ちからをぬいて気楽にいきたい

たま~に本や映画の感想,雑感を書き記してますが,よく長期で留守にしています。

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しゃべれどもしゃべれども

2006年11月18日 | 文学
よく行く書店の文庫本コーナーに、面白いからぜひ読んでください!という書店の意志がひしひしと伝わってくるようなレイアウトで何冊も置かれていたのが「しゃべれどもしゃべれど」(著者佐藤多佳子)だった。

これまでその本の存在をまったく知らずにいたのだが、文庫本の帯には「映画化決定!国分太一、映画単独初主演 2007年初夏、全国ロードショー」というコピーと国文太一の高座の写真が載っており、暇があるときにちょっと読んでみようかなと軽い気持ちで買ってしまった。

そしてバスでの帰路読み始めたらこれが止まらない、一気に読み終えてしまった。

まず、文庫本の背表紙の紹介文を引用したい。

-俺は今昔亭三つ葉。三度のメシより落語が好きで、噺家になったはいいが、目下前座よりちょい上の二ツ目。自慢じゃないが、頑固でめっぽう気が短く、女の気持ちにゃとんと疎い。そんな俺に話し方指南を頼む物好きが現れた。でもどいつも困ったもんばかりで・・・・・・歯切れのいい語り口で、言葉にできないもどかしさと不器用な恋を描き、「本の雑誌が選ぶ年間ベストテン」第一位に輝いた名作-
(※単行本初版発行は1997年の夏)

この佐藤多佳子という作家のことは恥ずかしながら全然知らなかったのだが、出身地東京となっているので江戸っ子なのだろうか。小説全体のノリがよく明るいテンポで最後まで勢いがある。それでいてしんみりさせられる。落語の人情話の世界に通じるものがある。

主人公である二ツ目の古典落語家、今昔亭三つ葉(本名は外山達也)の血気盛んで人情に満ちた言動がいい。それが全然押しつけがましくないのだ。そしてヒロインというべき十河五月(とがわさつき)が魅力的だ。といっても普通の美女というのではない。内向的で自分の殻に閉じこもりがちで、傷つくことを恐れて心をなかなか開かない。次に、小学生の村林優。転校してきた小学校でいじめ(本人は戦争といっているが)にあっている。小生意気そうに見えて可愛げがあり、一本筋が通ったなかなかの少年。そして、元プロ野球選手(一流の代打の切り札)の見た目ごっつい中年男の湯河原太一(じつは小心者でいい人)。さらに三つ葉のいとこの綾丸良。テニススクールのコーチで見た目かっこいいがどこか冴えない青年。お坊ちゃまで気が優しい。
住む世界も年代も違う5人だが、それぞれの悩み(どれも共感できる悩み)を抱えつつ、次第に世代を超えた何とも言えない友情、ほんわかした連帯感で結ばれていく過程がとてもいい。
今昔亭三つ葉(外山達也)と十河五月が互いに惹かれあいながらなかなか分かり合えない純情な恋の様子がほのぼのと感じられる。
落語の世界は面白かった。師匠(今昔亭小三文)と弟子、弟子どおしの結びつき、修行の厳しさなどがよく伝わってくる。
そして物語全体を締める存在なのが、主人公の祖母の外山春子(お茶の先生)。僕も、こんなおばあちゃんが暖かいお茶の間で番茶を入れて待っていてくれたらなと思った。

主人公をはじめとして各登場人物たちの描き方がすみずみまで行き届き、それぞれのエピソードも現実感がありどっぷり感情移入してしまった。読む先々でほろりと涙し、ときに笑わせられそしてまたほろりとさせられる。よくこれだけの話を詰め込みながら、さらりとした感じで書き上げてしまってあることか。小説家の技量とはこうあるべきものなのだなと感じた。

何気なく読み始めた本だったが読んでよかった。とかく人間関係が希薄になりがちなこのごろ、こんなお節介ならいいものだなとつくづく思ってしまった。来年の映画公開がほんとに待ち遠しい。

残念なのかよかったのか何ともいえないのが、映画のキャストが本の登場人物たちのイメージにすっかり重なってしまったこと。特に今昔亭三つ葉の国分太一、十河五月の香里奈。この2人がぴったりはまってしまった。どういう演技をするのか今から楽しみだ。特に十河五月を演じるのは難しいだろうなあ。
また、綾丸良の名前が映画の主な登場人物の中に無いのが気になるところだ(小説では重要な役回りとなっていたが)。

●映画の主な登場人物
今昔亭三つ葉・・・国文太一
十河五月・・・香里奈
村林優・・・森永悠希(子役)
湯河原太一・・・松重豊
外山春子・・・八千草薫
今昔亭小三文・・・伊東四郎
●映画公式サイト
映画「しゃべれどもしゃべれども」公式サイト

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2 コメント

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こんばんは♪ (miyukichi)
2006-12-03 01:26:06
 TBどうもありがとうございました。

 これ、ほんとおもしろかったですよね。
 私も、一気に読んでしまいました。
 書店の店員さんのセンスも、なかなかですね。

 映画のキャスト、私のイメージとは違うものばかりなんですが、
 でもとても楽しみです
こんばんは! (キャベタマ)
2006-12-03 21:29:40
miyukichiさん、こちらこそトラックバックとコメント、ありがとうございます。

おもしろかったですよね!!

>書店の店員さんのセンスも、なかなかですね。

そうですね^^
あの並べ方はちょっと普通じゃなかったです^^;
これは買って読まねばという気にさせられました。
読んでよかったです。店員さんに感謝しなければならないですね。

>映画のキャスト、私のイメージとは違うものばかりなんですが

僕の場合は、本の帯に映画のキャストが載っていて、どうしても映画のキャストのイメージが先にきてしまいました。白紙の状態で読んだら、違ったイメージが生まれていたんだろうと思います。
主人公の今昔亭三つ葉役には、塚本高史や森山未來なんかも面白そうな気がします。

>でもとても楽しみです

僕も楽しみです
来年初夏というのは、ちょっと待ちながいですよね。

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