茶語花香

人生は旅なり。
中国茶をはじめ、花のある暮らし、読書、旅などを中心に、日常の出来事を綴ります。

日日是好日

2013-10-01 15:16:33 | 本・映画・舞台

「日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」(森下 典子)。

 留学をきっかけで、日本での生活は、つい先日で二十一年目に突入する運びとなりました。こんなに長く住みついたのは、100%自分の意志。だって日本大好きだからほかに理由などありません。だけど、実は、いまだに正座が大の苦手。これからもおそらく改善される見込みがないなー(苦笑)。しかし、まだよく分らない茶道の詫び寂びの世界や日本独特な美学に触れると、いつもしっくりくるものがあります。そんな私にとっては、日本の茶道は、神秘的な世界であり、遠くから眺めておきたい世界でもあります。

 茶道のやり方や道具の説明を写真付きで書かれている本も多い中、活字のこの一冊に、私はただ感動します。茶道の向こうの世界をようやく覗けた気がします。

 タイトルの「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」は唐の時代の名禅師が残した言葉らしい。素敵な言葉とうっとりしています。

 著者は二十歳頃茶道の稽古を始め、気がつけば、二十五年間も続いているお方です。

 著者の目を通して見た茶道具、茶花、そして掛け軸にまつわる一つ一つのドラマ、稽古の様子や著者ご自身の心境変化も細々書かれています。著者の経験談を通して、読者側は、まるでバーチャル体験をさせてもらったような気分になります。気がつけば、深く引き込まれてしまった自分がいました。

 お茶の稽古を通して、人生と重なるところも面白い。

 いくつか好きなページを紹介したいと思います。

●がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聞こえる……季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」
●前は、季節には、「暑い季節」と「寒い季節」の二種類しかなかった。それがどんどん細かくなっていった。春は、最初にぼけが咲き、梅、桃、それから桜が咲いた。葉桜になったころ、藤の房が香り、満開のつつじが終ると、空気がむっとし始め、梅雨のはしりの雨が降る...季節は折り重なるようにやってきて、空白というものがなかった。春夏秋冬の四季は、古い暦では、二十四に分かれている。私にとってみれば実際は、お茶に通う毎週毎回が違う季節だった。
●お茶を習っていなくたって、私達は、段階的に目覚めを経験していくでしょうが。だけど、余分なものを削ぎ落とし、自分では見えない自分の成長を実感させてくれるのが「お茶」だ。最初は、自分が何をしているのかさっぱり訳が分からない。ある日を境に突然、視野が広がるところが、人生と重なるんだ。
●お茶を続けているうちに、一滴一滴、コップに水がたまっていたんだ。コップがいっぱいになるまでは、なんの変化も起こらない。やがていっぱいになって、表面張力で盛り上がった水面に、ある日ある時、均衡をやぶる一滴が落ちる。そのとたん、一気に水がコップの縁を流れ落ちたんだ。そんな瞬間が、定額預金の満期のように時々やってきた。何か特別なことをしたわけではない。どこにでもある二十代の人生を生き、平凡に三十代を生き、四十代を暮してきた。
 すぐには分からない代わりに、小さいなコップ、大きなコップ、特大のコップの水があふれ、世界が広がる瞬間の醍醐味を、何度も何度も味わわせてくれる。

 写しきれないほど感動的な綴りばかり。そして綺麗な日本語。一気に読み終わりました。時間が取れれば、もう一度、今度は、日本語を重点において読み直そうと思うばかりです。

 とても苦くてそして濃い抹茶を一服頂いた気分です。著者にお会いしてみたいなーとすら思いました。
にほんブログ村 グルメブログ 中国茶・台湾茶へにほんブログ村