Firenze

旅の思い出

技官のMさん

2007-06-25 07:19:10 | Weblog
 私の勤務する職場は、医学部の中の解剖学という部門です。人体解剖学を担当します。人体の解剖をする部署ですが、解剖をする目的は、病気の原因を探る解剖(病理解剖)でもなく、死因を特定する解剖(いわゆる法医解剖)でもありません。

 医学部の学生さんに、人体の構造を理解してもらうための解剖(系統解剖といいます)です。

 解剖をさせていただくためのご遺体が搬入されます。医学部には、系統解剖の御遺体の防腐処置をするための技官が3人います。

 今はすでに退職されましたが、Mさんという技官がいました。この方が、日本人のひとつの典型ではないかと思われる方でした。とにかく工夫好きなのです。同じ仕事をしていても、少しずつ方法を変えて、実験しているようなのです。

 あるいは、私たちが研究をしていると、次にその研究の機材のところにいってみると、便利そうな小物が作っておいてある。どうやら、私たちがその機械を使っているところを、さりげなく観察していて、それならこういう小物が必要だろうと先回りして、試しに作っておいてくれていたのでした。

 結局、日本人はやはり物づくりが好きで、工夫好きで、科学が好きなのだなと思います。司馬遼太郎氏の「竜馬がゆく」の中にも、長崎の出島に蒸気船が現れて、その蒸気船を宇和島藩の職人がまねをして半年後には、海に浮かべて走らせるという場面が出てきます。

 今の教育も、日本人のこのような素質を伸ばすようにもってゆけば、もっとおもしろい教育ができるのではないかと考えます。

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