立状況の中、キャプテンその2な火野が誠に決闘状を持ってきました。
「決闘状/時 今夜十時/場所 和泉多摩大橋下空地/右承知の上、違約なき事/太賀誠殿/火野将平/城山郷介」。「ハッハッハ。決闘状とはやけに古臭いもの、持ってきやがったな」と笑い飛ばす誠ですが、愛が誠のためにアルバイトをしていることを城山に聞いて愕然としています。「なんだとっ」。

リーン、リーン。愛に電話をする誠。「誠さん?」「俺のためにサ店でバイトしてたんだって。その心意気には泣かされたぜ」。「ど、どうしてそれを」と動揺する愛に、誠は続けます。「まあ心配すんなってことよ。誰にも喋りゃしないからよ。火野の野郎が決闘状なんてものを持ってきやがって、そん時、あんたのことをブツブツ喋ってやがったのよ」。えーと、つまり決闘するんだボク、ってことを言いたいんですね。「決闘状!」と驚いてくれた愛に誠は言います。「ああ、あんたを守るために俺を制裁するんだそうだ。これから巌流島ならぬ多摩川まで、ちょっくら行ってくらぁ。そうそう、俺が死んだら骨でも拾ってくれよな。わはは」。ああ痛い。誠のかまって君ぶりが痛すぎます。

かまって君な誠との電話を終えた愛は、岩清水クンのところに直行。「お願い、どうしたらいいか教えて。もう、あたしの力ではどうにもならないの」。愛も随分かまってちゃんですね。そんな愛に岩清水クンは男らしく答えます。「うれしいよ。本当によく来てくれた。僕は君のためならいつでも死ねる」。いや、ソレ聞いてないから。

さて、ボクシング部員、ラグビー部員たちがワンサカいる河川敷で決闘が始まります。まずはボクシング部の火野との対戦。両者、ファイティングポーズを取り、ファイト!と、そこに「待ってぇー」と愛、そして岩清水クンが走ってきました。岩清水クンは言います。「火野さん、城山さん、早乙女愛を本当に守ろうと思うんだったら、もう一度、考え直してくれませんか。ここでみんなが血を流し合って、一番傷つくのは彼女なんですよ」。さすが秀才。その発言には聞くべきものが、って、その隙に誠が火野を不意打ち。いきなりボコってます。このやろう。火野も伊達にボクシング部のキャプテンじゃありません。怒涛の反撃で誠を圧倒していきます。と、いきなり誠が両手を高く顔の前にかかげました。そうまでして顔を殴られたくないんでしょうが、かえってボディはがら空き。「頭隠して尻隠さずか。それでガードしてるつもりかよ」。火野のスーパーマグナムウルトラなパンチが誠の腹に突き刺さりました。苦悶する誠、あれ?いや、のたうちまわっているのは火野です。「ははは、ざまみろ」。学ランを持ち上げる誠。おお、なんてことでしょう。腹に生け花で使う剣山が仕込んであるじゃありませんか。こんなものを殴ったら、確かに拳は穴だらけ。笑いながら剣山を外す誠。と、そこには立派な腹毛が。いや西城秀樹だし、これこそ本家ギャランドゥ。

ビシッ。ビシッ。ベルトを鞭に火野をボコっている誠。なぜか手をこまねいてる城山キャプテンに代わり、岩清水クンが、立ちはだかりましたよ。「今度は僕が相手だ」。「気でも違ったのか」とあきれ顔な誠に岩清水クンは雄々しく宣言します。「決闘とは真に勇気のある人間が生きるか死ぬか、生死の二文字を賭けて争う戦いなんだ。下劣な暴力による喧嘩はまったく違うっ!」。そう言い終わると、「どなたかナイフを持ってませんか」とまわりの運動部員に声をかける岩清水クン。そう、岩清水クンの決闘とはナイフを使った、こんな恐ろしいものだったのです。

まず離れた場所に切っ先を上にナイフを刺します。そして、二人並んで、そこまで後ろ向きでゆっくり歩きます。適当なところでエイヤと後ろ向きに倒れると。もし、そこにナイフがあったら、はい、串刺しですね。ルールは三つ。ナイフより遠い方が負け。ナイフを通り過ぎても負け。後ろを向いたらもちろん負け。岩清水クンの胆力に、誠の闘争心も燃え上がりました。よーし、やったろうじゃないか。よーいスタート。並んでバックしていく二人。一歩。そして一歩。また一歩。もひとつ一歩。と、二人の間を駆け抜け、「やめてぇーーっ」と叫びながらナイフにトライを決める愛。と、同時にうりゃっと後ろ向きに倒れる二人。えーと、順番が逆ならカッコいいんだけどな。安全になってから倒れられても。しかし、城山キャプテンの「勝負なし。完全な引き分けだ」の言葉に、誠も岩清水クンもなんだか清々しい顔ですよ。先に起き上がった誠が岩清水クンに手を貸したりして。よく分かんないけど、これって大団円。と、そこに「隊長、助けにきやしたぜ」と空気を読まないタイガーグループが遅ればせながら到着です。それ、攻撃だあ。石を投げ始めるタイガーグループ。「こら、余計なコトすんな」と誠が言っても、時すでに遅しです。体制を立て直した運動部員グループも投石を開始し、攻撃を受けるのは真ん中に取り残された誠、愛、そして岩清水クンというありさまに。

ゴツッ。イヤな音と共に頭に石をくらった岩清水クンが卒倒。「岩清水クンっ!」と駆け寄ろうとした愛もオデコに被弾。「あ、あああーー」。「あいーーっ」と駆け寄った誠に愛は言います。「誠さん。これであなたと同じ傷が、あたしにも」。「ダメだ。傷なんか、誰がつけさせるもんか」と誠は言いますが、愛はそのまま失神しちゃいました。う、う、うわーん。誠は絶叫します。「あんたのキレイな顔に傷なんか付けさせるもんか。俺のこの傷を見て、あんたが一生苦しみぬくためにも傷なんかつけさせるもんか。俺の復讐の相手がいなくなっちゃうじゃないかよぉおおお」。ここは、西城秀樹の「あの」シャウト声を心の中で再生してくださいね。

「総攻撃だ。かかれぇ」。タイガーグループ、運動部グループ、ついでに誠は大乱戦。当たるを幸い、あちこちで殴り合い、蹴り合い、いつしか立っているものもいなくなりました。そして、やがて朝日が昇ります。ムクっ。目覚めた誠は、愛をお姫様だっこして、どこかに歩いて行くのでした。



すっげえダメな終わり方です。最後は投石合戦かよ、みたいな。まあ武田家の投石部隊とかは有名だし、戦いのセオリーとしては「アリ」かもしれませんが、画的には「ナシ」の方向ですよね。そもそも、この映画が戦国時代の合戦モノというわけでもないし。

ま、それはともあれ、原作の最初だけを映画化してるので、ガム子とか高原由紀、座王権太みたいなメンツは出てきません(「続 愛と誠」で出てきます)。それだけに、どうしても岩清水クンの「君のためなら死ねる」にウエイトをかけざるを得ないのが辛いところ。もちろん、そのフレーズが出ると「待ってました!」と盛り上がるんですけど、それを多用されてもなあ、と思ったりもします。早乙女愛(役者)は、かなり棒読み演技ですが、早乙女愛(登場人物)の存在感そのものがヘンなので、あまり目立たないというか、ラッキーだったねというか。

え、西城秀樹ですか。ああ、ギャランドゥも見られたし、こんなものかと。

 

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【映画】丑三つの村

2012-12-30 | 邦画 あ行

【「丑三つの村」田中登 1983】を観ました



おはなし
懐中電灯を頭につけたオカシイ人が、村中を大虐殺。

有名な「津山三十人殺し」を映画化した作品です。監督はにっかつロマンポルノの名匠、田中登。そのため、残虐性とともに、おっぱい成分も高まっているのが、特徴といえば特徴ということで。


田舎の小さな駅。群集が日の丸の小旗を持って集まっています。どうやら、出征兵士を見送っているようです。「赤木巌くん、ばんざーい」と音頭を取っているのは、日暮谷村の重鎮、赤木勇造(夏木勲=夏八木勲)。ちなみに兵隊さんはビートきよしがやってたりしますが、ペコペコお辞儀をしているだけで台詞はゼロなので、なんていうか「その程度の扱い」感が漂います。

ともあれ、兵隊さんの乗り込んだ汽車がポーっと汽笛を鳴らし、見送りが最高潮に達したころ、「ばんざーい、ばんざーい」とホームをダッシュし、ついでに盛大にコケているのが、この映画の主人公、犬丸継男(古尾谷雅人)です。どうやら、人一倍、兵隊さんにあこがれを持っているようですね。

そんな継男が村への帰り道を辿っていると、道の真ん中でニワトリをいじめ殺している3人の青年がいます。「余所モンだから、バカにされとおしじゃあ」。タダアキをリーダーとする半グレくんたちは、継男にも言いがかりをつけてきましたよ。「よう、天才少年、たまには遊んでくれやあ」。さらに、継男のおばあちゃんに夜這いをかけようかとまで言いだす始末。プチン、キレた継男は「村から出てけ、この穀つぶしもんがあ」と怒鳴り、石を投げまくりますが、そのあとゲホゲホと咳をしまくり。はい、この短いシーンだけで、「悪い子タダアキ」「夜這い」「ゲホゲホ=結核?」みたいな伏線が貼られましたね。ふむふむ。

さて、家に帰って、おばあちゃん(原泉)とご飯を食べている継男。「おばやん、俺が兵隊行くとき、泣きへんか?」。それに、おばあちゃんは答えます。「お国のためや。立派に戦こうてこい、ちゅうて笑ろうて見送ったる」。しかし、そうは言いつつも、継男が勉強しに自室に戻ると、「大声あげて泣くかもしれへん」と悲しそうです。そう、継男の両親はすでになく、ババひとり、孫ひとりなのですから。

と、そこに遠縁の赤木ミオコ(五月みどり)がやってきました。いつものように借金の申し込みに来たのです。「うちかて、継男とふたり、細々とやり繰りしとるんや」と苦い顔のおばあちゃんですが、「継男ちゃん、学校の先生になるんやろ」とミオコにおだてられると、満更でもなさそうな表情。そう、継男は村始まって以来の神童と謳われ、おばあちゃんを独りにしないため、上級学校にこそ進学しなかったものの、検定試験をうけて教員になる道を目指しているみたいですよ。

さて、ゲホゲホがおさまらない継男は、近所のヤブ医院を訪ねます。しかし、診察は軽い肺門浸潤ということで、しばらく安静にしてれば治るとのこと。ほっ、良かった。良かったついでに、チャラい先輩(新井康弘)からエロ写真をもらった継男。うれしくて、草むらに直行です。エロ写真を見つつ、股間に手を伸ばします。まったく見境がないんだから、と、そこに野良姿の美少女があらわれましたよ。はい、幼馴染のやすよ(田中美佐子)です。「何、見てたん?」「やすよが見たらビックリする」「見せて」「あかんあかん」。そりゃそうだ。ま、それはともあれ、草むらにゴロンとしたりする、無防備なやすよの姿にドギマギする継男です。と、やすよが言います。「検定、受けるんやて。やっぱり継男さん賢いやねんな」。「なんぼ頭良うても、男はいざっちゅうとき、鉄砲もって立派に戦えんとあかん」と答える継男に、やすよは続けます。「みんな言うとる、日暮谷始まっていらいの神童やいうて」。ちなみに、この二人、好きあっているみたいなのですが、「従弟くらいの関係」ということで、結婚はできないみたいです。

さて、その夜のこと。継男が寝苦しさを感じて目覚めると、部屋に煙がモクモクと侵入中。外に出てみると、村はモヤに沈んでいます。ま、部屋にスモークをガンガン炊くのは、ちょっと演出的にどうなのよ?と思いますけど。
ま、それはともあれ、ちょうどいいや。深夜の散歩でもしてみよう。継男は歩きだすやいなや、いきなり一軒の家を覗き始めましたよ。この「散歩から覗き」という一連の流れが妥当かどうかは別として、そこでは、アッハンウッフンの真っ最中。しかしおかしいですね。、えり子(池波志乃)の家は旦那さんが出征中のはずなのに。おっと「おかん、ええか。おかん」と言いつつ、怒涛のストロークをしている人は、赤木勇造でしたよ。「勇造さんか。夫婦もんでもあらへんのに」と、覗きをやめて納得する継男。いや、そこは普通にスルーするとこじゃないから。

さて、さらに継男が深夜の徘徊をしていると、「誰や」と声をかけられましたよ。そこには棍棒で武装した村の男が6人ほどいます。「なんじゃ継男か」という男たちに「寝苦しいから散歩です。おっちゃんらこそ?」と継男は答えます。「タダアキらが悪させんように毎晩交代で見回りしとるんや。勇造さんの考えやけどな」。ふーん。勇造さんのね。思わず、「夜這いも悪さのうちですか」と皮肉な質問をしてしまう継男でした。

さて、ここからはしばらく夜這いタイムというか、エロパート。まずは古尾谷雅人VS池波志乃。そして古尾谷雅人VS五月みどり。田舎の村に、こんなエロいおばさんたちが夜這い対象としてゴロゴロしているのは、なんていうかウラヤマシイ限り、なのか。そうじゃないのか。

さて、エロパートもひと段落し、村を見下ろす鎮守の森に来た継男。待っていたやすよが声をかけます。「顔色悪いな」「うん、咳がひどいんや」。いや、夜這いのし過ぎだろ。映画では描かれてませんが、どうやら継男は検定試験に落ちたみたいです。きっと夜這いのし過ぎです。「みんな心配してる」というやすよに継男は答えます。「勉強のほうで期待にそえんでも、男は立派な兵隊になりゃええ。徴兵検査で甲種合格して名誉挽回や」。と、下界にちんまりとうずくまっている村の方を見やると、タダアキたちが暴れていますよ。家々の桶やら戸板やらを、次々とぶん投げたり、ひじょうに「分かりやすい」暴れっぷり。まさに「暴れん坊」というテーマで「名前を付けて保存」したいくらい。それを見つつ、やすよは言います。「あの人、殺されるんかもわからん」「タダアキか」「勇造さんがうち来て、お父ちゃんとそんな話してた」。「まさか」とビックリする継男ですが、そんなこともあるのかもしれませんね。とか何とか話をしてると、あっというまに夕暮れになり、見下ろす村も真っ赤に染まっています。思わず継男はつぶやきます。「どんどん血の色に似てくる。狭い村ん中だけで、男も女も誰彼なくまじりおうて、子供作って、川に流して……気持ち悪いなあ」。あ、最後は確かに気持ち悪いですね。っていうか怖い。と、かわいい"やすよ"は手作りの組みひもを継男に渡しました。「女の方から打ち明けるなんて」となんだか照れています。「昔は兄弟や親子でも結婚したそうやけど、気持ちだけ受け取って」、そのままズドドとダッシュ。ええと、昔は親子で結婚したって、いつの時代、どこらへんを想定してはるんですか。

「昭和十二年度 新山地區 徴兵検査會場」。近在の高等小学校で徴兵検査が行われています。もちろん継男も満を持して参加。目指せ甲種合格だあ……はい、不合格でした。「肺ですか?」「結核じゃ」。ああ。ショックを受けて村に帰る継男ですが、げに恐ろしいのは悪い噂の伝わる速度。帰り道の段階で、村人たちが挨拶をしてむ無視するし、まわれ道で逃げ出したりしてますけど。

落ち込んでいる孫のために、おばあちゃんは産みたてタマゴを出してきてくれましたよ。しかし悲しみの継男はウリャアっと手を払ってます。ぐしゃ。割れてしまうタマゴ。「何するんじゃ。おばやんの気持ち分からんのか」。そう言われると基本イイコの継男は反省モード。残っているタマゴを割って、そのままゴクリです。「もひとつ、どや?」。はい飲みますよ。カンカン、パカリ、ごくっ。えーと、まだ飲むの。カンカン、パカッ、ごきゅごきゅ。えーと、俳優さんってタイヘンです。「ロッキー」でシルベスタ・スタローンが生卵をごくごく飲んでいるのは、カッコいいし、小学生だった時にマネとかしました。でも、ひょろひょろした古尾谷雅人が、砂かけ婆みたいな原泉に凝視されつつ、苦悶を浮かべつつ生卵を飲んでいるのは、素直にキモチワルイ。見ている方までオエっとしちゃいますよ。

もちろん生卵を飲んだからといって肺結核が治るわけもなく、さらには大好きな"やすよ"が嫁に行くことになり、やけっぱちの継男。どれくらいやけっぱちかと言うと、四つん這いになって犬に吠え掛かるくらい。えーと、これは数字で言うと、どれくらいのやけっぱち度なんでしょうね。ともあれ、病人のくせに、四つん這いになってワンワンやってるから血を吐いちゃいましたよ。ゲボっ、おえおえ、ゲボろっしゃー。と、そこに野良仕事帰りの和子(大場久美子)が登場。小走りに駆け寄ってきて、手ぬぐいを差し出してくれるじゃありませんか。「汚い血で汚れてしまうぞ」と遠慮する継男ですが、「洗ろうたらしまいや。背中さすってあげる」とあくまで優しい和子。思わず手ぬぐいをクンクンして「ええ匂いが残っとる」と継男が言うと、和子は「イヤやわあ、継やん」と恥じらいつつダッシュしていくのです。「地獄に仏や。なあ」と吠えあっていた犬に声をかける継男。思わず胸に暖かいものが。

ついでに股間にもあたたかいものが充満したのか、継男は五月みどりなミオコのとこに、昼だけど夜這いをかけてみました。しかし、ミオコは相変わらずのエロさで悶えまくるものの、なぜかキスをしようとすると、顔を左右にして逃げまくってますよ。ムカっ。さらにキスをしようとすると、「もともと嫌いなんよ」とミオコも逆ギレしてますよ。「もう二度と来ん」とミオコの家を飛び出す継男。そのまま村はずれの草むらにくると、おや、誰かが乳繰り合ってます。えーと、あれは。ガガーン。えろ写真をくれたチャラい先輩が、脳内(俺の女)な和子といちゃついてるじゃありませんか。「何やっとんじゃあ。昼間から」と怒鳴る継男ですが、和子はなんだか冷たい顔でスタスタと去っていってしまいましたよ。「あいつ俺に惚れとるんや。血吐いて苦しんでた時に手ぬぐいを」とチャラい先輩に訴えてみる継男。しかし、先輩は言います。「聞いた。けど、惚れてなんかおれへん。お前の病気のこと知らんかっただけや」。

懲りずに池波志乃なえり子のところに夜這いをかけて追い返され、ミオコのとこにも夜這いをかけて騒がれ、夜の村を逃げ回る継男。と、おや余所者のタダアキが、勇造をはじめとする村の男衆にリンチされている光景を目撃しちゃいました。どうやら、タダアキはリンチの果てに死亡したみたいです。

翌朝、高さ十メートルはあろうかという枝にぶらーんとぶら下がっているタダアキの死体。どうみても自殺じゃありませんけど、これは自殺だね。うん自殺だよね。みたいにノンキな現場検証をしている駐在さん(山谷初男)と勇造さんたち村の男衆。と、そこに継男は飛び出して叫びます。「駐在さん、あれ、自殺やない。俺見たんや」。しかし、当の駐在さんの反応は鈍く、勇造さんは「へっへっへ。継男のやつ、勉強のし過ぎでワケの分からんこと口走るって、村でも有名なんや」と笑っています。村の男衆もみんなで笑います。わはは。わはは。へへへ。えーと、全員、目が笑ってないんですけど。特に勇造さんこと夏木勲の顔。赤ん坊がヒキツケ起こしそうな顔です。こわい。

「俺も殺されるかもしれん」とおばあちゃんに訴えてみる継男。しかし、おばあちゃんは相手にしてくれません。「そんなしょうもないコトばっか考えとらんと、ちょっとは金の心配でもしてくれえ」「畑売って、金作ったらええんや」。ん、今、オレ良いこと言ったぞ。閃いた。

ということで、(おそらく)作った金で、町の銃砲店を訪ねた継男。早速、村に戻ると銃の練習です。そして、家で仕上げたのは「犬丸継男の戦場」と題したデカイ手書きの地図。そこには、ターゲットとなるべき村の人々が、こと細かに書き込まれています。ドヤ顔で地図を眺めていた継男は、一人ひとりの名前の上に火薬を少しずつパラパラと振りかけ、そしてマッチで着火。ボフッ。ボフッ。爆燃する火薬の音は、これからの惨劇を予告するものでした。

親切めかしていた和子が結婚して村を去り、逆に結婚したものの、継男と親しかったイコール結果かも、という理由で"やすよ"が離縁されたと聞き、怒り心頭の継男は、鉄砲をかついでミオコのところに夜這いをかけることに。なんで、怒ると夜這いをかけたくなるのかはよく分かりませんが、「犬丸継男の戦場」とか地図を書いてドヤ顔してる奴ですからね、継男は。しかし、ミオコの家に行ってみると、留守だった旦那の中次さん(石橋蓮司)が戻ってきているじゃありませんか。しかも夜這いのことが全部バレてる。逆ギレした継男は「ぶち殺して欲しいんか」と猟銃を構えてみますが、逆に中次さんにボッコボコにされちゃうのでした。それにしても、石橋蓮司にボコボコにされるのって、かなり弱い感じ。

孫の不穏な雰囲気を察したのか、病床のおばあちゃんは、こんなことを言います。「おばやんも、もうお迎えが来てもおかしない歳じゃ。体もそこらじゅうガタが来とる。継男、おばやんが死んだら好きな事してもええ。だけど、生きてるうちは悲しませんでくれよなあ」。ああ、そんなこと言うと、単純な継男のことだから、危険ですよ。ほら、さっそく継男は毒薬を準備してるよ。「おばやん薬飲みや」「なんやケッタイな色やなあ」「はよ飲め、おばやん」。えーと、どうみてもヘンな色の薬だし。「何、飲ます気や、お前は」と叫ぶやいなや、おばやんこと原泉はダッシュで逃げていきます。その走りっぷりは見事のひとこと。原泉、ばあちゃんのクセに走るの速すぎ。

ご飯を用意したのにおばやんが帰ってこない(当たり前)ので、継男は出かけることにしました。ちょうど嫁ぎ先から離縁されたやすよがお風呂に入っていたので、それを覗きましょう。じーっ。あ、ダメだ。なんか込み上げてきた。早速、お風呂になだれ込んで、やすよを押し倒す継男。しかし、「俺の子供、産めっ」と叫んだ直後に、別の者が口に込み上げてきちゃいました。げぼーっ。お風呂の中に大量の吐血をしてしまう継男。すると、なんだか高ぶっていた下半身方向は沈静化してしまったみたいです。吐血した血の混じるお湯を手桶でバシャーっとかぶる継男。するとオッパイ丸出しのやすよが、手桶を奪い取って、血の混じったお湯をかぶってくれるじゃありませんか。感動しつつ、手桶を取ってお湯をかぶる継男。また、交代でお湯をかぶるやすよ。じわーん。「悪かった」と叫ぶと継男は外にダッシュです。オッパイ丸出しのやすよは、そんな継男を悲しく見送るのでした。えーと、まずはオッパイを隠せって。

近所に逃げ込んだおばあちゃんが、継男に毒殺されそうになったと言ったらしく、警察の手入れが入りました。天井裏に隠してあった多数の猟銃、日本刀、その他火薬などなどが全部没収です。しかし、もはや継男を抑えるものは何もない。さっそく、都会の銃砲店に出かけ「五連発以上のはないの?」とよりパワーアップした武器を買いまくる継男。部屋には連発銃のほか、日本刀に短刀、匕首などが盛りだくさんです。

草むら(好きだよね)に継男が座っていると、やすよがやってきました。「村のみんな、継やんがそのうち何かしでかしよる、言うてるの知ってる?ウソやろ。ウソやな」「ウソや」「聞いときたかったんや。最後にそれだけ」「?」「またお嫁入り」。ガーンとしている継男にキスをするやすよ。そのまま草むらに倒れこみ……。はい、サービスタイムです。

一方、村では緊迫の度が高まってきました。まず継男に恐怖を感じたのか、中次・ミオコ一家が、夜逃げ同然に村を捨てました。実に賢明な判断と言えましょう。それを見て、継男に挑戦的な視線をぶつけてくる勇造さんこと夏木勲。「近いうちにみんなと相談して、お前の処分決めて、おばやんに報告に行くさかいな」と宣戦布告です。もちろん継男も負けていません。「逃げられたんかい。のんびりしとれん」とそっとツブヤキます。

靄に沈む村を見つつ、継男は言います。「まあ皆様方。今に見ておれで御座居ますよ」。ちなみに、これは、この映画のキャッチコピーね。

そして、継男は手紙も書いちゃいます。「前略やすよさま、お元気ですか。突然の不躾なお便り、お許しください。僕は戦場に行きます。十月二十日、戦場に行きます。その日、村には絶対に近づかないで下さい」。でも、こんな手紙を出したら、ねえ。

夕方のうちに村への電線を切断した継男は、ろうそくで食べる夕餉の席で(あ、ばあちゃんは戻ってきました。良かったね)、ばあちゃんから、和子こと大場久美子が里帰りしていることを聞きます。思わず「今日はええ日や、大安や」とニヤける継男。ひゃっはー。狩りの獲物が増えたぜ。

そのまま夜の一時まで待った継男は戦闘準備開始。素っ裸になって、新品のふんどしをアターーッチメント!。シャツ、詰襟の学生服、そして地下足袋に上にゲートルをロールオーーン!!。弾薬をズックに入れ、肩に下げると、革帯をしめ、日本刀をセットオーーン。ま、ともあれ、さらに革帯をつけたり短刀、匕首を装備するなど、最終決戦にふさわしい出で立ちです。もちろん、両側頭部につけた懐中電灯と、胸にぶらさげたナショナルランプは、最高の魅せポイント。俺のカッコを見てくれ!なもんです。

「おばやん、約束や。笑ろうて見送ってくれや」と言って、まずは斧でおばあちゃんの首をセパレート。返り血で血まみれになった継男は叫びます。「おばやん。俺を夜叉にしてくれーっ。鬼にしてくれーーーっ」。ふーふー。ラマーズ法のようにスーハー、スーハーしたあと、ロボットのようなカッチンコッチン状態で万歳を始めちゃう継男。「犬丸継男クン、ばんざーい。犬丸継男クン、ばんざーい。犬丸継男クン、ばんざーい。犬丸継男クン、ばんざーい。犬丸継男クン、ばんざーい」。さあ、虐殺の始まりだ。

まずは隣家のおばさん(石井富子)を刀で刺殺。ここまで、特に出番がなかったのに、石井富子を皮切りにしたのは、多分、死にっぷりが面白すぎるから。うぎゃああああ。刺された石井富子、腹筋の力で90度直立してます。鍛えてます。ついでに旦那も射殺した継男は次の家に。

「夜這いに来たでえ」と言いつつ、大場久美子こと和子の家に乱入した継男は有無も言わさずお母さんを射殺。さらに、恨みの対象、大場久美子の口に銃口を突っ込みつつ「結婚、おめでとうさん」と嘲笑います。そのまま肩を撃ち、胴体を短刀でグリグリ。よし、次。

「起きんかーい。皆殺しにしたるわ」、継男は一軒、二軒と潰していきます。「わしら、お前の悪口、言うたことないわ」という家は。それもそうかと見逃して、次の家を皆殺し。キャーキャー飛び出してきた、若い女の子たちも、もちろん射殺だ。ずがーん。

いったん鎮守の森に継男が撤退して、弾込めをしてると、そこに"やすよ"が出てきました。「継やん」「誰じゃ」「もう、もう、やめてぇ」。えぐえぐしている"やすよ"に継男は言います。「まだ三軒残っとる」「鬼や」「鬼のどこが悪い」。

次の家も潰した継男ですが、さすがにのどの渇きを覚えました。早速、そこらの山羊の下に潜り込んで、乳をダイレクトにドリンキング。「よしっ」。次の大物を前にエネルギーチャージです。

「勇造出てこんかーい。一番許せん。ぶち殺したる」。しかし、勇造こと夏木勲はただものじゃない男。「助けてくれー」とか言いつつも、二階から手当たり次第にものを投げつけてきますよ。って、座布団とかですが。さらに、畳をバリケードにし始める夏木勲。一枚。バーン、貫通。二枚。バーン、貫通。ニヤニヤしながら、畳を重ねていき、邪悪の笑みを浮かべる夏木勲、ちょっと怖すぎます。ここらへん、いまいち演出意図が分かりませんが、まあ夏木勲の笑顔が怖いから、いいか。えーと本当にいいのか?

