読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

小説十八史略(4) 陳舜臣 講談社文庫

2007-03-27 21:12:35 | 読んだ
第4巻は、三国志<魏、呉、蜀>の時代から、司馬氏が晋を建国し、そして五胡十六国の時代、更に隋の建国までである。

三国志の時代は、やはり魅力に富んだ時代である。
登場人物が明快な性格であることがいいんだろうなあ。そしてなにより「悪役」である曹操がすばらしいんだと思う。

真の悪役であれば早々に退陣するのだろうが、実際には魅力あふれる人だったに違いない。でなければ、あれだけ優秀な人材が集まるわけが無い。

蜀の劉備はものすごい魅力あふれる人のように伝えられているが、慕って使えた人で一流クラスは諸葛孔明と関羽、張飛、あとは趙雲子竜くらいである。
しかも、関羽、張飛の晩年から最期はパッとしない。

三国の混戦時代を勝ち残った曹操について、著者は「屯田兵」制度を確立し、戦だけでなく多くの兵士の「食」を安定させたことにあるとしている。
強いだけではなく、部下の生活を安定させることが、天下統一の道なのである。

諸葛孔明は、劉備あるいはその子の劉禅に対し数々の策を提言するが、それらをすべて受け入れられるほど、彼らは強くなかった。どうしても「情」に流される。
著者は「戦争、そして政治というものは、きびしい現実であり、感傷をいれる余地はない」とし、蜀の皇帝の甘さを指摘している。

後漢末の力と力の争い、そこには儒教の教えを守れば守るほど、はかない人生、悲惨な運命が待っている。
ならば、現実的にモラルを捨てるか、社会で生きることを捨てるか、なのである。

-天道、是か非か?
と著者は問う。
天はほんとうに正しい選択をしているのだろうか。

儒教の教えや権威が低下した「むなしさ」を何で埋めるべきなのか。
そこに仏教がやってきた、中国の「老荘の思想」にちかい釈迦の教えがこの時期から広まる。

そして五胡十六国時代には、激しい争いの中で「寛容」を打ち出した者がいたが、最後には寛容があだとなり滅ぼされている。

生きていくことは、他を取り除くこと、という時代。
このことが歴史の中で学習されただろうか、人はやっぱり争う「種」なのだろうか。

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