リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

まだ我が家の実感がないけど

2015年07月21日 | 日々の風の吹くまま
午前10時半の早起き。いかにも雨が降りそうな空だったけど、いそいで朝食を済ませて、
一路ニューウェストミンスターへ。新居の引渡し時刻が正午。正面にトラックが2台止まって
いて引越しの最中。ポールと売主側のエージェントのピーターがロビーで待っていて「荷物
の運び出しが遅れているんだよ。法的には正午が退去期限なのに」。ま、高齢者だし、引越
しトラックの到着が遅れたのかもしれないし、ガラクタを残さずに明け渡してくれたらそれで
いいと思うけど。

ロビーで話をしながら待つこと30分。娘を伴ってキム夫妻が降りて来た。「終わりました」と
2本の鍵がついたキー・フォブ2個。この認証用キー・フォブがないと玄関の中に入れないし、
エレベーターで上がれないし、住人専用の駐車場にも入れない。めんどうでもあるけど、出
かけるのにいちいち防犯アラームをセットして60秒以内に外へ出て、帰って来たら30秒以
内に解除して、という手間に比べたら楽なもの。これが「マンションは鍵ひとつで出かけられ
る」という利点なんだろうな。まずは駐車場への入り方を覚えて、決められたところ(2台分)
に止めて、「自転車置き場」と書いたドアを開けて(自転車はない)、中にある専用ロッカー
に持って来たスチール棚を入れた。ケージのようなロッカーは各戸にひとつずつあって、私
たちのはかなり大きいから便利そう。

次はエレベーターでの使い方を覚えて(ピッと当てるだけだけど)、いざ23階へ。ポールに
促されてカレシが鍵を開けた。ドアを開けたら、がら~ん。お願いした通りにすっかり空にし
てくれていた。もちろん床にはごみが落ちているけど、そこは引越しの前に掃除すればいい
こと。でも、キムさんは「掃除の費用を払うので請求してください」と言い残して言ったという
から、アジア人の律儀さなのかもしれないな。コンセント等の位置や要所の寸法を間取り図
にマークして、写真を撮る作業に1時間ほどかかったけど、家具も何もなくてがらんとしてい
るせいで、話し声や窓の外の音が室内に反響するから、まだ「我が家」と言う実感はわいて
来ない。でもまあ、これから5年、10年とかけて「我が家」にして行けばいいよね。

帰って来てちょっと疲れた気分だけど、明日は午前11時にマイクと「我が家」で会う予定で、
しばらくは早起き。でも、そのまま習慣になればいいね、せっかくオフィスから空を見られる
ようになるんだから。

     

     

☆長い道のりだったけど、もうすぐ引越し

2015年07月21日 | 日々の風の吹くまま
 7月20日。新居の購入契約が確定したのが5月の半ば。でも、売主が7月明け渡しを希望して、こっちも売れた家にガラクタ整理の目的で8月半ばまで居座っているので、最終決済は7月20日、明け渡しは翌日21日ということになって、その日がとうとうやって来た。金曜日のうちに、購入金額(ざっと8900万円)に移転登記税160万円、明渡し後の164日分の固定資産税と7月の管理費の11日分を加算して、不動産会社の信託口座に預けてあった頭金を差し引いて、弁護士事務所の手数料を加算した合計額を銀行手形にして、弁護士のリチャードのところに持って行き、書類にサインをして準備は整っていた。5月初めに家の売却の方を決済して即席ミリオネアになった私たちだけど、銀行の残高はみごとに桁がひとつ減っていて、「ミリオネア」はあっさり2ヵ月半で終わり。(実感する暇は全然なかったな。)

そして今日午後3時過ぎ、決済と移転登記の手続きを担当したパラリーガルのキンバリーから「すべて完了しました」のメール。やっと新居の決済と所有権の移転登記の手続きが済んだわけで、これで私たちの「家なき子」状態にもやっとピリオドを打って、めでたく「ニューウェストミンスター市のアップタウン地区にあるタワーの23階、床面積137平方メートル+バルコニーとルーフデッキ合わせて約70平方メートルのコンドミニアム」が我が家になった。明け渡しは明日の正午。激流に押し流されて来たような5ヵ月半だった。カレシは想定外のことに直面して「できない」と思った瞬間に轍にはまってしまって、誰の言葉も耳に入らなくなるところがあって、カレシがペースの速さについて行けなくて不安障害のようになった時期もあったし、このまま15年前の地獄に戻るのではないかとワタシまでが情緒不安定になったときもあったし、ワタシとカレシの40年があっけなく空中分解してしまうのではないかという一触即発の場面もあった。ワタシが引っ越したいと言い出したきっかけが15前に私たちを苦しめた事件のフラッシュバックだったのがカレシにはショックだったようだけど、大げんかを繰り返すうちに少しずつそれぞれの気持に向き合うことができたから何とか2人でここまでたどり着けたんだと思う。

