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空色騎士 その4

2017年05月07日 01時09分00秒 | 物語・小説

「宝物庫?お宝ハンターかい?」
第1の街にある情報屋の店を、リッターとエスパーダは訪れていた。
「っていっても、大した宝物でもないって話で評判だ。御代は頂くが、返金には応じないからな」
と店の者は、もってけドロボーと言わんばかりの勢いで、宝物庫の地図を差し出した。
「次来るときは、もっと金になる情報を引き出しに来な。待ってるぜ」
カウンターの台を叩いて、店の者は言った。

「ただも同然の情報料でしたね。本当にあるんですか?」
情報店を出た後、リッターとエスパーダは、街の公園に行き、入手した地図をエスパーダが見ている中で、リッターは、エスパーダに訊いた。
「初歩の初歩の探求で、値の張るようなものを期待してはなりません。二束三文の宝物でも宝物は宝物。旅の記念程度にしかならないものでしょう」
なるほど、あの辺りか――とエスパーダは地図を見ながら頷いていた。
「旅の記念かー。そんなんあったよなー」
リッターは、2回目に入ったパーティでの探求の第一関門突破時に入手した装飾品を荷物袋から取り出した。
「確かに記念にしかなってないな」
リッターが入手したその装飾品は、剣につけるものであった。2回目の所属したパーティを、リッターよりも早く抜け出した人物から、要らないからと言われて受け取ったものだった。
「探求レベル4の品ですね」
エスパーダが言う。
「探求レベル12段階の初級者レベル向けでも、使い物にならないって言われて、悔しい、おぼえていろよ――って言う気があった頃の品で、本当は棄てようと思ったんですけど、当時それなりに世話になった人からの譲り受け物でして、今もあるんです」
過去を否が応でも突きつけられるような品は、とっとと始末してきたリッターであったが、それだけはどうしても――であった。
「おぼえておけよ――ですか。今はないんですか?そう言う想い」
チラッとリッターの顔をエスパーダは、見て訊ねた。
「ないですね――4回も挫折してるんです。もう呆れ果てて諦め悟ってますよ。おぼえておけよ――って言えるだけの実力もないのに叫んでみても空しいだけです。この世においていかれた、何者にもなれない単なるヒトでしかない――人間になれなかった成人男性の成れの果てでしょうかね」
リッターは、ため息をついた。また思い出したくはない過去が脳内を過った。
「金と権力と名誉だけ入手して、人間になったつもりのヒトも多いと思いますが」
「確かに」
話わかるな、とリッターは思いつつ、エスパーダがきっと自分に話を合わせてくれたんだろうな、とリッター思い、エスパーダに感謝していた。
「それでは、宝物庫にいってみましょうか。場所は、先程の情報店のようです」
エスパーダは、先程入手した地図とこの街の地図をリッターに見せた。
「情報店からのとこの地図を照らし合わせますと間違いないようです」
エスパーダがリッターに説明を施した。だが、一体いつの間のエスパーダは、この街の地図を手に入れていたのだろうか、とリッターは思った。
「通りで安い料金で教えてくれた訳です。行ってみますか」
エスパーダは、地図を道具袋にしまった。
「さっ、参りますか」
エスパーダは、そう言うと情報店に向かって歩き出した。
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