「ちくしょー。時間があらへん」と継男は、笑顔の怖い夏木家から撤退。最後は、自分をバカにした池波志乃ことえり子の家を襲撃だあ。なんの事情も知らない旦那さんが「やめんかあ」と立ちはだかる中、「どいてくれや、おっつあん。どいてくれや」と継男は思わず発砲。旦那さんの頭も、思わずキレイさっぱりはじけ飛んでしまうと言うものです。ぎゃあああ。逃げ回る池波志乃を撃ち倒す継男。池波志乃は、こけた衝撃で、股を開いてひっくりかえっていますよ。ぐいっ。その股間に銃口をあてる継男。「ここがいかんのや」。バーン。無音のまま、キラキラと舞う血しぶき。ああ、キレイ……なワケない。

鎮守の森に戻った継男は、えぐえぐしている"やすよ"に言います。「終わったんや。肝心な奴、やれなんだ」。「もう、やめてっ」。「俺はこれで終わりや」。と、いきなり"やすよ"のお腹に耳をあてる継男。「心臓の音や。俺には良う聞こえる」。えーと、やすよは継男の子供を身ごもったんですね。しかし、それを察知する継男の能力、おそるべし。妄想かもしれないけど。

ともあれ、やすよを残し、村を見下ろす高台にあがった継男は、猟銃を口に咥え、足の指を引き金にかけて、言うのです。
「皆様方よ。さようならで御座りますよ」
バーン。銃声が響きます。


ずばり、この映画のポイントは3つ。

一つ目は池波志乃と五月みどりのエロ対決。これは、自然にエロい池波志乃に、あれこれと技巧に走り過ぎて、嘘くささ全開な五月みどりって感じで、軍配は池波志乃に上がるような気がします。それに、池波志乃の演技は凄すぎます。オッパイ担当として十二分な活躍のうえ、いわゆるアヘ顔が破壊力ありすぎ。もし「俺は熟女のアヘ顔に命を懸けてるんだ」という人がいらっしゃいましたら、ぜひ。わたしは、ちょっと引きましたけど。

二つ目は、もちろん売りであろう、最後のノンストップな虐殺シーン。この疾走感というか、隙のないタイトな演出はなかなかのものです。もちろん、現実の世界で、あれこれ悲劇的な事件が起きているなか、これを「面白い」と言ってしまうのは、いかにもまずいです。下手すると鬼畜とか、空気を読まない奴とか、「おエライ人たち」から批判の対象にもなるでしょう。ですから、小さい声で言いますね。えーと、すっごく面白い。……。ふう、言ってやった。

この映画、三つ目の見どころ。個人的には、これが僕にとっての一番の見どころだったのですが、それは田中美佐子の美しさ。もう文句のつけようがありません。インタビューとか見ると、現実の田中美佐子さんはけっこう男っぽい性格のようですが、この映画に焼き付けられた田中美佐子さんは、まさに可憐のひとこと。とてつもなく可憐かつ美しいひとが、さらにオッパイ丸出しってのは、どうなんでしょう。鼻血でも出せってことですか。ああ、出してやるよ。鼻血ドバーで御座りますよ。

ま、最後にちょっとマジメになります。現実の「津山三十人殺し」に関しては、とうぜん、犯人も自殺しているし、関係者の「ほとんど」が殺されている以上、真実は闇の中です。しかし映画的には、そこに何か道筋をつけたい、理由づけをしたい、ということになります。そのため、徴兵検査に落ちた屈辱であるとか、夜這いにまつわるモメごと、さらには村人のリンチ問題まで出してくるわけです。でも、僕は、そのどれにも決定的な「動機」を見いだせなかった、というのが事実です。なぜ人は大量殺人をするのか。そこに合理的な理由づけはできるのか。これは単に犯人がシリアルキラーというかサイコパスだった、という理解でいいんじゃないのかなあ、と考えたりもして。そっちの方が、より不気味さは増したと思います。

 

 

 

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【映画】歌う若大将

2010-08-06 | 邦画 あ行
【「歌う若大将」長野卓 1966】を観ました



おはなし
若大将が歌います。そのまんま。

日劇で行われた加山雄三のワンマンショーに、「大学の若大将」から「ハワイの若大将」までの名場面を組み合わせた、おおきな声じゃ言えませんが、とても安直な企画の映画です。しかし、別の意味で、見所(というか聴き所)満載でした。

まずは、いきなりパシフィックパーク茅ヶ崎のプールからスタート。女性ナレーターが言います。「ここは神奈川県茅ヶ崎のパシフィックガーデン。全女性あこがれのナイスガイ、加山雄三さんが忙しいスケジュールの合間を縫って水遊びにやってきました」。いや、これは加山雄三がお父さんの上原謙と建てたホテルなんで、単なる宣伝なのでは。ま、それはともあれ、飛び込み台からジャボンと若大将が飛び込むと、それだけで「わー。きゃー」と黄色い声が。さらに若大将がバタフライなんかで泳ぐと、やっぱり「わー。きゃー」。

次は若大将のシングルレコードが映りました。「レコードの売れ行きが300万枚を突破して、歌手としても人気絶頂の加山さん。こんど東京有楽町の日本劇場で、名古屋公演に次ぐワンマンショーを開くことになりました。前人気は上々で前売り券はわずか二日で売り切れてしまったというすさまじさ。屋上では加山さんと共演する日劇ダンシングチームのリハーサル。若さにあふれて楽しそうです」。ということで、画面は日劇の屋上に移ります。あんまり、楽しそうな表情を見せずに、モッサモッサと踊りの練習をしている日劇ダンシングチーム(NDT)のみなさん。っていうか、NDTって、こんなとこで練習してるんですね。雨の日はどうするんでしょう。

さて、今度は日劇を十重二十重に囲む群集が映ります。「一夜明けて、さあ待ちに待った公演のその日。徹夜で並んだ人も含めて、早朝から詰めかけたファンの列が当日売りの一般席券を求めて劇場を取り巻きました。何百人、いえ何千人並んでいるのでしょうか。びっくりしたなぁ、もう」。確かにたくさんの人たち。それも妙齢のお姉さんたちが、うじゃうじゃ並んでいるのは圧巻ですね。「三日間の入場者総数が約3万人。入れ替えなしだったので、一日3回の公演を朝から晩まで居続けて、全部堪能されたファンの方も多かったとか」。多かった"とか"って。今じゃ映画ですら、完全入替制になってきたのに、何ていうおおらかさなんだか。

ま、それはともあれ、いよいよ公演開始。ぱっとスポットライトが当たり、男性が光の中に浮かび上がります。「わーーー」。しかし、そこにいたのは司会者のおじさん。「わーってことはないでしょ。キャーなら分かりますがね」。イヤな間が広がります。「ま、ハヤる気持ちはわかりますけど。まだ幕は閉まってるんですからね。みなさん、ようこそお出でくださいました。志摩夕起夫でございます」。ザワザワ、ザワザワ。観客は聞いちゃいませんね。これには志摩さんも閉口したのか、大声を出します。「それでは早速、幕を開けることにしましょう。加山雄三ショーーーー」。

スルスルと幕が開くと、NDTのお姉さんに囲まれた若大将が、ニカっと笑いつつ片手を上げました。「加山さーん、すてきー」。ここで名ナンバー『君といつまでも』が始まります。♪二人を夕闇がぁ 包むぅこの窓辺に♪。わーー。わーー。なんかお姉さんたち、聞いちゃいないし。「加山さん、手振ってぇーー」「雄ちゃん、ステキーー」「こっち見てー」。歌い終わり、「最後まで一生懸命歌いますからよろしく」と言う若大将に、声が飛びます。「頑張ってぇ」。何ていうか、打てば響くとはこのことだな。

続いて、『マイ・ジプシー・ダンス』を歌う若大将。しかし、聞いちゃいないのは同じこと。「雄ちゃん、こっち見てぇ」「殺してぇ」「こっち見てぇ」「ステキよっ」。

ということで、ここで過去の映画のワンシーンが。まずは<銀座の若大将・1962>です。青大将(田中邦衛)とのカラミをちょろっと流しつつ、澄ちゃん(星由里子)とのシーンが。「あなたの歌イカスわあ。何か聞かせて」「じゃ、いっちょやるか」。

はい、場面は日劇に戻り、『君の瞳の蒼空』を若大将は歌い出します。「加山さーん」。おや、客席から花束を持ったお姉さんが出てきました。隙あらば、引きずり降ろそうとするお姉さんから、花束をもらった若大将は、花を片手に歌います。さらに、曲間で花の匂いを嗅ぐ素振りを見せると、客席からわぁーーっとどよめきが。さらに、セリフが入りました。「キレイだな、君の瞳」。ぎゃああああ。客席は興奮状態。さらにセリフパートの盛り上がりぶりと言ったら。「ね、ボクのこと好き?」「好きよぉーーーーーっ」「好きだよな」「だーい好きぃーー」。なんだろう、この絶妙すぎる一体感は。「雄ちゃん頑張ってぇーー」「こっち向いて、雄ちゃぁあぁああん」。

今度は<ハワイの若大将・1963>のカンニングシーンがちょろっと。そして、すぐさまステージに。エレキ片手に歌うのは『蒼い星くず』です。いや、この曲はまじでカッコイイです。♪たった一人の日暮れに、見上げる空の星くずぅ♪。さすがに若大将の熱唱に観客席も聞き入ってるんでしょうか。ヘンな邪魔のないままに、歌い上げる若大将。♪風にふるえて光っているぜ。光ぁあってるぅうううう♪ しかし、不思議ですよ。マイクを降ろして、頭を下げているのに、なんで熱唱が続いているんだか。あまりに豪快な口パクなのが、かえって若大将らしいぞ。

またも<ハワイの若大将・1963>から、澄ちゃんと若大将がワイキキの浜辺を歩くシーン。「よーし、一発歌うか」「ステキ、聞かせて」。で、ステージではウクレレを片手に若大将が『白い浜』を歌い始めます。さらに『波乗り』を歌いだすと、若大将のサーフシーンが。なんかヨロヨロしていて、見ているこっちがドキドキしてきました。

そして大ヒットナンバーの『お嫁においで』で観客の心を鷲掴みにしたあと『砂と海』を熱唱する若大将。「ステキぃーーーっ」「笑ってぇ」。♪君は愛を運ぶ、白いなみーーっ♪ 「好きよぉー」「幸せだわぁー」「加山さん、好きぃーーーっ」「加山さん、ひとこと、好きよぉおおおお」「雄ちゃん、こっち来てぇえええ」。観客席のお姉さんからレイをもらったついでに、またも客席に引きずり込まれそうになる若大将。思わず、照れた様子で頭をかきます。「うぎゃああああああ」。お姉さんたち、興奮の坩堝。

<大学の若大将・1961>からは、ヨットの上で、青大将が澄ちゃんを襲うシーンが。モーターボートで駆けつけた若大将は、青大将にパーンチ。「つまり、澄ちゃんが好きだああ」。

はい、ステージでは『アロハ・レイ』が始まりました。この日のために呼ばれたのか、若大将の横で淡々とフラダンスを踊っているハワイのお姉さんたち。客席の興奮っぷりに、微妙に呆れてる雰囲気なのはヒミツです。

「タヒチに遊ぶ-」と題した若大将のプライベートフィルムが流れ始めましたよ。腰蓑をつけて踊っている現地のお姉さんの横で、やっぱり腰蓑つけて踊っている若大将。さらにクルーザーに乗ってゴキゲンな若大将。素潜りに挑む若大将。海から上がってくると、なぜか手にタコを持っているのが、さすがです。

バランスを取るためか、<銀座の若大将・1962>からスキーシーンを挿入した後は、『夜空の星』です。エレキギターをバリバリと引く若大将に、みなさん(多分)ウットリ。『夕陽は赤く』でも華麗なエレキテクニックを魅せつつ、今度は『ブーメラン・ベイビー』で英語の歌に挑戦です。いやーん、若大将ったら英語もペラペラなのね。

<日本一の若大将・1962>の、わりと手に汗握るマラソンシーンは、長めの引用です。間に『ブラック・サンド・ビーチ』の演奏を挟みつつ、堪能させてもらいました。いやあ、競技場で一位に躍り出るなんて、さすが若大将ですよね。

はい、日劇のステージではNDKのお姉さんたちが、カンカンダンスを繰り広げています。しかし、まったく反応のない観客席。と、そこに若大将がセリ出してくると、コンマ1秒でヒートアップ。きゃあああああ。『恋は赤いバラ』を若大将が歌っても、やっぱり興奮しっぱなし。「笑ってぇ、雄三さーん」「加山さん、上向いてぇ」「ステキぃー」「こっち来てぇ」「加山さん、好きよぉお」。そしてセリフパート。「ボクはキミが好きなんだ」。「きゃあああ」。「だけど、だけど、そいつが言えないんだなあ」。「ぎゃあああああああああ」。もはやテンション上がりすぎているお姉さんたちです。

そこに不幸な司会者さんが出てきました。「こんなに喜んでいただいて、大成功で良かったですな」。「はあ」と照れつつ、誠実に質問に答える若大将。と、大音声で「が・や・ま・ざぁーーーーん」と客席からの声が。思わず「はいっ」と答える若大将のステキっぷりに、お姉さんたちは、またもキャーーーーッ

ごほん、えーと、次の歌はなんでしょう? 「はい。ああ、じゃあボクの光進丸のテーマソングですけど。乗組員はみんな好きなんですけどね。俺は海の児って歌が」。『俺は海の児』の歌をバックに、若大将自慢の光進丸の映像がインサート。セリフパートで若大将は言います。「海はいいなあ」。「ステキーーっ」。「俺はやっぱり海が好きなんだ」「いやあああーーっ」。頼むから失神しないでね。

そして最後を飾るのは、やっぱりこの歌。名ナンバー『君といつまでも』のアンコールです。♪二人を夕闇がぁ 包むぅこの窓辺に♪ きゃあああ。まあ落ち着け。まだセリフパートがあるんだから。「しあわせだなあ」「しあわせーーーっ」「ボクはキミといるときが一番しあわせなんだ」「ぎゃああああああ」「ぼかあ、死ぬまでキミを離さないぞ。いいだろ」「いいわよぉおおおおお」。

なんていうか、地獄の釜の蓋も開いてしまうようなイキオイのまま、日劇の幕は降りていくのです。スルスル。


ところどころ「スタジオ撮影?」みたいな曲も入っていたり、豪快に口パクだったりしますが、これほど盛り上がっているライブ映像作品も珍しい気がします。とにかく、客席にいるお姉さんたちの掛け声がマーベラス。この映画を観た後は、安易に「客席との一体感」なんて言葉は使えないなあと思いましたよ。

みんな本当に加山雄三が好きなんだなあ。そして、加山雄三も、あくまで「若大将」としての人格を生ききっているのが素晴らしいと思いました。まさにスターがスターとして輝いていた時代ならではですね。

ちなみに、どうでもいい話をひとつ。この映画が作られた年に生まれたワタクシですが、なぜか加山雄三の光進丸を見たことがあります。経緯はいまいちハッキリ覚えていないんですが、小学生の3・4年くらいのころでしょうか。友人のお母さんが「光進丸を見るバスツアー」に参加するということで、友人に誘われてノコノコとくっついていきました。行った場所は葉山あたりだったかなあ。観光バスに揺られて、はるばると。正直、小学生男子に取って、それは面白い経験でもなく、ひとり興奮している友人のお母さんを横に、僕たちはバス疲れでグッタリしていた記憶があります。今では、その友人の名前も思い出せませんが、白く輝く船体に書かれていた「光進丸」の文字だけは、ハッキリ思い出せます。

それにしても、アレはなんだったんだ。







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【映画】愛情物語

2010-05-27 | 邦画 あ行

【「愛情物語」角川春樹 1984】を観ました



おはなし
みんな、わたしをオトナシイ女の子だと思ってるでしょうけど、ダンスをさせたらスゴイんだから。by知世

原田知世の主演第二作かつ、角川春樹の監督第二作です。「時をかける少女の知世ちゃんが好きだ」程度のライトなファン(自分のこと)だと、あまりな展開に、ちょっとついていけない部分が。

赤いトウシューズのアップ。そして、ミュージカルが始まります。外人ダンサーに混じって、ヒロイン(村田香織)が踊りまくるミュージカルの名前はカーテンコール。なんていうか、あまりに微妙なデキに涙が出てきそうです。そうですねえ。しいて言えば、マイケルのPVとフラッシュダンスを足して、5で割ったくらい? しかし、そんなきらびやかな(トホホな)舞台を熱視線で観ていた仲道美帆(原田知世)は決心するのです。あたしも、あの舞台で踊るわ。

ということで、早速、オーデション情報をメモメモする美帆に、一緒に観ていたお母さん(倍賞美津子)が聞きます。「バレエどうすんの」「やめる」「せっかく今まで」「いいの。クラシックはおしまい」。

ところで、美帆は捨て子だそうですよ。ある日、赤いトゥーシューズと一緒に捨ててあった美帆をお母さんが拾い、大事に育ててきたみたいです。そして、なぜか美帆の誕生日にかならず届けられるお花。美帆は、その送り主を「あしながおじさん」と呼んで、もしかしたら本当のお父さんかも? と夢見ちゃっているのです。そして、今日、美帆の16歳の誕生日にも、やはりあしながおじさんからお花が届きました。そのお花を見て、美帆の小さな胸はズキンとうずきます。バレエをやめてしまって、あしながおじさんが「怒らないかなあ」。えーと、気を使うなら、今までバレエを習わせてくれたお母さんの方に使えよと思わないでもありません。

ということで(何が?)、どこかで、いきなり踊りだす美帆。もうフラッシュダンスばりの激しいダンスをバリバリ始めちゃいましたよ。画面分割を使ったりして、ノリノリのダンスシーンが3分間ほど続きます。もっとも、観ているコッチはぜんぜん、乗れないんですけど。と、いきなりダンスをやめて、自転車をこぎだす美帆。線路だってバリバリ走りますよ(よい子はまねしないように)。キキーッ。自転車を放り出すように家に駆け込んだ美帆は、慌てて赤いトウシューズを取り出しました。うんしょ、うんしょ。「履けた。とうとう履けた。あしながおじさんに会いにいけるんだわ」。何がなにやら、さっぱり。

帰ってきたお母さんに、美帆は息せき切って報告します。「履けたのよ。お母さん。ピッタリになったの。約束したわよね。このシューズが、あたしが捨てられた時に一緒に入ってたこのシューズが履けるようになったら、あしながおじさんを、お父さんかもしれない人を探しに行ってもいいって」。困惑するお母さん。「だけどねえ。世の中には知らなくても、ううん、知らないほうがいいこともあんのよ」「でもでも、ずっと小さいころからの約束だったわよね」。

お花屋さんをだまして、お花の贈り主を探り出す美帆。送り主は金沢の篠崎拓次という人らしいですよ。さらに、送り元のお花屋さんは長崎だそうです。ふむふむ。じゃあ、とりあえず金沢へゴーだわ。もっとも、「カーテンコール」のオーディションも受けたいから、時間は一週間くらいしかないけれど。ぬっ。黙って両手を差し出して、お母さんからお金をもらう美帆。なんていうか、基本的生活習慣ができてないような。

ここは、九谷焼を作っている窯元。職人の篠崎拓次(渡瀬恒彦)は、ろくろの上で回っていた粘土をぐしゃりと潰して言います。「この土じゃダメだ」。相方の職人(ジョニー大倉)に、文句を言いまくる拓次。「手触りっていうか、肌触りっていうか、違うんだよな」。えーと、土がダメなら仕方ないですよね。まあ、職人として、その言い草はないだろ、とか思わないでもありませんが。と、そこに「あのう。ごめんください」と美帆がやってきました。拓次に向かって、「あたし美帆です。仲道美帆です」と言い出す美帆。しかし、美帆なんて名前に覚えのない拓次はキョトンとしています。「じゃ、赤いトウシューズ。赤いトウシューズなら分かりますよね」「赤いトウシューズ?」「待っててください。すぐ持ってきますから」。ズドド。外に放り出してあったカバンを取りにいく美帆。しかし、ぎゃああ。なんとカバンの中があらされ、お金が抜き取られてましたよ。ほとんど30秒くらいの早業。なんていうか、金沢ってデンジャラスシティですか。

ともあれ、そんな美帆に死んだ妹の面影を見た拓次は、かわいそうに思って、お金を貸してあげることに。「これ貸してあげるから。返すのいつでもいいから。これで東京に帰んなさい」。でも、美帆はひとあじ違う女の子です。「どうもありがとうございます。でも、お返しするのちょっと遅くなってもいいですか。長崎に行ってみたいんです。お誕生日のお花。長崎のお花屋さんから手配されてきたんです、だから、長崎に行けば、きっと」。すばらしい。旅先で借りたお金で長崎旅行。ヘンな行動力ありすぎです。

ま、それはともあれ、自分探しというか、土探しのために、四国の砥部を皮切りに九州の伊万里に向かうことにした拓次。しかし、そこに美帆が勝手にくっ付いてきちゃいましたよ。「伊万里って、長崎の近くなんでしょ。一緒に連れて行ってください。ご迷惑はおかけしませんから」。いや、だからすでに迷惑をかけてるじゃん。ま、そんな常識を軽々と捨て去った美帆は、「チョト待ッテクダサイ、アイアイアイ」とかいうヘンな音楽をBGMに、電車のデッキでバリバリ踊り始めちゃうのです。ホント、ちょっと待て。ちょっと落ち着け。

さすがに、拓次も、美帆の不思議少女っぷりがヤバイと思ったんでしょう。途中で美帆を撒くことに。さささっ。しかし、拓次が翌日、フェリーで四国に渡ると、うわっ。桟橋で美帆が、まるで捨てられた子犬のような雰囲気で待ってましたよ。「6時半のに乗ったの」「うるうる(涙目で)」「ずっと、ここにいたの。一人で」「……こくっ」「バカだなあ」。思わず、肩を抱いて連れて行く拓次。でも、ちょっと待ってください。一歩間違えると、変態おじさん扱いになっちゃいますから、気をつけて。

砥部の窯元を巡った二人は、いよいよ九州に渡ることに。しかし、寝ている拓次の目を盗んで美帆は、船倉に向かいましたよ。美帆が階段を下りると、階段がピカピカ光ったりしつつ、レッツ・ミュージカルタイム。今度はアメリカの田舎が舞台でしょうか。どことなくジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンが出た「グリース」っぽい感じです。

ぴゅー。上甲板で風に吹かれている美帆。そこに拓次がやってきました。「寒くないのか」「ううん、熱いくらい」。まあ、確かにあれだけ狂ったように踊りまくればねえ。「ちゃんと汗拭かないと、風邪ひいちゃうぞ」「大丈夫っ。大丈夫よ」。と、思ったら、いきなり風邪でダウンしてしまった美帆。「ごめんなさい。お仕事の邪魔しちゃって」。ずっきゅーん。知世ちゃんに「ごめんなさい」をされて、怒るわけありません。

カコーン、カコーン。採石場でハンマーを振るっている拓次。なんか、製作が東映だし、どうみても悪人の一個分隊くらいが、ゲヘヘと登場しそうな場所です。しかし、これはアイドル映画なので、出てきたのは、狂ったように踊りまくる知世ちゃん。……。あ、踊り終わったみたいです。そのまま、なんとなくじゃれ合う二人。なんていうか、イチャつくなよな、って思う今日この頃。

さらに、ピックアップトラックの荷台でリンゴを分け合って食べたり、つり橋の上から渓流を眺めたりする二人。ちなみにBGMは、♪When a man loves a woman♪、そう、「男が女を愛する時」だったりします。ごくり。ええと、まさか原田知世と渡瀬恒彦がくっ付くという禁断の展開なんでしょうか。

いえいえ、そうはなりません。というか、それじゃ犯罪ですもんね。その代わりに、紳士的な拓次は、伊万里行きを後回しにして、美帆を長崎に連れてきてあげたのです。しかし、肝心のお花屋さんに行くと、店主のタコ社長(太宰久雄)が衝撃の証言をしました。なんと、匿名の人物に花を贈るように頼まれたものの、送り主の名前がないのも何なので、本に載っていた拓次の住所氏名を適当に使ってしまったというのです。なんじゃソレ。「そんなことでひとの名前、勝手に使ったんですか」とあきれ果てる拓次ですが、まあ、拓次があしながおじさんという疑惑は、これで無くなりましたね。もっとも、それじゃ単に、16歳少女をあちこち連れまわす中年男といえなくもないんですが。

さて、ハートブレイクな美帆がトボトボと歩いていると、視界の端に何か気になるものが。こ、これは。なんと、近所の写真館のショーケースに飾られているのは、自分の小さな頃の写真じゃありませんか。キレイな女性(加賀まり子)と一緒に写っているのは、間違いなく3歳のころの自分です。「どうした」「あたし、あたしだわ」。早速、写真館に入り、店主にアレコレ聞いてみる美帆。すると、一緒に写っている女性は、近所の大きなお屋敷に住む大森様だそうですよ。そうなれば、善は急げ。レッツゴー。

どどーん。巨大な洋館がそびえています。いかにもホラーな感じです。「入ってみよう」。拓次がそう言うと、美帆は「ちょ、ちょっと待って。あたしひとりで行かせて」と言い出しました。「いや、だけど」「お願い。ひとりで会ってみたいの。あたしのあしながおじさんに。お父さんかもしれない人に」。なんていうか、ここに至って、拓次はお留守番ですか。むごいよなあ。

ともあれ、ホラーな女中に案内された美帆が、ソファーにちんまり座り、テーブルに赤いトウシューズを出して待っていると、うわっ出た。西洋人形のような服(それもピンク)を着たヘンな女の人(加賀まり子)が、「あたしのよ」と美帆のトウシューズを持っていっちゃいましたよ。「うふふ、きゃはは」。笑い声からして、イッテますね。唖然としていた美帆ですが、とりあえず、そのヘンなおばさんを追うことに。すると、アンティークな西洋人形やらオルゴールが充満した部屋で、ヘンなおばさんが、白鳥の湖のオデットのカッコをして、赤いトウシューズを履いてる真っ最中じゃないですか。げげっ。ビビっている美帆ですが、その細い肩に、いきなり手が。ひぃーーっ。それは、この屋敷の主人、大森泰三(室田日出男)でした。「なんのようですか」「あの、あたし、仲道美帆です」「それで」「美帆です。仲道美帆です」。どうも、美帆は自分の名前を言えば、全て解決!と思ってるみたいですね。ま、それはともあれ、写真館に飾ってあった写真をネタに追求すると、泰三はようやく真実を語りだしました。「妻は美帆ちゃんを貰ったころから、気がおかしくなってきたんだ」「貰ったって、何のこと」「美帆ちゃんは二度貰われたんだよ。一度目は私たちに、しかし……」。つまり、本当の両親は交通事故死。そして、加賀まり子の気が狂ったので、親友の倍賞美津子が引き取ったんだそうです。「分かりました。お花、今までありがとうございました。さようなら」。さささっ。まあ、なんてドライな子なのかしら。

待ちぼうけの拓次に抱きついて、ひとしきり泣いた美帆は、お家に帰ることに。なにしろ、オーディションが待ってますからね。野望に向かって、踊りまくらなくては。さあ、レッツダンス。

ということで、外人ばっかりのオーディション。というか、いちおう、ここはアメリカという設定なのかな。そこに拓次がやってきましたよ。「来てくれたの」と顔を輝かせる美帆に、拓次は言います。「うん。ひとり?」「ううん、母と一緒よ」。恥ずかしそうに挨拶をする拓次とお母さんはほっといて、さあ、オーディション開始よっ!

バリバリ踊る美帆。どうみても戦闘力の高そうな外人たちを蹴散らし、次のステップへ。そうして、ついにはオーディションに通ってしまいました。「お母さん、やったわよっ!」。しかし、お母さんは待っている間に、拓次とラブラブになって、二人で仲良く去っていってしまうのでした。はあ?

オープニングで展開されたブロードウェイ(多分)ミュージカル「カーテンコール」の幕が開きました。しかし舞台の中央で踊っているのは美帆。「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールスだって。はん、あたいのダンスの方が上だよ。マイケル? ダレだよ、それ。そんなイキオイで踊りまくっている美帆は、万雷の拍手に包まれるのです。


あ痛っ。痛たたっ。なんていうか、知世ちゃんの熱狂的なファン以外には、痛すぎる作品でした。まあ、知世ちゃんのダンスがうまいのは認めますけど、それも日本の、そしてアイドルにしては、という条件つき。この映画の前年に公開された「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールスを観てしまったあとで、これはないよなあ。ちなみに、僕は「フラッシュダンス」を公開時に観て感激。さっそくサントラを買い込んだ覚えがありますが、この映画については、当時、その存在すら知りませんでしたからね。

監督としての角川春樹は、実はかなり好きです。でも、これはちょっと。どちらかというと、「REX 恐竜物語」みたいに、ヤラカシタ系の作品じゃないでしょうか。まあ、仮に倍賞美津子が主演で踊りまくったりしたら、とてつもなく評価できたんですけどね。もしくは、倍賞美津子と加賀まり子の役が入れ替わっていて、倍賞美津子がエプロンドレスを着たり、バレリーナのカッコをするのも可。というか、そんな映画だったら、ちょっと悶え死にます。







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【映画】鬼検事

2010-05-20 | 邦画 あ行
【「鬼検事」関川秀雄 1963】を観ました



おはなし
殺された父(山村聡)の代わりに、息子(高倉健)が巨悪に立ち向かっちゃったりします。

健さんが真の意味での「健さん」になったのが「網走番外地」からだとすれば、その前のネオ健さん時代の作品です。なので、いまいちトホホ風味が漂うところが、また良しでした。

「いいか、よく聞け。近いうちに3年前のお礼参りにお伺いする。あんたのご主人に臭いメシを食わされたお礼だ。冗談かどうか、いずれお分かりになるだろうと思うがね。じゃあ、鬼検事によろしく」ガチャリ。謎の男(室田日出男)が受話器を置いた横では、別の男がせっせと時限爆弾を作っているようですよ。

鬼検事こと野上検事の家に、配送業者がお届け物を持ってきたようです。「せっかくですけど、うちでは一切贈り物は受け取らないことにしておりますのよ」と、奥さんの貞子(荒木道子)は断りますが、奥さんが電話に出ている隙に、そっとお届け物を置いて帰る配送業者さんです。チクタクチクタク。ドッカーン。ああ、やっぱり爆弾でした。

さて、そのとき、鬼検事の野上(山村聡)は、疑獄事件に関わっているとみられる石丸弁護士(三島雅夫)の事情聴取中。北斗銀行を通じて流れた極東造船の裏金ルート。政財界を揺るがす、この疑獄事件を解明するためには、弁護士の持っている秘密メモがぜひとも必要なのです。と、そこに電話が入りました。「はい。もしもし。そうです。……なにっ、奥さんがですか」。ビックリした事務官から、自宅爆破のメモを受け取る山村聡。しかし、そこは鬼検事なので、山村聡は、顔色ひとつ変えずに事情聴取を続けるのでした。

奥さんの荒木道子は、軽い怪我を負ったものの、無事なもよう。家族ぐるみで交際している、隣家の部長検事宅に避難しているみたいです。部長検事の息子で新聞記者の明男(今井健二)が心配半分、取材半分で、荒木道子に事情を聞いたところ、奥さんは脅迫電話があったことを教えてくれましたよ。やっぱり、鬼検事だけに恨まれてるみたいですね。もっとも、鬼検事の山村聡じたいは、さっぱり思い当たるふしがないそうですが。

ところで、そんな鬼検事にも英一という息子がいます。しかし、親に反抗して家を飛び出し、ヤクザになってしまったそうです。そして、その英一は、3年間の刑務所生活を終え仮釈放になった、とお友達の部長検事が鬼検事に教えてくれましたよ。早速、奥さんにその情報を伝える鬼検事。「貞子。英一が出てきたそうだよ」「それで。英一はどこに」。苦虫を噛み潰した表情の鬼検事に、奥さんは訴えます。「あなた。3年間の刑務所生活で少しはあの子も……」「骨の髄まで腐った奴だ。また前の組に戻ったらしい。いいか、私たちに子供はいないんだっ」。

はい。ということで、ビリヤードをしている英一(高倉健)が映りました。渋い健さんを見て、弟分たちは賛嘆の声をあげます。「すげえ」「うん、兄貴3年前とちっとも変わらねえな」。えーと、どこが。と、組長がやってきて、健さんに言いました。「いいかい。近いうちに大幹部になるチャンスをやる。いいな」。なんていうか、健さん、みんなに愛されてるよなあ。

さらに、愛人の梨枝子(岩崎加根子)が勤めているスナックにやってきた健さん。「どしたの。何かあったの」と岩崎加根子が声をかけても、健さんはむすーっ。なんていうか、健さん、みんなに愛されているわりには、愛想が無いよなあ。

