読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

あなたがパラダイス 平安寿子 週刊朝日連載(完)

2006-06-25 21:12:50 | 読んだ
週刊朝日6月30日号で、第24回、そして最終回でありました。

最初のうちは「うっとおしい」物語だなあ、と思っていたが、そのうち毎週楽しみに待つようになった。

「更年期障害」の女性3人<まどか(53歳)><敦子(50歳)><千里(43歳)>がオムニバス形式で主人公である。
彼女たちは、突如として訪れた或いは何らかの予兆を経て訪れた「更年期障害」に苦しむというか悩んでいる。
しかし、更年期障害はいわゆる「病気」とは認知されていないことから、彼女たちは人知れず悩むのである。

この3人の女性たちに共通する更年期障害の治療法は「ジュリー」(沢田研二)である。
ジュリーは現役で歌っている。そして今では彼女たちの年齢の女性すなわち昔からのファンを対象にした歌を歌っている。(これはこの小説ではじめて知った)
だから今でも共感できるらしい。

主人公の3人は、ジュリーによって癒されるのである。

最終話は、この3人がジュリーのコンサート(ライブ)に行くのである。
もちろん、この3人はかかわりがないので、始めてこの場面でそろうのである。

更年期障害というのは女性だけでなく男性にもあるらしいが、まだよくわからない現象である。
しかし、それをうまく乗り越えることができないと大変らしいことがよくわかった。

昔は「忙しさ」とか「生活をする」ということがそれを大きな問題にすることもなかったのだろうが、現代は「余裕」とか「生きがい」とかが人生の課題であり、更年期障害が起こる時期は、「余裕」や「生きがい」がそれまでと大きく変わる時期になっていることから、心と体のバランスが崩れていくんだろうと思う。
そういう部分について書かれていて、なおかつ暗くないところがこの物語のいいところである。

そして「ジュリー」である。
あの憧れの沢田研二が現役で、しかも同年代の人たちを応援するような歌を歌っている、ということに驚いている。
もしかすると、それは「TOKIO」や「勝手にしやがれ」を歌っていたときからの彼のスタンスだったのではないか、と考えるとあらためてスゴイと思うのである。

この物語に出てくる女性たちのジュリーに対する思い入れの深さと、更年期ということをうまくミックスし、明るくあらわしているところが、更年期に対する「構え」の硬さを穏やかにしてくれる。

平安寿子、今後注目の作家である。
コメント (2)
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