ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書 (315)) 価格:¥ 882(税込) 発売日:2007-08 |
著者は、ウミガメから入って、ペンギンやアザラシにデータロガーをつけて研究をしてきた人物。冒頭の章で語られるツカミの発見、ウミガメの内温性・ペンギンの外温性(みかけ上だけど)のことはさっそくおもしろい。なんでだ?
そのあと、加速度データロガーをつかっての本格的な研究の話になるのだが……
ペンギンが潜水から水面に戻る時にフリッパーの動きを止めて浮力だけで「滑水」して省エネするやりかたやら、その一方でアザラシでは潜るときにフリッパーを動かさずに「落ちる」ことで省エネしていることがわかったり、それらは、潜水時に体内に取りこんでいる酸素の量で調整されるのではないか……みたいなところまでつながっていく。
ああだこうだやるうちに、ウミスズメのように小さな鳥から、クジラにいたるまで、水中で推進する動物のスピードは、秒速1メートルから2メートルがもっともエネルギー効率がよいのではないか(実際にそれくらいのスピードになっている)という大きな話になるから素敵だ。小さな動物はフリッパーや翼をあわただしく動かし、大きな動物はゆっくり動かす。そのストローク周波数と体重のあいだにもきれいな相関がある。
と研究成果としてこの本を読んでしまうと、だいたいこういうところなんだけれど(省略しすぎていますが)、データロガーの開発話であるとか、フィールドでの研究裏話的な部分がめっぽうおもしろい。
たぶん「動物の仕事」をしたいと思っている人にとって究極なんじゃないかな。
ぼくにとっては、「日本人のペンギン学」本として認定。
安藤達郎さんによる、ペンギン進化についての新書なんてのも、そのうちでないかしらん。
編集者の方、ぜひ。
ペンギン、日本人と出会う 価格:¥ 1,800(税込) 発売日:2001-03 |
追記
そうそう、本書の最後に、著者が新しい研究者をつのる言葉がふるってる。
シャクルトンを気取って、
求む男女、ケータイ圏外。わずかな報酬。極貧。失敗の日々。絶えざるプレッシャー。就職の保証なし。ただし、成功の暁には知的興奮を得る。