川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

イギリスの学校ガバナンス

2010-02-03 17:18:19 | ひとが書いたもの
イギリスの行政とガバナンスイギリスの行政とガバナンス
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2007-12
これは、ガバメントではなく、協働型ガバナンスについての本。イギリスを例に。
パリシュなどという、ぼくはこれま知らなかった、最小単位の地域共同体のことなどおもしろい。

でも、やはり教育関連に目がいってしまう。

1988年教育改革法で、学校単位で予算運用ができるようになったり、教員の任用権を得たりしたのがイギリスの教育改革のスタート。
1989年教育法で、「明日の学校」をぶちあげたニュージーランドとベクトルは似ている。
ただ、ニュージーの方が徹底していた。
学校を個別、保護者が運営する。
教員の任用ではなく、雇用するのが、保護者の仕事だ。もちろん校長も。

学校の査察のあり方も大いに違う。
イギリス流だと、あくまでも査察というのが前に出ているようだが、ニュージーランドでは査察と言うよりも「支援」だ。
第三者として、問題を把握し、道を示す。
ニュージーはかなり成功しているんではないかと、これを読んでいて思う。

企業のガバナンス、教育のガバナンス

2010-02-03 16:00:50 | ひとが書いたもの
コーポレート・ガバナンス (ハーバード・ビジネス・レビュー・ブックス)コーポレート・ガバナンス (ハーバード・ビジネス・レビュー・ブックス)
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2001-06
ニュージーランドの教育についての文章を書きつつ、コーポレートガバナンスの本を読む。

教育委員会がなく、学校個別に学校理事会(主に保護者から選ばれたメンバーよりなる)が統治(ガバナンス)を行うスタイルを20年以上続けているニュージーランドでは、保護者が学校との間に「ガバナンスとマネジメント」という問題系が常に存在していて、そのために勉強。

本からの引用と、コメント。さっきつぶやいたものを、再構成。

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(引用)
取締役会が負うべき責任にとしては、まず第一に、事業戦略の開発がある。といっても、戦略の策定を行うのではない。それはCEOとシニア・マネジャーたちの手に委ねられる問題であり、戦略計画プロセスが適切に導入・活用され、また適切な選択が行えるようにすることである。さらに取締役会は、現在の戦略計画がスケジュールどおりに進んでいるか、、予算通りに執行されているか、期待する成果を生み出しているかどうかを見極めるために、その実施状況を監視しなければならない。


(コメント)
取締役を教育委員会に。CEOを教育長に。それぞれ置換してみよう。シニア・マネジャーは教育委員会事務局の課長たちか。これが、日本の教育制度をガバナンスの発想で見た時の見取り図といえる?
一方、取締役を学校理事会(主に保護者からなる)、CEOを校長に置換すると、ニュージーランドの学校ガバナンスになる。

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(引用)
取締役会メンバーの知識と経験の組み合わせは、企業が直面している戦略上の要求とマッチしていなければならない。
なぜなら、今日のビジネス環境は非常に複雑なものとなっているため、取締役会が扱うすべての問題を、一人あるいは少人数のグループだけで理解するのにはほぼ不可能だからだ。複雑に対処するには、異なるスキルやバックグラウンドを持ち、互いに補完しあうことのできるメンバーで構成されたグループこそ必要とされる。

取締役の専門性を系統的に配置し、現在と将来の開いたのギャップを見極める業績評価は、したがって取締役会が正しい知識をバランス良く維持するうえでも重要である。

大手の宇宙開発企業では、自社の取締役の能力を明確にする単純なマトリックスを用いることで、適切な知識が、取締役会とその様々な委員会に配置されているかどうかを見極めるようにしている。


NZの学校理事会の支援組織(連合組織)NZSTAの研修では、そのようなマトリクスをつくって、必要な知識・スキルのジャンルがカバーできているか確認するように推奨されていた。日本の教育委員会では?

