リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

旅の空から~中世の城塞都市には歴史がぎっしり

2021年10月26日 | 日々の風の吹くまま
10月25日(月曜日)。🌤☀(カルカソンヌ)。何だか冷え込んでいる感じだけど、予報に反して晴れそうで、1年半も待ち焦がれていた甲斐があったというもの。コンティネンタルの軽い朝ご飯を済ませて、9時ちょっと前にロビーに降りたら、ちょうど今日のウォーキングツアーのガイド、ナタリーさんが来ていて、まずはホテルのすぐ隣のゴシック風の教会堂から。外側の塔などは修復のために足場が組まれていたけど、中に入るとステンドグラスがすばらしい。祭壇に向かって左側の円形窓が暗いのは夜を象徴しているからで、祭壇の中央には(文字を読めない信者のために)聖書のストーリーを描いた背の高いステンドグラスが3枚あり、右側には太陽(神の光)を表す明るい円形窓がある。

この地方はローマのカトリック教会組織に抵抗したカタリ派キリスト教徒の勢力が強かった時期があって、イエスをカトリック教会のように精神的な存在としてではなく、自分たちと同様に血肉を持つ人間であり、人間同士の助け合いや愛を説いたと捉え、一種の民衆運動のような様相を帯びていたために、ローマによって異端と認定されて迫害を受けたという歴史がある。聖母信仰が強く、女性でも宗教行事をつかさどったりすることができたそうで、カルカソンヌ育ちと言うナタリーさんの説明の端々にもローマから支配して来るカトリック教会の権威に対する反発が感じられて、ここでも地中海人の反骨精神を垣間見ることができた気がする。北のフランス王フィリップ二世が13世紀初頭に組織した最初の十字軍はこのローマの権威に屈しないカタリ派の掃討が目的で、異教徒に占拠されたエルサレムやキリスト墓所を奪還するのが目的になったのはもっと後のことだというから、人類の歴史というのはほんっとに何かと捻じれているもんだ。

カルカソンヌはフランスの外ではあまり広く知られていないらしいけど、ピレネー山脈の裾に沿って大西洋と地中海を蒸すむ重要な交易ルートだったために、古代からケルト人の市場が栄え、それに目を付けたローマ人が進出し、その後もケルト系のガリア人、ゲルマン系のゴート人や西ゴート人、ヴァンダル人、イスラム教徒のサラセン人、シャルルマーニュ率いるゲルマン系のフランク王国等々が何世紀もし烈な覇権競争を繰り広げた地域の要衝だったわけで、城壁の石の大きさや形の違いからその歴史の変遷を読み取ることができて、興味は尽きない。城塞の中の一角にあるシャトー・コムタの博物館の一室に大切に保存されている中世の壁画があって、馬に乗ったカトリックの騎士とイスラム教の騎士の一騎打ちの場面から、中世の大叙事詩『ローランの歌』の話になって、うん、援軍を呼ぶのに角笛を吹いて、吹いて、息が切れるまで吹きまくって、でも死んじゃったのよねと言ったら、「あら、ストーリーをご存じなのね」とびっくりした表情。そうだなあ、古すぎるのか、学校の教科書でほんのさわりだけに遭遇するくらいだけど、かって映画脚本講座で書いた脚本の中で使ったので、かなりリサーチしたの。

こうして2時間の予定が2時間半になってしまったけど、「今日は1件だけなので大丈夫。私も楽しかったからうれしいわ」とナタリーさん、育った故郷の実に豊かな歴史を情熱的に語ってくれて、そこらの教養講座では得られないような奥の深い勉強をさせてもらった気分で、ほんとに来られてよかった。メルシ・ボクゥ。