読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

さらば、そうせい公<家老列伝> 中村彰彦 オール読物2月号

2006-01-25 23:19:52 | 読んだ
中村彰彦は今ひそかに注目している作家である。
それは、オール読物に連作として発表されている「家老列伝」が面白いからである。

今回は「福原越後元たけ(人偏に間)」である。

福原越後は、幕末の長州藩の家老である。が、次期藩主の兄でもある。
この辺が、江戸期のというか封建社会の面白いところなのだ。
兄や弟、或いは伯父・叔父が家来になったりして、それも「時の運」みたいなものであって、どうにもわりきれぬところがあるが、わりきらねばならない、そういう理不尽な世界で生きているのである。

家老はナンバー2であるが、決してナンバー1になることのないナンバー2である。主君のことを第一に考えているようだが、実は「お家」も大事に考えなけらばならない。
お家を考えれば、よい政治を行わなければならない、と考える人は少ない。

さて、福原越後は凡庸ではない、が、幕末の目まぐるしい社会でぬきんでるほどでもない。世が世ならば名家老であったろう。
命令されて、京へ戦争に行き、負けて帰る。
そして、その責任を問われ、幕府への侘びとしてその「首」を差し出すことになる。「心外」「不本意」であったゆえ、その最後は悲しい。

家老列伝、決してナンバー1になれないナンバー2、面白い。

追伸
 ホームページをマイナーチェンジしました。新しいものをアップしたわけではありませんが、まあご覧ください。
コメント
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