ある日のこと。そんな愛想の無いヒモの健さんが、岩崎加根子の部屋から出てくると、幼馴染の今井健二が待ってましたよ。「これ見たか」と差し出した新聞には、「野上検事負傷。重傷をおして地検へ」という見出しが。どうやら、何者かに車ではねられたようです。しかし、健さんはふてくされた様子で言います。「オヤジがどうなろうと関係ねえじゃないか」。なんで、こんなに健さんは父親を憎んでいるんでしょうね。その答えは過去にありました。

ぽわわーん。子供時代の健さんが犬を拾ってくると、元いた場所に戻してきなさいと怒るお父さんの山村聡。なんて鬼検事なんでしょう。さらにありますよ。

「俺が大学3年の時だったかな」と健さんは今井健二に語ります。ぽわわーん。健さんが大学生時代。バイト先の同僚が、居眠り運転で、ひき逃げ殺人を犯したそうです。「近所でも評判の孝行息子でな」。鬼検事にカンベンしてやってくれと頼み込む健さん。「ただ判決は過失致死で有罪だった。その時の担当検事がオヤジだよ」。そんな鬼検事っぷりに怒った健さんは、そのまま家出をしてヤクザになったんだそうです。ひととおり語り終わって、カーッ・ペッとツバを吐く健さん。……。えーと、これは健さんがヘンな気がしますけど。まさか、不起訴にするわけいかないと思うし、判決を出したのは裁判官では。

健さんがまたまた、カッコつけてビリヤードをしていると、組長が声をかけてきましたよ。「いいか。2千万って金が入る、どえらい仕事だ。こいつで男をあげな」。そう、それは暗殺ミッション。そしてターゲットの写真を見ると。ガガーン。なんと、それは決めポーズを取った、イカシタ美中年の山村聡じゃありませんか。

スナックに行き、呆然と山村聡ブロマイドを見ている健さん。と、岩崎加根子が声をかけてきました。「ね。何があったの」「組長に殺し頼まれたんだよ」「ええーっ」「こともあろうに、それが俺のオヤジよ」。ついでに言うと、謎の依頼人は、健さんの組以外にも暗殺を頼んでるらしいのです。「それで、どうするつもり?」「いくら、俺がオヤジが憎いからって、俺は撃てねえよ」。まあ、そりゃそうですよね。「お父さんに知らせたら?」「いやあ、危ないと思っても、やるだけのことはやるだろ」。うわーん。なんか健さんって、冷たいよお。

いえいえ、健さんは冷たい人間ではありませんでした。鬼検事が前産業大臣を逮捕しに行くのを知った健さんは、同じ電車に乗り込んで、さりげなく護衛しているのです。もちろん顔がバレルと恥ずかしいので、サングラスで変装していますけどね。さらに、鬼検事の横の席には愛人の岩崎加根子を座らせ万全の態勢。さあ、来れるものなら、どこからでも来やがれ。グサッ。あれ。あれれ。お父さんの鬼検事、刺されちゃいました。「お父さん。お父さーん」「え、英一か。残念だ」ガクッ。

鬼検事のお通夜の席で、健さんはつぶやきます。「お父さんは俺に話したいことが、いっぱいあったに違いないんだ。俺はそれがよく分かるんだ」。なんていうか、まさに「孝行したいときには親はなし」というか、今さら過ぎるぜ、健さん。

もちろん、健さんは鬼検事の敵討ちをすることに。まずは、組長から暗殺の依頼人を聞きだすのが先決でしょう。よっしゃあ。ピストルを片手に、健さんは組事務所に乗り込みます。しかし、一歩遅かったようです。轟く銃声。転がっている組長の死体。ぬぬぬ。敵は口封じに出たみたいです。しかし、待ってください。組長の死体が握っているのは、振出人欄が破かれた北斗銀行の小切手ですよ。そうだ。この振出人が依頼者に違いない。これさえ分かれば……。

銀行に聞きに行ってみると、規則で教えられませんと断られちゃいました。ぬぬ。規則ならしょうがないですね。ということで、今度は新聞記者の今井健二のところに行って、相談してみる健さんです。すると、今井健二は、そういえば汚職も北斗銀行が絡んでたぞ、と言い出しましたよ。「とすると、お礼参りはどうなる」と尋ねる健さんに今井健二はデカイ声で言います。「お礼参りは偽装だぞっ」。

鬼検事の殺害理由がお礼参りでなく、疑獄事件絡みということなら、まずアヤシイのが弁護士の三島雅夫。さっそく、健さんは、三島雅夫が出入りするナイトクラブに潜入しました。すると、三島雅夫は風間商事の社長、風間(小沢栄太郎)と何やら密談しているみたいです。これでキマリ。もう小沢栄太郎って段階で、黒幕に決まってます。しかし、これ以上、どうやって捜査を続ければいいのか。物証がなければ、検察だって動きようがないだろうし。

(ヒモなので)岩崎加根子の家で、悩んでいる健さん。うーん。うーん。心配する岩崎加根子に、三島雅夫が証拠を持っているはずなんだが、と健さんはグチります。「いつも、あのナイトクラブでとぐろ巻いてることだけは、分かってるんだ。ちきしょう。あの野郎」。そんな健さんのロンリーな顔を見て、岩崎加根子は何かを決心したみたいですよ。

健さんがウロウロしている間に、「自主的に」岩崎加根子は、そのナイトクラブに転職をして、証拠を掴んできましたよ。それは、三島雅夫が秘密メモをネタに、小沢栄太郎に金を要求している録音テープ。「証拠になる?」「うん、証拠にはなるが、決め手にはならんよ」と、健さんはひとの苦労も知らずに、ちょっと偉そうです。仕方ない。愛する健さんのために、岩崎加根子は三島雅夫に接近して、「自発的に」体を与えるのです。これで、あの人が喜んでくれるなら……。

「ごめんなさい。メモはマダムが持っているらしいとだけ分かりました。これが私にできる精一杯の、あなたへの贈り物です。これ以上、私にはなんにもできなくなりました。あなたとの楽しい思い出だけが残っております。さようなら。梨枝子。英一様」。愛され上手な健さんは、岩崎加根子が自らの貞操と引き換えに得た情報をもとに、三島雅夫の愛人であるマダム(沢たまき)のところへ殴りこみです。「俺は、この間殺された検事のどら息子だがね、俺の調べ方はオヤジと違って、ちょっと手荒いぜ」。アイロンをコンセントにつないで、脅迫する健さん。じゅじゅーっ。「待って。言うわ。メモは石丸が東京駅の貸しロッカーに」「鍵は」「石丸が持ってるわ」。よーし、まってろよ、三島雅夫。ぶろろー。

健さんが車を走らせていると、警察の検問が。求められるままに、車のトランクを開けた健さんは、中を見て、ビックリ仰天です。なんで、こんなとこに三島雅夫の死体が。し、しまった。俺は小沢栄太郎にハメられたのか。うーむ。って、悩んでいる場合じゃないので、警官を殴り倒してスタコラ逃げ出す健さん。とりあえず、警官の追跡を振り切り、電話ボックスに隠れることに成功しました。あとは、助けを呼ぶだけです。ジーコロ、ジーコロ。あ、俺だけど。今井健二に電話をした健さんはひとこと言います。「なんとかしてくれよ」。

今井健二になんとかしてもらった健さんは、そのイキオイでマダムの家に引き返すことに。ちくしょー。俺をだましやがって。しかし、なんてラッキーなんでしょう。マダムな沢たまきのところに行くと、なぜか小沢栄太郎がノンキにシャワーを浴びていたのです。えーと、つまりマダムは三島雅夫の愛人の振りをして、小沢栄太郎と組んでいたと。で、健さんが立ち去ったあとにやってきた小沢栄太郎はノンキにシャワーを浴びていたと。……。まあいいけどね。ともあれ、小沢栄太郎を捕獲した健さんは、凄んで言います。「風間さん。メモはどこにあるんだよ」。「知らんよ、そんなものは」とトボける小沢栄太郎ですが、健さんが洋酒をテーブルにぶっ掛けて火をつけてみせ、さらにその洋酒をジャブジャブと自分にかけ始めたので、たまりません。「ま、待ってくれ。メモはわしが持ってる」。風間商事の金庫に入れてあるという小沢栄太郎に、健さんは疑わしそうな視線を向けます。「ウソじゃねえんだろうな」「わしも風間だ」。わしも風間だ、って言われてもねえ。

さあ、小沢栄太郎を連行して、健さんは風間商事にやってきました。さすが、「わしも風間だ」と言うだけあって、金庫からメモも出てきました。これさえあれば、鬼検事の敵が取れる。やったよ、パパン。と、健さんが喜んでいたのもつかの間。小沢栄太郎の子分たちが、ピストルを持って社長室に入ってきました。そのうえ、お母さんが人質に。「英一、母さんなんかにかまわないで早く行きなさいっ」。そんなこと言われても。どーしよう。「英一っ」「母さんっ」。はい、健さんは泣く泣く、メモを返し、そのメモは目の前で燃やされてしまうのでした。メラメラ。得意満面な小沢栄太郎は言います。「さあ、これで君との縁もおしまいだ。おい、お二人をお送りしろ」。

メモが燃やされてしまった以上、鬼検事が命をかけて追っていた疑獄事件は、もはや司法の手によって裁かれることはなくなりました。そして、鬼検事の死は、暴力団のお礼参りということで、決着が付いてしまうのでしょう。それで、いいのでしょうか。それでは正義は、どうなってしまうのだっ。

ということで、健さんは小沢栄太郎が前産業大臣と一緒に車に乗り込もうとしたところを襲撃です。運転手をピストルで脅して、車のハンドルを握る健さん。後部座席に小沢栄太郎と前大臣を乗せ、アクセル全開です。ブロロロー。「おーい、追えーっ」と子分たちが別の車で追いすがり、銃を乱射してきますが、平気だもんね。健さんに弾は当たらんことになっている。バーン。うっ。あれ、当たっちゃった。しかし、健さんの神業ドライビングで、敵の車は次々に谷底に転落。ふっ、ざまあみろ。それにしても痛いなあ。そのうえ、出血多量で、目がかすんできたよ。

これにビビったのは小沢栄太郎。なにしろ、急なワインディングロードを、意識朦朧の健さんがアクセル全開で飛ばしてるんですからね。ひぃーっ。「君の言うとおりにする。停めてくれぇ」。ヨロヨロな健さんは、ニヤリと笑って言います。「さあ、裁判はこの辺で幕にするか。肝心なのは判決だよな。どう考えたって、懲役5年じゃ軽すぎるよな。まともな判決じゃ、あんたらに殺されたホトケが恨みごと言うからな。てめえらこそ、本当のダニだぜっ」。キキーッ。タイヤを鳴らしながら、急カーブをクリアした健さんは、宣言します。「どう見たって、この判決は死刑だぜっ!」。そして、心につぶやくのです。「お父さん。これが俺の判決だよ」。どっかーん。谷底に落ちた車は爆発炎上するのでした。

えーと、そう終わりますか。ポカーン。それにしても、どうやら、健さんは最後の最後まで、検事と判事の区別がついてなかったみたいですね。求刑するのが検事で、判決を出すのは判事だからねっ。

ということで、この映画、タイトルが「鬼検事」になってますが、むしろ「鬼検事と地獄判事」にしといた方がよかったんじゃないかと。もしくは「鬼検事と、愛され上手なモテカワBOY」とか。

ちなみに、リアル健さんは明治大学をご卒業らしいので、いくらなんでも、検事と判事の区別はついていると思います。







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【映画】女真珠王の復讐

2010-04-02 | 邦画 あ行
【「女真珠王の復讐」志村敏夫 1956】を観ました



おはなし
女真珠王(前田通子)としての財力を生かして、あいつに復讐するわよっ!

吹き替えでなしに、はじめて女優自身がオールヌードになった作品として有名な、この作品。しかし、それだけではないはずです。この子はもっとデキル子のはず。そんな気持ちで、改めて、この映画を解説してみましょう。

ジーコロ、ジーコロ。男(丹波哲郎)が公衆電話をかけています。「あ、三信貿易ですね。ああ専務。野口です」。「うん、わしだ。浅沼だ。用意はいいね」と答えている浅沼専務(藤田進)に、野口は自信たっぷりに言います。「ご覧にいれたいですねえ。まったく瓜二つ。我ながらうまい変装ですな。これは特務機関時分の年季ですよ」。カメラがゆっくりパンしていくと、ことさらに野口が履いている白黒のコンビの靴を映し出されます。

→解説その1 丹波哲郎はなんと宇津井健に変装していることになっています。でもさっぱり似ていないので、ことさらに靴がおんなじ、ということでお茶を濁すことに。

ここは三信貿易の女子化粧室。わいわいと女子社員たちがお喋りしていますよ。「外国に行って、帰ってくれば、好いて好かれたあの人とウエディングマーチで新婚家庭。あー悔しい。あたし頭にきちゃうわ」とある女子社員がからかうと、本作のヒロイン、香川夏岐(前田通子)はちょっと恥ずかしそうです。どうやら、専務秘書の彼女は、専務のお供でひと月ほど海外出張に行ったあとは、大好きな彼氏との結婚が決まっているようす。まあ、同僚たちからするとウラヤマシイ限りですよね。

→解説その2 ここのある女子社員っていうのが万里昌子。というより、のちの万里昌代ですね。ほんのチョイ役ですが、とても目だってます。本音を言うと、前田通子よりはるかに美人だし、こっちが主役でも良かったくらい。

コンコン。専務室にエリート社員の木崎(宇津井健)が入ってきました。もちろん、履いている白黒のコンビの靴を、ことさらに映すのを忘れません。「何か、ご用で」「えー、これからすぐに箱根に行ってもらいたいんだ。えー、社長が箱根ホテルに静養に行ってるんだが、その帳簿を持って判をもらってきてもらいたんだ。えー、実はわしが行かなきゃいけないんだが」。今日中に戻って来いという藤田進からの命令を受けて専務室を出る宇津井健。しかし、そこに専務秘書の前田通子が付いて出てきましたよ。なんだかお互いに見詰め合って恥らっています。そんな二人を藤田進は憎々しげに見ています。

→解説その3 えー、なんで藤田進がえーえー言っているのかというと、基本的に演技があんまりうまくないんですよ。特に自然な会話っていうのが苦手で、どうしても演説口調になっちゃうんですよね。これが隊長とか大臣みたいな役だとオッケーなんですが。

箱根に行った宇津井健が、社長のところを辞去するのと入れ違いに、白黒コンビの靴を履いた丹波哲郎が社長の部屋に入り込んできました。「誰だ、貴様はっ」と叫ぶ社長に銃弾を叩き込む丹波哲郎。悠々と去っていく丹波哲郎の後姿を見て、ボーイたちは、すっかり宇津井健だと思い込んでいるようすです。

東京に戻った宇津井健は、会社に顔を出すものの、専務は不在。「おかしいなあ。僕が帰るまでいると言ったんだけど」と小使いさんにグチってみますが、いないもんは仕方ありません。「おっ、彼女を待たせたら損だ」とイソイソとデートに出かけるのです。しかし、その直後、丹波哲郎が会社に忍び込んで金庫に向かっています。いったいどうなるのでしょう。

しばしの別れを惜しみ、クラブ「スター」でダンスを楽しむ宇津井健と前田通子。なんか後ろから丹波哲郎が彼女の美代と踊りながら接近してきて、宇津井健のポケットにそっと鍵を落とし込みました。先ほどの金庫の鍵でしょうか。しかし、おおらかな宇津井健はさっぱり気づいていないようです。

→解説その4 ここで宇津井健が気づけば、その後の悲劇は避けられたかも知れないんですけどねえ。まあ、宇津井健にそこまで要求するのは酷というものかもしれません。ちなみに、丹波哲郎と踊っていた彼女の美代は、最後の最後にまた登場します。

蛍の光が流れる中、見送りにきた宇津井健や、その妹・雪子(三ツ矢歌子)たちが前田通子に手を振っています。「いってらっしゃーい」「いってまいりまーす」。ぼーーー。汽笛をあげて去っていく客船。ああ、行っちゃったね。寂しい宇津井健ですが、それどこじゃない事態が。「木崎芳男さんですね」「はあ」「警察のもんですが、逮捕状です」。ががーん。なんと、会社の金庫から1500万が奪われ、小使いさんが殺されたそうです。そして、現場から立ち去った男の後姿は宇津井健そっくりという証言が。間の悪いことに宇津井健のポケットからは金庫の鍵まで出てきましたし、さらには箱根で殺された社長の殺人容疑までかけられ、あっというまに宇津井健は犯人扱いです。

一方、船上の前田通子は、専務の藤田進から猛アタックをかけられちゃってます。「これから一ヶ月以上は、仕事のことはもちろん、いろんな意味で一心同体。えー、つまり夫婦みたいなもんだからね。うまくやっていこうよ」。そんなこと言われても、前田通子としては困っちゃいます。というか、嫌がっています。まあ、当たり前ですけど。と、そこに船長と事務長がやってきました。どうやら、警察から無電が入り、宇津井健との共犯関係が疑われる前田通子を拘束せよ、という命令がくだされたようです。さっそく、船長に交渉する藤田進。「いかがでしょう。香川は私の秘書として、私も大きな道徳的責任を感じております。内地へ送還するまで、身柄を私に預けていただけませんか」。まあ、そう言われてしまえば、船長としても断る理由もありません。じゃあ、お任せしちゃおうかな。ねえ事務長。

船長たちが去ると、藤田進は下卑た視線を前田通子に向けてきました。「つまり君の身柄は一任されたんだが、君の共犯者としての汚名も、わしの証言ひとつでどうにでもなるんだ」ゲヘヘ。「香川君、僕は君が好きなんだよ。殺人犯と結婚するより、ねっ、香川君」。迫ってくる藤田進に「なになさるんです」と抵抗する前田通子ですが、あっというまに服はビリビリと裂かれ、下着姿に。あれー。逃げ出した前田通子はそのまま手すりから転げ落ち、海へどぶんです。

→解説その5 さあ、一回目のサービスカットが、この下着シーンということで。それにしても、エロい藤田進っていうのが、どうもイメージに合わないんですよね。まあ「熱泥池」では、豪快なエロオヤジを演じていましたけど。ガハハ。

ダムダム、ダムダム。どこからか南洋風の太鼓のリズムが聞こえてくるここは、南洋に浮かぶ、絶海の無人島。おや、ボロボロの服を着た5人の男たちが漂着した前田通子に気づいたようです。「親方、女だ。日本の女だ」。それも、ただの女じゃありません。前田通子なうえに、下着姿ですからね。気を失っている前田通子を前に、男たちの目は欲望にぎらつくのです。そもそも、この5人の男たちは、長崎は五島の漁師で、難破してから一年、どうにか仲良く暮らしていたのです。しかし、この前田通子という触媒を得た結果、石塚(沢井三郎)と雄三(天知茂)を除いて、一気に野獣化しちゃいました。

しきりに前田通子の世話を焼きたがり、やがては独占しようとする男たち。当然、その先にあるのは殺し合いです。3人の男たちは、互いに殺し合い、そして残ったひとりは、天知茂を殺そうとした挙句、崖から突き落とされて死にました。まったく罪な女だわ、私って。

ともあれ、残った前田通子、天知茂、そして沢井三郎は仲良く無人島ライフを満喫することに。海女よろしく、海に戻って食料の貝を採ってくる前田通子。しかし、捨てる神あれば拾う神ありってのは、このことでしょうか。採ってきた貝からは、でっかい真珠がザックザックと出てきたのです。

→解説その6 ここで有名な全裸シーンが登場しました。あとは、乳首がちらっと映ってしまうシーンも。それに、前半の前田通子がさっぱりメイクだったのに、この無人島パートでは、こころなしかメイクが派手になってたりして。まさに、この映画は、この無人島パートのためにあったというのが、丸わかりです。しかし、ここで注目したいのは、天知茂。なにしろ「いい人」なんですよ。普通だと率先して前田通子を襲いそうなもんですが、この映画では最後まで「いい人」。あと、無人島パートの天知茂のカッコにも注目。サイド刈り上げの髪型に、ボーダーシャツと半ズボン。それは、ほとんど「ヒネた小学生」にしか見えないんですが。

「そして二年?」。まんまと社長に成りあがった藤田進は、子飼いの丹波哲郎を専務に据えて、密輸にバリバリと勤しんでいるようです。と、そんなある日。「社長、これ」と丹波哲郎は、偉そうに新聞を出してきましたよ。そこには、宇津井健の裁判が大詰めという記事が出ていました。どうやら、最高裁まで争ったものの、死刑間違いなしな情勢のようです。ほくそ笑む悪人な二人。でも待ってくださいよ。その記事の横にはこんな見出しも。「女真珠王 アメリカより来朝」。これって、もしかして。

はい、羽田に到着したJAL機から、女真珠王ことヘレン南が、お付きを従えて降りてきました。しかし、その顔というと、おお、前田通子、天知茂、そして沢井三郎じゃありませんか。日本に帰ってきた前田通子は各慈善団体に500万円ずつ寄贈してみたり、さらには株をガンガン売りまくって相場を暴落させたりと、よく分かんないんですが派手にやっているようです。そして、そのあおりを受けたのは藤田進率いる三信貿易。最初は安い株を買って儲けようと思ったものの、天知茂の指示で、際限なく株の売りが続くものですから、値上がりを待って売り抜けるどころか、手持ちの資金がショートしちゃったのです。

さて、拘置所にいる宇津井健のところに妹の三ツ矢歌子が面会にきましたよ。ヨヨヨと泣くばかりの三ツ矢歌子に宇津井健は言います。「雪子。兄さんは正しいんだ。最終判決がどう決まろうと、兄さんは潔白なんだよ。お前だけは信じてくれるね」。「お兄さん」とさらにヨヨヨっぷりを加速させる三ツ矢歌子。宇津井健はキリっとした顔で強く言います。「僕が町にいたら、必ず証拠を捕まえて、真犯人をあげてみせるんだが。この塀の中の、鉄格子の中ではどうすることもできない。僕をこんな目にあわした奴らが、悪魔が、白昼大手を振って歩いてるかと思うと、夜も眠れない。鉄格子を折り曲げて……くくっ」。

→解説その7 宇津井健もスーパージャイアンツの時代だったら、鉄格子なんて一発でグンニャリだったんですけどね。

拘置所を出て、トボトボと歩く三ツ矢歌子の横に、スーッと車が止まりました。車中の沢井三郎が声をかけます。「雪子さん。木崎雪子さんですね」、不審げな三ツ矢歌子に沢井三郎はヒソヒソと耳打ちをします。「まあ、夏希さんがっ」。そのまま、ホテルに連れて行かれ、前田通子と対面する三ツ矢歌子。ああ、お姉さまだわ、ヨヨヨ。

「では、犯人は浅沼専務」とビックリする三ツ矢歌子に前田通子は言います。「それは分かりません。でも、あの人の事業には、色々不正なことがあります。浮き貸し、脱税、私文書偽造、会社乗っ取り。あたくしが日本に帰ってから調べただけでも、ずいぶん泣いている人がいます。彼はまた密輸もやっているのです」「んまあ、密輸」「私は不正を憎みます。悪の栄える世の中を許せません。あたくしは浅沼と戦います。私が南の島で得た真珠で、その全財産で、あくまで戦います。あたくしの名は今、女真珠王ヘレン南です。あたくしは、お兄さんの共犯者になっています。警察に分かれば逮捕されます。私はヘレン南として、陰にしか生きられません」。えーと、つまり自分は陰にいるので、雪子さんひとつ派手によろしく、ってことでしょうか。

「何、木崎の妹が女真珠王の元へ」。あっという間に、前田通子の正体は藤田進たちの知るところになりました。早速、前田通子を脅迫に出かける丹波哲郎。しかし、前田通子だって、いつまでも昔のおとなしい娘さんのままはないのです。というか女真珠王ですよ。軽く脅せば、金を吐き出すと思っていた丹波哲郎は、スゴスゴと藤田進に報告に行きました。ふーむ、そうか。藤田進は重々しくうなづくと言います。「野口くん、また頼むかな」。「これですか」とピストルを懐から出してニヤリと笑う丹波哲郎。「早いほうがいいな。今夜か明日か」と藤田進が言うと、おや、ゴトンと廊下から物音が。不審に思った二人は廊下に出ると、そこにはなんとチョークで何か書いてあるじゃありませんか。
「話はきいた きっとふくしうする 死刑囚」。「あいつだ。木崎だ、木崎が来たんだ」。

そう宇津井健は脱走していたのです。鉄格子を曲げたのかどうしたのか。それは一切説明がないので、よく分かりませんが、とにかく脱走したったら、したのです。シュタタ。警官隊の追跡をかわし、トラックの荷台に潜り込んで検問を突破する宇津井健。さっすがあ。よし、検問も突破した。トラックの荷台を降りた宇津井健の前には、別の警察官。し、しまったあ。シュタタ。夜の裏路地を逃げまくる宇津井健をカメラは執拗に追います。

→解説その8 って、こんなとこで、取ってつけたようなサスペンス演出をする必要がどこにあるんだか。あと「ふくしうする」ってのもどうかと思います。復讐って漢字で書けなかったんでしょうか。しかも、微妙に丸文字だし。

ともあれ、宇津井健の脱走は、前田通子たちの精緻な計画をおじゃんにしたようです。「もう待っていられません。木崎さんが捕まれば、ますます不利な立場に追いやられます。あたくしは心を決めました。明日の夜、浅沼と野口をクラブ「スター」に招待します」。まったく、宇津井健もおとなしくしていればいいものを。しかし、いったん動き出してしまえば、計画はとんとん拍子。まずは、丹波哲郎を裏切らせるぞ作戦。丹波哲郎をクラブ「スター」に呼び出した前田通子は、ボストンバッグいっぱいのお金と、白い紙とペンを用紙して言います。「これに犯人を書いて署名捺印していただければ、このカバンを差し上げます」。ゴクッ、すごい金だ。「書きましょう。書くことは書きますがね」と丹波哲郎はピストルを取り出しました。「しかし、私はこのカバンだけいただけば結構なんですがね」。フハハ。余裕をかます丹波哲郎ですが、それも天知茂の雇った「怖いお兄さん」の一個小隊がゾロゾロと出てくるまででした。

次に、取引にかこつけてクラブ「スター」に呼び出された藤田進。しかし、取引っていうのは真っ赤なウソ。契約書かと思った紙には、こんなことが書いてあります。「三信貿易の殺人強盗事件の犯人は浅沼健二である 右証人 野口吾郎」。「これは何のご冗談ですか」と平静を装う藤田進ですが、丹波哲郎が出てきて、こんなことを言い出したので、もうアウトです。「浅沼さん、どうもこっちの負けのようですね。誘導尋問には引っかかるし、テープには取られるし、もういけませんね」。なんか、すごく他人事みたいな言い方をしてるのは、気のせいでしょうか。それとも丹波哲郎だから。

しかし、ここで藤田進の本領発揮です。「何を言うか、気の弱い。勝負は負けたと思ったときから始まるんだ。例えば、このようにな」。いきなり、野太い声で叫んだかと思うと、懐からピストルを出し、前田通子に突きつけたのです。思えば、丹波哲郎はピストルを出して威張っただけだから失敗したんですね。こうやって前田通子に突きつければ、ほら。天知茂たちは凝固してますよ。ずどどど。前田通子を人質に、ダンスフロアを逃げていく藤田進と丹波哲郎。しかし、そのとき、ホステスのひとりがいきなり銃を発砲しましたよ。ドーン。うわっ。倒れる丹波哲郎。「あっ、貴様は美代」「あんたにダマされて、こんな女になったんだっ」。ドーンドーン。しかし、藤田進はそんな美代を撃ち殺し、さらに逃げようとします。ああ、前田通子はどうなってしまうんでしょう。と、そこに宇津井健がドスドスと駆けつけてきましたよ。うりゃー。体当たりをかます宇津井健。ピストルが藤田進の手から吹っ飛び、二人は肉弾戦に。しかし、ここであっさり勝負がつくかと思えば、意外に藤田進が健闘してるんですけど。さすがクロサワ映画の「姿三四郎」主役は伊達しゃありません。「まだまだー」とか掛け声をかけつつ、宇津井健を翻弄しています。しかし、年の差はいかんともしがたく、さらに宇津井健はスーパージャイアンツですからね。とりゃー。宇津井健のもっそりパンチが藤田進に炸裂します。うわーっ、バタリ。藤田進は斃れました。「木崎さんっ」「夏希さんっ」。前田通子と宇津井健はしっかりと抱き合い、熱いチューをかわすのです。

→解説その9 いや、ホント、南の島のパートで止めとけば良かったのに。なんていうかグダグダになって終わってしまった感じです。

→まとめ この子はもっとデキル子のはずと思って観なおしましたが、やっぱり、この映画は前田通子がオールヌードになるだけの映画だったようです。宇津井健に天知茂、藤田進に丹波哲郎という、後世からすると、トンデモない豪華キャストなので、どうにでもなりそうなんですけどね。

この映画から得た教訓は、次のとおりです。

スーパージャイアンツも天下の色悪も、さらに姿三四郎も霊界の案内人も、やっぱり前田通子の手ブラからはみ出る乳には勝てない。







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【映画】女競輪王

2010-03-12 | 邦画 あ行
【「女競輪王」小森白 1956】を観ました



おはなし
私は絶対、競輪のチャンピオンになってみせるわ。

「女真珠王の復讐」で大当たりを取った前田通子の主演第2作目です。同じ「女○○王」でも、あちらは見世物系で、こちらはスポコン系。とはいえ、一筋縄ではいかないのが新東宝ですけどね。


自転車を押しながら、早朝の田舎道を歩いているのは、「魚誠」の看板娘な椎野美樹(前田通子)です。「よいしょっと」とスタンドをかけて、草むらに座った美樹は朝ごはんのおにぎりをパクパク食べ始めましたよ。そこに、パタパタとバイクがやってきました。「あら、健一ちゃん、お早う」と声をかける美樹のほっぺには米粒がひとつ。ここらへんで、あまりにベタな演出に卒倒しそうになりますが、これが新東宝のカラーなんですよね。

さて、その健一ちゃん(杉山弘太郎)は銀行員で美樹の許婚。そして彼には野望があるのです。「美樹ちゃん、ぼく、オヤジのうちを出て独立しようと思うんだ。それを機会に、ぼくたちの許婚っていう古風な関係を解消して、結婚しちゃおうよ」。しかし、美樹にもやっぱり野望があったみたいですよ。

「健一ちゃん、あたし、どうしても競輪の選手になりたいんだけどな。結婚、もう少し待ってくれない。あたし健一さんと対等な条件で結婚したいの。それにはうちの生活を困らないものにしておきたい。あたしだって、ちゃんとした花嫁衣裳くらいそろえたいわ。そのために、あたしにできることは競輪だけよ」。

「うん、しかし」と言ってみる健一ちゃんですが、これが見るからに草食系な男なので、結局はOKさせられるはめに。「ありがとう。決ーめた」と抱きつく美樹。草むらに横たわった二人は、熱いちゅーです。

