この著者の川端基夫氏の書く本は、非常にわかりやすく、しかも奥の深い論述がなされているので、新刊の告知がされるとつい買ってしまうのですね。
前にも、このブログで川端氏の本を紹介しました。
また買うでしょうし、またこの場で紹介するでしょう。
この本では、日本の企業がアジア諸国にいって事業を展開するも、日本でやっている通りにしても、上手くいかないで、試行錯誤しつつ、どのように事業を展開していったかをつまびらかに論述しています。
これは実際に事業に携わった人の生の声も収録されていますので、臨場感があり、集中して読むことができます。
アジアの主要都市では、いたるところに日本の百貨店に出くわすようです。
台北に三越、クアラルンプールに伊勢丹といった具合に。
また、スーパーは、ヤオハン、ジャスコ、西友、ユニー、サミット、いなげやといった具合に一杯来ているようです。
百貨店やスーパーは、1999年1月の時点で、85%が日本のものだそうです。
この本は1999年に書かれた本ですが、それほど事情は変わってはいないのではないでしょうか。
当地では、小売業と日本の問屋の協力によってなっているようです。
困難やリスクを伴うのでこうするのだそうです。
当地に日本の企業がビジネスをしにいくも、撤退の憂き目にあうことがよくあるのだそうです。
それは例えば香港では、短期的に事業戦略を考えるのに対し、日本では長期的な視野に立って商売を考えるようですね。
この地では、先に何か月分かの賃貸料をとってから貸すのだそうです。
しかし途中で撤退しても、そのお金は返されないのだそうです。
しかし日本では、毎月月ごとに貸すのが当たり前ですね。
そこに商習慣の違いが見て取れますね。
借りた土地の直営部分に関しては、品を仕入れて販売しますが、テナント部分に関しては、サブリースをして賃貸料を取るということをしていかないと、元が取れないのでそうするより仕方なかったようですね当時は。
今は変化しているのかもしれませんが…。
そしてマレーシアでは、所得分布や宗教的な差異によってビジネスを構築していかないとうまくいかないようですね。
この地では、華人系が高い所得を得ているようです。
そして、イスラム系の人が多いですから、宗教的禁忌として、宗教的な方法にのっとってと殺したハラルとそうでないノンハラルと分けて鳥を売らないと売れないのだそうです。
ブミプトラ政策とは、華人系に搾取され続けたマレー系の人間の地位的向上を目ざして行われた政策で、その時以降、会社の割合は、ブミ3割、ブミ+マレーシア4割、外資系3割という比率になったようですが、華人はよく勉強するために、そういった政策にも関わらず、法律的な抜け穴を探し、それを合法的に自分のやりたいように適応させてビジネスを展開していったようです。
立地、製品、所得別にターゲットを変えながらビジネスを展開していく必要があるそうです。
こういった宗教的な差異、民族的な差異を考慮に入れながらビジネス展開をしていかなくてはならないゆえに、日本のように宗教的、民族的な差異がない国とは違って発展が遅れるということですね。
私は以前にタイに行ったことがありますが、首都バンコクでは大きな賑わいを見せていましたが、山奥の方では何か物を売る気がないような人が多くいたのを覚えています。
何故働かないの?と疑問に思われるでしょうが、こういう人たちは、何も働かなくても、その辺に生えている野菜や果物を獲って食べればいいという人生観でいるために、あくせく働かずに寝ているのですね。
いい悪いは別として。
それに、バンコクではCD屋もありましたが、たいていはカセットテープでした。 CDは少数でした、今はどうかわかりませんが。 当時CDはお金持ちだけが買うもので、一般の人はカセットだったのです。
そういうお金持ちから付加価値税をとるのが当時の政策だったようです。
ですからCDを買うと付加価値税を取られました。
しかしカセットテープを買っても付加価値税は取られませんでした。 これも興味深いことでしたね。
今は、インド.ネパール料理屋が日本にたくさんできています。
私もそこで食べて店員さん(たいていネパール人かインド人)に何故ネパールやインドで商売をしないのですか、と問うたところ、ネパールでは金銭取引の習慣が国民全体にいきわたっていないから、商売してももうからないんだということです。
ですから彼らがネパールやインドに帰るかどうかはわからないといいます。
なるほど、日本のような金銭取引が当たり前の国は、世界を見渡しても少数派なのですね。
また台湾では、モノの流通経路の違いがあり、日本の流通の仕方でやろうとしてもいけないのだそうです。
また法律の違いもあるのです。
土地使用分区管制があり、商業区でないとビジネスはできないということです。
また国民性の違いもあり、台湾では半年か1年で利益でないと資本を引き揚げてしまうのだそうです。
また、日本で特売をするのは、その特売商品を出すことで他の製品を波及的に売れるという国民性を反映して商売をしていますが、上海では特売をしても特売商品だけが売れて他の製品の波及効果はないのだそうです。
これも興味深いですね。 また先にもマレーシアの民族間で所得格差があると書きましたが、中国でも事情は同じで、都市での所得は農村の3倍の開きがあるのだと思います。
こういった所得の分かれるところでは、やはり商品も差別化しないといけないようです。
やはり日本での均一的なビジネス展開ではうまくいかないのは明白ですね。
それを一度改めて、当地で展開できるように適応させていった方法をつまびらかに論述されているのです。
ですから、この本のタイトルを『幻想論』ではなく、『適応論』と変えたらいいなと思いました。
日本の企業が現地に行ってビジネス展開しているさまを見て、「アジアの人たちを搾取している」と書いてあるのを見たことがありますが、私はそうではないと感じました。
搾取しているというのは、やりたくないことを無理やりやらせる、という感じのニュアンスですが、当地の人たちは、自主的に仕事に従事しているのであって、いやいややらせているのではないと思いますし、現に行った私のもたところそう思いました。
都市と農村、また欧米からの観光客と接する人とそうでない人の格差はあるけれども、それが直ちに日本含む観光客ゆえにそうなってしまうのかどうかは、見地によって違ってくるでしょう。
それはにわかに断定できないと思いました。
その季節になると結婚を控えたカップル、または結婚したばかりの家族の人たちに合わせて、家族用品が売れるようになるのだといいます。
こういった事を見ても、搾取しているのではないのは明らかですね。
これまで書いてきたことの内容のように国民性の違いや商習慣の違いを学んでからビジネス展開をしていかないとうまくいかないということの例を書いてきましたし、これからそれらは不変ではないでしょうから、変わった部分について随時学んでいかないといけないでしょう。
そういったことに従事している人でなくとも、外国に行ったりしたときに、それらの違いを実際に目の当たりにして、そこで思ったことをこれからの人生に活かすこともできるはずです。
抽象的過ぎて分からないかもしれませんが(笑)、こういった知識を得ながら生きていくか、知らないで生きていくかで充実感が変わってくるということです。
ここに紹介したことはほんの少しだけであり、この本にはまだまだたくさん興味深いことが書いてあります。
ですからこういったことに興味ある人はそれらを全部読んでいただきたいです。
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★参考図書
川端基夫 『アジア市場のコンテキスト』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/450418711.html?1514876219