カレシもワタシが窓のないベースメントの仕事場で25年も働いて来て、空が見える生活がしたくなった気持をわかってくれたらしい。今はカレシの気持が揺らぐたびに「キミのために引っ越すんだからね。キミにハッピーでいてもらいたいからなんだよ。キミがハッピーにならなかったら引越しは失敗ってことになるんだからね」とまるで呪文を唱えるようなことを言っている。掃除くらいは引き受けるから、楽しいことをする資金を稼ぐくらいのペースで仕事を続けたらいいとまで言ってくれて、心境の変化の大きさに多少の戸惑いを感じないでもないけど、これからの生活に前向きになってくれたのはすごくうれしい。新居に落ち着いたら、仕事はほどほどにして、カレシのために毎日新鮮な食材を買って来て、おいしい料理を作ってあげよう。義理の姪のサンドラが「新しい出発ね」と言ったけど、まさに私たち夫婦の「新たな出発」・・・。

モノを「捨てられない人」のカレシも、セルフストレージを借りたことで、納まり切れないモノも手放さなくてもいいのだとわかって安心したのか、前向きに引越し準備にとりかかるようになった。庭はなくなるけど広い北東から南東向きのルーフデッキがあるし、南東から南に伸びる広いバルコニーもあって、日当たりは十分。ルーフデッキにはプランターをいくつも置いてこれまでとはちょっと違ったガーデニングに挑戦すればいい。そう決めて、ガレージにずっと放置してあった材木を使ってプランターを作り始め、試行錯誤の末にけっこうしゃれたプランターができあがった。[写真]

ワタシは電動ドリルの使い方を指南しただけだから、不器用で手仕事が苦手なカレシとしてはすごい快挙だし、おかげでかなり自信がついたようでもある。このプランターで摘み菜にする野菜を育て、屋内のキッチンのすぐ外に置く園芸スタンドではマイクログリーンを育ててくれるという話。いろんなことが変わるということだなあ。ごく普通の老後生活に一歩近づくのかもしれない。ここまで来るのに私たちは40年かかったということだけど、引越しを10年先まで待たなくて良かったとつくづく思う。

新居が決まって最初に気づいたのが、持って行ける家具がないと言うことだった。ワタシが自分で設計した家だから、作り付けのものが多くて、引越しするからといって外すわけには行かない。なぜ何もかも作り付けにしてしまったのかは記憶が飛んでしまって覚えていないけど、考えてみると私たちはまともな家具を持ったことがなかった。結婚してアパートからタウンハウスに引っ越したときは、食器戸棚やコーヒーテーブル、ナイトスタンド、ワタシのデスクをすべて自分で作ったものだった。普通の勤め人だった頃の私たちには上等な家具を揃えるお金がなかった。不細工な家具でも作って使い始めてしまったら、新しいのを買うのがめんどうで結局はまともな家具を買わないまま、新築ついでに作り付けにしてしまったのかもしれない。デザインを選んで寸法や仕上げを指定できる家具店が郊外にあって、カスタム家具の製作について問い合わせたら、オーナーから「ご相談に乗ります。電話してください」との返事だったので、ここで新居の家具をまとめて新調することにした。個人経営の小さな会社だけど、湿度の高いアジアからの輸入品を冬は暖房で乾燥する環境で使っていたら、椅子など数年でぐらついてしまったから、BC州やカナダ東部産のカエデやオークの無垢材を使って地元で製作しているところが魅力。家具の全面新調なんてこれが最初で最後だと思えば、ン百万円の出費も大いに価値があるというもの。

私たちが住むことになるニューウェストミンスター市はバンクーバーの隣の隣の小さな町。カナダ西部で最初に市制を敷いたところで、1866年にバンクーバー島植民地と合併した際に首都の地位をビクトリアに取られたり、カナダ横断鉄道の終点がバラード半島北側に行ってしまったりの不運?に遭ったけど、20世紀の初めにバンクーバー市に抜かれるまで現在のメトロバンクーバーで最大の都市だった「由緒ある」ところ。現在の人口は7万人足らずで、面積は15.3平方キロ。隣のバーナビー市との境界からフレーザー川の岸までは直線距離で3キロもなくて、何となく周りの大きな都市の発展で取り残されて、ひっそりと母なるフレーザー川の懐に抱かれて眠っているという感じもする。だからこそ昔の面影が色濃く残っていて、市政も市民に密着しているように見える。私たちの新居があるアップタウン地区の東はクィーンズパーク地区、西はブラウオブザヒル地区で、どちらも住民参加で「歴史遺産」の保護に熱心だし、高齢者や障碍者に優しい都市作りに積極的なようだし、芸術や文化活動にも熱心だし、どうりで住んでいる人たち、住んだことのある人たちが口を揃えて「好きだ」と言うはずで。ワタシも住んでみたらきっと好きになると言う予感・・・。

明け渡しが済んだら、コントラクターのマイクにペンキ塗りなどの内装工事をしてもらって、8月6日に引越し決行。あと2週間とちょっと、本腰を入れて「荷造り」をしないと・・・。