肉食系かつ巨乳な美樹は、さっそく健一ちゃんを引き連れ、健一ちゃんのお父さん・源造のところへ。「ねえ、おじちゃん、今のお話いいでしょー」。おい未来の舅を誘惑してどうする。それも健一ちゃんが横にいるのに。もちろん、デレデレな源造さんは即賛成。「おじちゃん、もうひとつお願いがあるんです」「なんだな」。ここで美樹は、いきなり15万円を貸してくれと言いだしましたよ。15万と言えば、当時の大卒初任給の10倍くらいじゃないですか。ビックリして何に使うんだい、と聞く源造さんに美樹は言います。「自転車を買ったり、帽子。それに靴。その他もあるし……」。「15万ねえ」と躊躇する源造さん。それというのも、源造さん自身、商売が不調で金を借りてる身分ですからね。うーむ、うーむ。「ねえ、おじさん。じゃないわね、お父さまーん」「よし出してやろう」。

飛ぶように家に帰った美樹は、さっそくお母さんや妹の正枝(北沢典子)たちに報告。しかし、お母さんとしては、当然、心配しちゃいます。健一さんに悪いんじゃないのかい。美樹は答えます。「そんなに簡単に結婚なんてできないわ。結婚は人生の墓場って言うじゃないの。私、どうしても、思いっきり競輪やって自分の力を試したいんですもの。それでなきゃ、人生に意味ないわ」ニカッ。えーと、「お父さまーん」にナケナシの金を借りておいて、どの口がそれを言う。

はい、美樹は競輪学校に入学しました。好子(江畑絢子)や慧子(遠山幸子)といった子分もできたし、バリバリ走っちゃうわよお。シャコシャコ、シャコシャコ。あ、もちろん走っているシーンはスクリーンプロセスですけどね。と、そんな生徒たちにうれしいイベントが。全国争覇競輪(ダービー)の見学が許されたのです。これはトップ選手の走りを見るチャンス。特に無敗の女王、渋井選手(阿部寿美子)を間近に見られるんだわ、きゃーっ。

試合を終えた渋井選手に群がる生徒たち。「あなたたち、競輪学校の生徒さんたちね」「はーい」。もう憧れの渋井選手を声をかけられて、生徒たちはうっとりです。と、美樹がしゃしゃり出てきましたよ。「お姉さま、おめでとうございます。あたし競輪学校の生徒で椎野美樹と言います。お姉さまに教えていただきたいんです」。握手をしてもらい、ニマっとする美樹でした。

これには子分の二人も「美樹ちゃん、すごい心臓だったわね」と呆れ顔。しかし、美樹は悪びれませんよ。「何とでもおっしゃい。私、断然、自身がついちゃった。この手から女王渋井三枝子の脚力とスピードが、ジーンとあたしの心臓。いや肝臓に伝わってきたの」。肝臓って、渋井選手の手からはグリコーゲンかなんかが噴出してるんですか。そんな美樹に圧倒される二人のパシリに美樹は言います。「ダメダメ、弱気は禁物。勝負は冷酷よ。負けたら惨めなのよ。甘えてなどはいられないわ。勝つこと。何としても勝つことが、私たちの生命よ」。クワッ。

そして迎えた、競輪学校の卒業式の当日。「今日は、銀行休んじゃって来たんだ」と影の薄い健一ちゃんも旅立ちをお祝いに来てくれましたよ。もっとも、内心は二人で食事でも、そして……とか考えているのかもしれないですけどね。しかし、美樹は勝負に賭ける女です。「ねえ、健一さん。せっかく来ていただいたのに悪いんだけど、あたしのワガママ聞いてくれる」「言ってごらんよ」「私、プロ選手になった今日っていう第一日に、いきなりやっておきたいことがあるの」。なんだか、お姉さま渋井選手の家に行くとかぬかしてますけど。ほら、健一、ガツンと言ってやれ。ガツンと。「じゃあ、そのトランクと自転車、ぼくがうちに運んどいてやるよ」。ああ、ダメだ。

はい、お姉さまの家にやってきて、いきなり弟子入りを志願する美樹。「強いことは美しいことです。競輪場で走っているお姉さまの美しさには、何者もかないません」と持ち上げていますよ。もっとも、その直後に、「この素晴らしいお家。これだって、お姉さまの強い足で生み出したものじゃありませんか」と、いきなり金の話を出しちゃうんですけど。もちろん、そんな美樹の弟子入りを断る渋井選手。「あたしはね、無名のあなただって研究してるのよ。あなたは私のライバルよ。私は負けずに引退したい。チャンピオンには傷がついてはいけないの」。美樹はとりあえず闘志バリバリな目で、渋井選手を睨むのです。

弟子入りできずに、千葉の田舎に帰り、練習漬けの美樹。お母さんは「練習もいいけど、お前このごろ健一さんのこと、ちっとも言わなくなったじゃないか。喧嘩でもしたのかい」と心配していますが、それどころじゃないのです。「そんなヒマないのよ。練習でいっぱい。希望ではち切れそうなの。悪いけど健一さんのことは後回し」。とは言え、ひとりで練習していても、なかなか成果が上がらないのも事実。そんな時、美樹はすごいスピードで練習している男子選手を見つけてしまったのです。それは通称「火の玉信ちゃん」こと倉本信也選手(沼田曜一)でした。「こんばんわ、あなた火の玉信ちゃんでしょ」。まだデビュー戦前の新人が、無敵のトップ選手にこの態度。さすがに信ちゃんも「火の玉なんで心安く言うなよ」とムッとしてますよ。しかし、「ねえん、引っ張ってよ」と甘えた声を出す巨乳の美樹を見てしまうと、どうもいけません。「うん、気に入ったよ」と、美樹を押し倒す信ちゃん。美樹は特に抵抗するでもなく、さりげなく信ちゃんを押しとどめます。「俺が好きじゃないのかよ」「愚問ねえ。あたしスピードが欲しいの。だから引っ張ってって言うのよ。それだけで良いじゃないの」。ええと、そうなんですか。

さあ、いよいよ琵琶湖でのデビュー戦です。仲良しというかパシリの二人も同じレースでのデビュー。さあ、腕が鳴りますね。というか鳴るのは脚か。と、前泊した宿には怖い先輩選手たちが。特に河野のお姉さまこと河野菊選手っていうのが、「おう椎野、その目つきはナンや」と美樹にからんできました。まあ、美樹も全開バリバリに生意気そうなんで仕方ないんですけど。もちろん、美樹は先輩選手たちをサクッと破って初優勝。でも、このままでは済みそうにありませんね。

一応、美樹の師匠にあたる火の玉信ちゃんは、隠しても隠し切れない内心のスケベ心を噴出させつつ、「今夜、俺にキミの勝利のお祝いをさせてくれ。いいだろ」と誘ってきました。今夜6時に池のほとりで待ってるからね。そんな信ちゃんの誘いを断るでもない美樹。婚約者の健一ちゃんの立場はどうなってしまうんでしょう。

そして、火の玉信ちゃんが、ワクワクして池のほとりで待っていると、来た、来た。やってきましたよ。って、来たのはパシリの慧子選手じゃないですか。「あ、どうしたの慧子さん」「美樹ちゃん、来ません。マッサージしてるんです。早寝するんですって」。思わず「ああ、そう。ひでえ奴だ」と嘆息する火の玉信ちゃん。その気持ちはよく分かります。でも「あたしが代わりに来たんです。いけません?」と慧子が意味ありげに笑うので、まあいいかと。もちろん、飲んだあとは、分かってるよな。

バリバリ走って、美樹は怒濤の27連勝。賞金も貯まったんでしょう。早速、おじちゃんに借金を返しにいくことに。15万円の借金に1万円の利子をつけてあげたので、おじちゃんは「やっぱり、俺の目に狂いはなかったな。さすがはうちの嫁だよ」と大喜びです。しかし、美樹はそっとつぶやくのです。「これで貸借関係はきれいさっぱりね」。おじちゃんの目は狂いまくりみたいですね。

さて、おじちゃんは美樹からお金を返してもらったものの、かなり経営が苦しいようです。ということで、御手洗建設の御手洗社長(江川宇禮雄)にお金を借りに行くことに。しかし、この御手洗というのがイカニモ悪そうな男。案の定、火の玉健ちゃんを脅して八百長レースをさせたり、さらにおじちゃんの「うちの嫁」が美樹であることを知ると、「たいした宝の山、持ってやがんなあ」とニヤついたりしていますよ。なんか暗雲が立ち込めてきましたね。

八百長レースをした火の玉信ちゃんは、さすがに気持ちが晴れません。こんなときは美樹を誘ってみるに限ります。「どうだい、これからスランプの悪魔祓い出かけるか」。すると「それであんたの調子が戻るなら付き合うわ」と意外にも美樹はOKみたいですよ。もちろん、火の玉信ちゃんの女好きは自他共に認めるところですから、つまり色々とOKということですよね。と、そこに婚約者の健一ちゃんから電話が入りました。いきなり北海道に転勤になり、今日すぐ出発しないといけないと言うのです。ボソボソと見送りに来てくれないかという健一ちゃん。美樹はひとこと。「それがダメなの。行かれそうにないわ」。

バーで踊ったり、飲んだりしている美樹と火の玉。いい雰囲気です。火の玉信ちゃんは言い出しました。「美樹ちゃん、俺たちはどうなったっていいじゃないか。体破裂するまで愛し合おうよ」。そんな言葉に、美樹もマンザラじゃなさそうですよ。しかし、そこに子分の慧子がやってきたのです。もちろん、慧子と言えば、信ちゃんとすでに深い仲ですから、嫉妬光線バリバリです。慌てた美樹は「勘違いしないでよ。あたしはレースに負けた信ちゃんを憐れんでいたのよ。敗北を知らないあたし自身を誇っていたの。さ、本命の慧ちゃんが来れば、選手交代」とごまかしてみるのでした。ふう、危なかったわ。ということで、予定が狂ってヒマになった美樹は、健一ちゃんの見送りに上野駅へ。何も知らない健一ちゃんは感激しちゃってますよ。バカですねえ。

その後、色んなことがありました。慧子が火の玉信ちゃんの子供を流産して、二人とも競輪界を追われたり、もうひとりのパシリである好子がお見合い結婚をしたり、さらには美樹に敵意を抱く河野のお姉さまが、レース中に自転車をぶつけてきて、二人とも転倒、病院行きになってみたりです。

ま、そんなこんなで、いよいよシーズンも大詰め。あとは全国争覇競輪(ダービー)を残すだけです。もちろん怪我の癒えた美樹にも出場権が与えられました。目指すは渋井のお姉さまを下しての、競輪クイーンの座です。なんか悪者の御手洗がおじちゃんを脅かして、美樹に八百長をさせようと画策しているようですが、無視、無視。

よーいどん。シャコシャコ、シャコシャコ。スクリーンプロセスで描かれる白熱のレースシーン。やったあ、勝ったわ。お姉さまに勝ったわ。勝利の美酒に酔いつつ、選手控え室に美樹が向かっていると、渋井のお姉さまとバッタリです。「んまっ、お姉さま」「おめでとう」。もはや勝負は決しました。連続優勝のプレッシャーから解放されたせいでしょうか。穏やかな表情の渋井のお姉さまは美樹に言います。「私は引退するんです」「んまっ」「椎野さん、これからはあなたが、競輪界のヒロインよ」。と、そこに見学に来ていた競輪学校の生徒さんたちがやってきました。渋井のお姉さまをガン無視して美樹に群がる生徒たち。そして、その中のひとり(田原知佐子=原知佐子)が、ハキハキと言うのです。「あたし競輪学校の木下由利子というものです。お姉さまに教えていただきたいんです」。まるで、一年前の自分を見るような既視感に襲われる美樹。自分はかつて夢見た、一年前のお姉さまの場所に立っている。そして、もしかして一年後には、寂しく去っていく今のお姉さまのポジションにいるのかもしれない。どよーん。なんだか暗くなっちゃう。

座談会に出るために、新聞記者の差し向けた車に乗っている美樹。おや。おやおや。路地裏にズタボロの男が倒れていますよ。車を停めさせ、「おじさん、おじさんじゃないの。どうじたのよう」と美樹は駆け寄ります。「ああ、美樹ちゃん。おらあ間違っていたんだ。御手洗の奴がおめえの足を折るっていうんで、お前に八百長は頼まなかったと言ったんだ。そしたら、そしたら……クククッ」。何も泣くことはないのに。

ここはおじちゃんの病室。ちょうど美樹がお見舞いに来ているときに、警官がやってきて、「御手洗たちは全部逮捕されましたから」と報告してますよ。なんていうか、台詞のみってところが新東宝らしいですよね。それはともあれ、「すまんなあ美樹ちゃん。本来なら、こんなに親切にしてもらえた義理じゃないんだ。あんなこと頼んだ俺だ」とシミジミしているおじちゃんに美樹は言います。「なに言ってんの、おじさん。あたしのために、こんな目にあって」。なんだか時代劇みたいになってきました。ともあれ、おじちゃんの病室を辞去した美樹は競輪場に向かいます。競輪場のトラックをみつめる美樹。脳裏に試合の時の、観客の熱狂がよみがえります。そして落車して担架にのせられる選手の無残な姿。渋井のお姉さまとの握手。去っていく後姿。まぶしいばかりに元気な競輪学校の生徒たち。ぽわわーん。

草原で美樹はおにぎりをパクついています。「美樹ちゃん、おーい」。気が弱そうな健一ちゃんがバイクでやってきました。「健一ちゃーん」。ドスドスと走っていく美樹。「美樹ちゃん。僕、考えてることがあるんだけどな」「なにかしら」「美樹ちゃんは日本一の選手になったんだし、とても僕なんかの手の届かないところに行ってしまったように思えるんだよ」「なに言ってんの。あたしは競輪はやめたのよ。約束じゃないの。結婚するのよ」。うわーい。ニカっとする健一ちゃん。ダメだ、これは絶対、尻に引かれるタイプすよ。健一に抱きついて、「勝手な美樹だって叱る?」と目をパチクリする美樹。「そ、そんな」「ごめんなさい。うふっ」。どうやら、ここに幸せなバカップルが一組、誕生したようです。


本来であれば、小畑絹子とか高倉みゆきみたいなクールビューティ系か、もしくは「外面如菩薩内心如夜叉」な三ツ矢歌子あたりが演じるとスッキリしたんでしょうが、基本的に平和というかノンキな顔をした前田通子が、野望ギラギラな役を演じていて違和感ありまくりなのが、えも言われぬ効果をかもし出していました。

冷静に考えると、この美樹というのは、相当なビッチなんですけど、学芸会感覚とでも言えばいいのか。ヘタウマな前田通子のおかげで楽しく見られます。これが三ツ矢歌子だとシャレになりませんからね。

あと、この映画は北沢典子のデビュー作でもあるようです。美樹の妹役でしたが、なんていうか可愛さの次元が違いますよ。四次元を超えて五次元ですね。マジ美少女すぎて、もうメロメロです。思わず、わずかな出演時間には、目を皿のようにしてしまいました。

それにしても、劇中の火の玉信ちゃんこと沼田曜一の台詞はスゴイですね。「体破裂するまで愛し合おうよ」ですよ。とりあえず、北斗神拳みたいに、前田通子と沼田曜一が「ひでぶっ」「あべし」とか言いながら爆発しているシーンを想像して、ひとりで大笑いでした。もし恋人をクドく言葉が見つからない人は、ぜひ、このフレーズを使ってみてください。もしかしたら、うまくいくかもしれませんよ。







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【映画】黒の斜面

2010-03-08 | 邦画 あ行
【「黒の斜面」貞永方久 1971】を観ました



おはなし
人生、どこに斜面があるか分かりやしません。

松竹と俳優座の提携作品です。ということで、松竹からはお志麻さん。俳優座からは、加藤剛や市原悦子が出演しています。

駅が映ります。コンコース、そして階段には通勤客が一杯。歩く人の群れ、群れ、群れ。そんな群れの中に、ダイバ物産営業部営業係長の辻井喬(加藤剛)もいました。

会社に着いた辻井は、部長(永井智雄)から呼び出しをかけられましたよ。「来ましたね、係長。いよいよ課長ですな」と後輩の清水(児玉泰次)がおべんちゃらを言ってきますが、部長の話は、まさにその昇進の話。ただし、志摩の山林買収を成功させたらという条件付きです。さあ、3000万のキャッシュを持って、大阪へ行ってこーい。

「何色にしようかしら」。新居の建築現場で、壁の色をあれこれ悩んでいるのは、辻井の妻、圭子(岩下志麻)。「奥さん、そろそろ決めていただかないと、遅くなるばかりですよ」と大工さんは困り顔ですが、なあに、かまうもんですか。あたしは、この新居建築に命を懸けてるのよ、ムキー。と、そこに加藤剛がタクシーでやってきましたよ。大阪出張の準備で、早引けしてきたようです。一緒にアパートに帰り、3000万のキャッシュを見たお志麻さんはひと言。「ね、ね、ね、逃げちゃおうか。このお金持って」。生真面目かつ小心者の加藤剛は絶句していますが、どうやら冗談だったようです。「ハハハ、バカねえ、あなたって。なんでもマトモに取っちゃうんだから」。そう、その性格が災いして、加藤剛はトンデモないことになるんですけどね。

お志麻さんと加藤剛がイチャイチャとちゅーをしていると、後輩の清水から電話が入りましたよ。どうやら、夜9時半の大阪行き最終便しかチケットが取れなかったようです。しばし考えたあと、「明日の朝にするか」と決断する加藤剛。しかし、お志麻さんに「今夜行ったほうがいいんじゃない」と言われるとあっさり、「もしもし、最終便で行くよ。羽田で会おう」とか言ってるんですが。この性格が災いして、以下略。

暗闇に漂う濃密な空気。汗をかいた裸の肉体。蠢く男と女。男は加藤剛。そして女は、加藤剛の愛人です…………って、妙子(市原悦子)なんですけどね。グハッ。ヒットポイント激減中。「怖かったんでしょ。空港であたしを見つけた時の、あなたの顔ったらなかった。びっくりして、キョトンとして、信じられないものを見るような顔して。いやーん、あんな顔であたし見ちゃ」。イヤーンなのは、こっちです。ともあれ、大事な出張にも関わらず、市原悦子に出会ってしまった加藤剛は、市原悦子の誘いを断りきれなかったようです。後輩の清水を先に大阪へ行かせ、自分は市原悦子の部屋。これが災いして以下略。

ぽわわーんな回想シーンによると、山登りをしていた加藤剛は、迂闊にも、自殺しようとしていた市原悦子を救ってしまったようです。ということで、加藤剛がシャワーを浴びている間にも、市原悦子は一人で語る語る。「あの日、なんで山に登ったの。なんであたしを助けたの。助けられて、気持ちが落ち着いてきたら、さみしくてたまらなかった。もうたくさんっ! 体が良くなって、まっすぐあなたのところへ行った。毎日。そして帰りを待った。あんたを見てると、あたし、あの恐ろしさ。あの恐ろしさから逃れることができるの。孤独から。それから、あなたの会社の近くのお店に勤めることになって……なぜ、あたしを抱いたりしたの。抱いてなんかくれなくても良かったのに」。えーと、これって市原悦子のストーカーっぷりに加藤剛が屈服したってことじゃ。

ともあれ、一人語りを終えた市原悦子はテレビをつけてみました。と、いきなりの臨時ニュースです。なんと、加藤剛が乗るはずだった飛行機が墜落。遭難者名簿にツジイタカシの名前も載ってますよ。ブチッ。テレビのコンセントを引っこ抜く市原悦子。いったい何を考えているんでしょう。

当然、飛行機の墜落はおおごとです。お志麻さんも急きょ、羽田に呼び出されました。怖い顔をしたスタッフ(近藤洋介)が言うには「三河湾沖で機体の一部を発見したということでございます。ただ今から、現地に向っていただきます」だそうです。ちなみに宿舎としては東海園ホテルが用意してあるそうですよ。以後、わざとらしいくらいに東海園が連呼されるので、タイアップなんだなあ、と。

そんなこととは露知らず、朝、口笛を吹きつつネクタイを締めている加藤剛。と、市原悦子が今さら、わざとらしく新聞を見て驚いています。「タイヘンよ、あなた」。もちろん、加藤剛も新聞を見てぐわわーん。動揺しまくってます。3000万が入ったアタッシュケースを持って、あわてて出かけようとする加藤剛に、市原悦子は言います。「出かけるの、会社」「決まってるじゃないか。清水が遭難しているし」「その清水さんと一緒に飛行機に乗ってるはずなんでしょ。あなた、なんて言い訳するの。まさか、ここに泊まったって言えないでしょ。人前をあんなに気にするあなたが、奥さんも会社の人も、もうみんな、現場に行ってるでしょうし。そこにノコノコ出ていくの。なんて挨拶するの」。むむう。確かにそうかもしれないけど。でも、3000万はマズイ。ちょっと額がでかすぎ。これだけでも返しておかないと公金横領になっちゃうよ。アレコレ止める市原悦子を振り切り、部屋を飛び出す加藤剛。むかうは会社です。って、駅の雑踏にいると、市原悦子の声がリフレインしてきましたよ。「誰が信じるっていうの。そのお金を横領して、どっか逃げようとしたんだろ。そう言われたら、あなた、なんて答えるの」。ヘナヘナヘナ。さっきまでのイキオイはどこへやら。加藤剛はシオシオと市原悦子の部屋に戻るのでした。もちろん、市原悦子は大喜び。「帰ってきてくれたのね。そうね。そうなのね」。

部屋で熊のようにウロウロする加藤剛。ようやく意を決して、テレビを見てみることにしました。すると、5名分の遺体がまだ発見されないと言っていますよ。ハッ! マズイ、出かけなくちゃ。「喬さん、どこ行くの」「俺の身代わりになったあの男の遺体が上がったら、どうする」「だあれ」「君も見てただろ。空港で」。確かに、キップをキャンセルしようとした加藤剛に、チケットを譲ってください、と青年が声をかけてきて、加藤剛はキップを売ったのです。「分かるもんですか。グシャグシャだっていうじゃない。飛行機の事故って」「よせっ!」。うわーん、ホントによしてくれよ、気が弱いんだから。

ともあれ、加藤剛は意を決して出かけました。今度こそ迷うもんか。しかし、通りがかった電気屋さんの前で、イヤなものを見てしまったのです。たくさん並ぶテレビに、たくさんのお志麻さんが映っています。インタビュアーから今の気持ちを聞かれたんでしょうか。うぉーーーーっと号泣しているお志麻さんがいっぱい。……。で、でられねえ。

さて、お志麻さんに山名ひとみ(山口果林)という若い女が接触してきました。彼女は加藤剛がキップを譲った青年の婚約者。青年から最終便に乗ると連絡を受けていた彼女は、行方不明の5人の中に、青年にキップを譲った人間がいるはずと当たりをつけてきたのです。他の4人の家族には話を聞いてみた。「でも、キャンセルするような事情のある人はいなかったんです」。

加藤剛は名案を思いつきました。そうだ、市原悦子の知り合いには、羽田空港の近くで開業しているお医者さんがいるじゃないか。ってことは、搭乗直前に体調を壊して、空港近くの病院に入院してたことにすればいいんじゃね。「頼むよ。先生に頼んでみてくれ」「い や よ」。ええーっ。「フン、病院に担ぎ込まれたことにしてくれだって。うまいこと考えるわね。イヤよ。でもあたし。どうして、あたしがそんなことすると思ったの。もうダメよ。遅いわよ。一日経った後は、一週間経っても、一年経っても同じことよ。あなたはもう、出て行くチャンスを失ってしまったんだわ」。あまりの冷たいお言葉に、顔を背けて涙をこらえている加藤剛。そんな加藤剛の首をグイッと自分に向けて、市原悦子はムチューっとキスをします。「絶対放さないわ。絶対に」。

山口果林の言葉がトゲのように刺さっていたお志麻さんは、加藤剛の「遺品」を漁ってみました。すると、指輪の領収書が2枚出てきましたよ。えーと、1枚は私がしてるコレでしょ。って、もう1枚はなによ。グワーッと怖い顔をするお志麻さんです。

「世話になった。幸福を祈る」。そんな置手紙を残して加藤剛は家出しました。愕然とした市原悦子は、ダッシュで東海園に。あ、いたいた。後輩の清水の知り合いと称して、お志麻さんに接触して探りを入れることに。ふーむ。どうやら、何も知らないようね。ってことは、まだ東京にいるのかしら。

はい。加藤剛はときわという連れ込み旅館で、ひとりショボーンとしていました。思い出すのはお志麻さんのことばかり。そういえば、お志麻さんが外山(滝田裕介)という男とお見合いをしていたときも、じーーーーーーっとお志麻さんを見つめてたっけ。くすくす。それから、波打ち際でお志麻さんとも戯れたよな。くすくす、ってうわーん。寂しいよお。ガラッ。そこに、いきなり襖が開いて市原悦子が登場しました。「あなたのことなら何でも知ってるって言ったでしょ」。鳩が豆鉄砲を喰らったような表情の加藤剛に、市原悦子は続けます。「そんな顔しないで。ホントは私だってあなたがここにいるか心配だったのよ。もしいなかったら、何もかもバラしてやろうと思ったくらい」。幽体離脱したようなトホホな表情の加藤剛。「バカね。ウソよ。ふふふ、ああ、いてくれてよかった」。ちなみに市原悦子によると、加藤剛の「行動範囲は狭い」ので、探すのに苦労はしなかったみたいですけど。なんていうか、つくづく加藤剛って、悲しすぎる。

さて、加藤剛への疑念が疑惑にまで高まってきたお志麻さんは、元お見合い相手でポルシェなんかに乗ってる滝田裕介に協力を要請。日本でお志麻さんの「お願い」を断ることのできる男はいませんから、滝田裕介はどうにか名案をひねり出しました。「男ってのは、たいていのことは女房に喋るもんだからね」と、死んだ清水の奥さんに体当たりで聞いてみることにしたのです。「いたよ」。サクっと戻ってきた滝田裕介は、加藤剛に女がいたことを掴んでいました。もちろん名前から店まで全部が判明です。

早速、滝田裕介のポルシェで市原悦子のアパートを張り込むお志麻さん。あ、あれは。東海園ホテルにやってきた女じゃない。ぴぴーん。お志麻さんは全てを察しました。さらに、翌日。部屋の中に隠れているのに飽きた加藤剛が、ランニングシャツいっちょで、外に出てタバコを吸ってるところも、お志麻さんはバッチリ目撃。思わずグワーッとした表情にもなるというもんです。

ぴとん、ぴとん。蛇口を締めても垂れてくる水。ぴとん、ぴとん。加藤剛のイライラは絶頂にまで高まってきましたよ。思わず、横で寝ている市原悦子の首をグイグイ絞め上げてしまいました。ぐぐぐぐ。うううう。ぐぐぐぐ。うううう。ハッ! おっと妄想でした。さらに部長の顔がぽわわーん。妙に優しい顔をした部長は言います。「どうして今まで出てこなかったんだ。ま、それはどうでもいい。理由はこっちでつけよう。とにかく、生きていてくれて良かったよ。ん、ナハハハハ」。思わず加藤剛だって笑顔になっちゃいますよ。ニカッ。って、また妄想だあ。ぴとん、ぴとん。イライラする音です。ぴとん、ぴとん。

またも家出をする加藤剛。今度は合同慰霊祭に行ってみることにしました。なあに、サングラスをかけているので「絶対に」バレません。なんだか、愛する妻が自分の遺影を運んでいる姿を見るのは妙な気分です。そして、それと同時に、とうとう自分の居場所がなくなったんだ。いえ、自分という存在がこの世からは消えてしまったんだ、と思うとヘンに吹っ切れた気分になるから不思議です。部屋に戻ると、何もなかったように、かいがいしく世話を焼いてくれる市原悦子がいました。思わず、ぎゅっと抱きしめてしまう加藤剛。そう、もう俺には名前はない。俺は、この女と生きていくしかないんだ。今度こそ悩まない。

新聞を読んでいた加藤剛はハッとしました。尋ね人広告にはこうあったのです。「タカシ 全て許す 連絡待つ ケイコ」。ガーン。加藤剛はすぐさま悩んでます。悩んだ挙句、こっそりと外の公衆電話からお志麻さんに連絡です。「俺だ圭子」「やっぱり生きてたのね、あなた」。お志麻さんの優しく懐かしい声に、思わずググッとこみ上げてくるものが。その上、お志麻さんはこう言ってくれたのです。「あなた、喜んで。谷口部長さんに相談したらね、お金さえ戻れば、ほかの事は全部忘れるって、そう言ってくださったわ」。「本当か。部長がそんなことを。そうかあ」。やっぱり部長はいい人だった。俺のことを気にかけてくれていたんだ。思わずうれしくなってしまう加藤剛ですが、さすがに、お志麻さんが話しながら、新居の設計図を「カッターでズタズタにしている」とは予想もしていないみたい。ひーーっ。

加藤剛がお出かけ中の隙にお志麻さんが市原悦子のところにやってきました。心臓をバクバクさせながらも、「あの、あたしに何か」と強がってみせる市原悦子。お志麻さんはあくまで丁寧に言います。「辻井が生きていることが分かったんです。それで、あなたが亡くなった清水さんとお親しいって仰ってたのを思い出して」。ホッとひと安心する市原悦子ですが、待ってください。自分の住所なんてお志麻さんに教えた覚えがありますか。それに、お志麻さんのヘビのような冷たい目に気づかないんですか。

旅行中の加藤剛と市原悦子。ああーん。市原悦子は旅の宿で悶えています。なんていうか、全然観客サービスになってない。そして、一戦終えたあと、加藤剛は別れ話を切り出しました。「俺を元の辻井喬に戻してくれ」。何かを悟っていたのでしょう。市原悦子は目を伏せて言います。「バカね、あたしって」。「すまない。俺には耐えられないんだ。もう、こんなこと」。ピキーン。おっと市原悦子がムッとしましたよ。「こんなこと耐えられない。あなた、自分で選んだのよ。こんなことになるなら、あの時、テレビ消したりしなけりゃ良かったわ」。今度は加藤剛の驚く番。「テレビ。なんのことだ、それ」。

全てを告白する市原悦子。なんてことだ、オーマイガッ。加藤剛は怒りのあまり市原悦子の首を絞めまくります。この、この、このっ。ぐいー。よし行け。今度はひよるなよ。って、やっぱりひよってしまう加藤剛。ううっ、ダメだ。できない。ゲホゲホしていた市原悦子は静かに言います。「帰んなさい。奥さんのとこ」。

