例会・イベントのご案内とご報告

特定非営利活動法人 京町家・風の会

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気がかりといえば・・・~第8回例会ご報告(2008.9.15)~

2008-09-30 17:42:05 | 例会・イベントのご報告
9月とはいえまだ蒸し暑さの残る15日。

「伝統的木造建造物の耐震性と倒壊後の取組体制における課題」と題しまして第8回例会を開催いたしました。

今回は(財)京都市景観・まちづくりセンターさんとの共催ということで、会場はMISO(まちセン・サテライトオフィス)のある元西陣小学校。

非会員も含め20名のかたにご参加いただきました。
将来町家に暮らしたいかたから大工さんに大家さん・・・町家に関わりのある方々の関心の高さを感じました。
また偶然今回の事例となった地域出身の方もおいでで、より詳しいお話を伺うことができました。


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セミナーは「建物は古いから壊れる」という通説に対する問いかけからスタート。

2007 年(平成19年)3月の能登半島地震で被害を受けた黒島・門前地区に調査のため足を踏み入れた西川さんは、古い建物が意外と残っていることに驚かされました。というのも、地震の被害を伝える映像では古くて被害の大きい建物ばかりが映されておりあたかも古い建物は地震に弱いかのような報道がなされていたからです。

河口に近いこの地域では、旧河川上の建物が新しい家でもかなり被害をこおむっていることから考えてみても、むしろ地盤との関連性が強いのではないかと推察されました。

さらに個別に家の状況を見ていくと、柱を抜いたところや、ほぞ穴が多く結果的に細くなってしまっている柱、改増築部分に被害が集中していました。 

また土蔵の壁が大きく崩れるという被害も多くみられました。
調査チームにいた京都の職人さんによると土蔵の工法が大きく違っていてそれが強度を欠いた原因と思われるそうです(この点については例会参加者の方からの説明で土蔵破りを防ぐための工法であるとわかりました)。



このような状況から、建物が「古い=壊れやすい」とは一概には言えないことがわかってきたそうです。

阪神淡路大震災以来このところ続いている地震で被害を受けた建築物は解体傾向にあります。
行政の方針(助成は解体への比重が高く執行も早い)や所有者の意向によるものですが、「直せる」ということがはっきりわからない、ということがそれを後押ししているともいえます。
そのため応急危険度判定で「危険」と判定されると、修復すれば住める建物も解体への途をたどりがちに(この判定は余震での二次被害を避けるためのもので建物が使えるかどうかを判定するものではありません)。

しかも判定を下す建築士さんが必ずしも伝統的木造建築物に精通しているわけではないので、所有者が「ここ住めるんですか?」と訊ねたところで明確な答えは期待できないことも多く・・・

こうした流れを少しでも変えるために、門前町では民家修復支援プロジェクトとして研究機関(関西大学、金沢職人大学校)、技能者(NPO日本伝統建築技術保存会、NPO文化財構造支援機構)が協力し被害調査を行なって、どのように直して住んでいきたいかを所有者の方と話し合い、実際に修復を支援していくという活動が行なわれました。
西川さんはこのチームの一員として現地に入りました。

「混乱時のなかで行われる応急危険度判定で赤い紙を家にはられ、これをみただけで、「もうこの家ははだめ」といった早とちりの認識をもつ人が少なくない。
この紙が示しているのは「とりあえずこのまま家の中に入るのは危険」という意味で、この家がもう使い物にならないという意味では決してない。
ここのところの誤解を与えないような工夫が必要ではないだろうか? 参考:全国被災建築物応急危険度判定協議会」という提言には、当会としても今後、何かできることがあるのではないかという感想を持ちました。



セミナー後半は実際の修復の例としてS邸が紹介されました。


このお宅は家の下の地盤に大きな亀裂が入り、家自体もそれに伴って傾いてほぞ穴の多い柱が折れているような状態でした。

工事は施主さんの予算内で、部材を再利用しながら元の状態に修復するという方針で行なうことになりました。

このような状態になると修復もしにくいので、この家の場合はワイヤーなどで歪みを直して、一旦ジャッキアップ→地盤をコンクリートで構造的に補強→建物を置いて建て起し作業という手順が取られました。
柱についても損壊した部分に根継ぎを施し抜いてはいけない大黒柱には添え柱を補うというように、可能な限りもとの部材を使った修復が行なわれていました。



石川県では再建支援策として「能登ふるさとモデル住宅」という事業が進行中だそうですがこのような修復活動と並列で比較はできない、と西川さん。
可能な範囲で修復を行なうというもうひとつの選択肢を示すモデルとしてS邸が認知されればいいだろうなぁ、と感じました。

質問タイムもいつにない盛り上がり。
補足いただいた地元出身の参加者さまにはこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。


Q:このお宅の修復にはどちらの職人さんが関わって具体的にどの程度の金額や期間がかかっているのですか?
A:当初、調査には金沢職人大学のスタッフや京都の職人さんのチームが入り途中で地元の職人さんに引き継ぐ予定だったのですが、地元の職人さんのネットワークの形成が難しく、かなりの部分に京都の職人さんが携わるという結果になってしまいました。そのため、被災者の方と微妙な温度差があったりした部分もあるそうです。
(出席者でS邸のご近所出身の方より)この間行ってきましたが、ほとんどできあがってきています。なにしろ大きなお宅なんでそれなりにかかっているはずです。

Q:京都も昔は川が流れてたところが多いんですが、そこはやはり地盤の関係で建物の被害が大きいと予想されますか?
A:絶対に、とはいえませんが堆積量がそれほど多くはないので今回の調査地ほどではないと思われます(調査地は河口)。京都市内の場合、北に行くほど堆積量は少ないですね。

Q:町家はひとつ石からストンとずれるだけで被害自体はそんなにないんですか?予防策はありますか。
A:そうは言っても落ちたときの衝撃もありますから。また連棟の場合、全部が揃って落ちるとも限りません。衝撃をやわらげるため地面との段差を少なくしたり(S邸の場合はコンクリートを敷きました)ということも考えられるかもしれません。


ほかにも壁の少ない一列三室型町家への不安を質問票に書いてくださった方もありました。
能登出身の方によると
「ここらの家は壁がほとんどない家がけっこうあるんです。普段は建具が入っていて冠婚葬祭の際には取り払って大きい座敷にしてしまう。部屋が田の字型になっているんです。で、そういった家が全部つぶれてるかというとそうでもないんですよ。柱がきちんとしてる家はおおむね大丈夫でした」


また、普段からの補強と壊れた際には何が原因かをきっちり把握することが大切という西川さんの言葉に、町家も改修してお仕舞!ではなく、ちょこちょこ手を入れながらその時点での家の状況や弱いところを把握しておくことが重要と感じました。
住み継がれているだけに増改築の歴史も半端でなさそうですし、その家に詳しい職人さんがいれば何かあったときにも相談できると思えば心丈夫ですよね。

むかし、京都・洛中では一軒一軒に守(もり)さん(大工さん)というのが居はって、その家の保守管理をされていました。家を大改修・改装する際にはもちろんのこと、盆暮れには家を訪問してチェックしたり、小修繕をしてくれたりしたそうです。ひどくならないうちに手当てをすることは家に限らず大事なことですよね。
また、そういうな記録が住人に受け継がれていけば防災にも役立つかも?
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