薬害エイズを忘れない!

1500名の被害者を出した薬害エイズ事件が一応の終結を見て早10年。「薬害エイズってなあに?」と言う若者が増えています

過去10年間のHAART治療でHIV感染患者の死亡率は改善せず

2006-08-22 11:51:47 | HIV治療情報
8月5日のLancet誌によると・・・

過去10年間のHAART治療でHIV感染患者の死亡率は改善せず
HIV treatment response and prognosis in Europe and North America in the
first decade of highly active antiretroviral therapy: a collaborative
analysis. The Lancet 2006; 368:451-458

HIV感染の治療法としてHAART(Highly Active Anti-retroviral Therapy、強
力な抗HIV療法)が10年前に導入されました。

この文献は、ヨーロッパと北アメリカでHAARTを開始したHIV感染患者の特徴の
トレンドと、治療反応性と短期の転帰を調べた結果を報告しています。

研究者たちは、1995-1996年、1997年、1998年、2000年、2001年、2002-2003年に
未治療の状態からHAART治療を開始したHIV-1感染成人22,217人のデータを解析
し、HIV-1 RNAコピー数が6ヶ月以内に500/mL未満となる確率とCD4細胞数の変
化を解析しました。

この調査のプライマリーエンドポイントは、HAARTの最初の1年間の全死亡とAIDS
のハザード比です(つまり、かなり大雑把な効果ありと評定する基準みたいなものですね)。

調査の結果、異性愛での感染患者割合は1995-1996年には20%であったのが2002-2003年には47%に上昇しました。また、女性感染者の割合も16%から32%に上昇しました。
■ これは十分予想されたことです。同性愛者の病ではないということですね。

HAARTスタート時のCD4細胞数は1995-96年には170copies/だったのが、1998年には269copiesに上昇し、その後およそ200コピーズ/μLに減少しました。
■つまり免疫機能値は、98年頃までは上昇したが、その後は減少傾向にあるということです。全く同一人たちを対象にした研究ではないので、「近年は最初から多剤耐性ウイルス感染が増えている」「いきなりエイズが増えている」など様々な背景が考えられます。

1995-96年には、6ヶ月までにHIV-1 RNAコピー数が500/mL未満を達成した割合は58%であったのに対し、2002-03年には83%まで上昇しました。
■これは血中ウイルス量を抑え込めている人が増えているということで,グッドな傾向です。

1998年に比した1995-96年と2002-03年のAIDSの調整ハザード比はそれぞれ1.07
(95% CI 0.84-1.36)と1.35(1.061.71)でした。

1998年に比した1995-96年と2002-03年の死亡の調整ハザード比はそれぞれ087
(0.561.36)と1.35(0.061.51)でした。

以上の結果から、HAARTを開始してからウイルス反応は年々改善したものの、その改善は死亡率の低下には反映されていませんでした。
■ どういう調整を行った危険指数かわかりませんが、抗HIV薬が大きな成果を挙げていること自体を否定するデータではありません。公衆衛生的な要素が強いデータだと思います。

HIV感染の初期治療はこれまで通りの2NRTIs Efavirenzがよい?

2006-08-22 11:18:51 | HIV治療情報
8月16日のJAMA誌によると、「HIV感染の初期治療はこれまで通り2つのヌクレオシドとエファビレンツの3剤併用が望ましい」そうです。

Three- vs Four-Drug Antiretroviral Regimens for the Initial Treatment of
HIV-1 Infection: A Randomized Controlled Trial
JAMA 2006;296 769-781

HIV感染患者の標準的な初期治療は3つの薬剤の併用です。しかし4剤併用の方が
3剤併用よりも優れているかもしれません。

この文献は、未治療HIV感染患者を対象にしてzidovudine/lamivudine/efavirenz
とzidovudine/lamivudine/abacavir/efavirenzの効果を比較した無作為化コン
トロール試験の結果を報告しています。

この試験の結果、abacavirを追加してもウイルス学的治療失敗(virologic failure)までの期間やCD4細胞数に関して有意なベネフィット(統計学的に明確な有利さ)は認められませんでした。

結果が同じなら、薬は少ないほうがいいです。AZT/3TC/EFVでも十分良く効いている人に、わざわざABCを加えることはないでしょう。何でこのような比較対照実験が行われたのか、バックグラウンドが知りたいところです。

HIVに伴う脂肪再分布症候群を対象にした成長ホルモンの第3相試験で良好な結果が得られた

2006-08-22 11:02:21 | HIV治療情報
2006-08-19 - 2006年8月17日、Serono, Inc.は、HIVに伴う脂肪再分布症候群(HIV-associated Adipose Redistribution Syndrome、HARS)を対象にしたヒト組み換え成長ホルモン(r-hGH)のプラセボ対象二重盲検第3相試験で良好な結果が得られたと発表しました。

私たちは(特にプロテアーゼ阻害剤によって)脂肪再分布症候群に大なり小なり悩まされています。HIV関連リポジストロフィーの一種ですが、この症候群の顔つきや体つきだけで、HIV感染者とわかるほどです(モデルさんとかには大いに支障をきたしますね)。 腹部にしぼうがついてしまったり、頚部の後ろの方が盛り上がるほど脂肪沈着してしまったり(バッファローハンプ:野牛のコブ)、その一方で 腕や足(そのために静脈が浮いて見えるようになる。女性ではノースリーブやスカートもはけないほど)、おしり・顔はげっそり肉が(脂肪が)そげてしまいます。

もしそれが改善される薬が実現したとすると嬉しいことは嬉しい(でもまた薬を飲まなくちゃ




Lancet誌 過去10年間のHAART治療でHIV感染患者の死亡率は改善していない

2006-08-22 10:48:36 | HIV治療情報
2006年8月5日のLancet誌には次のような記事が掲載されているそうです。

ちょっと驚くべきbad newsとして・・・
◇過去10年間のHAART治療でHIV感染患者の死亡率は改善しなかった
◇計画的な抗レトロウイスル治療中断で治療抵抗性のリスクは上昇しない

(これはJAMA誌ですがgoodでもbadでもない記事)
◇HIV感染の初期治療はこれまで通り2つのヌクレオシドとエファビレンツの3剤
 併用が望ましい

その一方で最近のgood news
◇新規の非ペプチド性プロテアーゼ阻害剤・tipranavirを用いた治療法は治療抵抗性HIV感染に有効
◇未治療HIV感染患者に対するfosamprenavir-ritonavir治療レジュメとlopinavir-ritonavir治療レジュメの効果は同等

「過去10年間のHAART治療でHIV感染患者の死亡率は改善しなかった」中を読んでいないのでよく分かりませんが、色々苦労しながら飲ませている医療者・飲んでいる患者にはちょっとショックです。