「京都・北山丸太」 北山杉の里だより

京都北山丸太生産協同組合のスタッフブログです

春日神社・鳥居の棟上げ

2012年10月12日 | 日記

だんだんと朝夕の寒暖差も大きくなり、今年は美しい紅葉が期待できそうです。

シーズンになると名所と言われる観光スポットは大変混雑しますが、身近なところにも四季の移ろいを感じられる景色があるはずです。

普段ここを通られる方は・・・もうすぐ、きっと「おおお!」と思われるに違いないでしょう。

 

前回、お伝えしました京北・上黒田の春日神社。45年ぶりに鳥居が新築され、先週の木曜日に組み立てられました。 

 

午後から見学させて頂いたのですが、この日は朝から作業をされていて各部はすっぽりとおくるみに包まれてデビュー間近!という感じです。 

 

裏には、前の鳥居さんが分解されてお行儀よく並んでいました。

 

 

やはり、かなり朽ちていますね。45年間、ご苦労さまでした。 

 

 【資料画像】

ここで鳥居の各部の名称をご紹介しましょう。

鳥居にはいくつかの決まったスタイルがありますが、春日神社は一番上の木、「笠木(かさぎ)」の両端が反っている「明神鳥居」です。

二本の柱に閂のように「貫(ぬき)」を通し、楔(くさび)で止めます。その上に島木(しまぎ)。

貫と島木の間の中央に~天満宮とか書いてある「額束(がくづか)」が中央に入ります。そして天辺に乗るのが笠木。

 

現場に到着した時は、まさに笠木を乗せるべく高い高いところまで足場を組んでおられる最中でした。

 

土台の部分です。この大きな杉の柱は8mでしたが、地上6m、地中には2mも沈められています。

セメントなどは使用せずに土のみ。中に砂利を敷き詰めて、水はけを良くしているそうです。伐採されてから5年以上寝かせてありましたから、十分に乾燥しているでしょうけれど、台風や集中豪雨など予測できない風水害に少しでも耐えることが出来るよう、自然の摂理にかなった工法なのだなぁと思いました。

 

「よしよし、頑張っとるな。」狛犬ちゃんも組み立てをじっと見つめているようです。

 

さて笠木ですが、一本の木ではなく半分ずつ二本を真ん中でジョイントします。

それは一本では両端の「反り増し」の加工を入れると、ものすごく大きな原木が必要になることと、ジョイントすることで強度を増すためです。

こちらは凹の方。

 

そしてもう片方の凸。

 

「それぞれの上に開けてある穴は何?」職人さんに聞いてみました。

「それは栓をするんや。」

「せん?」

 

そう、鳥居の伝統工法は釘などを一切使いません。このようにして、上から島木へと打ち込むのです。

 

 

その「栓」が「ダボ」とか「タボ」と言われるもの。杉ではなく、硬いヒノキです。

「ダボダボにならへんように?」「あはは、そうかも知れんなぁ。」などなど。(笑)

 

職人さんの手になじんだ道具、鑿(のみ)。

 

きっちり栓が出来るように、入れてみた感じで、いったんダボを取り出して穴を削ります。もうこれは勘のみ。

大切な鳥居の組み立て、最後をしめる笠木をきっちりと収める熟練の技です。

 

全部のダボが入ったところでいよいよ、クレーンで吊り上げます。

 

あいにくの空模様、時おり強く降る雨の中、笠木ハーフが空高く舞い上がります。

 

「オーライ、オーライ、もうちょいこっち!」 クレーンの運転手さんもスゴ技です。

 

この時、真っ白い布にくるまれていた島木がその美しい木肌を現しました。

 

位置が決まったところで、大きな木槌でダボを打ち込んでいます。先ほどの職人さんが隙間なくキッチリ調整されたので、とても力がいるみたいです。

それでも少しずつ、ダボは埋まって行きました。

 

続いて凸の笠木ハーフが吊り上げられます。「オーライ、オーライ。」

鳥居は道路に面しています。安全を考慮して学童が通行する時間帯を避けましたので、クレーンもずっと待機していました。

やっとの出番に本領発揮!

 

皆さん、この時を待っておられました。真ん中に見えるのが宮司さま。

記念すべきこの年に新しくなる鳥居が組み立てられて行く様子を食い入るように見つめておられます。

ここに来るまでは簡単な道のりではありませんでした。けれども御神木を提供した方、伐り出した方など地元の方を含め製材所や大工さん、みんなが協力し合ってついにこの日を迎えたのです。

 

笠木の凸ハーフが凹ハーフにはめ込まれて行きます。

 

ジョイント成功! これからまた、ダボをえんやこらと打ち込んで行くのです。根気と体力が必要な、そして1ミリの誤差も許さない丁寧な仕事。

継ぎ目はよおく見ないと判らないくらいです。

 

笠木がつけられて春日神社の鳥居の棟上げがつつがなく終わろうとする頃、雨もあがりました。

「柱を見たらビックリするで。」「??」

「赤身なんや。どれだけ削ったかがわかるやろ。」

樹齢200年を超える杉の大木。中心の赤身だけを鳥居の柱として使っているのだそうです。

朱塗りではなく、天然の赤。この山で育った木だからこそ、親しみやすくそして厳かに、これから40年、50年上黒田を守り、人々に言い伝えられて行くのだと思います。

 

神々の棲むところと町を結ぶ門、鳥居。

古代、二本の木を縄で結ぶだけだった結界は徐々に姿を変え、悠久の時を経て今、一つのカタチとして存在しています。

そこに共にあるのは、語り継がれてきた道具であり、職人さんの技。

親方の声に耳をすませ、真剣に見つめる若い職人さん達の瞳には、確かに「得よう」という気持ちが込められていました。

鳥居の寿命もまた、知識と経験を育む機会、それが輪廻ならば。

だからこそ、わたし達は時には日本の歴史をふり返り、先人に頼りすぎず、職人さんの技任せにしないで、一人ひとりが暮らしの中で繋いでいく気持ちを持たなければなりません。こんなに素晴らしい伝統なのですから。

新しい鳥居はまもなく、お披露目の時を迎えます。

右京区京北宮町の春日神社創建1000年大祭は10月14日、日曜日。宮司さんの祝詞をあげる声が、山々にこだますることでしょう。(了)

 

 

 

 

 

 

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