リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

ディケンズがクリスマス・キャロルで語りかけたかったこと

2021年11月26日 | 日々の風の吹くまま
11月25日(木曜日)。☂🌧☔。ゆうべは寝るのが遅かったので、起床は9時。いやぁ、降ってる、降ってる。すっぽりと雨雲の中に入っているから、下の道路もかすんで見える。これ、団子3兄弟でやってくる嵐の先頭なんだそうで、週末に2番目、そして週明けには暴れん坊の末っ子が来るという予報。やだねぇ、もう。ハイウェイ1号線(トランスカナダ・ハイウェイ)が今日もしかしたら何とか開通するかもと言うことで、朝から車が並び始めて、警察官がいつになるかわからないから「帰れ」と説得していたとか。実際に通行止めが(制限速度を落として)解除になったのは午後2時だったけど、もしかして「おれ、一番乗りぃ~」とインスタにでも載せるつもりだったのかな。だったら、アホじゃなかろか、もう。

きのうは午後4時半に早々と晩ご飯を済ませて、5時に出発。FedExが4時に届けて来た新しいチュニックを着て行こうかと思ったけど、雨の中を歩くのは寒そうなのでセーターに変更して、ジャケットのフードで間に合わない降りになった場合に備えて折りたたみ傘を持参。いつもは2区画の真ん中に堂々と止まっている車は、先週駐車場のスプリンクラーの冬支度のために頭上にヘッドのない区画に寄せたので、何だか窮屈そう。燃料ゲージによると、ガソリンの残量はタンクの半分をほんのちょっと切った4本線で、これなら十二分に大丈夫。ラッシュアワーなので、普通ならあちこちで渋滞に引っかかるところだけど、思いのほかすいすい。グランヴィルアイランドでは午後6時以降は駐車が無料になるので、ちょうどいいタイミング。劇場の入口で「ワクチンカード」をスキャンして(免許証と照合して)からロビーに入って、名札をもらって、二階のラウンジへ。名札と言い、ラウンジと言い、何だか懐かしい気分。バーで赤ワインを注いでもらって、懐かしい仲間と再会と劇場再開を祝って乾杯しながら30分ほどにぎやかにおしゃべりしてから、劇場内で専務理事ピーターの挨拶と演出家のボビー・ガルシアによる作品紹介。

レセプションは7時にお開きになって、その足で雨の中を20分ほど歩いてスタンリー劇場へ。着いてみたら、うは、劇場の前から角を曲がって続く長ぁ~い行列。入場制限が解除されたので満員なら620人。コロナ・プロトコルで全員のワクチンカードと身分証明を照合しなければならないから、Arts Clubのボランティアが3人がかりでスキャンしても行列はなかなか前に進まない。ゲストサービス担当のマネジャーのピーターが行列に沿って歩きながら「カード、身分証明、チケットの順にスキャンしますので早めに用意してください」と声かけ。慣れないことだからしかたがないな。結局は30分遅れて開演。待っている間ぐるりと見まわしたら、ほんとにほぼ満員。私たちの席は6列目のど真ん中で、前の列にインド料理レストランの人気シェフと奥さんが座っていたし、メディアで見覚えのある顔もちらほら。舞台の奥に(衣装を着た)バンドが着席して、音楽と共に役者たちが舞台に躍り出て来て、すぅ~っとと『クリスマス・キャロル』の世界へ・・・。

舞台は(ドリー・パートンが生まれ育った)テネシー州東部アパラチア山脈の小さな炭鉱の町。炭鉱の持ち主で銀行から商店までを支配しているスクルージはどけちの嫌われ者。クリスマスなんてのは時間と金のむだ使いでしかない。1936年、そのスクルージに吹雪のクリスマスイヴの夜、かって葬り去った相棒マーリーの亡霊が現れ、その予告の通り、過去、現在、未来の精霊が次々とやって来る。過去の精霊は救世軍風の服装で、スクルージに貧しい素朴な青年だった自分を見せる。心優しい妹ファニーが燭台に3本のろうそくを点して3つの願いを歌う「Three Candles」(3本のろうそく)には、慈善活動家でもあるドリー・パートン(結婚して55年で子なし)の人柄がにじみ出ていて、涙が出て来てしまった。現在の精霊は炭鉱夫の姿で、スクルージに貧しいながらもクリスマス精神を分かち合う人たちの姿を見せ、未来の精霊はすっぽりマントを被ったバイオリン(カントリー音楽ではフィドル)奏者で、自分の死を喜ぶ人たちの姿や墓に花を供えに来る甥のフレッド(ファニーの息子)を見たスクルージの問いに無言でフィドルを弾いて答える。ディケンズの原作に忠実な展開で何の違和感も起きないのは、永遠に変わることのないテーマを提示したヒューマンストーリーだからなんだと思う。

雨脚が緩み始めた夕方、ふと晩ご飯のテーブルをセットする手を止めて外を見たら、クィーンズ公園の端に今年も市のクリスマスツリーにライトが点っていた。あとひと月でクリスマス・・・。