ブー。ブザーを鳴らす加藤剛。さすがに気恥ずかしくて、サングラスをしていても周りをキョロキョロしてしまいます。ブーーーー。ドアののぞき穴からお志麻さんの顔がのぞきました。ガチャリ。ドアを開けて、ニッコリと微笑むお志麻さん。「圭子っ」「生きてたのね。ホントに生きてたのね」、二人は抱き合って熱いキスを交わすのでした。そして、そのままアッハーンタイムに突入。

快楽の後の気だるさに身を任せつつ、加藤剛はタバコに火をつけて言います。「すまなかった。こんなに素直に許してくれるとは思ってなかった。俺は本当にバカだった」。髪を振り乱したまま、お志麻さんも言います。「苦しかったでしょうね。あなた」。「圭子、会えなくなって初めて、俺にとって一番大事なのは君だということが分かった。許してくれ圭子」「バカねっ。何言ってんの、同じことばかり」。

ブーーーーー。おっと、これは加藤剛の妄想だったようです。それにしても、本格的な妄想だなあ。それにしても、いくらブザーを鳴らしても、誰も出ないようなので、自分で鍵をあけてヒサビサの我が家に入りましょう。ガチャリ。勝手慣れたる自分の部屋。電灯のスイッチをパチリ。……!ガガーン。なんと、家具がひとつもないガランとした部屋には、ただ自分の遺影と花が置いてあるだけじゃありませんか。無駄と知りつつ、部屋を見てまわる加藤剛。やっぱり、引越しが終わった部屋には何もありません。おや、遺影の横に何か光るモノが。よく見ると、それはお志麻さんに送った指輪でした。立ち尽くしていた加藤剛は、がっくり膝をつき、オイオイと泣き始めました。でも、泣いていても仕方ないですよね。やがて、加藤剛は3000万の入ったアタッシュケースを抱きしめてヨロヨロと立ちあがるのです。

「辞令 辻井喬 営業課営業係長を解き、用務課資材係を命ず」

相変わらず、駅は人の波で溢れています。波、波、波。その波の中に、いつもと同じように通勤する加藤剛の姿が見られます。


映画はここで終わります。でも、加藤剛の「その後」をちょっと想像してみました。金を持って、部長に会いに行く加藤剛。恐らく部長の顔は、驚き、怒り、軽蔑、無視へと目まぐるしく変わったに違いありません。その場で、一ヶ月くらいの自宅待機が言い渡されたでしょう。そして休みの間に、入れ替わり立ち代わり課長やら同期がやってきます。もちろん、辞表を提出するように言いに来るのです。しかし、金魚が金魚鉢から出て生きていけないように、サラリーマンは会社から離れては生きていけません。頑強に辞表提出を拒む加藤剛に、やはり怒り、軽蔑、無視へと変わっていく課長や同期たち。やがて辞令。出社しても、加藤剛に話しかける人間はいません。もちろん仕事もロクにありはしないでしょう。9時から5時まで、ただじっとデスクについている加藤剛。まるで自分の周りだけ、時の流れが止まったような気分です。5時になると、小さくため息をついて加藤剛は、誰もいない自分の部屋に帰ります。そして、朝になると、また満員電車に乗って会社に行くのです。明日も明後日も、春も夏も、今年も来年も。

教訓その一 お志麻さんと結婚したら、浮気だけは絶対にするな。
教訓その二 特に市原悦子には気をつけろ。
教訓その三 大阪出張は新幹線で行こう。









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【映画】悪霊島

2009-11-16 | 邦画 あ行
【「悪霊島」篠田正浩 1981】を観ました

おはなし
鵺の鳴く夜は、おそろしい……らしいです。

一般的に金田一耕助モノというと、市川崑監督がメジャーですが、これは篠田正浩監督の作品。篠田監督のファンなので、どうしても採点が甘くなりがちですが、それを割り引いてもヘンな意味で、とても面白いです。

特に推理がどうしたこうしたという映画ではありませんが、これ以降、ネタバレの嵐ですから、それがお嫌な人は「絶対に」読まないでください。

「1980年 冬」。放送局に勤めている三津木五郎(古尾谷雅人)は、調整室にいる担当者(角川春樹=トホホ)が手招きをしているのに気づきました。「何?」と言いつつ、調整室に入ると、そこに置かれたテレビのニュースにみんなが釘付けです。
「ジョン・レノン氏がニューヨーク市内で、8日午後11時ごろ、日本時間の9日午後1時ごろ、ピストルで撃たれて死亡しました」
愕然とした五郎はLet it beをバックに20年前の恐ろしい事件を回想し始めるのでした。

うわーっ、と断崖を落ちていく男。そして「悪霊島」のタイトルがドドーン。インパクトは十分です。

はい、ここは瀬戸内海。本土の竹田と刑部(おさかべ)島を結ぶフェリーです。「死体だぞー」「死体だぞー」。確かに、さっき断崖から落っこちた男がプカプカ浮かんでいますよ。さっそく引き上げてみたところ、男は死体ではなくて、虫の息でした。船員になにか言っています。「何、もっと大きい声で。おいっ」「……あの島には悪霊が。あの島には恐ろしい悪霊が……」。ガクッ。巡礼の人が「たまたま」持っていたマイクに向って話したあと、男は死んでしまいました。それにしても、悪霊とは穏やかではないですね。

ヨレヨレのジーンズに突っ込んだトランジスタラジオから流れ出るビートルズの「Get Back」を聞いているヒッピー青年、っていうか若かりしころの五郎です。そんな五郎は、ローカル線の中で、ひとりの奇妙な男と知り合いました。くたびれた着物に、ボロボロの帽子。そして、その帽子では隠し切れないボサボサの髪。っていうか、要は金田一耕助(鹿賀丈史)ですね。まあ、無賃乗車とかいろいろありつつ、竹田についた二人。ところが、港ではなにやら大騒ぎのようですよ。そう、フェリーが拾った謎の死体を検分していたのです。「この顔じゃぜんぜん分からんのう」とボヤいているのは、広島県警の磯川警部(室田日出男)。確かに顔はグチャグチャ。唯一の手がかりと言えば、背広に入った「青木」のネームだけです。

おっと、磯川警部が金田一を発見。なんか、なし崩しのうちに、金田一は老婆殺害現場につれて来られちゃいました。殺されたのは浅井はる(原泉)という、市子(イタコみたいなもの)兼モグリの産婆さんだそうです。それにしても原泉の死体っぷりは素晴らしいのひと言です。ともあれ、この婆さんは、24年前の「暗い秘密」にかかわって、誰かを脅迫していたのですが、逆に自分の身が危うくなったので、磯川警部に助けを依頼する手紙を書いてきたのでした。しかし、磯川警部が手紙を読んだ時には、時すでに遅し、クワーッと目を見開いて殺されていたと。そして、殺害現場に残されていたのは、20年以上も前の刑部神社のお守り。金田一は言います。「実は私の依頼された仕事も刑部島に関係があるんですよ。この5月に、ある人物が刑部島に渡ったっきり、ぷっつり消息を絶ってしまったんですがね。青木って人なんですがね」。ビックリする磯川警部。さっきの死体の背広にも青木ってあったよな。それを聞いた金田一もビックリです。「その青木の調査を依頼した人間っていうのは」「ええ、越智竜平って言うんですよ」。えーと、依頼人のことをペラペラ喋る探偵っていうのも、どうかと思うんですけど、ともあれ、これで刑部島にトンデモない秘密があることは、100パーセント確定ってことで。ちなみに、横にいた広瀬警部補によると、刑部島は代々、刑部家と越智家が牛耳っているもよう。ほほう、説明ありがとうございます。

さて、巡礼の人が「たまたま」録音した青木の言葉が、あっというまに、警察の優秀な科学力で分析されてきました。ちょっと音が割れてますが、聞いてみましょうか。
「あいつは、腰のところで骨と骨がくっついた双子なんだ。あの島には悪霊が。あの島にはおそろしい悪霊が。いいか、鵺の鳴く夜は気をつけろ」

とりあえず、金田一は問題の刑部島に向うことにしました。船中で五郎と再会したり、噂話を聞いたりと大忙しです。ちなみに、越智竜平は島から出て、アメリカで大金持ちになったひと。そして、島にいた若い頃、刑部神社の娘、巴御寮人と恋仲だったそうです。そんな噂話を苦々しげな顔をして聞きながら「鵺の鳴く夜か」とつぶやくアヤシイ男(石橋蓮司)まで出てきたりして、いよいよ横溝正史っぽくなってきました。

島に上陸した金田一は、旅館の宿帳で「青木」の名前を発見したり、野犬に襲われて死にそうになったりと、やっぱり大活躍。さらに、ウロウロと刑部神社に行ってみたところ、五郎が刑部神社の美人(?)双子姉妹、真帆(岸本加世子)、片帆(岸本加世子=二役)と仲良く記念写真を撮ろうとしているのを発見です。「なんだあいつ」と微妙に嫉妬してしまう金田一ですが、「お母様、早よう」と呼ばれて出てきた人を見て、圧倒されてしまうのでした。と、ここで音楽がゴージャスに。静々と巴御寮人(岩下志麻)が登場です。いや、それは圧倒されるわ。

さて、巴御寮人のおじさんで、島の実力者、刑部大膳(佐分利信)と面会をした金田一は、死んだ青木のことを持ちかけてみました。しかし、ある意味、お志麻さんより圧倒的な大膳は、ドスの効いた佐分利信ボイスで言うのです。「その死んだ男と、ここに泊まった青木周三が、同一人物であるという証拠でも、おありになるんですか」。「いえ、それは」と口ごもる金田一。「そうそう、紹介しておこう」と大膳が言うと、刑部神社の太夫(神主さん)で、巴御寮人のダンナの刑部守衛(中尾彬)が出てきました。ちなみに、ちなみに、ここらへんは人物紹介パートなので、それだけ。

その翌日、なにしろ殺人事件が起こらないので、島をウロウロするしかない金田一は、今度は巴御寮人の双子の姉、ふぶき(岩下志麻=二役)を目撃。あとから現れた巴御寮人によると、「彼女、かわいそうに脳を患ろうとります」だそうです。これも、人物紹介ってことで、ひとつ。

いまだ顔を現さない越智竜平が、刑部神社に寄進した黄金の矢がどうしたこうしたとか、伝説の強弓を引けるのは、その竜平と、お志麻さんのイトコな吉太郎(石橋蓮司)、そして刑部大膳だけだとか、伏線らしきものをはりつつも、なかなか話が進みません。いい加減にイライラしてきたところで、ようやく島の祭礼の日がやってきました。とうとう、最後の主要キャラである、越智竜平(伊丹十三)が、豪華クルーザーで到着です。さあ、いよいよ、事件が起きますね。というか、そろそろ起きてください。

祭礼が佳境に入った夜。とうとう事件が起こりましたよ。神社の神楽殿が火事になったのです。そして、その騒ぎが収まったかと思うと、今度は拝殿から出てきた越智竜平がワナワナと拝殿を指差しています。えーと、拝殿で何が起こったんでしょう。早速、見に行ってみる金田一。……。うわっ、太夫の守衛が死んでいます。それも越智竜平が寄進した黄金の矢に、刺し貫かれて。「すごい力だ」とうめく金田一。そういえば、強弓を引けるのは、越智竜平と吉太郎。それに大膳でしたよね。ということは、犯人はその3人のうちの誰かということになるんでしょうか。それにしても、この最初の殺人が起こるまでに要した時間は50分。ちょっとスローペース過ぎやしませんか。
ま、それはともあれ、金田一が止めるのも聞かずに、ダンナの死体をみた巴御寮人。ウォーッと雄たけびをあげて失神。しかし、巴御寮人の苦しみは、これでは終わらなかったのです。それというのも、祭礼の日から行方不明になっていた娘の片帆が、野犬にアチコチを食べられた状態で発見されるという悲劇が。もう、踏んだり蹴ったりとは、このことです。しかし、警察が詳しく二人の死因を調べたところ、意外な事実が。まず、守衛の死についてですが、黄金の矢は、いったん心臓で止まっていたのを、グリグリねじこんだ形跡があるというのです。つまり、強弓のもと、一気に貫かれたわけではないので、力のない人間が犯人の可能性があるそうです。さらに、ドッグフードになっていた片帆ですが、直接の死因は絞殺でした。つまり、こちらも他殺ということで、ひとつ。

どうも、守衛が殺された時、五郎が拝殿をウロウロしていたようです。さらに、モグリの産婆殺しの時にも、ヒッピー風の男がウロついていたという情報があります。磯川警部は自信満々に五郎を逮捕。取調べを開始するのでした。しかし、最初に逮捕された人は、「まず間違いなく無罪」の法則がありますからね。どうでしょうか。磯川警部が五郎を取り調べている一方で、金田一は独自の調査を開始。どうも、金田一は刑部島の昔。それも、巴御寮人と越智竜平の恋愛問題。そしてふぶきの過去が気になっているようですよ。
まずは、若い二人の逢引を手助けした、竜平のおばさんに質問。ふむふむ。おばさんから、若い頃の二人が語られます。ってことで、回想シーン。いがぐり頭の伊丹十三とお下げ髪のお志麻さんが抱き合うという、なんともコメントしずらいシーンに悶絶しそうになりますが、ここでのポイントは、二人が会うときの合図。なんと、鵺の鳴き真似が合図だったというじゃありませんか。そういえば、断崖から落ちて死んだ青木も、「鵺の鳴く夜は気をつけろ」と言っていましたね。これは単なる偶然でしょうか。

今度は、広島県に預けられていて、20年前に狂った状態で島に戻ってきたという、ふぶきの過去を追う金田一。ふむふむ。昔、お隣さんだったというおばさんに聞き込みをすると、広島県時代のふぶきは、べつだん狂ってはいずに、キレイでやさしい娘さんだったそうですよ。もっとも、終戦直前に広島市内に引っ越してからは、ふぶきを見かけたことはないそうですが。それにしても、金田一の灰色の脳細胞の中では、いったいどんな推理がなされているんでしょうね。さっぱり見当がつきません。

それはそうとして、磯川警部に、二つの殺人事件の容疑者として尋問されている五郎は、とうとう「分かったよ、喋るよ」と重い口を開き始めました。それによると、モグリの産婆を訪ねたのは、確かに自分だそうです。しかし、それは実の両親を知りたかったからで、殺人には無関係だというのです。そして、産婆に聞いた実の両親(かも)は、なんと越智竜平と巴御寮人という驚愕の事実が。

さらに、守衛の胸に刺さった「黄金の矢」をグリグリしたのは、確かに五郎でしたが、それは死んでいる守衛を見て、とっさに真犯人を庇おうとしたためだったのです。「ぼくはとっさに思った。何かしなければいけない。彼女が犯人に疑われないための、何か工作をしなければ」。しかし、と五郎は言います。あの時、見た真犯人は巴御寮人だと思ったけど、今から考えると、ふぶきだったんじゃないか。「なるほど。すると、君は巴御寮人の犯行だと信じた。それで、彼女を庇うため偽装工作をした。ところが、巴御寮人と思った人物は、実はふぶきだった。そういうことだったわけか」という磯川警部に、五郎は自分の迂闊さを呪うように言います。「ぼくはもっと早く気づくべきだった。あの女、まるで巴御寮人とは目の色が違ってた」。もう、どうして、光のお志麻さんとブラックお志麻さんを見間違っちゃうかなあ。

ともあれ、磯川警部の疑問は氷解しました。それなら、今まで集まった目撃証言とも矛盾しない。キマリだ。犯人はふぶきだ。早速、ふぶきを逮捕に行く磯川警部。「んまあ、ふぶきが」と驚く巴御寮人をよそに、イトコの吉太郎はなにやら、いわくありげな表情をしていますよ。それにしても、磯川警部。巴御寮人と、そんなに長話をしていると、困ったことが起きるんじゃないですか。

はい、起きました。かつぎで顔を隠しつつ、猛ダッシュで逃げていくふぶき。磯川警部たちは必死に追いますが、とても追いつけたものではありません。それにしても和服を着ている女性にしては、やけに速いと思いませんか。ともあれ、ゼイゼイいいながら磯川警部たちが断崖絶壁に来ると、そこには大膳が、ふぶきの持っていたかつぎを手に立ち尽くしています。佐分利信ボイスで、「ふぶきは死んだ。何とか捕まえようとしたが、一瞬、遅かった」と言われると、なんだかすごく説得力があります。すいません、疑った自分が悪うございました、みたいな。

広島から帰って来た金田一は、磯川警部から不在中に起きた五郎の逮捕に納得していません。ということで、あらためて、事件の周辺を調査することにしました。そもそも越智竜平が祭礼の夜、守衛に会いに、拝殿に行ったのはなぜだろう。そこには何か、裏があるんじゃないだろうか。ということで、越智竜平に話を聞くと、あっさり神社の周りの土地を買って、レジャーランドを造るためだと、教えてくれましたよ。ふむ。そうなると、それをなんらか方法で察知した大膳が、守衛を殺したという推理も成り立ってきますね。金田一が証言を集めると、片帆殺しの時にも、大膳にはアリバイがないということも判明しましたし、これは大膳が犯人に間違いなさそうです。もっとも、巴御寮人のイトコ、吉太郎の部屋から、女の使う紅が出てきたりしているのが、気になるといえば、気になるところですけど。

さて、金田一はふぶき失踪の謎を解くために、磯川警部といっしょに、足跡を探しています。あ、あった、あった。「いかがです。女の足跡にしちゃ、えらく大きいでしょ」。ふーむ、と感心する磯川警部。つまり、ふぶきと思ったのは別人で、替え玉の男、たとえば吉太郎が女装して、ふぶきを匿ったという可能性も出てきたようです。と、そこにイキナリ矢が飛んできました。ひゅんひゅん。ぶすっぶすっ。慌てて木の陰に隠れる二人。「なんだ、これは」「脅しですよ。島を去れっていう警告です」「いったい誰が」「もう一つの神社の主です」。なんか、トンデモな展開になってきましたね。「刑部神社の他に?」「ホントの刑部神社は、この森のどこかにあるんです」。すごいやラピュタは本当にあったんだ、な気分です。

いっぽう、清楚で美しくて、絶対にいい人の巴御寮人は、自分の部屋で、ひとり鏡台の引き出しを開けました。そこにあるのは紅。巴御寮人はそっと、紅を唇にひきます。一指しごとに表情の変わっていく巴御寮人。そこには、さっきまでの清楚で白百合のような巴御寮人ではなく、妖艶で淫乱な、まるで熱帯に咲く人知れぬ大輪の花のような「をんな」が出現したのです。そのまま、股間に手を伸ばすをんな。「はあはあ、あ”?っ。うがあ、おごぁーーー」。えーと、どんなヨガリ声なんだか。

と、そんな巴御寮人の狂態を目撃してしまった娘の真帆。ガクガクブルブル。おっと、それに気づいた巴御寮人が、自慰の手を休めて「真帆」と優しく言いましたよ。「お母様、わたし、なんも」とビビっている真帆。巴御寮人は、ものすごい表情で、「真帆、真帆」と近づいてきました。ヒーーーッ。慌てて逃げ出す真帆。しかし、ダーク巴は、確実に迫ってきます。ニヤリ。獲物をみつけたダーク巴は笑いました。「まほっ」。追い詰められた真帆の首を締め上げるダーク巴。バタリ、真帆はくずおれていきます。
と、そこに鵺の鳴く声が聞こえてきましたよ。パッと顔を輝かせる巴御寮人。そのままズドドドとダッシュして、鵺の鳴きまねをしていた越智竜平の胸にアターックです。「ねえ、早よう抱いてーん」と甘い声を出す巴。越智竜平は突然の展開にビビりつつも「巴さん」と抱きしめるのです。そんな二人を、ギラギラした目で睨んでいる吉太郎。もう、こうなってくると、怒濤の展開すぎて、何がなにやら。

「そんな信じられんですよ。巴御寮人とふぶきが同一人物じゃなんて、そんなバカな」。ラピュタ、じゃなくてホントの刑部神社を探して森の中をさまよいつつ、金田一と磯川警部が語り合っていますよ。とうとう種明かしタイムです。

かいつまんで言うと、こういうことです。大膳の手で、越智竜平とムリに別れさせられた巴御寮人は、そのショックから二重人格に。そして、新たな人格はとんでもない淫乱だったのです。好都合というのもヘンですが、双子のふぶきが、広島の原爆で亡くなったことから、大膳はオカシクなったときの巴を、ふぶきとして扱うことに。これで、巴御寮人はわずかに、精神のバランスを保っていたのでした。しかし、それが崩れたのが、夫守衛の裏切り。なんと、神社の土地をレジャーランドに売り渡すというじゃありませんか。ここで金田一の言葉を引用します。

「この神社には、代々女性の血によって守られていく、そういった誇りや営々と続いてきた血が、激しい怒りとなってたぎった。それが宵宮の太鼓の響きと呼応しあって、ふいに己のなかのふぶきがあらわれる」。ダムダムという太鼓のリズムと共に、グワーッと恐ろしい顔になった巴ことお志麻さんの表情。そのまま、巴は守衛を黄金の矢で刺して、おそろしい笑みを浮かべてますよ。ニヤリ。こ、こえーっ。

さらに片帆殺しについても、説明する金田一。「七人塚という、かつての思い出の場所。しかも、そこで若き日の自分たちと見まごうばかりの姿を見て、巴はしだいに冷静さを失い、やがて激しい嫉妬の念にさいなまれ、さらには、その黒い嫉妬の炎から己の中に巣くうふぶきを呼び起こし……」。草むらの中からヌヌーッとでてくるお志麻さん。その仮面のような無表情が、こ、こえーっ。

さらに金田一は、片帆の死体を野犬のあつまる中に投げ捨てたのは大膳だ。そして大膳は巴を愛していたけどインポなんだ、とか憶測まじりに推理を喋りまくります。おっと、話をしていたら、倒れていた真帆を発見しましたよ。「……おかあさま」。どうやら、生きていたようです。よかったね。磯川警部に真帆を託して、さらにあたりを偵察をする金田一。おっと、洞窟発見。ここだ、ここが秘密神社に違いない。

そーっと入ってみると、大膳と遭遇。もう上映時間も残り少ないので、大膳はペラペラ喋りまくります。それによると、この洞窟は紅蓮洞と言うそうで、平家の隠れ神社だったそうです。そして、その奥にご神体よろしく祀ってあるのは、なんと腰と腰でつながった赤ん坊の白骨でした。
「巴の産んだ子だ。太郎丸に次郎丸。巴は罪の子を見た途端、最初の発作を起こして殺してしまった」「これを取り上げたのは、もしや竹田の」「浅井はる。そのことをネタに、20年近くわしは脅迫されてきた」。なるほど、ではモグリ産婆を殺したのは、あなたということですね。で、それ以外に、ここにゴロゴロ転がっている白骨はいったい、どなたの。

「巴の心は二つに引き裂かれた。いや、巴の体の中に、二人の女が棲み込んだのだ。ひとりは昔に変わらず巴。それが、もうひとりの方は、狂いながら男を追い求める淫乱な女」。つまり、ここにある死体は、すべて巴と契って、そして殺された男たちってことなんですね。そして、ただ一人、逃げ出したのがフェリーに発見された青木だったのです。
そんなヘビーな会話をしているところに、ブラック巴がやってきました。「太郎丸と次郎丸。私らの子供よぉ♪」。横には、無理やり引率されて、明らかにビビっている越智竜平が。「あたしたちが、永遠に離れんように、ほら、腰と腰がこんなにくっ付いて、フフッ。見て竜平さん。竜平さん、さわって」。恐怖のあまり越智竜平はのけぞっています。「あなたも、この子らと、いっしょにいてあげて」と言いつつ、ブラック巴が越智竜平の首を絞めはじめました。ぐぐぐ、く、くるしい。と、そこにやってきた吉太郎が銃声一発。バーン。ふっとぶ赤ん坊の骨。その瞬間、巴は素の声で、「何すんねん」とズカズカ吉太郎の方に迫っていきます。ウワーーッと闇の中にダッシュして行く吉太郎。そして、灯りが点ると、そこには大膳に刺し殺された吉太郎の姿が。えーと、何がなんだか付いていけない展開です。

赤ん坊の骨を破壊されたブラック巴は、あ”ーーーっと絶叫しながら暗い洞窟を突進。しかし、いきなり穴の中に落ちていくのです。ここは最高のシーンです。走っていたはずなのに、穴の中を垂直に落下するんですから。それも、まるでロケットの打ち上げを逆回転させたかのように、スローで。もちろん、お志麻さんが限界まで目を見開いての熱演なのは言うまでもありません。あまりといえば、あまりの展開に、金田一と越智竜平が唖然としていると、ズガーン。猟銃を口に咥えた大膳が、自殺したようです。

警察がかけつけ、ゾクゾクと死体やら白骨が運び出されていきます。磯川警部はひとこと。
「ひっどい事件じゃったのお」。えーと、激しく同感です。

Let it be が流れるなか、金田一の乗ったフェリーが去っていきます。越智竜平の豪華なクルーザーも去っていきます。なぜか、おみこしもプカプカ海に浮いています。そして、断崖の上には、肉親を失ってひとりぼっちになった、真帆が白い着物で立ち尽くして、海を眺めているのでした。
本土に着いて、どこかへ向う金田一。パトカーで護送される五郎は、金田一さーんと叫んだようですが、それはガラスにさえぎられて聞こえません。歩いていく金田一のストップモーションで映画は終わります。

お志麻さんによる、お志麻さんのための、お志麻映画でしたね。もう、他のシーンは全部いらんから、お志麻さんだけ見せてください、って感じです。もっとも、最後、岸本加世子が断崖に佇んでいるシーンなんかは、ホラー映画の定番というか、さらなる悲劇を予感させて、いい感じです。微妙にヘンな方向に走っているとはいえ、篠田監督の手腕もさすがだと思いました。

マジメにいうと、金田一モノの魅力は、微妙に金田一耕助がバカなところにあると思います。名推理で観客の度肝を抜くというよりは、観客の推理が少し先を行って、「あーもう、こんなことも分かんないのかよぉ」と、金田一と一体化できるところにあるんじゃないでしょうか。この映画も、その例にもれず、最初っからお志麻さんが犯人だと観客には分かっているので、面白く見られるんだと思います。

ところで、ぼくが生まれて初めてデートをしたときに観たのは、この映画でした。「鵺の鳴く夜はおそろしい」のTVコマーシャルがガンガン流れていたので、ついつい。でも、真っ暗なスクリーンの中に、お志麻さんのひとりエッチシーンが流れたときには、どうしてくれようかと。もちろん、その子とのデートはそれっきりです。えーと、コレ実話です。悲しいことに。





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【映画】女渡世人 おたの申します

2009-09-25 | 邦画 あ行
【「女渡世人 おたの申します」山下耕作 1971】を観ました



おはなし
借金の取立てのために、岡山の宇野に向った太田まさ子(藤純子)は、トラブルに巻き込まれ……。

女渡世人シリーズの2作目です。小沢監督の1作目は平凡な作品でしたが、この映画はかなりスゴイ。まさに「藤純子」の集大成と言っても過言ではないと思います。

東映の三角マークが終わると、いきなり藤純子がアップで、仁義を切ります。「わたくし、生国は関東です。関東は上州伊勢崎です。渡世、縁持つ親はありません。当時(現在の意)、大阪南田勘兵衛さんご一家にお世話いただき、旅中にまかりあります。姓名の儀、太田まさ子。渡世上、上州小政と発します。昨今の駆け出しです」。

さて、その上州小政ことまさ子(藤純子)は、手本引の胴を終えて、南田親分(遠藤辰雄)の前に、「つとめさせていたただきました」と挨拶に出ました。「あんた目当てに、通って来やはる旦那衆も多いそうな」と札束をポンと投げる南田親分。そうそう、こいつを紹介しておこう。「梅田の銀三はんや」。銀三(待田京介)に会釈をするまさ子。と、そこに子分がやってきましたよ。どうやら、スッテンテンになった客が、宇野にある船宿の権利を担保にコマ(金)を貸してくれと泣きついているそうです。「何ぼほどいるねん」「へえ、300円です」。

再び、手本引の札師をつとめることになったまさ子。しかし、強い。スッテンテンになった客は、あっという間に追加の300円もすってしまったのです。「今の勝負はイカサマじゃあ」と短刀を抜いて、まさ子に切りかかる客。えいっ。まさ子は手もなく、客を投げ飛ばします。と、そこに銀三が現れ、客の腹をドスでえぐったのでした。さらにトドメを刺そうとする銀三を押しとどめるまさ子。「待ってください。それで落とし前は充分です」。

「姐さん、イカサマ呼ばわりして、こらえてつかあさい」と息も絶え絶えな客を、腕の中にかきいだくまさ子。そのまさ子の菩薩のような表情に、客は安心したのでしょう、「姐さん頼みがあるんじゃ」と言い出しました。自分は良吉といって、岡山の船宿「浜幸」の息子。しかし放蕩が過ぎて、こんなところで命を落とすことになった。それを父親にわびておいて欲しい。そして「お袋に、今年も金比羅参りをできんで、スマン……」ガクッ。

もちろん、客が死のうが生きようが、南田親分としてはどうでもいいこと。とにかく金です。300円を若い衆に取り立てに行かせなければ。と、まさ子が言い出しました。「お待ちください。そのホシは私に取りに行かせていただけませんか」「あんたが」「はい、私が任された勝負だったんですから、私がけじめを付けて参ります」。もちろん、まさ子としては、良吉の最期の願いをかなえてやりたいのです。

船中で、口のうまい福松(南利明)を助けたり、渡り床(流しの床屋さん)の職人、音羽清一郎(菅原文太)と出合って運命を感じたりしつつ、まさ子は宇野へ到着しました。さあ、これからが気の重い時間です。「ごめんください」。船宿「浜幸」に着いて、挨拶をするまさ子。「どなたさんでしょうか」と良吉のお母さん(三益愛子)が出てきましたよ。しかし、どうやら盲目のようです。さらにお父さんの幸作(島田正吾)も登場。なんていうか、濃い夫婦ですねえ。かたや伝説の母モノ女優。かたや一人芝居な男ですから。

「300円、確かに良吉の筆跡に間違いねえ。これがあんたのご用件か」と、ギロリとまさ子を見るお父さん。「はい、いただきに参りました。ご無理でしたら、私の一存でけじめを付ける方法もありますが」とまさ子はあくまで謙虚です。「そんなご心配はしていただかんでええ。わしも昔は遊び人とも付き合いがありましたけえ。いや、この証文にはケチはつけん。きれいに払います」、ただし……。まだお母さんは息子が死んだことを知らない。だから、そのことだけは黙っていて欲しい。「今はわしだけが胸にたたんでいるkとじゃから、それだけはご承知おき願いたいんじゃ」。

