二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

祖母井語録2013

2013-02-02 | 蹴球
今年もサポーターズミーティングという名の「祖母井秀隆独演会」を拝聴してまいりました。

拙者めは、サッカーの試合を観るのも好きですが、サッカーを取り巻く“あれやこれや”にも大変興味があるのでございます。そういう人間にとって、祖母井氏の話は本当に奥深いものがございまして。で、話を聞いていると、サッカーの話なんだけれども、これは人生にも当てはまるんじゃないか?そんなふうに深読みすらしてしまうのです。

前座の今井社長による財務報告とか、強化部細川氏による契約関係の話は割愛します。ただ祖母井氏の含蓄のある言葉だけ書き留めておくことにしておきます。



「大木さん、それ違う。大木さんとサッカーしたいんや」
→昇格を逃した大分戦翌日の練習に選手みんなが出て、一生懸命取り組んでいたことについて。「彼らは1月31日の契約までキチッとやろうというプロ意識でしょう」という大木監督に対して、祖母井さんが言ったという言葉。

そしてジェフ時代の監督を引き合いに出し、

「バーベキューパーティをしたら、監督の近くには誰もいなかった」
→ニコラエ(ザムフィール)監督が勝てなかった時期のことだそうです。監督に求心力がなくなる時ってのは、そういうもんなんでしょうね。これが大木監督続投の理由です。

ただ、2年連続昇格できなかったことに対しての責任は強く感じられておるようで、どのようにおわびすべきかと考えた祖母井氏は…

「ABK48のみなみちゃん…僕もそのようにしなくちゃいけないのかな、と」
はい、オチました。ただし、決して茶化して言った訳ではありません。



「サンガは社長からお話していただいた通り、2010年が、癌」
→就任時には社長から「まったく知らされてなかった」そうです。2010年に何があったのかはヒミツです。周りにいるサンガ好き、サッカー好きの人に聞いてみよう。それでも京都のGM職に就任以来非常にやりがいは感じられておられるようで、「長く社長と一緒にやりたいという気持ち」だそうです。



「試合に出ないと選手は成長していかない」
→ユース上がりの選手のレンタル移籍について。引き合いに出したのがグルノーブル時代の伊藤翔とジルー。片や監督から「出れない」と通告されながら1部に居ることを望んだ日本人と、片やレンタルで3部相当から経験を積み代表にも選出されたフランス人。何という説得力。それが次の持論につながります。

「ブンデスリーガは2軍が経験を積める環境があるが、日本は若い選手が強化できる環境がない。積極的に出す以外ない」
→練習試合ではなく、やはり若手は厳しい公式戦に出てこそ、と力説。「彼は(ゲームに)出たらグンと伸びると思う」。彼とは富山に行った三根のこと。祖母井体制になってから若手のレンタル移籍=武者修行というのが明確になりました。



「わからない」
→サンガがこれからやろうとするサッカーについての回答。これは巧妙なレトリックで、つまりサッカーのスタイルを最終的に作り上げるのは監督やフロントではなく、選手なのだ、と。そして実例を挙げます。

「香川選手。彼何をするかわからないでしょ?予測できますか?」
→サンガの選手に予測できる部分が多いとすれば、サプライズが少ない。サプライズを起こせる選手を増やしていかなきゃいけない…と。監督がどんな指示を出そうが、最後に判断するのは選手なのだと。そして我々観客がどのような目線でサッカーを楽しめばよいか、次のように示唆してくれます。
「観戦してる人が“エッ?すごいことしよったなー、そういう解決方法もあるや…”というのがサッカーの素晴らしさ。」
「想像してないことがピッチの中で起こるのが魅力」




「前に前に進んでいかなきゃいけない。止まったらいけない」
→限界という言葉から話を進めていきました。「サッカーは毎日毎日変化し、テンポアップし、半年前のサッカーじゃない。それに選手も監督もチャレンジしていかなればいけない」。もうこれはサッカーだけの話じゃないですよね。半年経てば世相も変わるし、社会の要求も変わる。それに対して型に嵌った杓子定規の仕事してたんじゃ、置いていかれるんだよね…。

で、今以上のサッカーをするために必要なのは何かといえば…
「普及、スクール、アカデミー」
話は重奏しますが、どういう選手を育てるべきかについて話を広げています。

「選択肢の多い、何をするかわからない、予測のできない選手が出てくるにはスカウティングはすごく重要」
→テクニックも大事だけど、もっと大事なのはインテリジェンスだと言います。そういう子たちをいかに発掘して、いかに育成するか?おそらく10年単位のビジョンです。ただ、こうとも言いました。「それは今すぐにはできない。今はJ1に上がることが一番大切」



「積極的だったし、こりゃすごいな。ちょっと今までのドゥトラじゃないな」
→去年退団したドゥトラについて。合宿での姿勢をチームのためにやっていたと言います。ところが開幕戦前日に「サブだったら僕は行きません」と言ってきた、と。監督は彼がチームに迷惑かけたと謝るなら折れるつもりでいた…という事実関係だけを教えてくれましたが、それほど熱心に取り組んでいたドゥトラが豹変してる点については謎のままです。

その他の選手についての話は割愛します。ただ、水谷とフロントのやり取りは個人的にはいい話だなぁと思いました。人情噺のようで。水谷、移籍しても応援してあげたいですね。



「選手も監督もGMも、安住のポジションはない」
→なぜ層の厚い攻撃的MFに山瀬を獲ったのか?という質問に対して。いつも危機感をもってやる環境。競争する中で努力をすることが大事だと。祖母井氏は否定的に斬って捨てましたが、逆に“試合に出られる約束”をするチームもあると。ああ、そういう選手過去にいたよね~。


「私の毎日の仕事というのは、いろんな人と会うこと」
→選手のスカウティングと同様に、指導者のスカウティングも準備しておかなきゃいなけないという話。普段からこの人(解説者とかフリーの人とか)がサッカーに対してどういう考え方を持っているのかを知っておくのがGMの仕事だそうです。別に大木監督がどうこうという訳ではないと前置きした上で「私の仕事の中の一つは、選手、監督というのはいつでもどういう状況でも準備しておかないと」



まぁこんなところでしょうか。今回は「育成」についての話がメインでした。そして今年のサンガを見る上でのキーワードを教えてくれましいた。「サプライズ」です。今年は西京極で何度サプライズを見せてくれるのか?監督の想定を超えていくプレーを見せてくれるのか?そういうところに注目してみたいと思います。