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固定残業代に関する裁判所の判断が甘くなってきた?

2019-05-13 15:59:04 | 労務情報

 残業代は、実際に残業した時間数に応じて支払うのが原則ではあるが、会社によっては、予め一定額の残業代を支払うこととしておくケースがある。
 この制度は、一般的に「固定残業代」または「定額残業代」と呼ばれ、特に毎月恒常的に一定量の残業が発生するような業態において導入されることが多い。 「営業手当」や「管理職手当」を残業代とみなすのも、これの一種だ。

 ところで、この固定残業代を採用している会社で、従業員や退職者から「残業代を支払われていない」として争いになる事案が多発している。
 こうした訴訟において裁判所は、次の要件を満たす場合に会社側の言い分を認め、固定残業代を肯定している。
  (1) 「所定労働時間分の賃金」と「残業代相当額」とを明確に区分している
  (2) その内容を労働者に説明している
  (3) 見込んでいた時間数を超過した残業については超過分の残業代を支払う
  (最二判H6.6.13、最一判H24.3.8、最二判H29.7.7、最一判H30.7.19等)

 かつては、
  (4) 見込まれる残業時間(法定時間を超える部分)は「時間外労働に係る労使協定(いわゆる『三六協定』)」に定められた時間数以内
  (5) 見込まれる残業時間も明示している(例:「残業○時間分として○万円」)
  (6) 超過分を清算する旨を就業規則・雇用契約書等に記載している
といったことまで含めて判断されることが多かったが、昨今の裁判例を見ると、(1)~(3)のみを検討している印象を受ける。

 とは言え、まだ(4)~(6)も必要と説く識者(大学教授・弁護士・社労士等)もいるし、そもそも事案の事情や背景が変われば裁判所の判断も変わるのだから、これをもって「裁判所が会社側に甘くなってきた」と見るべきではないだろう。

 固定残業代を採用しても、会社は従業員個々の労働時間を適正に把握しなければならないので事務量が軽減できるわけではない。 また、残業が少なかった月にも固定額を支払わなければならないことは会社にとって大きなデメリットと言える。
 その一方で、固定残業代制度には、①労働者の固定収入が増え、生活が安定する、②残業を抑制しようとする心理が働くため、直接的には生産性向上への、間接的にはワークライフバランスへの寄与が期待される、③会社にとってはリクルーティングの好材料になりうる等々、メリットも多数ある。
 固定残業代制度を導入する場合は、こういったことをしっかり認識したうえで、正しく活用したいものだ。


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