リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

旅の空から~石畳の細道をどこまでも

2021年10月20日 | 日々の風の吹くまま
10月18日(月曜日)。☀☀(ニース)。午前8時。朝ご飯を食べている間に、3つ目の寄港地ニースに入港。当初の予定ではポルトフィーノの次はイタリアの隣のモンテカルロだったんだけど、モナコが今年いっぱいクルーズ船を受け入れないことにしたので、急遽モナコを通り過ぎて隣のフレンチ・リヴィエラのニースに変更。埠頭近くの建物の色合いがポルトフィーノと同じなのは、同じサルディニア産の石を使っているということかな。イタリアからフランスまで(たぶんスペインまで)、国が違っても、言葉が違ってもあまり違和感がないのは、リヴィエラが古代ギリシャ人の時代から「地中海文化」を展開して来たところだからだろうな。きのうの夜にポルトフィーノを出てから、遠い水平線に沿って人間が住んでいることを示す小さな明かりが一晩中瞬いて見えていたっけ。

今日は5時間のバスツアーで、まずはエズという村。夏はバカンス客で大賑わいだけど、今はひっそり。バスを降りて、頂上の教会を目指して、くねくね、ジグザグと石畳の坂道を登りながら、よくこんなそそり立つようなところに住み着いたもんだと感心。でも、高ければ高いほど遠くが見えるし、地形が険しいほど海からの侵略に備えやすかったのかもしれないな。古代の世界地図では海を囲む国々の向こうはTerra Incognita(ラテン語で「未知の地」)となっていて、豊かな地中海はそれこそ「世界の中心」。経済や社会の覇権競争にしのぎを削ったのは今と同じだったんだろうな。でも、そうやって栄えた地中海文明も、やがて背後の「未知の地」からの脅威に晒されるようになったわけで、歴史ってほんとにおもしろい。

バスに戻って、今度はサンポール・ド・ヴァンスへ。ヴァンスという町にあるアーティスト村で、エズと同じように一番高いところまで、石畳の坂道がくねくね。でも、よく見ると一貫したデザインが見て取れる比較的新しい石畳で、両側はすてきな絵や工芸品、装飾品を売る店がずらり。ウィンドウに飾ってあった画家のサイン入りのコートダジュールの風景画が気に入って、値段も手ごろだったので買おうかな、どうしようかなと散々迷った挙句に、カレシに「飾れる壁がないじゃないか」と言われて断念。ほんどに気持が明るくなるような色合いのすてきな絵だったんだけどなあ。

坂道を歩いてくたびれての船への帰り道は、海岸に沿って延々と続く遊歩道プロムナード・デ・ザングレ。19世紀にこの地に保養にやって来た裕福なイギリス人たちの構想から生まれたから「イギリス人の遊歩道」。ベ・デ・ザンジュ(天使の入江)の名がほんっとにぴったりする、透き通るようなきれいな青い海に面してすてきなホテルがずらりと並んでいて、バカンスシーズンが終わって少し静かになったところだそうだけど、道路を縁取るように並んだおしゃれなレストランやカフェのパティオはけっこうなにぎわい。船に戻ってちょっと遅いランチを済ませて船室でくつろいでいたら、海の方からにぎやかな声。ベランダに出てみたら、わっ、練習をしているらしい赤い帆のヨットの列。目の前の防波堤には釣り糸を垂れている人たちが点々。やがて、燃えるような夕日・・・。


旅の空から~沖のクルーズ船が我らのヨットなの

2021年10月20日 | 日々の風の吹くまま
10月17日(日曜日)。☀☀(ポルトフィーノ)。目が覚めたらもう8時で、2つ目の寄港地ポルトフィーノの沖にすでに錨を下ろして停泊中。今日のツアーは9時半集合なので、慌てて飛び起きて身支度。それにしてもよく眠ったもんだ。きのうは午後に3、4時間も昼寝をしたのに、まだ寝足りなかったのか、9時間も眠ってしまったんだから、びっくり。もしかしたら、巣ごもりしているうちにそのくらい年を取ってしまったということなのかな。だとしたら、ほんとに2年というシニアにとっては黄金の時間を盗まれたような感じで、ワタシの貴重な時間を返してくれぇと叫びたくなるくらい。

急いで朝ご飯を食べて、急いで支度をして、滑り込みセーフで補給船に乗り込んで、ポルトフィーノへ。小さな入江を急な斜面が囲んでいるような小さな村(住民登録をしているのは500人くらいで、後は別荘を持っていて長期滞在する金持)だから、当然たとえ小さくてもクルーズ船が接岸できるような施設はないので、沖合いに停泊して、tenderと呼ばれる補給船を下ろして、ツアーに参加する客の送り迎え。イタリアン・リヴィエラだけあって、白い帆を張った大きなヨットがゆったりと波に揺られ、マリーナにはレジャーボートがひしめき合っている。マリーナを囲むように広がるピアツェッタには日よけの下にテーブルを並べたおしゃれっぽいレストランやカフェ、その上は緑色のよろい戸を付けた両開き窓。オレンジっぽい赤や黄色の壁が多いのは、サルディア島特産の石を使っているからだそうで、まるで絵に描いたような、いかにも地中海らしい明るい風景。でも、建物の正面をよぉ~く見ると、一見して普通の窓なんだけど、実は「絵に描いた窓」だというのがあちこちにあるからおもしろい。何でも昔、昔、ときの王様が「窓」に税金をかけたもので、一計を案じた住人が窓の数を減らして税金を軽くしようと、壁に窓の絵を描いたんだそうな。いつの世も税金には頭を悩ましているのは変わりがないってことか。

陸に上がって、待っていたツアーガイドと合流して、まずは丘の上にあるチャペルと岬の突端にある灯台。平地は猫の額以下で、すぐに崖が切り立っていて、家々がへばりついているという感じ。くねくねと上って行く坂道は人間2人がすれ違えるだけの狭さで、けっこう急なのでところどころに階段が2、3段。背丈より高い塀に挟まれた道路の両側は住宅で、それとわかるのは門があるから。つい日々の食料品の買い出しはさぞ大変だろうなと思ったのは、ワタシが庶民だからかな。でも、かなり高いところにあった門の脇に自転車が見えたのにはびっくり。だって、自転車で坂を下りるのはスピードが出すぎそうで怖いし、上るとなるといっくら踏ん張ってぐいぐいとこいでも、5メートルも上がらないうちに息切れしちゃいそう。まあ、素敵なヴィラにお住いの奥様はご自分でスーパーになんぞおでましにはならないだろうけど。

坂道を上がって、坂道を下がって、ピアツェッタに戻って来た頃には1週間分のウォーキングをまとめてやってしまった気分。おみやげ屋をのぞいてみたいと思ったけど、地元のコロナ規制で団体で来る観光客は団体のままで行動して、ショッピングなどの個人行動はご法度になっているということで諦めざるを得なかった。ワタシが欲しかったのは冷蔵庫のマグネットともしかしたらご当地がテーマのクリスマスツリーの飾りくらいのもので、デザイナーブランドのショップに入る気はさらさらなかったんだけどな。でもまぁ、コロナ規則はめんどうでもちゃんと守る方が自分の安全、周りのぜんぜん知らない人たちの安全のためだから、文句は言いっこなし。ぶらぶらしているうちに補給船が来て、モーターボートが蹴立てる波にもまれながら、Silver Shadow号へまっしぐら。沖の真っ白なクルーズ船は私たちのヨット。お金持諸氏のヨットよりもずっと大きいぞぉ、なんてね。(WiFiの接続がおぼつかないので写真はお預けってことで・・・。)