早速、古い友人の社長に金を借りに行くお父さん。権利書を片手に、「これを担保に黙って貸していただきたいんじゃ。浜幸の店と、裏の家作(貸し家)一切の権利じゃ」と頼みます。「あんたとは昔からの古い付き合いじゃけえ、もう、こんな他人行儀はせんでもええがな」と言いつつ、権利書を受け取る社長。あぶない、あぶない。だいたい、こういう場合、ろくでもないことが起きるんですよね。

待っている間、手持ち無沙汰なまさ子は、浜幸の裏にある長屋を覗いてみることにしました。おや、赤ん坊が泣いています。思わず抱き上げて、「よい赤ちゃん」とうっとりした表情のまさ子。と、そこにたくましい女たちがワラワラと現れ、「親方さんのところにおいでなすった」と声をかけてきました。そう、女たちは、漁に出ている男たちの妻で、浜幸の長屋に住み、浜幸の作業場で内職をしているのです。まさ子を大歓迎する女たち。なかでもリーダー格のおりく(三原葉子)などは、美しいまさ子を、大阪の芸子さんだと勝手に決めてかかっているようです。

金を用意してきたお父さんに懇請されて、一晩、泊まることにしたまさ子。しかし、それがまずかったようです。というのも、地元の滝島組と浜幸のトラブルに巻き込まれてしまったのです。発端は、滝島組の飯場のあまりにヒドイ待遇に逃げ出した男が、お父さんに助けを求めてきたことに始まりました。見るに見かねて、岡山まで逃がす算段をとるお父さん。しかし、滝島組とすれば、このままでは示しが付きません。なんとしても男を連れ戻して焼きを入れたいところです。さらに、お父さんの友人の社長が、滝島(金子信雄)のところに「滝島君、ええ話、持ってきたぜ」と権利書を持ってきたから、さあタイヘン。どうにか浜幸とのケンカの口実を手に入れて、権利書をたてに店から家作まで奪い取ってしまえ。と、まあ、こうなるわけです。

結局、お父さんに逃がしてもらった男は、すぐ滝島組に捕まり、お父さんの手引きで逃げたとペラペラ話したみたいです。早速、男を連れて、浜幸に乗り込んでくる滝島。「とっつあんの手引きで逃げたと、はっきりしゃべっとるんじゃい」。さあ、この落とし前をどうしてくれる。ぐぐっとつまるお父さん。さらに、「浜幸。銭がなけりゃ、これで弁償してくれ」と滝島が権利書を出してきたからビックリです。「なんで、それを」「小西商会の社長さんが、どうしても遊郭を作らにゃならんと、わしのところに相談に見えられたんじゃ」。

このままだと、店はもちろん、裏の長屋も取り壊しの運命。「親方さん、なんで権利書なんか担保に」と、おりくを始めとする「たくましい」女たちも騒然としています。「こらえてくれ。どうしても300円の金が入用だったんじゃ」と、お父さんはペラペラと事情を話し始めましたよ。「昨日、先方から使いが来たけ、工面して払ってやったんじゃ」。「昨日ちゅうたら、じゃあ、あのお客さんが」「畜生。あの女、うちらには、知らん顔しとって」。なんだか、まさ子は一気に悪者扱いにされてしまいました。

いたたまれないまさ子は、滝島組で祝杯をあげている小西社長のところに直談判に向いました。300円を返すから、権利書を返してくれと要求するまさ子。しかし、社長は言を左右にトボケまくってます。「旦那さん。あたしは渡世人ですよ。そんな小僧の使いできませんよ」。まさ子はここで、声をグッと低くして言います。「出してもらいましょうか」。切った張ったの世界に生きる渡世人の迫力にビビる社長。と、そこに滝島が出てきて、言います。「渡せんな、帰れ」。「滝島さんですね。この件は、わたしとコチラさんの話です。控えてくださいませんか」と、まさ子はピシャリです。三日待つと宣言するまさ子。「三日経って、ご返事がない場合は……」とドスを懐から出して続けます。「渡世上の落とし前を付けさせていただきます。よござんすね」。社長はワナワナして、声も出ない様子。たまりかねた滝島は、再び口を出しました。「その落とし前はわしが受けよう」。「お前さんには関係ないと言ったろう。それとも、この上州小政にケンカを吹っかけるつもりなのかい」。

「今、わしらを助けてくれる気持ちがあるんじゃったら、なんでその時、良吉を助けて下さらんかった。たとえ非はあの子にあったとしてもじゃ」と理不尽な怒りをぶつけてくるお父さんに、「渡世人には渡世人としての立場がございます。どうか、あたくしの意地を通させて下さいまし。お願いいたします」と頭をさげるまさ子。ホント、なんでこんな目に遭うんだか。長屋を荒らしにきた滝島組の組員をやっつけても、女たちはありがとうも言いません。むしろ滝島組よりまさ子を憎んでいる雰囲気です。思わず悲しくなったまさ子は、「あたしはこんな女だったんです」と言うのでした。もちろん、女たちは無言で睨んでいるだけですけど。

さて、捕まった男のことを心配して、滝島組の飯場に向うまさ子。おや、行きの船中で出あった福松がいましたよ。話を聞くと、ここの飯場は相当にヒドイところのようです。どうしても辛抱できなかったら、私のところに逃げてきて、と言うまさ子。あと、ついでに、この間、脱走して捕まった男のことも頼みます。「命に危険があるようだったら、すぐに私に知らせて欲しいの」。しかし、まさ子の、この行動はムチャだったようです。なにしろ、ここは敵地ですから。ほら、悪そうなのがまさ子を取り囲んできましたよ。と、そこに南田一家で出あった銀三が現れました。「この場はわいに任してんか」。どうやら銀三は滝島と兄弟分なものの、「はっきり言うたら、非は滝島の方にある」とまさ子の味方をしてくれるみたいです。「わいが、あんじょう取り計らいますさかい、しばらく、このわいに任しといてはもらえまへんやろか」。もちろん、まさ子に否やはありません。というか、地獄に仏とは、このことでしょうか。

なぜか、お母さんと金比羅参りに行くことになったまさ子。「まさ子さん、あなた本当は良吉の嫁なんでしょ」とお母さんは、まさ子のことを渡世人とは思っていないようです。もちろん、それは向こうの勝手な勘違いとは言うものの、お母さんの夢を壊すことは忍びない。お母さんの笑顔の横で、まさ子はただ一人、苦しむのです。

金比羅参りから帰ると、そこに福松が男を連れて、飯場から逃げてきました。「助けてきてくれたのね」と喜ぶまさ子。銀三もやってきて、二人を逃がす算段を整えてくれます。ありがとう銀三さん。と、思ったら、なんてこと。どうやら、銀三はまさ子が目当てだったようですよ。口説き始める銀三に不審の念を抱くまさ子。「ひとつだけ聞いておきたいことがあるんです。あんたと滝島は昔からの付き合いだったら、大阪で良吉さんを殺したのは、始めからの絵図だったんですか」「……」。沈黙が答えのようです。おっと、そこに清一郎が現れて、銀三の首にピタっとドスを当ててきましたよ。えーと、覚えてらっしゃいますか。まさ子が船上で出合った運命の人です。「梅田の銀三。探し回ったぜ。五年前、てめえに斬られた音羽勘次郎の兄、清一郎だ。出ようか」。

土砂降りの雨の中、対決する清一郎と銀三。「銀三。てめえは勘次郎が女房にするはずだった女に横惚れしやがって、闇討ち食らわしやがった。女も自殺したの知ってるだろ」。銀三は何も言えません。銀三の首からドスを放し、「抜け」という清一郎。「わいも梅田の銀三や、手ぶらでは死なんで」、どりゃー。はい、銀三はあっさりと清一郎にドスを叩き落されました。弱いな。「ま、待ってくれ。なんぼでもやる。堪忍してくれ」と銀三はペコペコしています。「くたばりやがれ」とドスを振りかぶる清一郎。まさ子は止めに入ります。「待ってください。こんな情けない人に落とし前をつけても、弟さんは喜びません」。「姐さん、止めないでおくんなさい」「こんな男の命と引き換えに、あんたに赤い着物をきせたくない。あたしはイヤですっ」。思わず出てしまった愛の告白に、自分でもビックリしたまさ子は、そっと傘を拾い上げ、清一郎に差し掛けます。恥じらいからか、顔を背けつつ、後れ毛を直すまさ子。ゾクゾクっとするほど色っぽい仕草です。

夜の海岸。清一郎は灯篭をそっと流しました。「勘次郎もこれで、忘れてくれるでしょう」。「長い間のご苦労もあったでしょうに、余計な口出ししてすいません」と深々と腰を折るまさ子。しかし、清一郎はさっぱりした表情です。今度は姐さんの手伝いをしますよ、と言う清一郎。「私はもう、何にもすることが無くなっちまったから、苦労があったら、少し分けてもらいてえんですよ」。思わず、まさ子は、母が自分を捨てて、男と満州に逃げてしまったことを話します。「憎いおっかさんだけど、でも、心の片隅で、おっかさん。呼んでる時もあるんです」。

滝島組は、勝負に出てきました。浜幸の長屋に火をかけたのです。タイヘンだ、赤ん坊が取り残されている。井戸の水をかぶって、火炎の中に飛び込むまさ子。どうにか赤ん坊を救い出し、まさ子は「坊や。坊や」といとおしそうに撫でています。しかし、女たちに赤ん坊は取り上げられ、感謝の言葉どころか、「放せ、このバカ」と言われてしまうのです。思わず、忍び泣くまさ子。そこに清一郎が現れて言います。「姐さん。やくざは日陰の花だ。日向に咲こうなんてかんげぇたら、てめえが惨めになるだけですよ。どんなに日陰に咲こうと、おめえさんの花の美しさは、私には分かってます」。

滝島組の暴挙に、お父さんは完全にキレました。ピストル片手に、滝島組に乗り込みます。ロボットのようにカクカクした動きで、滝島を脅すお父さん。「滝島。わしも浜幸と呼ばれて、町の衆の音頭を取ったこともある男じゃ。ケンカを売るなら買うちゃる」。滝島はみっともないほどビビっています。「分かった、浜幸。わしが悪かった」。と、銀三が背後からお父さんをグサッ。とことん、卑怯な奴です。ビビった反動で、お父さんのピストルを奪い、撃ちまくる滝島。「さて、これをどう始末するかだな」。「手は打っといた。わいに任しときい」と、銀三は答えて言います。さあ、どんな卑劣な手を考えているのやら。

呼び出されたまさ子が、滝島組にやってきました。「あんたに引き取ってもらいたいものがあるんや」とニヤついている銀三の視線の先を見ると、なんとお父さんの遺体じゃありませんか。「それから、そっちの奴もな」。うわっ、庭には福松と男の死体が。そういえば、二人が逃げる手配をしたのは銀三でした。ということは、最初から、銀三は二人を殺す気だったんですね。「あたしに黙って引き取れと言うんですか。あたしの目は節穴じゃないんですよ」と気色ばむまさ子ですが、ふすまが開いて、三度ビックリです。なんと、南田一家のオヤブンじゃありませんか。銀三の仲立ちで、滝島と兄弟盃を交わしたというオヤブン。ってことは、つまり、まさ子は渡世の義理から、滝島に手を出せないということです。勝ち誇った銀三は言います。「わいへの落とし前は、この場でつけてもらわな」。憤怒の表情を押し隠し、黙ってドスを抜くまさ子。うぐっ。小指を落としています。

お父さんのお葬式を終え、立ち去ろうとするまさ子をお母さんが呼び止めました。あなたが良吉のお嫁さんじゃないことを私は知っていた、と言い出すお母さん。まさ子は言います。「あたしが良吉さんを殺したんです」「まさ子さん、そんなことは私は知ってましたよ」。そう、全てを知っていたお母さんは、どす黒い、底の知れない暗闇に落ちることを嫌って、あえて憎しみを封印しようとしていたのです。「そこから逃げたい一心で思いついたのが、あなたが良吉の嫁であったと信じ込むことだったんです」。しかし、演じているうちに、いつしかまさ子を本当の嫁だと思うようになったと言うお母さん。いつまでも、ここにいてね。

月明かりの差し込む座敷で、清一郎からもらったお守りの鈴を鳴らしているまさ子。その表情は、何かを決断したかのようです。と、そこに清一郎がやってきました。「お家さんを裏切っちゃいけませんよ」「清一郎さん。あたしは日陰の花なんです。日向には咲けません。何も仰らないでください」「姐さん。私も一緒に死なせてください」。ハッとして清一郎を見つめるまさ子。そして、まさ子を見つめる清一郎。

バサァッ。袈裟切りをするまさ子の姿がいきなり映し出されました。「オヤブン、殴りこみだぁ」。当たるを幸い、長ドスで敵を斬り斃していくまさ子。もちろん、清一郎も一緒です。憎い滝島の腕を斬るまさ子。そこに、南田のオヤブンが出てきました。「小政。どうしても俺の顔をつぶす気かっ」「オヤブン、どいておくんなさい」「うるせえ、俺の言うことが聞けんのか」「こればっかりは」「おのれ、わいが相手じゃ。刺せるもんなら刺してみい」。南田のオヤブンは長ドスを振りかぶります。と、そこに自らの体をたてに突っ込んでくる清一郎。斬られつつ、ドスを南田に叩き込みます。そんな清一郎を、またも後ろから刺してくる銀三。「清一郎さんっ」「俺は大丈夫だ」。そう、ここで止めては全てがムダになり。後ろ髪を引かれつつ、逃げ出した滝島を追うまさ子です。

「銀三。てめえって野郎は」「やかましい」。お互いに体をぶつけつつ、ドスを腹に叩き込み合う二人。ぐさっ、ぐさっ、ぐさっ、ぐさっ。

不意打ちを食らって、滝島に肩を斬られるまさ子。しかし、髪を振り乱しつつ、渾身の一撃を滝島の体に突き通しました。自らの血と返り血で、真っ赤に染まっているまさ子です。

けじめを付けて、急いで清一郎のところに戻るまさ子。「清一郎さん」「姐さん、おめえさんは、おめえさんだけは日向に咲かしてやりたかった。ひな……」「清一郎さーんっ」。

巡査に護送されるまさ子。途中、浜幸の葬儀で祈っているお母さんを見つけました。「お家さん、まさ子です。許してください。あたしができることは、これしか無かったんです」とわびるまさ子。お母さんは無言です。さらに、女たちの刺すような視線を浴びて、ヨロヨロと連れて行かれるまさ子。と、お母さんが叫びました。「まさ子っ」。まさ子はバッと振り返ります。「まさ子、行っちゃいけない」「おっかさーん」。しかし、お母さんに走り寄ろうとしたまさ子は、巡査に押さえられるのです。目にいっぱいの涙を溜めたまさ子は、「おっかさん」とつぶやきながら、連行されていくのでした。

まず、最初にひとこと。もし、この文章を読んで、「この映画、たいしたことないな」と思われたとしたら、それは全面的に僕の責任です。僕の文章力が足りないだけで、この作品は本当にスゴイ映画です。「日本女侠伝」シリーズはもちろん、「緋牡丹博徒」シリーズの全作品よりも、この作品の方が上だと断言します。

まずストーリーがいいです。アウトローたる渡世人といえど、その世界には規範があります。もちろん、その中で、仁義を知っているヤクザ組織のオヤブンが、仁義を知らない新興ヤクザに殺されたりするところにドラマが生まれるわけですが、この映画はちょっと違います。つまり、藤純子が仕えるべきオヤブンは、名目上、何も悪いことはしていないのです。ただ、藤純子が敵対しているオヤブンと兄弟の盃を交わしただけで、むしろ争いを止める側に立っています、理屈では。しかし、それに逆らい、ドスを振る藤純子。それは、アウトローである自分を自覚し、その規範をよりよく守ることで生きてきた藤純子が、その世界からさえも追放されることを意味しています。言い換えれば、アウトローの世界のアウトローになるということです。マイナスとマイナスをかけるとプラスになりますが、藤純子はプラスの世界であるカタギの世界にも行くことはできません。どんなに彼らのために尽くそうと、「放せ。このバカ」と言われるのが関の山です。つまり、もう世界のどこにも居場所はないのです。

そんな居場所のない藤純子に惚れて、「一緒に死」ぬとまで言ったのは、「私はもう、何にもすることが無くなっちまった」人間である菅原文太だけでした。これはとても暗示的です。この世で何もすることの無い人間というのは死者だけですから、結局、藤純子に付き合おうというのは、死者だけ。つまり、藤純子も死者の世界に半分、足を踏み入れているということなんでしょう。

もう一つのストーリーの軸は、藤純子と三益愛子の心の交感。ここも深いです。母に捨てられたという経験が負い目になりつつも、「心の片隅で、おっかさん」と呼び続けている藤純子。そして、自分の息子を殺した女と知りつつも、修羅の世界に落ちないために、藤純子を嫁(つまり義娘ですね)と思い込もうとする三益愛子。そんな二人が、母娘になっていく過程が、なんとも泣かせます。あくまでフィクションとして始めた母娘ゴッコが、最後には真実のものになる。しかし、それが真実になった時は、何かが決定的に壊れてしまった後の話。そのやるせなさが、胸を打ちました。

さて、山下耕作監督といえば、作品中に「花」を入れることで有名。緋牡丹博徒でも実に効果的に花を使っていました。しかし、この映画には花が出てきません。それもそのはず、藤純子が「花」なのですから。

とにかく、この映画の藤純子は尋常でない美しさです。菩薩のような表情。母の表情。娘の表情。どれも完璧です。実際問題として、顔の造作と言うことだけでいえば、山本富士子などいくらでも「美人」はいます。しかし、藤純子の場合は、表情を作る天才なんだと思います。その場面、その場面で求められる表情は千差万別です。それを咀嚼して、これ以外は考えられないといった形で、出すことができる。それは、場面にピッタリ合っているがゆえに、このうえもなく美しく見える。つまり、そういうことなんでしょう。中でも特筆すべきなのは、最後の殴りこみの美しさ。まとめていた髪がほどけ、返り血を浴びた表情。そこには凄惨なのに、いえ、凄惨だからこそ出てくる美しさがあります。こればかりは、いくら言葉を連ねても、うまく表現できそうにありません。ただ背筋が震えるほど美しいというのはこういうことか、と思いました。

笠原和夫の緻密で、奥の深い脚本。山下監督の繊細な映像美。そして、それに答えきった藤純子の演技。この映画は、その三点が完璧に融合した奇跡的な作品です。それにしても、この映画公開時の藤純子は25歳。それで、あれだけの表情を見せるなんて……、信じられません。







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【映画】ある遭難 黒い画集

2009-07-17 | 邦画 あ行
【「ある遭難 黒い画集」杉江敏男 1961】を観ました



おはなし
弟の遭難死に疑問を持った真佐子(香川京子)は、山に詳しい従兄の二郎に調査を頼み……。

松本清張の短編集「黒い画集」からの一篇を映画化したものです。あいかわらずネタバレしてますので、これから映画なり原作なりを観る(読む)予定の方は、以下を読まないほうが無難だと思われます。あと、これは山の映画なのですが、ぼくは山の知識が皆無なので、見当ハズレのことを書いていたら、ご指摘ください。

ズリズリ。ズリズリ。山男たちが、崖から何か大きな包みを引き上げています。引き上げられた包みから覗くのは苦悶に歪んだ男の顔。どうやら滑落した山男の死体を引き上げていたようです。ここは鹿島槍。銀行員3人のパーティが、ガスで道を見失い、その一人が谷に滑落してしまったのでした。

鹿島部落で荼毘に付されている死体。横には母と思しき人が泣き崩れ、姉でしょうか。一人の美しい女性(香川京子)が、燃え盛る炎をじっと見つめています。
「秀雄、なんとか助かる方法はなかったの。あれほど山が好きで、よく山を知っていたくせに。初心者の浦橋さんが助かったのは単なる偶然なんだろうか。私には信じられない。秀雄、なぜなの」。

山岳雑誌の「岳人」。その鹿島槍特集に、こんな寄稿文が載りました。「鹿島槍に友を喪いて 浦橋吾一」。「私たち三人が鹿島槍ヶ岳の頂上に立ったときは、数十分後の悪天候はまったく予想できないほど晴れていた」。

山に入って二日目。鹿島槍の頂上を目指している3人が映ります。リーダーは銀行員の江田(伊藤久哉)。それに、中級者の岩瀬秀雄(児玉清)、そして初心者の浦橋(和田孝)です。「うわーっ、いい天気だなあ」と感激している初心者の浦橋に比べ、中級者の岩瀬はハアハアゼイゼイ。えらく苦しそうですよ。

彼らは同じ支店の同僚で、前々から山行を計画し、ようやく取れた休暇で山登りを楽しんでいたのでした。それもリーダーの江田が初心者の浦橋に配慮して、寝台車でやってくるという贅沢さ。当然、ぐっすり眠って山入りした以上、みんな元気でもおかしくはなかったはずなんですが。

先ほどまでの好天がウソのようにガスが立ち込めてきました。「危ないな、引き返そう」というリーダーの江田に、岩瀬は「ねえ、江田さん、行きましょうよ」と強硬に主張します。確かに目的地までは、あと少し。進めば進めそうな気もします。しかし、山では危険な20分より、安全な3時間をかけて、小屋に戻ることも勇気だそうです。パーティは悄然と、今来た道を引き返すのでした。

「岩瀬君は引き返すのが不満なのだろうか。なぜ、こんなに離れてしまうのだろう。それとも疲れているのだろうか。いや、疲れているはずはない。私たちは江田さんの好意で、寝台車の山行という贅沢な用心までしたのだから」。

軽く酒を飲んで、寝台車のベッドに潜り込んだ3人。しかし、浦橋がトイレに起きると、真っ青な顔で、デッキに立っている岩瀬がいました。どうしたんでしょう。何か気になることでもあって眠れないんでしょうか。山に入っても、岩瀬の体調は悪そうです。気を使ってか、江田が頻繁に大休止を取るものの、かえって岩瀬は疲れていくようす。水を飲む量も半端ではありません。ついには、江田が差し出した水筒の水までゴクゴク飲んでいます。冷小屋(ちべたごや)に泊まっても、どうやら岩瀬は眠れない様子。横で江田がグーグー寝ているのに比べ、えらい違いです。浦橋はなんとなく不安な気持ちに襲われるのでした。

ガスの中をさまよっていた3人。と、江田が言い出しました。「どうやら牛首山の方に紛れ込んだらしんだ」。「牛首山」「うん、ガスで見当がつかなかったんだ。布引岳と牛首山はとてもよく似ているんだ。高さも同じくらいだし、格好もね」。これはタイヘンなことになってしまいました。ガスが激しい雷雨に変わり、3人の体温を奪っていきます。いくら夏山でも、このままだと凍死もありえるでしょう。その上、岩瀬がグッタリしていますよ。江田は浦橋に言います。「浦橋君。ぼくはすぐにちべた小屋に救援を頼みに行ってくるからな。岩瀬君を頼む。ぼくが戻ってくるまで絶対にここを動くなよ」。

岩瀬と二人残されて不安げな浦橋。案の定、激しい雷雨で、岩瀬の容態はどんどん悪くなっていくようです。と、いきなり岩瀬が絶叫しながら立ち上がりました。意味不明なことを言いつつ、服を脱ぎ捨てた岩瀬は、後先を見ずに走り出し。ぎゃーっ。崖から落ちていったのです。

そして、ファーストシーンの遺体を引き上げているシーンに。「岩瀬君の死体は、黒部渓谷の奈落に突き出たテラスに引っかかっていた」。……。浦橋の手記を読み終え、パタンと「岳人」を閉じる江田。ちなみに仕事中みたいですけど。そこに、電話が鳴りました。

「もしもし、鹿島槍でお世話になりました岩瀬の姉の真佐子でございますが」。ちょっとイヤな顔をする江田。「あの30分ばかりでよろしいんでございますが、お帰りがけにでもお時間いただけませんでしょうか」「はあ、それは差し支えございませんが」。

江田が約束の三笠会館に行くと、そこには岩瀬の荼毘の際に、厳しい目で炎を見つめていた真佐子(香川京子)がいました。そして、もう一人、知らない顔も。「従兄の槙田二郎と申します。東北の電力会社に勤めております」。紹介を受けて、苦みばしった笑みを浮かべる槙田(土屋嘉男)に、江田は何とは無しに警戒感を抱きます。なんとなく面倒なことになりそうな気がする。

案の定、真佐子はこんなことを言い出しました。「実は私、弟の墓場に花を捧げてやりたいと思いまして。つまり遭難現場にです」。とは言っても、ただでさえ素人が登るのはムリがあるのに、今は冬。冬山に登るなら、かなりのベテランでないと。「それで、私の代わりをこの人に頼みましたの」と、従兄の槙田を見る真佐子。「松本高校の山岳部です。いやあ、戦前派ですよ」と槙田はニカッと歯を光らせていますよ。ここまで話が決められていると、断るに断りきれない江田でした。

夜行に乗って山に向う江田と槙田。しかし、この槙田という人物、どうにも得体がしれません。「秀雄があの時、寝台車に乗せてただいたそうでお世話になりました」と言いつつ、目が笑っていないし、「岳人」に乗った浦橋の記事を暗記していたり、夜中に寝もせずにいたりと、江田にとって恐怖の対象です。ひょっとして、あのことを。

山に入っても、槙田の行動は江田にとって脅威です。ベテランの山男のくせに、やたらと休憩を取りたがったり、なぜか疲れるようなことを繰り返しているのはなぜでしょう。そのうえ、「水筒に水を入れたのはここですね」などと、夏の山行スケジュールを完全に把握しているようです。「それにしても飲みすぎる。浦橋君の文章を読むと、秀雄の奴、ここに来るまでに5回も休んだそうですね。前の夜、寝台で来たくせにだらしない奴だ」。そう言いながらも、厳しい視線で江田を見つめる槙田。なんだか、二人の間の空気がピーンと張り詰めていくようです。

ちべた小屋に入っても、槙田の追及は続きます。「ぼくは予報を調べてみたんです」。槙田によると、3人が山に入った日は、松本の気象台が長期予報で天気の崩れを指摘していた日だそうです。もし、その予報に従って、山行を取りやめていれば……。

翌日、遭難現場に向う二人。献花を終えた二人の緊張は最高潮に向かっていきます。「今度の遭難には色々な悪条件が偶然に重なっています。ぼくは今、その悪条件ってやつを考えているんです。まず秀雄ですが、登山にかかったときから、非常に疲れていた。浦橋君は初心者ですが、秀雄よりずっと元気に登っているようです。つまり、秀雄が最初から疲労しちえたのが、そもそも悪条件の始まりです。ぼくはどうも不思議で仕方ないんですよ。どうして秀雄の奴が、あんなに疲労していたのか。江田さん、ご存知ありませんか」「あなたとはもう、話したくありません」。もう、ここまでくると、二人の立場は明瞭です。秀雄の死に関与した江田と、それを追及する槙田。

「聞きたくなければ結構。僕は勝手に喋ります」と、槙田はひとつひとつを説明し始めました。秀雄が寝台車で眠れなかったのは、あなたが何か、精神的ショックを与えることを言ったからだ。やたらと休憩を取ったのも、秀雄の足の調子を狂わせるため。もちろん、自分の水筒の水を与えたのも、疲労を増加させる効果が期待できる。長期予報で、天候が悪化することも予知できたはず。牛首山と布引岳の地形が似ていて、間違えやすいということは山岳書にも載っていて、あなたは知っていたはずだ。さらに、時間調整。あなたがちべた小屋に引き返したのは午後5時になってから。この時間だと小屋に着くのは8時。仮に救援を頼んだとしても、翌朝になることをあなたは理解していた。

「あなたの推理は偶然の現象ばかりだ」と反論する江田に、槙田は言います。「しかし、その偶然にあなたは期待をかけていました。あれはもう偶然ではありません。先ほどから言うとおり、これは可能性の積み重なりです。天候も予報で予知することができる。ある条件を与えて、疲労させることもできる。山の地図を持って行かせなかったこと、道を間違えること。時間の調節。これはみな人為的にできる。この条件がことごとく、凍死を期待させていたんだ。期待性の積み重ねは偶然ではなく、もう明瞭な作為ですよ。ただ、分からないことがひとつあるんです。動機です。なぜ、あなたは秀雄を殺さなければならなかったのか」。

睨み合う二人。可能性の犯罪は、ただ動機という一点において、その醜い姿を隠されているようです。「話は分かります」と冷たい表情を浮かべる江田。「もう12時です。僕は今晩の夜行に乗らねばなりません。休暇は今日までですからね」。しかし、来たコースを逆に辿ったのでは、間に合わない、と言う江田は「僕は北俣本谷の壁を降ります。一緒に降りますか。どうします」と挑発的に槙田を見つめるのです。

アイゼンとピッケルを頼りに、とてつもない斜面を下っていく二人。先行した江田。槙田は後から、一メートルほどずれた場所を降りていきます。一歩、一歩、足場を作りながらの、慎重な下降です。と、江田がちょうど槙田が降りてくるであろう場所をピッケルでザクザクと掘り出しましたよ。ザク、ザク。横に掘り進めていく江田。槙田は、そんなことに気づかず、一歩また一歩と下降してきます。江田が時間稼ぎのために、いきなり槙田に話しかけました。「槙田さん、あなたの知りたい動機を言いましょうか。動機はね、恥を言わなければ分かりませんが、あったんです」。思わず槙田の歩みが止まります。実は、自分の妻と秀雄が不倫関係にあったと教える江田。「本当ですか」「確証があります」、ザク、ザク。寝台車で、その件を匂わせたという江田。「それも、すっかり言わずに、ちょっぴり匂わせてやったんです。その方が、かえって相手にはショックなんです」、ザク、ザク。「岩瀬君が眠れなかったのは、そのためなんですよ。それだけですよ、動機は」「そうですか、そうだったのか」。槙田は得心が行ったのか、また下降を始めました。そして、江田が掘った場所に差し掛かると、「あっ。うわーっ」。絶叫と共に落ちていく槙田。まるで、壊れた人形のように、槙田はゴロゴロと転がっていくのでした。

ニヤリと笑った江田はつぶやきます。「あなたの死体が雪の下から上がるのは夏ごろでしょうね」。ふぅーっ。タバコに火を点ける江田。しかし、その時です。槙田の絶叫に反応したのでしょうか。巨大な張り出しを持った雪庇が、ズゴゴゴと崩れだしました。何百トンもの雪の塊は、そのまま江田を押し包み……。

雪の上に、そっと花束を置く真佐子。「山はまた二人の命を奪ってしまった。私が弟の死を疑ったばかりに……」。真佐子はいつまでも雪山に佇んでいます。


最初は、「ゼロの焦点」の久我美子のように、香川京子が弟の死を探る役どころなのかと思いましたが、香川京子の出番はほんのちょびっとでした。製作が香川京子の叔父さん(永島一朗)なので、カメオ出演みたいなものだったのかもしれません。ちょっと残念。

