ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労働者の求めに応じて解雇することのリスク

2014-11-03 16:55:01 | 労務情報

 まれに、従業員自ら「解雇してください」と申し出てくることがある。こういった場合、会社は面食らうかも知れないが、まずは、その真意を尋ねてほしい。ただ、多くの場合、安易にそれに応じるのは会社にとってリスクが高いということは、予め承知しておくべきだろう。

 そもそも、従業員側の都合で退職したいのなら、「退職したい」と表明すれば良いところ、なぜ解雇を求めてくるのだろうか。もちろん理由は様々だが、大きく分けて、次の2つが考えられる。

 まず、「自己都合で離職すると、雇用保険の失業給付が受けられない(または受給条件が悪くなる)から」という理由だ。
 これは、失業給付の不正受給を企図したものであるのだから、会社はこれに加担してはならない。

 もう1つは、「このまま在職していては会社に迷惑を掛ける」というもの。例えば、公金横領等の違背行為を白状するケースや、疾病や障害のため労務不能となったケースがこれにあたる。
 このケースも、どういう事情があろうと、解雇するか否かは社内ルールに則って会社が判断するべきであって、「本人が解雇されることを望んでいる」との理由だけで解雇してはならない。

 いずれにしても、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効となる(労働契約法第16条)。このことは、本人が解雇に同意していたとしても覆らない。万が一、後になって本人から「解雇無効」を求める訴えが提起されたら、「本人から申し出があった」ということだけを否定材料とするのは難しいだろう。
 加えて、実務的には、解雇する場合には、30日前の解雇予告もしくは30日分の解雇予告手当が必要である(労働基準法第20条)ことも、念頭に置いておかなければならない。

 以上を踏まえれば、従業員の都合で退職したいのなら、やはり、『退職願』を出させるのが基本的には正しい手続きと言えよう。


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