読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ローマ人の物語35 最後の努力(上) 塩野七生 新潮文庫

2009-10-26 22:44:24 | 読んだ
久々のローマ人の物語である。

ローマの建国から、ユリウス・カエサルによる大ローマ帝国、そしてパスク・ロマーナの確立、そして堕落と危機を経て、いよいよローマ帝国の最後になった。

本書の巻頭に「読者へ」という著者からのメッセージがある。
そこに、ローマの全史を簡単に記したものがある。
『王政→共和政→初期・中期帝政(元首政)→後期帝政(絶対君主政)→末期』 となっている。

本書から続く3巻「最後の努力」はこの後期帝政が書かれてある、とのこと。

第1部は「ディオクレティアヌスの時代」(紀元284年-305年)である。

パスクロマーナが確立されてから、貴族或いは元老院が堕落しはじめる。
平和というのは堕落とか腐敗とかを招くのだろうか?

そうしているうちにパスクロマーナは崩壊し始める。
外からの蛮族の侵入と内乱。

これを退けたのはいわゆる「軍人」である。貴族から軍人へ元首が変わる。
パスクロマーナを継続するためである。

ディオクレティアヌスは、軍人出身の皇帝である。
彼は現実に即するための施策を実施する。
ローマ防衛圏をより強固にするために、皇帝を2人とする「二頭政」更に4人にする「四頭政」。

市民の同意や元老院の承認が必要だった「皇帝」、つまり市民の代表者であった皇帝を、市民を統治する「皇帝」へ、絶対君主制へ移行させたのである。

これは軍隊組織を国家に当てはめたようなもの、つまりそうしなければローマの平和を維持できない状態であった。

このようなローマの移り変わりを読むと、地方自治とか国家というものがわかるような気がする。
そのとき、その場では最善手であるのだが、長期的に見ると滅亡へ向かっているようである。

中国の歴史でも或いは日本の歴史でもそうなのだが、その「朝(ちょう)」(政府といってもいいが)が絶頂にあるときから堕落と腐敗が発生し滅亡に向かう。そしてその滅亡時には優秀なる人物が登場し、ありとあらゆる素晴らしい延命策を講じるが、その時その場限りのものになってしまう。

ローマ人の物語にこれから登場する人物たちはそういう人物なんだろうと思う。
本書に登場したディオクレティアヌスがそうであった。

ある制度や組織は完成したときから陳腐化が始まる、と思う。
そして、その陳腐化をてこ入れし始めたときから、その制度や組織は当初の目的を失うのである。

そういう意味で、本書のローマはすでにパスクローマナを確立したときから、内側も外側も環境がまったく変わってしまっている。

ため息をつきながら35巻を読んだのであった。

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