読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

作家 六波羅一輝の推理 秩父夜祭・狼の殺意  鯨統一郎 中公文庫

2013-08-14 23:18:06 | 読んだ
鯨統一郎の作品のなかでは、割とまともな=ハチャメチャ性の薄い、作家・六波羅一輝の推理シリーズである。

① 白骨の語り部 
② ニライカナイの語り部

と「語り部」シリーズなのかと思っていたら、

③ 京都・陰陽師の殺人 
④ 小樽・カムイの鎮魂歌(レクイエム) 
⑤ 湯布院・産土神の殺人、

となった。

主人公の六波羅一輝は、民俗学の学者であった父を持ち、第1作だけが売れた作家である。
売れなくなってしばらくして、一輝の大ファンである蜃気堂出版の編集者北山みなみが一輝の担当者となり、彼を励まして現地取材を通して小説を書かせようとした。
しかし、その先で殺人事件が実際に発生。それが、岩手県の遠野を舞台とした「白骨の語り部」である。

以降、取材に訪れる先で、実際に殺人事件が発生する、ということが続く。
で、その殺人事件を小説にまとめ、六波羅一輝は徐々に売れる作家となり、さらには事件を解決する探偵となる。
というのが、このシリーズの流れである。

で、一輝の小説の書き方の特徴として「ライターズ・ハイ」というのがあり、自分でも無意識のうちにコンピュータに打ち込んでしまう。そこが重要な部分となる。というのがある。

最初のうちはそのあたりも割と重要な場面であったが、とうとう今回はあまり重要ではなくなってしまった。
まあ、それだけ本格的推理小説に近づいてきた、ともいえるわけであるが、一方では鯨統一郎らしさが薄れてきたともいえる。

というわけで、今回の秩父夜祭・狼の殺意は、秩父にのこる狼伝説をもとに民俗学的要素を大きく含んだ推理小説である。
3人もの人が殺される。(そのうち4人となるのだが・・・)

で、徐々にこちらの期待していた伝説をもとにした解決、さらには狼伝説の詳細と経緯などから物語は離れていく。
つまり、殺人事件は「世俗の諍い」が原因なのである。
まあ、このシリーズはそういう傾向があるのだが、もう少し民俗学のつまり伝説の新たな解釈などをしてほしいと思うのである。

以前に読んだ邦光史郎の「幻シリーズ」とか、北森鴻の「那智蓮杖」シリーズのようなものを待っている、こちら側の勝手な期待もあるのだけれど、そういう歴史というか民俗学的なものを読みたいのである。ぜひ、期待に応えてほしいなあ。

シリーズの中では、この作品あまり面白くなかったなあ、というのが感想なのだが、あくまでもシリーズの中ということで、このシリーズは好きなのであるからして・・・

ところで、この小説の題名であるが、これまでは、サブタイトル的だった「作家・六波羅一輝の推理」がメインとなっている。
これはどういうことなんだろうか?


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