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(引用)
取締役会を有効なものにするためには、権限が必要である。ここでいう権限とは統治機関として機能するための権限であり、重要な意志決定を行うための権限である。しかしそれは、シニア・マネジャーがその決定を受け入れ、どうにゅうするのをためらわせない権限である。そして、CEOに対する監視を有効に行ううえで、必要な独立性を取締役会に付与する方法は、CEO以外の会社を代表するだれかに、取締役会の席(会長)につかせることである。


(コメント)
日本の教育委員会の議長はたしか互選だったか。教育長は議長にはなれない。NZの学校理事会の議長は保護者代表から選ばれる。校長は議長になれない。

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(引用)
有効な意志決定を行うために取締役会は、グループとしてまとまった時間が十分に必要である。評価は、会議の頻度が適切か、会議の準備に使える時間は十分にあるか、重要事項を決定する際に審議するだけの時間が十分に保証されているか、会議に費やされる時間は有効に使われているかどうか、といった点についても着目しなければならない。

取締役会メンバーは、事前に経営陣からえることができるはずの情報のために、会議の時間を費やしてはならない。会議の時間は実質的な討議と意志決定に費やされなければならない。


(コメント)
まさにこれだ。NZの学校理事会の会議がさくっといく理由というのが。本当にそのサクサクぶりはすごい。おまけに単に校長の方針を追認するだけでもないのだ。理事会が校長を雇っているのであって。
日本の教育委員会はどうか。
ちなみに、PTAは統治機関ではないから、このかぎりにあらず。運営委員会や実行委員会は、意志決定の前に「情報の提示」までしなければならないことが多い。

とはいえ、別にこれって、会議の一般論としても通用するな。事前に分かることは事前に知らせとけ。それだけで議論はスムーズになる。

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(引用)
自己評価は、どんなグループにとっても容易ではない。特に取締役の場合は困難をきわめる。なぜなら自己評価は、取締役会メンバーに対して自分たち自身のことや、すべての利害関係者に影響を及ぼす問題について判断と決定を求めるからだ。

テキサコの取締役会は、会計年度の初めに毎回自分たちの一般的な責任分野、たとえば財務の健全性の監督、企業方針および価値の継続維持、後継者人事計画、CEOの業績評価などをさだめ、それら優先順位に従って広範にわたる各分野の目標をリスト化する。そして、年度の終わりには、取締役会がそういった優先順位に照らし、どのように自分たちの時間を配分したかを割り出すために、取締役会の議事録をすべて分析してみる。取締役会メンバーは、取締役会の有効性に関する討議資料としてこの情報を活用する。

アモコとモトローラは、それぞれ異なるアプローチを採用しているが、それぞれ二つとも非常に有効である。いずれも4ページのアンケートを使っている……他の企業では、取締役会のあるメンバー、たとえば、指名委員会やガバナンス委員会あるいは報酬委員会の委員長が、各取締役と個別に面接、あるいは電話で自由形式の質問を行っている。


(コメント)
ぼくの子らが通っていたNZの小学校では、各理事会メンバーとスタッフ(教職員)にアンケートを配って集計し、自己評価を行っていた。日本の教育委員会で似たようなことはするか。個別の学校では、最近、学校評価なるものがとてもさかんだが。

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(引用)
取締役会は、我々が見てきた最も優れた企業でも採用してないかった新しい手法も検討しなければならない。それは、グループ手法に関する社外の専門家に取締役会を見学してもらい、どうすれば取締役会の業績が向上するかについてアドバイスしてもらうことだ。
利害関係のほとんどあるいはまったくなく、しかもグループ手法にまつわる問題に造形の深い社外の専門家は、機能していないチームの可能性を見つけ出すうえで、よりふさわしい位置にいる。


(コメント)
NZの学校にはERO(教育評価局)による調査がほぼ3年ごとに入る。学校理事会による自己評価をベースにしつつ、よりよい学校経営のための助言を与える。もちろん授業の現場や、生徒、スタッフ、保護者へのインタビューも。

しかし、理事会にEROの調査員が出席して、理事会パフォーマンスそのものについて助言するというのは、あまり聞かなかった。むしろ、それは、理事会の連合組織NZSTAのヘルプデスクなんぞの役割に近い。

そうそう、学校理事会の連合組織でNZSTAは、日本で言うと日Pをイメージしてしまうような立ち位置にある。しかし、圧力団体としての側面は薄く、むしろ、学校理事会の業務支援団体だ。業務についての疑問に答える電話ヘルプデスクが3人常駐。フリーコールでかけられる。