その代わり、前半は伊藤久哉、児玉清、和田孝の夏山登山のシーン。そして、後半は伊藤久哉と土屋嘉男の雪山登山シーンが満腹するほど出てきて、とても迫力があります。

脚本は、時間軸が細かい入れ子構造になっているにも関わらず、とても分かりやすくて素晴らしいもの。この脚本は、なんと映画監督の石井輝男が書いています。時期的には、新東宝を辞めて東映に移るちょうど端境期のようですが、ひとこと、石井監督、こんな脚本も書けるんだあ。自身の監督作品は、わりとイキオイでどーんと押し切るタイプが多いのに、この脚本の重層的な緻密さはなんてことでしょう。名脚本だと思います。

もちろん、映画自体のデキも素晴らしいものです。杉江監督は、どちらかというとプログラムピクチャの職人というイメージがありましたが、どうしてどうして、じっくりと構えた演出は、重厚と言ってもいいくらいでした。

秀雄が眠れないくらいなら、江田だってこれから犯す殺人に興奮して眠れなかったんじゃないかとか、そもそもミステリー的に、「偶然を期待した殺人」というのがアリなのかどうか、という問題は残るものの、とても面白い作品です。ぼくは、とても堪能しました。







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【映画】安城家の舞踏会

2009-06-05 | 邦画 あ行
【「安城家の舞踏会」吉村公三郎 1947】を観ました



おはなし
借金まみれの安城伯爵家では、最後の舞踏会が行われ。

まさに日本国憲法が施行され、華族制度が廃止された年に作られた映画です。この映画は1947年のキネ旬ベストワンにも選ばれました。まあ、そこらへんについては、のちほど。

背中を向けていた女がクルっと振り向いて言います。「敦子は反対でございます。今さらそんなことなすったって、何の足しになりましょう。わたくしはイヤでございます」。別の女が反論します。「舞踏会を開くのは、何かの足しになるとかならないとか、単純な理由からじゃないわ。このうちが、由緒ある安城家が夢のように消えていく記念じゃない」。

ここ、安城伯爵家では、次女の敦子(原節子)と、長女で出戻りの昭子(逢初夢子)が激論中です。「お姉さまは、夢のように消えていくと仰るけど、華族という特権階級がどうして消えなければならなくなったかということを少しも知ろうとはなさらないのね。私たちの生活を根こそぎ否定してきた時代の流れよ。分かろうとなさらないのね」。そんな姉妹の言い争いを、我関せずといった風に、タバコの煙を吐き出しながら聞いているのは、長男の正彦(森雅之)。そして、お父さんの安城忠彦伯爵(瀧澤修)は、なんだかいるんだかいないんだか、影が薄い感じです。

と、女中が「遠山さんがお見えになりましたが」とやってきました。「敦っちゃまがお呼びになったのね、遠山なんかを」と露骨にイヤな顔をする姉の昭子。そう。それも、そのはず、かつて安城家の運転手だった遠山は、今では運送業で財をなし、この由緒ある安城家の屋敷を買い取れるほどまでになったのですから。こんなこと、プライドの高い昭子には、とても受け入れることはできません。もちろん、お父さんの安城伯爵も別の意味で、遠山の来訪には否定的です。「このうちのことについては、今日、弟に新川のところへ行ってもらってるじゃないか」。結局、借金で首がまわらなくなっている安城家は、金を貸してくれている新川の好意にすがって家名を保つか、もしくは遠山に家を買い取ってもらい、借金を整理するしか、道は無いのです。

「昭子さま、お久しゅうございます」とペコペコする遠山(神田隆)。どうやら、遠山は昭子のことが好きでたまらないようです。しかし、昭子は「あたくし、ちょっと」と出て行ってしまいました。遠山としては、ちょっとガックリな感じ。まあしょうがない、殿様にもご挨拶しなくちゃね。「敦子さまに事情をすっかりお聞きしたもんですから、そんなら一肌脱ごうって気になったんですよ。いやあ、財産税じゃすっかり裸になった人が多いですな」。50~60万なら出せますと胸を張る遠山に、しかし、安城伯爵は売る気はないと断りました。それというのも、新川の娘と息子の正彦が婚約しているので、結婚すれば借金なんかチャラという判断があるようです。

「敦子、このうちを遠山に売るのはやめてくれ」とスタスタ去っていく安城伯爵。さすがに、遠山も「すいませんでした。私の口が過ぎましたね」と敦子に謝っていますが、まあ怒らせてしまったものはしょうがない。なるようになるでしょう。

そんな話が階下で進行している間、長男の正彦といえば、自分の部屋でピアノなんかを弾いたりしています。そこに、女中の菊(空あけみ)が「お紅茶を持ってまいりましたが」とやってきました。「分かってるよ」とピアノを引き続ける正彦。と、菊が体ごと鍵盤にガチャーンと飛び乗って、挑発的な視線を向けてきます。「どうしたんだい」「早くなんとか決まりをつけて。あたし、このまんまじゃ不安で不安で」。

さて、遠山が辞去すると、物陰に潜んでいた姉の昭子が出てきました。薔薇の花をむしりつつ、「成り上がり者の癖して生意気だわ」と怒っています。「何を怒ってらっしゃるの、あのことはもう昔の過ぎ去ったことじゃないの」と言う敦子に、「あたくしが結婚に失敗したもんだから、あいつお腹の中では笑ってるのよ。いい気味だ、ぐらいに思ってるんだわ」と怒りはさらにヒートアップ。「だってそうじゃありませんか。遠山がうちを飛び出したんだって、あたくしの結婚が原因じゃない。あたくしがこのうちに帰ってきたら、いつの間にかまた出入りするようになって。いまだに独身だっていうじゃない、気持ちの悪い。あいつがこのうちを買うなんて、どんな下心があってのことだか分かりゃしない」。

ふう。まったくお父様もお兄様も、それにお姉さまも頼りにならない。どうしたらいいのかしら。大礼服を着たおじいさまの肖像画を眺めてブルーな気分の敦子。そこに、おじさんの由利武彦(日守新一)が汗を吹きふきやってきました。「ね、おじさま。新川さんの方、どうなりましたの」「いや、それがね。どうもダメなんだよ」。敦子の想像は悪い方に的中したようです。「昔の関係は関係だ。今は今だと、こう言うんだ。まるっきり、このうちを自分のものにした気でいるよ」。思わず「やっぱりねえ」と嘆息する敦子です。

まあ嘆息ばかりしていても、事態は解決しないので、敦子は行動開始です。まずは、使用人たちを集め、「長い間、みんなにはとっても良くしてもらったけど、いよいよお別れしなくてはならないわ」と宣言。年老いた家令の吉田(殿山泰司)などは、どこでもいいから殿様にお供したいと訴えますが、「ありがとう、吉田。その気持ちはうれしいんだけど、わたくしたちもね、今度は人に使われなくちゃならなくなるの」とキッパリ言うのです。そして、今度は父の安城伯爵のところに。

「さっきね、お父様、おじさまがいらしたの」「で、新川は何と言った」「駄目でございますって」。安城伯爵はガックリです。「わしには信じられない。あんなに、このわしを信頼していた男が」「新川さんが信頼していたのはお父様の人格ではなくて、お父様のお肩にかかっていた、伯爵という肩書きなんだわ」。いやいや、そこまで追い討ちをかけなくても。「ごめんあそばせね、お父様、こんなこと申し上げて」と言って、部屋を飛び出す敦子。と、何かを思いついたのでしょう。また逆戻りして言うのです。「ね、お父様。舞踏会開きましょ。そして、それをきりに新しい生活を始めるの。ねっ」。

着飾った紳士淑女たち。楽団の奏でる音楽。安城家では舞踏会が行われています。伯爵のお姉さんの春小路夫人(岡村文子)は、昔、このホールで西園寺公爵も伊藤博文もワルツを踊ったなどと、昔話を始めたりして、いかにも安城家最後の舞踏会にふさわしい雰囲気が漂ってきました。

とはいえ、内実は悲喜こもごも。長男の正彦は、女中・菊の積極果敢なアタックというか脅迫に頭を痛め、元運転手の遠山は、スーツケース一杯のお金を持ってきたものの、昭子に相手にもしてもらえずショボーン。そして、成金の新川(清水将夫)は安城家との関係を清算すべくやってきているのに、その娘の曜子(津島恵子)はそんなことも知らずに、正彦にウットリです。まあ、このままじゃ、ただではすみませんね。

【かわいそうな遠山編】
憧れの昭子さまがやってきたので、お話をしようとした遠山。しかし、昭子は遠山をガン無視して去っていこうとするじゃありませんか。思わず、遠山は昭子の腕を取ります。「何をするの。汚い!」。「汚い……」とガガーンな遠山。しかし、ここは勇気を出して言わなければ、「昭子さん、結婚してください」。しかし、昭子はそっぽを向いたまま答えるのです。「華族はなくなったわ。だけど、やはり昭子の心は貴族よ」。ズダダダ。走り去っていく昭子を遠山は唖然と見送るのです。悲しくなった遠山は厨房に。そう、昔運転手をしていた遠山にとっては、紳士淑女の集うホールより、こちらの方が落ち着くようです。顔なじみのおばちゃんにお酒をもらって、かっくらう遠山。「俺は夢を見てたんだ。こっけいな夢をみたバカモノなんだ」。ちなみに、演ずる神田隆は東京帝国大学を卒業してたりします。

【伯爵、やけっぱち編】
安城伯爵は新川を自室に呼び、「ねえ新川君。昔の関係を考えてくれて、今までの借りは水に流してもらえないか」と頼んでみました。しかし、戦前はヘイコラしていた新川なのに、なんだか偉そうですよ。「あなたと私の関係は、この際、スッパリ打ち切っていただきますよ」。ガガーン。「打ち切るというと」「つまり、用立てたお金のカタに、今夜限りこのうちはいただくってコトですよ」。そのまま部屋を出て行こうとした新川は、ふっと気づいたかのように、振り返って続けます。「それから、もうひとつ。曜子と正彦さんの婚約の件も解消していただきますよ」。外の廊下で正彦が会話の一部始終を聞いていることにも伯爵は気づかず、新川に哀願します。「新川君、助けてくれたまえ。生まれてこのかた、ただの一度も頭を下げたことのない、このわしがこうして君に恥を忍んで頼んでるんじゃないか。蔑んでくれてもいい。笑ってくれてもいい」。おやおや、伯爵はスンスンと鼻をすすり始めてしまいましたよ。しかし新川は冷然とタバコを吸いながら黙っているのです。プチン。キレた伯爵は、絵の後ろに隠してあったケースからピストルを取り出しました。「安城さん、危ない」と動揺する新川。しかし、伯爵は廊下の外から敦子が、こちらを見ているのに気づき、うろたえ、悄然としてピストルを下ろすのです。「お父様、ご辛抱あそばせ。おとうさまーっ」。

【正彦、やけっぱち編】
「昭子、やっぱり新川のヤツ、悪党だな」とつぶやいた正彦は、意を決したように曜子に歩み寄りました。まあまあ。ほら、もう一杯。そうして、ムリヤリ曜子に酒を飲ませます。いい加減グダグダになった曜子を庭の温室に連れて行く正彦。ガバッ。「正彦さま、ダメっ」と抵抗する曜子を押し倒す正彦。しかし、その時、ガチャーンと温室のガラスが砕け散りましたよ。見ると、女中の菊が怖い顔で睨んでいます。正彦はとたんにやる気をなくしました。「結婚してくださるわね。ね、結婚してくださるわね」と繰り返す曜子にも、すっかり興味をなくしたようです。

【曜子、ブチ切れ編】
サロンで曜子を探していた新川のところに、「正彦さまが、正彦さまが。うぇーん」と駆け込んできた曜子。背中は草まみれ、後ろのホックが外れてひどい有様です。もちろん、周りの紳士淑女たちは、好奇の視線を注いでいます。正彦はというと、悪びれることもなく、そんな親子を冷ややかに見つめているだけです。と、その瞬間、曜子がブチ切れました。「正彦さま、待って。ケダモノっ。あなたなんかと誰が結婚するもんですか」、そのまま、往復ビンタ。さらに往復プラス1ビンタが炸裂。正彦は計5回のビンタを顔にモロに食らうのです。「アハハ」と高笑いをした正彦はいきなりピアノの前に座り、ショパンの革命のエチュードを演奏し始めました。さすが、高貴な生まれの人は、反応がヘンだ。

【そしてムチャクチャに】
曜子がダッシュで去り、新川も帰ることにしました。なにしろ、周りの視線が痛いですもんね。と、そこに敦子が「新川様、お待ちあそばして」と声をかけてきました。見ると、両手いっぱいの札束を抱えています。はい、借りてたお金は返します。えーと、どういうこと? そこに、グデングデンに酔っ払った遠山も登場。「おう、新川。けえれ。その金持って、とっととけえれ」。もう、周りの紳士淑女たちは驚くというより唖然モードに。「みなさーん。おらは遠山庫吉(くらきち)だ。たった今、この俺が、このうちを買ったんだ」。ギロリと睨んでいる昭子を無視してわめきたてる遠山。「あのシャンデリアも、このコップも、みんな俺のものになったんだ」。歩き出す遠山。まるでモーゼの出エジプトのように、人の海がザザーっと割れていきます。そして、向った先には昭子。遠山と昭子は見つめあいます。「昭子様、おしあわせに」、スタスタ。しばし、その後姿を見送った昭子は「とおやまさんっ」と叫んで、家宝の甲冑を蹴倒しつつ走り出しました。ズドド。「もったいない」とイヤな顔をしている家令の吉田に、敦子は言うのです。「いいの。あれでいいのよ」。

砂浜をヨロヨロ歩く遠山のシルエット。昭子は、途中コケて、砂浜をスゴイ勢いでゴロゴロ転がったりしながら追いかけていきます。とりあえず、おしあわせにー。

【菊の殴りこみ】
敦子のはからいで、お妾さんの千代と伯爵の結婚が発表されたりと、お客さんにとっては、ほとんどスペクタクル映画を観ているかのような「舞踏会」も終わりました。自室に引き上げ。ベッドにゴロンと横になる正彦。と、そこに怖い顔の菊がやってきましたよ。「この人でなし。殺してやるから」、グイ、グイ。思いっきり正彦の首を絞めています。「よせよ、冗談よせったら」、ゲホゲホ。菊は、結婚してくれるって言ったのにぃー、うわーん、と泣き出します。「人でなしのあんたが好きなんだわ」。「人でなし。俺は何だ。人じゃないのか」と正彦はつぶやくのでした。

【死亡フラグ立ちまくり?】
千代も引き取り、自室に戻った伯爵。「なんにもやるものがないが」と家令の吉田に、愛用の懐中時計を渡したりしています。これって、死亡フラグですよね。「古いものが滅びて、新しいものが生まれるために、こうしてわしらは滅びていくんだ。滅びて、滅びがいのあることじゃないか」。

【魂のタックル(慶応大学)】
第六感で、お父様の危機を察知した敦子。慌てて、家の中を探し回ります。でも、広い家って、こういう時不便ですね。お父様が見つかりません。ホールで呆然とする敦子。と、そこに伯爵が入ってきました。大礼服を着た先代の肖像画を見ていた伯爵は、ポケットからピストルを取り出し……。「あっ」と叫んだ敦子というか原節子は10メートルほどの距離を猛ダッシュします。そのまま伯爵にアターック。どすん。「ごめんあそばせ、お父様」。微妙に髪の乱れた伯爵が、フラフラになりつつ「はぁ」とタメイキをつきます。「どうして、死ぬなんてこと」「許してくれ、敦子。お父様の生涯は、もう今夜で終わったんだ」「いいえ、これからお父様の新しいご生涯が始まるんだわ。これから本当の生活が始まるんだわ」。敦子はレコードにそっと針を落として、「おとうさまっ」とブリっこポーズを決めます。月明かりの差し込むホールで踊りだす二人。ホールの上の廊下から、ウルウルしつつ、それを見ていた正彦は「菊っ」と菊を抱きしめます。

音楽が続くなかワルツを踊り、外を見る伯爵と敦子。海岸には、まるで年月を知らぬかのように、波が押し寄せては引いていくのです。


えーと、告白します。昔、初めて観た時には、原節子のタックルしか印象に残りませんでした。大柄な原節子が、10メートルをダッシュしてドッカーンですからね、そりゃ脳裏に焼きつくというもんです。しかし、こうして改めて観なおすと、、、ダメだ、やっぱり原節子のタックルしか記憶に残らない。

もちろん、単純な二元論で割り切れるものでもありませんが、映画には「普遍の芸術」という側面と、「時代の証言者」という二つの面があります。もちろん、どちらか一方しか存在しないわけじゃなくて、両者が綱引きをして、その緊張関係の中に映画は存在するのだと思いますが。

で、この映画に関しては、公開当時は、バリバリに「時代に迎合した」映画だったんじゃないかと思われます。なにしろ新憲法が施行された直後ですからね。庶民にとっては、華族の没落っていうのは、大物芸能人のスキャンダルと同じくらいに刺激的な素材だったんじゃないでしょうか。「ザマーミロ」という感情と、それと同じくらい強い、何か「喪失感」みたいな感情。そこをうまく突いた映画だなと。

そう考えると、民芸の森雅之や瀧澤修というキャスティングも納得です。これが同じ民芸でも、宇野重吉じゃなんとなくカッコがつかないですもんね。あくまで、貴族的な顔立ちの人たちが演じないと、滅びの美学になりませんから。当然、原節子も同じ線だと思います。

キネ旬のデータベースを見ると、キャストがかなり変更されているのが分かります。女中の菊が空あけみではなく幾野道子になってたり、曜子が津島恵子ではなく植田曜子になっていました。なにより大きな変更だなと思ったのが、初期段階では昭子役が、逢初夢子ではなく入江たか子だったらしいこと。入江たか子といえば、原節子と並ぶ戦前の美人女優で、なおかつ子爵家の出身ですからね。もし、実現していたらホンモノ度がさらに高まったのにと残念です。あと、松竹ではなく東宝ですが、この年デビューした久我美子も捨てがたい。こっちはさらに格上の侯爵家出身ですから、曜子役にキャスティングされていれば……。まあ、夢は夢ですが。

ともあれ、俳優たちの演技が、やけに舞台っぽいことを除けば、今観ても面白い映画でした。









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【映画】眠らない街 新宿鮫

2009-06-01 | 邦画 あ行
【「眠らない街 新宿鮫」滝田洋二郎 1993】を観ました



おはなし
新宿署の鮫島警部(真田広之)のあだ名は「新宿鮫」。って、そのままですね。

警察小説の映画化ということでは、個人的には「マークスの山」と並ぶ双璧じゃないかと思っています。もっとも、「マークスの山」の合田刑事(中井貴一)の方が現実的で、こっちはかなり荒唐無稽ですけどね。公開時、田中美奈子の下着姿にノックアウトされたのも、今ではいい思い出。ぽわわーん。

キィーン。旋盤で銃身を削りだしている男(奥田瑛二)がひとり。どうやら、ギターの形をした改造銃を作っているようです。もちろん、ちゃんと弾けますよ。ボロローン。ついでに、撃てます。ドカーン。

新宿のコマ劇場前を、赤いスウィング・トップを着て歩いているのは、新宿鮫こと鮫島警部(真田広之)。どうやら、モメゴトがないか警邏しているようですよ。おっと、花園神社の方に向かうと、外人娼婦が声をかけてきました。チンピラがあわてて駆け寄り、鮫島にペコペコします。「すいません、こいつ新人なもんで」。「ウッソでしょ。一斉摘発、明日って聞いたぁ」。これには鮫島の目がキラリン。「誰から聞いた。一斉が明日って」。

マンションの一室に乗り込む鮫島。そこには、案の定、外人娼婦をはべらせた西尾刑事(塩見三省)がいたのです。おとなしく連行されるふりをして、突然暴れだした西尾は叫びます。「おまえな、所轄の防犯なんてところはな、キャリアのいるところじゃねえんだよ。迷惑なんだよ。分かってるのか、おじゃま虫なんだよ」。とりあえず、そんな西尾をボコった鮫島は、ワッパ(手錠)をかけて、西尾を連行するのでした。

これには、防犯課の仲間が激怒。だって、みんなテキトーにやっていることだし、仲間にワッパかけるなんてとんでもないことらしいです。ということで、鮫島はキャリアの警部で、しかも仲間からは嫌われている一匹狼だということが分かりましたね。

鮫島はライブハウスに向かいます。すると、いるいる。ヤクザさんが、ライブハウスの前に車を止めてたむろしてますよ。「なんだてめえは」と恫喝するヤクザさんに、「ここは駐禁だ」と睨み返す鮫島。もちろん、ヤクザさんは窓を閉めて、無視の方向です。グワシャ。特殊警棒で窓を叩き割る鮫島。ついでに、ナイフを出して抵抗したヤクザさんを、ボッコボコにして「公務執行妨害と銃刀法の現逮(現行犯逮捕)だ」と、ワッパで車につないじゃうのでした。と、面構えのいいヤクザさん(高杉亘)が鮫島の前に進み出てきました。「鮫島さん、ワッパのキーいただけませんか。若頭、いい恥っさらしですから」「名前は」「真壁です」。なんていうか、真壁の男気に感心した鮫島は、そのままキーを渡して、ライブハウスに入っていくのです。

ライブハウスでは、ロックバンド「Who's Honey」のボーカル、晶(田中美奈子)が熱唱中。しかし、場内のアチコチにはヤクザさんたちがいて、なんだかきな臭い雰囲気。鮫島はそのままステージにあがり、ギターをトルエンのバイで逮捕しちゃうのです。客席から沸き起こる「帰れコール」。晶も「警察らしいやりかただよ」と睨んでいますが、なあに気にしない。

翌日、鮫島が署に出勤すると、デスクに晶が座って待っていました。「なんだ」「請求書。あんたが壊したアンプ代」、えーと30万円みたいですね。課長の桃井(室田日出男)をチラっと見ると、桃井は知らん顔。えーと、捜査費用はムリか。どうやら自分で払わなきゃダメっぽいです。とりあえず、晶を食事に誘う鮫島。「食えよ。これでチャラにしようってわけじゃない」と言いつつ、「クレジットにしてくれるかな」とか頼んでますが。なんかかりにも警部なのに、ちょっとセコすぎ。ところで、と晶は聞きます。「ライブ終わるまで待っててくれても良かったんじゃないですか」。「待ってたら藤野組にライブめちゃくちゃにされてたぞ」と答える鮫島。そう、ライブハウスの前にヤクザさんたちがたむろしていたのは、トルエンなんか売りさばく素人をボッコボコにするためだったのです。

と、レストランに、その藤野組の真壁がやってきました。店の奥ではチャイニーズマフィアが宴会をしています。こ、これはヒットマン。ピピンときた鮫島はさっそく、真壁の身体検査です。しかし、銃はもちろんナイフすら持っていないようです。なんだ、考えすぎでしたね。しかし、鮫島と晶が店を出ると、真壁が動きました。持っていたポケベルを変形させると、いきなり銃に変身。うらー。バキューン。もちろん真壁もただでは済まず、グサッと刺されていますが、あわてて店に戻った鮫島の手でその場は収まったのです。後に転がるのは、刺された真壁と、マフィアの幹部の死体です。ゴロン。店のそとはパトカーと野次馬で充満しています。そこに出てきた鮫島は、心配そうにみている晶に気づきました。「まだいたのか」「撃たれちまえば、良かったのに」。いやあ、田中美奈子のツンデレっぷりはサイコーです。

お友達の鑑識課員・藪(矢崎滋)に分析してもらったところ、ポケベル型改造銃は、木津要が作ったものと判明。ちなみに、木津っていうのは映画の冒頭で改造銃を作っていた奥田瑛二のことですからね。鮫島は以前、木津を逮捕したときのことを回想します。ぽわわーん。それは、ホモの集うバー。ちょっとイイ男の鮫島がイカニモな様子で酒を飲んでいるところに、木津がノコノコとナンパしてきたのです。送検される木津は、爬虫類のような目を向け、鮫島に言いました。「あんた警部なんだって。部下がひとりもいない警部だって、あんたの同僚が言ってたよ。ホントなら今頃、田舎の警察の署長やっててもおかしくないんだってなあ。今度よ、あんたに男の良さを教えてやるよ」。ゾクッ。うわー、イヤなこと思い出しちゃった。

さっそく、オカマバー周辺を探り始める鮫島。おや、突然ダッシュを始めました。何か手がかりを見つけたんでしょうか。途中、ヤクザにからまれている青年(浅野忠信)を助けたりしつつ、またダッシュ。敵はどこだ。どりゃー。

えーと、どうやら晶のライブを見に行こうとしてただけみたいですね。しかし、青年を助けたりしてたせいで、ライブは終わっちゃってました。ステージにポツンと残っている晶は言います。「待ってたわけじゃないよ」。ずきゅーん。ツンデレだ。晶は鮫島を待ってたくせに、ファンから送られた歌詞を見てたんだ、なんて言い訳をするのです。ちなみに、誰から送られたのか分からない、その歌詞のタイトルは「眠らない街」。自作のイラストまでつけちゃった力作です。

バーン。うぎゃぎゃーっ。なんと新宿の柏木公園で警官が撃たれました。それも一発の弾丸で、二人の警官が殺されるという惨事です。早速、本庁公安の香田警視(今井雅之)が乗り込んできて、新宿署に捜査本部が立ちましたよ。この香田という名前を聞いてイヤーな顔をする鮫島。そう、二人の間には因縁があったのです。ぽわわーん。

それは鮫島が長野県警にいたころのこと。同じキャリアで、公安にいた香田は過激派取締りのために、罪の無い人間をスパイに仕立てたのです。やったあ、と打ち上げを終えて、ほろ酔い加減で車に乗り込んだ香田を、鮫島は仁王立ちで止めました。「香田警部補、飲酒運転の現行犯で逮捕する」「鮫島警部、気でも狂ったんですか」「狂ってるのはお前だ。罪のない人間を脅迫してスパイにしたて、挙句スパイだと密告してリンチされるように仕組んだ」。しかし、そこにほろ酔いを越え、グデングデンの刑事(斉藤洋介)が「アカだってだけでなあ、立派な罪なんだよ」と鮫島に襲い掛かってきましたよ。うりゃあ。模造刀を頭に叩き込まれちゃう鮫島。うーん。ばたっ。

はっ。回想を終えると、目の前に香田「警視」がいます。「久しぶりだな」「何の用だ」「おい警部が警視にそんな口をきいていいのか」。ムッカー。前は俺より階級が低かったくせに。「まだ、渡す気にならんか」と言い出す香田。「バカなヤツだよ。トルエンやシャブ中を千人パクったってお前は定年まで警部のまま、このデカ部屋暮らしだ。お前が宮本の手紙抱えているかぎりな」。えーと、この宮本の手紙というのは、警察を揺るがすような秘密が書いてあるそうで、新宿鮫シリーズでもやたらと触れられますが、実際にシリーズを5作目くらいまで読んでも、サッパリ分からず。きっと「スゴイ」秘密なんでしょう。もちろん、この映画でも「スゴイ」ことしか分かりません。

さて、情報源のひとつから連絡が入り、木津のヤサを突き止めた鮫島。あとは改造拳銃を作っている現場を押さえるだけです。ということで張り込み開始。暑い日も雨の日も、とにかく張り込み生活。そうこうするうちに、再び警官射殺事件が起きました。今度はパトカーで警邏中の警官が二人撃ち殺されています。そのニュースを見て動きはじめる木津。やはり警官連続殺傷事件と木津の改造銃は何か関係があるのかもしれませんね。

ということで、課長に木津の令状をお願いしてみる鮫島。「捜査本部会議で説明すれば取れるだろう。ただ、その時点で木津は君のホシではなくなるぞ」「かまいません」。しかし、いざ捜査本部に報告しようと思ったら、香田が嫌味タラタラです。ムッカーとする課長。「ホシは奴らに渡せんな」。もちろん鮫島も同じ気持ち。「木津を噛みます。現逮なら令状は必要ありませんから」。

河口にある作業船が木津の銃器開発工場でした。こっそり潜入する鮫島。しかしドアを開けた瞬間にバーン。銃弾が耳元をかすめ、そのショックで、鮫島はクラクラです。そして、気づくと、柱にワッパでつながれてるじゃありませんか。えーと、どーしよう。「どんな形の銃なんだ」と木津に聞いてみたところ、「ぜったい銃には見えねえよ」との返事。うーん、そうか。で、手錠外してくれないかなあ。

もちろん、木津が手錠を外してくれるわけもなく、代わりに股間をまさぐってきましたよ。さらに耳まで舐めてきました。気持ち悪さに、思わず蹴りを入れる鮫島。しかし、つながれてる状態で、それは無茶だったようです。カッターで鮫島の服を切り裂き、木津はニタニタ笑ってます。どーすればいいの。えーと。えーと。そうだ。「木津。お前、警察を憎んでるんだろ。俺を殺すと、その警察が一番喜ぶんだ。感謝状くれるぞ」とわめきだす鮫島。もう恥も外聞もなく、宮本事件をペラペラ説明しはじめちゃいました。最後は、「俺は警官を辞めないんじゃないんだ。辞められないんだぁ」と涙声です。そんな鮫島を熱っぽい同情の視線でみつめていた木津は言います。「もうすぐ楽にしてやるよ」。うわーん。逆効果だったあ。

拳銃を鮫島の額に当てて、木津は言います。「舐めてやろうか。遠慮するなよ。俺に舐めて欲しいんだろ。舐めて欲しいって言え」。う、うわーん。「ナメテホシイ」。鮫島の傷をペロペロ舐め始める木津。そのままスライドして、ムッチューとキス。なんか、唇を離すと糸ひいてるんですけど。なんていうか、俳優さんはタイヘンだ。

と、そこに汽笛の音が。協力者(余貴美子)からの合図ですよ。「なんだよ。もう迎えが来ちまった。あと10分もありゃ済むのによ」と木津は愚痴っています。えーと、10分の間に、何が済むのかは考えたくない。と、ドアを開けた瞬間、「てめえ」と発砲する木津。しかし、木津は銃弾を浴びて後ろにピヨーンと吹っ飛ばされていますよ。腕から血を流しつつニンマリする課長。スゴイぞ、課長。やったね、課長。

ファンからもらった「眠らない街」の歌詞に曲をつけようと奮闘している晶。しかし、どうも煮詰まってメロディが出てこないようです。うーん、うーん。そうだ。冷蔵庫のタマゴの下に隠してあったコカインをふんがふんが吸ってみましょう。へっくしゅん。うわー、なんだこの萌え展開は。

そこに傷だらけの鮫島がやってきましたよ。「どうしたの。警官殺しに撃たれたの」と心配する晶を鮫島は無言で抱きしめ、さっさと洋服を脱がせ始めましたよ。あっという間にブラジャーとパンティ姿にされてしまう晶。と、そこで鮫島の手がハタと止まりました。「脱がせといて、止め?」と晶。うわー、もう萌え死ぬ。きっと鮫島も同じ気持ちだったんでしょう。思わず弱音を吐いちゃいます。「木津にやられたんだ。木津は俺を犯して殺そうとした。俺が俺じゃなくなったみたいで怖かった」。「オカマにされちゃったの」「試してみてくれ」。

試してみたところ、鮫島はオカマにされていなかったようでメデタシメデタシです。と、鮫島はコカインがこぼれているのに気づきました。ギクッとする晶。うがあ。鮫島は手当たり次第に引き出しから何から、ぶちまけはじめましたよ。「やめて」という晶の制止に、怒鳴り返す鮫島。「クスリに頼らなければできないようならな、もともと才能なんかないんだ。もうやめちまえ」。ドスドス出て行く鮫島を、メソメソしながら見送る晶でした。

さて、捜査本部ではあらたな動きが。木津の改造拳銃を持ち出したオカマのカズオ君をとっ捕まえて尋問した結果、警官殺しに使われた改造銃を持っている人間が判明したのです。それは砂上幸一という青年でした。鮫島は写真を見てビックリ。なんと、それは歌舞伎町でヤクザにからまれていた青年(浅野忠信)じゃありませんか。ガサ入れの結果、砂上は新宿のコンサートに行くことが判明。そして改造銃の残弾は2発。よし、分かった。公安の香田警視は自信満々。犯人の砂上は、残った銃弾で歌手を殺し、自分も死ぬに違いない。今日、新宿で行われるコンサートは、えーと研ナオコ。いや、そんなはずないだろ。おっ、これだ。相馬裕子のコンサート。ここに砂上は現れるに違いない!

