京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

本堂前に飾られた大菊三本仕立て

2020-11-11 18:26:10 | 園芸・植物・自然環境
本堂前に飾られた淡紫色の大菊三本仕立て。境内の趣を損なうことなく、さりげなく気品を漂わせていました。




さて、どこの本堂かというと元真如堂です。正式名称は「東向山蓮華院換骨堂」で換骨堂と呼ばれている曹洞宗の尼僧寺院です。元は平安時代に東三条院(一条天皇の母、藤原詮子)の御所である女院離宮(白川ノ離宮)があった場所で、東三条院の請願により比叡山延暦寺の戒算上人を開基に同寺常行堂の阿弥陀如来を遷座して当地に建てられたのが真如堂の始まりであることから元真如堂とも呼ばれています。

江戸時代に現在地に真如堂が移転してからは念仏堂が建てられ、小堂だけ残された境外塔頭となりましたが、文政京都地震で一時荒廃します。その後、尼僧黙旨が尼衆の請に応じて尼僧寺院として再興し、その際に宗派を曹洞宗(真如堂は天台宗)に、名称も換骨堂に改められました。


さて、話を大菊に戻しますと、大菊の三本仕立ては1本の菊の苗を摘心して葉腋から伸ばした3本の側枝を育てる仕立て方です。大菊の最も基本的な仕立て方で盆養とも呼ばれますが、うしろの1本を少し高くして前の2本は同じ高さに揃えます。この少しだけ高いうしろの1本は一番上の葉腋から伸びた側枝で「天」と呼ばれ、2番目の葉腋から伸びた側枝は「地」で3番目の葉腋から伸びた側枝は「人」で、この「地」と「人」を「天」の前に2つ揃えて仕立てられます。




菊花展でよく見られる「三本仕立て盆養12鉢」は三本仕立てを3鉢ごと4段に並べて飾る仕立て方ですが、花の大きさを揃えるだけでなく各段ごとに指定された高さに揃えるといった高度な技術を求められます。一般的に楽しむのであれば「天」だけ少し高くすればよいと思うものの、これもそんな簡単なことではなさそうなので、何事も奥が深いことにあらためて気づかされます。

小さな境内ですが、あちこちでセンリョウ(千両)とキミノセンリョウ(黄実の千両)が色づき始めていました。







浮世は新型コロナウイルスで翻弄されていますが、植物たちはそんなこと意に介さず、季節の移ろいに身を任せて、その時期になすべきことを淡々と行っているようです。

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