えーと、かなり想像が入りまくりな推理ですが、エライ人がそういう以上、捜査本部はその線で警戒態勢を引くのです。もっとも、香田警視はエリートなので、コンサートといえば大きなホールで行われるものと思い込んでいるふしが。でも、ほら、ライブハウスって可能性もあるじゃないですか。ということで、鮫島は香田にライブハウスの可能性を指摘してみました。カチン。階級が下の鮫島にモットモなことを言われて、ムカッとする香田。だったら、お前が勝手に捜査すればあ。香田警視、ちょっと大人気ないです。

勝手にしていいなら、じゃあ、そうさせてもらおう。ということで、砂上のヤサを調べる鮫島。すると、机の上には「眠らない街」の歌詞あんどイラストがあるじゃありませんか。ついでに、放置されていたウォークマンを再生してみると、そこからは晶の歌声が。間違いない。砂上が狙っているのは晶だ。どりゃー。

そこらへんにいた交番警官を連れて、ダッシュでライブハウスに駆け込む鮫島。あっ、いました。最前列で晶の歌う「眠らない街」をウルウル見ている砂上がいましたよ。そして、その肩には携帯電話が。ちなみに今の小さい携帯じゃなくて、初期の肩からかける無線機みたいなデッカイやつですからね。そうだ。あの携帯電話が改造銃に違いない。そぉーっと砂上に近づく鮫島。しかし、もう少しというところで、砂上はキョロキョロしている交番警官を見つけてしまったのです。もう余裕はありません。「伏せろー」と叫びながら天井に威嚇射撃をする鮫島。しかし、砂上はシュタタとステージの上にあがり、改造拳銃を片手に晶を人質に取ってしまったのです。「一緒に死んでくれ」「作詞作曲の仲だ」と晶に哀願する砂上。そんなこと言われても、晶だって困っちゃいますよね。と、鮫島が叫びます。「やめろ、砂上。晶は俺の女だぁ」。「うそだぁ」と絶叫する砂上の声に、晶の「ホントよー」という叫びがかぶさります。思わず、改造銃を鮫島に向ける砂上。しかし、鮫島はその瞬間を見逃さなかったのです。バーン。鮫島の放った銃弾が確実に砂上にヒット。砂上は吹っ飛びました。

砂上を助け起こしつつ鮫島は聞きます。「大丈夫だ、砂上。どうして警官を狙ったんだ」「新宿には警官がいっぱいいたのに、僕はヤクザにやられたんだ。警官はサミットを守るけど普通の人間は守らない」。鮫島はかさねて問いかけました。「俺を覚えているか」。フルフルと首を振る砂上。んもう、ウッカリさんなんだから。

大量のパトカーがとまり、回転灯がまたたいている中、鮫島と晶は肩を寄せ合うようにライブハウスの外に出てきました。香田警視の「俺はお前をつぶす」という恫喝を、「あ、砂上に言っといたよ。撃つ警官選べって」と軽くいなした鮫島は、晶と歩き続けます。「良かったな。オッパイに穴が開かなくて」「バカヤロウ。俺の女なんて叫んじゃってさ」。

ライブハウスの前には無数の野次馬たち。そんな中に、木津の作ったギター型改造銃を持った男が立っています。鮫島は、ふと首の後ろにイヤな予感を感じて、振り返るのです。


えーと、この作品は見所が多いですね。まず、ホモセクシャルな方にとっては、真田広之と奥田瑛二のカラミはたまらないんじゃないでしょうか。どっちもいい男ですからねえ。その上、糸ひいてるし。一方、カワイイ女の子が好きー、というヘテロセクシャルな我々男子にとっては、もう田中美奈子のツンデレっぷりがサイコーです。あの猫系美人の田中美奈子が、「脱がせといて、止め?」とか言うんですよ。ちくしょー。ちくしょー。うがあ。ちょっと興奮してみました。えーと、告白しますと、田中美奈子の下着のシーン。灰色のコットン地の上下に、僕はやられました。いや、冗談ではなく初めて観た時、心に焼きついたのは、その下着姿。以来、「新宿鮫」というと田中美奈子の下着姿がちらついて困るんですけど。

田中美奈子の下着姿について語ろうと思えば、いくらでも熱く語れるんですが、このブログを読んでくれる方たちにドン引きされても困るので、ひとことだけ。まだ観てない男子はすぐ観るんだ。







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眠らない街 新宿鮫 [DVD]
クリエーター情報なし
フジテレビ
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【映画】女間諜暁の挑戦

2009-02-16 | 邦画 あ行
【「女間諜暁の挑戦」土居通芳 1959】を観ました



おはなし
特務機関員の岸井隆(天知茂)は、敵組織の実態を暴くため、京劇の美人スター(三原葉子)に接近したものの……。

とりあえず、「女」とか「肉体」とかタイトルにつけて気を引くのは、大蔵新東宝の常套手段ですけど、肝心の女間諜(高倉みゆき)が、トップクレジットのわりに出番が少ないのはどうしたことでしょう。まあ演技が下手だとか、社長の愛人だとか、イカニモな条件はそろっているものの、悪い女優さんじゃないんですけどね。

「日華事変の頃」「日本軍の戦果は果てしなく拡大されていったが、後方占領区に於ては敵間諜機関によるテロ行為が頻発した」。そんなテロップとともに、日本軍のトラックの前にドラム缶がゴロゴロっ。キキーッ。急停車したトラックに、わらわらと敵が群がり、マシンガンをバリバリバリ。で、タイトルがドドーン。えーと、新東宝にしてはハデですね。もっとも、このまま尻すぼみなことが多いのも、新東宝の特徴ではありますけど。

黒メガネの男の前に、陸軍中尉が出頭してきました。「貴様は過去2年間、特務工作員としてスパイ教育を叩き込まれた男だ。岸井たかし、これがたった今からの貴様の姓名だ。たかしは国家隆昌の隆」と厳かにいう黒メガネの男。「はい」と答えた岸井隆(天知茂)に、黒メガネの男は続けます。「いいか、女におぼれてはいかんぞ。それだけは言っておく」。

約束の北京駅に出かけた岸井を待っていたのは、女間諜の三津井雪(高倉みゆき)。と、駅頭で騒ぎが。どりゃー。うわーっ。タイヘンです。中国人間諜に陸軍大佐が刺し殺されていますよ。思わず、ピクっと反応する岸井。しかし、雪は押しとどめて言うのです。「岸井。あなたはわたしくの命令によってのみ行動すること。さあ、いらっしゃい」。

ということで待つことしばし、岸井に命令が下りました。スッと写真を差し出す雪。写真にはふくよかな女性が写っていますよ。「林晃彩、京劇のスター女優。表面は親日家を装ってはいるが、わが"むらさき機関"のブラックリストのナンバーワンよ。ただし、彼女がクロであるという確証は何もない。命令。岸井隆は林晃彩に接近せよ」。ん?誰か物陰で様子を伺っています。待てーっ。ぱからっぱからっ。馬で敵スパイを追撃するふたり。スチャッ。敵スパイは銃を構えますが、雪の方がタイミングが早かったようです。バーン。うわーーーっ。敵スパイは崖からゴロゴロと落ちていくのです。
「これで当分安全。私たちのことを嗅ぎつけた野良犬は片付けたわ。岸井、林晃彩の心を捉えて、その正体を暴け。しかし、絶対に自分の心を相手に与えてはならない」と雪に言われ「分かりました」と返事をする岸井。しかし雪はちょっと心配だったんでしょうか、「林晃彩は美人です。絶対におぼれないこと」と念押しをしていますよ。よっぽど、岸井は「おぼれやすそうな」顔をしているに違いありません。

京劇のスター女優、林晃彩(三原葉子)が踊っています。新東宝の映画において、三原葉子が踊るのは、太陽が東から昇って西に沈むくらい当然のことなので、ここはジックリ鑑賞してみましょう。うーん、いいですね。三原葉子という女優さんは、決して世間的な意味での「美人さん」ではありませんが、いつも一生懸命にやっている雰囲気が伝わってきて、とても好感がもてます。ふっくらした体型とあいまって、いい人オーラが伝わってくるようです。ということで、踊りの時間も終わり、林晃彩は岸井に紹介されました。さあ、岸井はうまいこと林晃彩に取り入ることができるでしょうか。

グワーン。憲兵が殺され、直後に大爆発。林晃彩と一緒に、その爆発現場に居合わせた岸井は、アヤシイ奴ということで、憲兵隊に連行されちゃいました。さっそく、むらさき機関の機関長、「王大人」こと河石大佐(竜崎一郎)に憲兵隊から確認の連絡が届きます。なにしろ、スパイと思って、味方の特務機関員を逮捕したらタイヘンですからね。しかし、王大人は「知らんねえ」と一言。雪が「大丈夫でしょうか」と心配しても、まあ訓練も受けているし、拷問に耐えられるだろ、と冷たいお言葉です。さらに「ヤツがダメなら他の手段を使うまでさ。三津井クン、キミは岸井に惚れたね」と言い出す始末。なんでしょうか、特務機関員っていうのは、惚れっぽい人々で構成されているんですかね。

ビシっ。バシっ。ひたすら拷問が続きます。しかし、岸井が頑張れば頑張るほど憲兵たちは疑いを深めていきます。なにしろ、普通の人間がここまで拷問に耐えられるわけもありませんから。と、10日ほど拷問を受けたところで、ようやく王大人から「岸井を離してやってくれ」という連絡が。なんだか、ぶたれ損な岸井です。

ズタボロの岸井は「謝天成を探れ」というメモを雪に残して、林晃彩のところに。あ、ちなみに謝天成(江見俊太郎)というのは、林晃彩の大ファンな中国人でしたが、プロの岸井からみると、どうもアヤシク見えたようです。それはともあれ、林晃彩のところに行って、「晃彩。僕は君と一緒にいたというだけで、憲兵に拷問された」と訴える岸井。「ワケをワケを教えてくれ」バタッ。おや、失神しました。これには、晃彩も責任を感じちゃいました。「岸井、ごめんなさい。私のために憲兵隊に疑われたりして」とクスリを口移しで飲ませています。もちろん、岸井は失神などしておらず、スキをみてニヤリと笑っているのです。

岸井の残したメモを回収した雪は謝を尾けて、阿片窟に潜入。阿片を吸いつつ、明日の十時に敵組織が秘密書類の受け渡しをする予定であることをつかみました。よーし、捕まえてやる。早速、翌日、憲兵隊に協力してもらい、敵の連絡員を秘密書類ごと逮捕です。とは言え、敵もさるもの。早速、連絡員は謝のことを吐かず、移送中に敵組織の襲撃で死んでしまったのです。どうも、あと一歩のところで敵組織はむらさき機関の手をすり抜けてしまうようですね。こうなれば、頼りは岸井の活躍にかかっているのですが。

その岸井は、晃彩とデート中、かつての部下に「中隊長どのっ」と声をかけられたりしつつ、どうにかこうにか調査を続行中。しかし、晃彩はなかなか尻尾を見せようとしません。と、チャンスがやってきました。晃彩が京劇の研究会に出るというのです。「先にうちに行ってて。すぐ帰ります。私の寝室で待ってて」、チュッ。にこやかに手を振って晃彩を見送る岸井ですが、もちろん、そのままにしておく気は毛頭ありません。ササッ。シュタタ。ササッ。尾行開始です。

しばらく尾けると、晃彩は一軒の廃屋に消えていきました。おやっ、消えた。しかし、調べると、地面に隠された扉があるではありませんか。そぉーっ。地下室から話し声が聞こえてきます。晃彩と謝、それに他にも仲間が大勢いるようですよ。切れ切れに聞こえてくる会話からすると、敵組織は高木参謀を襲って、作戦計画書を手にいれる相談をしているようです。これは一大事。早速、雪に電話しなければ。ジーコロ、ジーコロ。ダイヤルをまわし、呼び出し音をイライラと聞いている岸井。うわっ。タイヘンです。晃彩が出てきましたよ。このままじゃ、マズイ。慌てて受話器を置いて、先回りするべく岸井は走り出します。もちろん、岸井は、その電話に出た雪が「もしもし。もしもし」と繰り返していることは知りません。

トントン。トントン。岸井、いないの。部屋の戸を叩いている晃彩。岸井はあわててバルコニーをよじ登っています。おかしいわ、いないのかしら。晃彩が不審げな視線をドアに向けると、ドアがガチャっと開いて、岸井が顔を出しました。有無を言わさずチューをして、「君を驚かそうと思ってね」とごまかしています。「まあ、悪い岸井」。

抱き合って踊る二人。しかし、内心では別のことを考えているようですよ。

(「この人は油断できない。どこか、底の知れない冷たいところがある。だが、あたしの心の乱れはどうしたことだろう」)

(「この接吻も彼女の演技のひとつだろう」)

(「この人、あたしから何か探ろうとしている。でもダメ、それだけは。もうダメ、あたしの体、この人のものになることを求めてる」)

さて、岸井が連絡できなかったばっかりに、高木参謀は襲われ計画書が敵に奪われてしまいました。むらさき機関の王大人は「ヤツは何をしている」と怒りまくりです。「申し訳ありません」と代わりに謝っている雪。しかし、王大人は「おかしいと思わないか」と雪に言うのです。雪は「相手も大物です。そう易々とは」と懸命にフォローをしますが、王大人は「そう相手の林晃彩は才色兼備。君に劣らぬ美人だ」「もし君が晃彩だったらどうする。腕によりをかけて岸井を誘惑するんじゃないかね」と岸井を疑うのでした。しかし、みんなが女におぼれることを心配している岸井って、いったい。

早速、岸井を呼び出す雪。参謀が殺されたことを告げ、「岸井。キミは迷ってるっ!」と断言する雪。「迷う。そうかもしれない」と岸井は悩んでいます。「キミが迷っているのは、晃彩に心奪れているからです」ビシッ。「そんな、任務以外の話をやめてくださいっ」、イヤイヤをする岸井。「岸井、待ちなさいっ!!」。えーと、どっちが男で、どっちが女だか分かりません。ショボーンとした岸井に、「岸井。情報を期待します。では、お別れの握手」と手を差し出す雪。思わず、手袋をしたまま手を差し出す岸井ですが、雪は「ダメ。手袋を脱ぎなさい」と命令するのです。直接、肌を触れ合わせて、「お分かりになる。分からなければいいの」と、いきなり女の子っぽくなる雪。しかし、岸井はボケーっとしていますね、残念なことに。

敵スパイたちは一同にそろって打ち合わせ中。一方のリーダー。謝が岸井はアヤシイと言い出せば、もう一方のリーダー・晃彩はアヤシクないと水掛け論。と、そこにピーピーピピ、ガガガ、と無線機が鳴り始めました。重慶から命令がきたようです。北支派遣軍ノ最高司令官・多田大将ヲ爆殺セヨ。場所ハ北京郊外第一鉄橋。時間ハ不明。それを、またコッソリ覗いている岸井。見張りに見つかりましたが、見張りを倒し、ダッシュで雪に報告です。しかし、運悪く晃彩から送られたライターを落っことし、それを謝がニヤリと見つめていますよ。

「岸井からの報告です。敵の本拠地が分かりました」と、王大人に報告する雪の表情はうれしそう。憲兵隊を連れて出発です。おー。しかし、みんなが駆けつけるとアジトはもぬけのから。そのうえ、コチコチと音がしますよ。えーと、この金属の箱は何かな。ドカーン。あわれ、憲兵隊の何人かが爆発に巻き込まれ死亡。「岸井に裏切られた」と王大人は激怒しています。

王大人の命令で、岸井を殺しにやってきた雪。もし、命令を実行できなければ、雪が王大人に殺されるでしょう。しかし、岸井が「僕が死んであなたが助かるなら撃ってください」とつぶらな目で見つめてくると、雪はどうしても引き金を引けません。「岸井、わたくしの最後の命令です。逃げて。早くここを逃げてっ」。しかし、岸井は「雪さんが僕を信じてくれるなら、たった一つ、残された方法があります」と言い出しました。「岸井、キミを信じます。その方法を教えて」。それは、こういう計画でした。爆弾を仕掛ける場所は分かっている。あとは、僕が裏切ったふりをして、敵に多田大将の乗った列車の時刻を教えれば、敵はそこに集まるはず。そこを一網打尽にしましょう。「しかし、そんなことをすれば、キミは必ず殺される」と悩む雪。しかし、どうやら、それしか手はないようです。「明日の暁。4時15分」と時間を教える雪。さあ、ぐずぐずしていられません。急いで憲兵隊と連絡を取らなければ。バババババ。バイクで走り出す雪。時間との競争です。

わざと捕まった岸井は、敵に列車の時刻を教えました。「今日のの夜明け。4時15分。ペキンステーション」。敵も大騒ぎ。うわっ、時間がないじゃないか。それ、急げー。

ということで、爆走する列車。爆弾を仕掛ける敵スパイ。そして、現場に急ぐ憲兵隊のむらさき機関の面々が交互に描かれ、銃撃戦が開始されました。バーン、バーン。うわぁ。バーーン。ぎゃあああ。どうやら、憲兵隊が押しているようです。

そのとき、岸井と晃彩は隠れ家でお留守番です。「岸井、たとえ襲撃が成功しても謝はあなたを生かしておかないわ。あたしが魂を売ったことを知っているのよ」と嘆く晃彩に、岸井は答えます。「祖国を売り、魂を売ったのは僕だ」。「では、あの恋はかりそめではなかったの」「かりそめの恋なら死なずにすんだ。でも、僕は君の本当の心を知って満足している」。ひしっ。抱き合って、チューをする二人。と、そこに憲兵隊から逃げた謝がやってきました。バーン。とっさに岸井を庇って撃たれる晃彩。特務機関員の養成所を優秀な成績で卒業した岸井は、鍛えた腕で、スチャッとピストルを構え、バーン。って、撃たれてるし。どうも、訓練と実戦は違うようです。しかし、そこに飛び込んできた雪のピストルが火を吹き、謝は倒れ伏したのです。

「岸井、しっかりして」「雪さん、許してくれ。僕は晃彩に……」ガクッ。「岸井、恋してはいけないと言ったのにぃー」。

多田大将からお褒めの言葉を貰った雪は、「でも、あたくし、お役に立てましたこの機会にお願いして、日本に帰らせていただくことにしました」とあっさり、女間諜を辞めることにしました。日本に向かう船のうえ、雪はつぶやきます。「かわいそうな岸井。あなたは立派に任務を果たしたのよ。安心して、愛する晃彩と異国の空に、静かに眠ってください。わたくしはあなたが好きでした。この寂しさを忘れるために重い任務を捨てて、故郷に帰ります。岸井、さようなら」。船は一路、日本を目指して航海を続けるのです。


えーと、岸井が恋をしてはいけないのに、恋をするお話でした。っていうか、なんでみんな「岸井」って、呼び捨てにしてるんだろう。

ま、それはともかく、(いちおう)主演の高倉みゆきは、全編、白い乗馬ズボンに黒い革ジャンを引っ掛けているというボーイッシュな服装。一方、三原葉子はチャイナドレスのスリットも悩ましい、お色気タップリな服装でした。もちろん、これは好みの問題ですけど、岸井としてはお色気のほうにヤラレタってことなんでしょうね。それにしても、色悪の天知茂ですら、三原葉子の純粋さには勝てないという、貴重な教訓を学ぶことができたように思います。おしまい。







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【映画】女たらしの帝王

2009-01-26 | 邦画 あ行
【「女たらしの帝王」斉藤武市 1970】を観ました



おはなし
「帝王」の浩(梅宮辰夫)は、信じていたママ(富士真奈美)に裏切られ一文無しになったものの……。

基本的に前作「夜遊びの帝王」の続きの話です。とはいえ、梅宮辰夫の役名が松原浩から松永浩に変わったり、富士真奈美が艶子から恭子に変わったりと微妙な変化はありますけどね。これはたぶん、前作とは「パラレルワールド」だという監督のメッセージ、、なワケはなく、ただテキトーなだけだと思います。お話の内容自体もかなりテキトー。もともと東映のシリーズ作品は、回を追うごとにテキトーになっていきますが、このシリーズは2作目にして、ここまでテキトーに「なれる」んだ、とかえって感心したりして。テキトーな映画を、マジメに書くとなんだか悔しいので、こっちもテキトーに行きますよ。もちろん、読んでいただくみなさんも、テキトーにどうぞ。

「母ちゃん、どげんした」と郷里の炭鉱町にあわてて駆けつけてきた浩(梅宮辰夫)。「浩、電報打ってビックリしたろ。人目会いとうなってな。母ちゃんは父ちゃんのとこ行くけん。あと、頼むばい」と、死にそうなイキオイの母ちゃん(初井言栄)。ガクっ。。。と死ぬこともなく、近所の藪医者(殿山泰司)の見立てだと、単なる栄養不良からくる貧血だそうです。なあんだ、と一安心の浩。ところで、「先生、なんぼあったら病院ば建てられっとですか」。なんだい、藪から棒に、うーん、5億くらいかな。よーし、「俺はこの息子ば使こうて、使いまくって、どげんしても5億円稼ぎだしてみせったい」。下半身中心に力のはいる浩でした。

はい、浩はテーマ曲にのって、飛行機で東京に。前作では機関車に乗っていたことを考えると、えらい出世です。ちなみにテーマ曲は、あの名作。「♪シンボル、シンボル。男のシンボールぅ。こいつを使って、こいつで泣かせて、その上こいつがぁ、金を産ーむぅ♪」。

さて、意気揚々と銀座に戻った浩ですが、バー「エスペランサ」に戻ってビックリ。いきなり店が閉店しているじゃありませんか。艶子あらため恭子(富士真奈美)と組んで、大もうけしていたのに、いったい何事。あわてて恭子の部屋に行って、自分の分け前1千万円を要求する浩。しかし、恭子はそんな浩を鼻で笑い、「浩さん、あなた騙されたと思うのは間違いよ。あなたは銀座に負けたのよ。頭が足りなかったってワケね」とバカにするのです。

「まだ勝負がついたワケじゃねえ」と粋がってはみたものの、金はなし。せめて、エンコの政(山城新伍)から、貸した金を返してもらおうと思っても、エンコの政にも金はなし。どこをどう振っても、金はゼロです。しかし、金はなくても食事はできる。というか、しちゃうのが、エンコの政流のおもてなし。さあ、食ったら逃げろー、ぴゅー。えーと、そういうことだと思ってなかった浩は逃げ遅れちゃいました。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。忠男(田中邦衛)という、北海道の元炭鉱夫が飯代を払ってくれて、感激する浩です。「あの北海道の山男ば見習ろうて、おいもマトモな道ば生きったい」。

キックボクシングに挑戦する浩。ダメ。競馬の予想屋。ダメ。サンドイッチマン。ダメ。アイスクリーム売り。ダメ。土方。ダメ。おっ、電柱にホスト募集の張り紙が。「ホスト、これじゃあ。おいはやっぱり、おなごが絡まんと銭にならんたい」。ということで、ホストになった浩。しかし、最初の客は、どうみても金を持ってなさそうなオバサン(赤木春恵)ですよ。とはいえ、浩のモットーは女に尽くして、社会に尽くすなので、相手が若かろうが年をとっていようが、金持ちだろうが貧乏だろうが、シンボルを使って誠心誠意ガンバルだけです。はい、ここで大方の予想どおり、実はオバサンはたいへんな大金持ち。初めて女の喜びを教えてくれた浩に、ぽーんと1千万円の小切手をくれるのでした。なんか、あまりにベタな展開すぎて、笑えません。

ま、それはともあれ、1千万円を元手に商売をすることにした浩。とりあえず、六本木に「スナック ナポレオン」をオープンしました。とは言え、開店したから千客万来とは行かないでしょうし、まずは客筋を開拓することが必要です。自分が知っているのは銀座のママ、ホステスたち。彼女たちが気軽にやってくる店を作りましょう。そのためには付加価値をつけなくては。

1 ママさんたちへの入居斡旋サービス。離婚の慰謝料でマンションオーナーになったマダムに接近した浩は、自慢のシンボルで篭絡。サラリーマンより金を持っている銀座のママたちの入居を斡旋するかわりに、権利金をタダにしてもらうことに。これなら、安定収入を得られるマダムも喜び、銀座のママも喜び、ついでに自分もうれしい。いいこと尽くめです。

2 ママさんたちへのブランド品、格安提供。有名ショップ「セシール」のオーナーを篭絡。デパートに卸す額より、多少割高で商品を引き取ることに。それでも、ママたちに、多少色をつけて売れば、セシールも儲かり、ママも得をして、自分もマージンが入る。いいこと尽くめです。

3 ママさんたちの節税対策。税務署の職員を篭絡して、ママさんたちへの節税サービスを始めることに。これなら、ママたちも大喜び。職員だって、小遣い稼ぎになるでしょう。と、思ったら、職員は「他の儲けなんかいいから、もっと色々教えてーん」。えーと、望むところです。

そんなこんなで、スナックはママたちで大繁盛。しかし、この儲けじゃ5億円を稼ぐには何年かかることやら。ということで、事業の多角経営だ、おー。目をつけたのは、銀座のクラブにオシボリやおつまみを卸すサービスです。ライバルはいるものの、良心的にやれば、きっとうまくいきそうな気がします。エンコの政をおつまみ担当に。そして、偶然再会した北海道の山男こと忠男をおしぼり担当に。配達は大学の空手部の面々(小林稔侍ほか)に任せましょう。その名も「ナポレオンサービス」の旗揚げです。

さて、ここで唐突に、浩に女の子ができちゃいました。いえ、本当の子がどうか分からないんですけど、浩の留守中に女がやってきて、小学生の子供を置いていってしまったのです。なにしろ、覚えがあるかと聞かれれば、いくらでもある浩ですからね。まあ、母親が戻ってくるまで、育てることにしましょう。

銀座のオシボリ、おつまみは「銀栄サービス」という会社が一手に握っていました。しかし、そこに浩の会社が参入したために、銀栄サービスの売り上げは激減。当然、銀栄サービスのバックについているヤクザ組織、「八雲会」の会長・丸岡(金子信雄)は激怒です。
そうなると、嫌がらせが始まるのは必至。配送のお兄ちゃんがボコボコにされたり、お得意先が脅迫されたりと、ナポレオンサービスはピンチになっちゃいました。うーむ、どうしよう。早速、八雲会に乗り込む浩。えーと、嫌がらせをやめないと告訴しちゃうぞぉ。しかし、丸岡は「おい、松永。告訴くらいで、俺がおたつくと思ったら大間違いだぜ」と動じる様子もありません。まあ、告訴されてヘナヘナになるようじゃ、ヤクザは勤まりませんよね。

八雲会に、九州からヤクザがひとり訪ねてきました。木島(八名信夫)というその男は、子供を連れて逃げ出した女を捜しているようですよ。って、これは、もしや。

はい、その女が浩を訪ねてきました。女は襟子(花園ひろみ)といい、木島に騙されて娘を金持ちに売り飛ばされてしまったそうです。どうにかその娘を連れ出したものの、木島の追及が厳しく、東京まで逃げていたのです。そして、父(藪医者)の関係で、たまたま知っていた浩のところに、子供を預けて、今まで身を隠していたそうです。えーと、設定がかなりキビシイというかムリがありますけど、まあテキトーですから。

しかし、浩のところに襟子がやってきたのは、八雲会にはバレバレ。会長の丸岡は木島に居場所を教えてやるかわりに、ついでに浩を殺すように頼むのです。かわりと言っちゃ何ですが、子供をさらうのは、こっちでやっておいてあげるからね。

しまった、テキトーに書くといいながら、それなりに細かく書いちゃってますね。えーと、手短に行きます。襟子と浩を殺しにやってきた木島は、襟子に惚れていた忠男が自分の命を呈して殺害。しかし、子供は八雲会にさらわれちゃいます。さあタイヘン、ということで浩は権利書を持って八雲会に乗り込むことに。もちろん、エンコの政もいっしょです。

乗り込んだ浩は、子供と引き換えに権利書を渡すものの、丸岡は約束を破りピストルを手に。それをエンコの政が奪い取って形勢逆転。ついでに金庫まで漁ったところで、サイレンの音が。浩たちは大金を手に悠々と逃げていくのです。どこかで、こんな話を聞いたようなと思ったあなたの考えは正しい。えーと、最後は「まったく」前作と一緒です。

もちろん最後は「♪シンボル。シンボル。男のシンボル~こいつで世界を征服しようぜ。今度もガーッチリ、たーのんだぜぇ~♪」。そして、ベルの音がチン、チンまで一緒。

なんていうか、ヒドイ映画だなあと。前作は、それなりに面白いと思いましたが、これはいただけません。確かに東映は「似たような」話を量産する会社ではあるけど、それは予算やキャストの関係で、結果的にそうなってしまうだけです。どうも斎藤監督、まだ2作目なのに、東映の映画をなめきってる感じです。もちろん脚本がそうだったんだもーん、とかスケジュールがタイト過ぎてさあ、みたいな言い訳はあるのかもしれませんが、最終的に映画は監督のもの。現場で脚本をイジってでも、少しは目新しいものを撮るべきだったと思うのです。その点で、斎藤監督の映画に対する誠実さを疑います。ちょっと、厳しい言い方になってしまいました。斎藤監督のファンの方、ごめんなさい。







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